狸穴ジャーナル『タヌキがゆく』

温故知新《 大成功したBNSFと事業破綻したミルウォーキー鉄道から学ぶ持続可能な鉄道事業の姿とは...》ー第5回ー

第5回 持続可能な鉄道事業の指標を示してくれたBNSF!

第1項 鉄道事業は労働集約産業!

BN誕生後も多くの鉄道を傘下に置き、1995年9月22日にAtchison, Topeka and Santa Fe Railway(ATSF)と事業統合してBurlington Northern to create the Burlington Northern Santa Fe Railwayとなり更に、2005年1月24日にBNSF Railwayと改称て巨大なrailway system(鉄道網)を誕生させました。

第1目 1995年9月22日 BNSF 成立後

鉄道事業は合理化を図ったBSNFでも労働集約産業!です。

BSNFの直接雇用従業員は41,000人(2019年12末現在)と公表されていて、その内約半数の20,000人以上が路線の維持管理現業部門(保線)で働いていると公表されています。

つまり、自社路線24,000マイル(3万8,624キロメートル)ですから

20000人 ÷ 38600km÷  ≒0.5人/㎞ と言うことになります。

BNSF機械部門は、機器の予防保守、修理、およびサービスを実行する13の機関車保守施設を運営しています。これらの施設の最大のものは、アライアンス、ネブラスカ、 Kansas CityのBNSF Argentine Yardにあります。

機械部門はまた、車のメンテナンスと毎日の走行修理を担当する46の追加施設を管理しています《Wikipediaより引用》

更に、depot(貨物駅)、sorting yard(操車場)、などで働く要員、運行管理部門、BNSF鉄道警察!など直接雇用が41,000人、信号システムや通信システムなどの協力企業(下請け企業)まで含めるとその3倍12万人以上の雇用を創出している事業です。

企業努力で、合理化を図ったBNSFですらこれだけの従業員を抱えているわけです

第2目 BSNFを支えるDouble-stack rail transport

Double-stack rail transport(※31)とはコンテナの2段重ね輸送のことです。

参※31)当サイト内関連記事 コンテナ貨物鉄道輸送について考える はこちら。

●マイルトレインは「一昔前の"前世紀のお話"」!

米国の貨物列車と言えば全長1.6㎞以上の"マイルトレイン"が代表のように受け取られていますが...

これは単線区間の多い、Union Pacific Railroad などの単線 branch lineのお話で、交換設備に当たる「信号所の待避線の全長の制限」から生じたためです。

現在全線複線化されたBNSF Railwayのmain line区間に当たる旧BNとSanta Feのtranscontinental railroad(大陸横断鉄道) 2course(旧BN courseでは一部3route!)(※32)では、Double-stackの170両編成・全長約3㎞!総積載重量 1万屯!の列車が毎日100本以上行き交っています。

積載重量は Intermodal containerの規定総重量(※33)が about 30ton/ unitnなので、

Double-stack だと 

  • low floor flat car(低床2層コンテナ貨車)1両辺り about 80t!170両編成だと約13,600t超!

80ton/unit X 170unit =13,600ton ! (※33)と言うことになります!

参※32)旧BNのtranscontinental railroad(Chicago⇔Tacoma)のSpokane⇔Tacoma間が3route、

旧ATSFのtranscontinental railroadのLos Angeles⇔Chicago間が1 routeで都合2course4routeとなります。

参※33)USAの鉄道の場合はRoad(軌道)に加わるpayload(荷重)制限を基本としていて、ホッパー車両を含む、bulk carrier-carの重量表示は、loadage(積載重量)ではなく、船舶同様にGross rail load(車両総重量)で規定されています。

コンテナ列車の全長は約3㎞!

1列車当たりのFreight Carの全長は 約2.8㎞!

つまり、16mx170unit= 2,720m!

GE エボリューション・シリーズのDL X 10両の全長が、22.30 m、

編成全長は約2.94㎞!

