第49話 近鉄 国分新社長誕生《連載小説》在る鉄道マンの半生 69年間待ち続けた男
※<本稿は 03/09/2008 に旧サイトで初稿公開した小説のお引っ越し掲載です>
ー 阪神・近鉄友情物語 ー 第49話
1985年(昭和60年)5月近鉄に新社長が誕生した、若干45才の若さであの国分太郎が近鉄本社の社長に就任したのである。
彼は、近鉄グループ各社を渡り歩き、行く先々で斬新なアイデアと実行力と勘の良さで、高度成長期を通じてグループ各社の飛躍的な躍進に貢献した。
元々生まれ育ちの良い彼は財界に多くのパイプを築き、45才の若さで押しも押されもしない関西財界の実力者になっていた。
その彼が徹路の面前に、近鉄本社の社長となって帰ってきたのである。
有限会社鉄路 設立以来8年間 発展を見守ってくれ、後ろ盾になってくれた佐治社長は会長に退くことになった。
徹路は早速本社に表敬訪問に出かけた。
上本町にある近鉄本社ビルには、多くの取引先が面会を求めて駆けつけていた。
2時間待って、分刻みのスケジュールで挨拶回りをしている国分新社長にお目通りが敵った。
『国分社長おめでとう御座います。』
『布施さん、お久しぶりです、わざわざお越しいただいて有り難う御座います。』
『こちらこそ、お忙しいのに、お時間戴いて有り難う御座います。』
『わざわざお越しいただいたのに、ゆっくりお話も出来なくて申し訳ありません本部長』
『イヤですよ、私はもう近鉄の人間ではありませよ...社長。』
『...そうでしたね、いや私の中では布施さんは何時までも本部長ですから...』
『有り難う御座います、社長から有り難い励ましのお言葉を戴いて、これからも近鉄さんの為に頑張らせていただきます。』
『こちらこそヨロシクお願いいたします。』
『社長、もうお時間が...』
『判った。』
『布施さん申し訳ありません、ご覧の有りさまで、又何れ私のほうから、ご挨拶にお伺いいたします。』
『とんでもない、私の方こそお時間拝借しまして有り難う御座いました、失礼いたします。』
『わざわざお越し頂き有り難う御座いました。』
社長室を出た徹路は、帰りに佐治会長の部屋にも立ち寄らせて貰った。
秘書に案内され会長室に入った。
『ご無沙汰いたしております、布施で御座います。』
『久しぶりだね布施君、よく来たまあ掛けたまえ。』
『有り難う御座います』
『重役就任を断って、作った"鉄路"はどうかね?』
『有り難う御座います。おかげさまで沢山お仕事を戴いて、社員一同喜んでおります。』
『そうか、それは良かった』
会長は満面に笑みを浮かべながら、しばし徹路と昔話にふけった。
帰り際に、
「これからも、国分君のことを宜しく頼む。」
と言われ、自ら会長室のドアを開けて見送ってくれた。
思えば、これが会長とゆっくり話を出来た最後の機会であった。
<続く>
公開:2008年3月 9日
更新:2022年9月 5日
投稿者:デジタヌ
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