16m/unit の"Double-stack Freight Car( low floor flat car)170両!を10両の分散配置(push & pull traction)された2名乗務のディーゼル機関車(※34)で運行しています。

参※34)乗務員は2名で、1名は運転手としてwirelessによるintegrated control(統括制御)された10両の機関車を運転して、もう1名は嘗てのfireman(軌間助手)ではなくengineer(機関士)として乗務して不測の事態に対処しています。

第2項 鉄道事業には♥輸送密度が重要!

一部で共用区間のあるtranscontinental railroad 2,200マイル(約3,520キロメートル)で100本/日が運行されていた当時でも(現行は150本!)

BNSF全列車運行本数の60%に相当すると公表されていましたので、つまり全路線では約170本の列車が行き交っていたことになります!

輸送密度について

BNSFのOfficial Siteでは2020年度に10.2Mユニット、つまり10,200,000両の貨車を搬送したと公表されています!

1日当たりにすると約28000両

1両当たり平均50t/unitだとすると、

50t X 28,000unit≒1.4Mt/day!

全営業キロ数は自社路線約24,000マイル(3万8,624キロメートル)

直接施設維持管理更新費用の生じる自社路線だけで考えた場合には、

1.4Mt/day! ÷ 38,624km ≒36.2t/km・day! と言うことになります。

※但し第2種鉄道事業者に相当するTrackage rights路線8000マイル(12,875キロメートル)を加えると全営業路線は24,000マイル(約51200㎞)ですから、27.3t/km・day!と言うことになりますが、

Trackage rights & Operating区間(※35)は実際には、毎日定期的に運行するのではなく、必要な場合のみのレンタル路線で、しかもJR貨物同様に運行本数に応じた決済なので、"事業投資"面からみた場合は、27.3t/day~36.2t/km・day の間といったところでしょう。

総延長32500mile(52300㎞!)にも及ぶ鉄道事業単体で「投資に見合う利益」を生み出すには、この程度の輸送密度が無いと成立しないと言うことです!

参※35)当サイト内関連記事 第2種鉄道事業者に当たるLeasing,Trackage rights & Operating はこちら。

transcontinental railroad だけに限ると

西海岸のポートランド⇔東部の5大湖のほとりにあるシカゴ間 最短距離(大圏距離)約2860㎞、路程(営業距離)にして約3,500Kmが、BSNFのmain transcontinental road となります。

この他にも、旧サンタフェ鉄道経由のポートランド⇔シカゴ間の南回りルートもありますが、こちらは大圏距離では約3000㎞と大差ないのですが、あちらこちら寄り道?をするので、路程にして約4000㎞となって終います。

更に主な太平洋航路どうしを比べても

香港⇔高雄⇔横浜⇔ポートランド間11,000kmと香港⇔高雄⇔横浜⇔オークランド間約11,300㎞では大した差はないのですが、USA上陸後の旧BNラインとATSFラインでは500km!ほども差があり、更にオークランド⇔シカゴ間は Union Pacific Railroadが主要ルートとなっているので、旧BNライン3ルートがmain lineとなっています。

運行本数100本当時でも

太平洋岸⇔シカゴ間の旧BNのtranscontinental railroad(Chicago⇔Tacoma)約3,550Kmで所要時間72時間(3日間)という驚異的な運行を行っていますが、逆説的には、ターミナルの発着本数は全運行本数の1/3と言うことになります。(※前途したように、旧ATSF コースは72時間より多少オーバーしますが...)

つまり、transcontinental railroadの1日当たりの発着本数は約33本 輸送量about 330,000 ton

transcontinental railroadの総延長は、Spokane⇔Tacoma間の3route重複区間の重複2route 約700㎞を加えて

約8300㎞。

つまり 輸送密度は 330000 t/day ÷ 8,300km ≒40ton/km・day と言うことになり。

後述するJR貨物のMaine Line東海道線の貨物輸送密度 22ton/km・day未満!の約2倍と言うことになります!

つまりこれぐらいの輸送密度が無いと、(パナマ運河経由の)海運業に対抗して、「十分な競争力と利益が確保できない!」と言うことになります。

第2目 ロシアでは最大4千200屯70両全長 約1.8キロメートル

現在ロシアでは、(架空線)電化されている都合で、Double-stack rail transportは行えません。なので12,192 mm (40 ft)のIntermodal container X tandem loadingの25m級のflat car(コンテナ貨車)が使われています。

更に、単線区間も残っているので、"交換退避線"の都合で、25m級貨車70両編成。全長1750mが標準となっています。

●2unitの2ES10が全長:2×17 = 34 m、3両ユニットの3ES10が3×17 = 51 mなので、列車全長は約1.8㎞!と言うことになります。

列車当たりの輸送力

輸送力(積載重量)は 60t/ unit X 70unit = 4,200 ton

第3目 日本ではたったの52両最大1,300屯、全長約1,100m

バブル期には1600屯輸送(※36)を目指した日本でしたが...

20m級貨車に拘ったJR貨物(旧JNR)では現在、積載量5t未満のJR貨物規格12フィートコンテナ(3.65m長)5 unit(18.2m)tandem loadingの20m flat car(コンテナ貨車積載量40.7t未満!)が基本となっていて

  • 最長でも全長約1.1キロメートル!

しかし、実際には最大編成で運行されることはめったにありません。

参※44)JR貨物もIntermodal containerを意識して31ft(9.245m)クラス、の新型コンテナを開発していますが...

但し荷主までの集配に使うトレーラー輸送(トラック輸送)を考慮して積載重量は 13.8屯に制限されています。

参※36)日本では、顧客の要求"積載量"を重視して、定格は"貨物積載重量"で表しています。

全長は約1㎞

貨車 52両で10,040メートル

主力機関車Blue Thunder(EH200形電気機関車)が25メートル

つまり編成全長が1,065m 

列車当たりの最大輸送力

25屯X52両≒1,300屯

つまり日本の輸送力はロシアと比べても1列車当たり約1/3、BNSFと比べると約10倍もの開きがあるわけです!

更に輸送密度となると

日本の大動脈東海道貨物船?(東京駅 ⇔神戸駅間589.5 km)ですら。

現状Max輸送力1,300tonの貨物列車が日に10往復程度で、

1,300 t(26両)X10往復程度≒13,000ton

輸送密度はたったの 22ton/km・day!

しかも満載の列車はほとんどないので実際には...

旅客事業を行っている「JR各社のご"慈悲!"」で第2種鉄道事業を"細々"と行っているわけす!

しかも、主なclient(利用者・依頼主)はshipper(荷主)ではなくて!宅配業(小荷物配送)と、後は航空機燃料・石灰石輸送のみ!

これではJR各社の中で唯一「鉄道事業で黒字」を出していると威張っても..

路線を保有する第1種鉄道事業者だとしたら、独立採算は到底不可能!でしょう。

国内航路の貨物船やトラック輸送(陸上貨物輸送の99%!)に対抗して鉄道貨物事業を継続するには、再度のJRグループの 統廃合などによるreconstitution(再構築)など「大胆な改善策」が必要でしょう。(※43)

参※43)当サイト内関連記事 宅配便事業が、鉄道貨客混載事業を復活できるかも! はこちら。

これでは、"持続可能な鉄道事業"に必要な営業収益が得られる訳がありません!

第3項 JR貨物の空荷輸送!カラクリ

一般の"鉄オタ"にはショッキングでしょうが、日本の政府(国交省官僚)は中共!と同じことをやっています!

つまり、一見回送のように見せかかた"空荷flat car(コンテナ貨車)"の空荷輸送!です。

参※)関連資料

  1. 「日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律等の一部を改正する法律案」 
  2. JR二島支援法(国鉄債務処理法等改正案)に関する国会論議 
  3. 鉄道建設・運輸施設整備支援機構債券  JRTT公式資料。

 

公開:2021年10月15日
更新:2024年4月 5日

投稿者:デジタヌ

温故知新《 大成功したBNSFと事業破綻したミルウォーキー鉄道から学ぶ持続可能な鉄道事業の姿とは...》ー第4回ーTOP温故知新《 大成功したBNSFと事業破綻したミルウォーキー鉄道から学ぶ持続可能な鉄道事業の姿とは...》ー第6回ー


 

 



▲鉄道史研究班へ戻る

 

ページ先頭に戻る