狸穴ジャーナル『タヌキがゆく』

温故知新《 大成功したBNSFと事業破綻したミルウォーキー鉄道から学ぶ持続可能な鉄道事業の姿とは...》ー第4回ー

第4回 廃業!した Milwaukee Road から得られる教訓とは...

一般にはMilwaukee Roadとして知られている、1847年創業のChicago, Milwaukee, St. Paul and Pacific Railroad (CMStP&P)は、1909年にシカゴとシアトル間を結ぶtranscontinental railroadを完成させたわけですが...

1909年→1986年という短命で終えました!

先行していた、Northern Pacific Railway、 Great Northern Railway とは異なり、

シカゴ⇔シアトル間のinter-ocean を"最短距離で結ぶ"事を目指したために、「人気(ひとけ)のない山中」を通るルート設定となりtransit cargo transportation(通過貨物)、transit passenger traffic(通過旅客)のみを対象とする、regional line(地方交通線)としてみた場合「利用しずらい」役立たず路線!となってしまいました。

第1項 謎の多い直流3000v電化!

1914年から1920年代にかけて下記の区間を直流(以後DC)3000v電化(※61)しましたが、.

この「電化が後々足を引っ張る形」となりました!

参※61)DC3,000V電化自体は西欧では珍しくなく、USA、EU,ロシアとRussian gaugeを採用している旧ソ連圏では標準的な電化方式です。

1914年→1916年

Harlowton, Montana, ⇔Avery, Idaho,間の403mile(約705km)を電化。

1917年→1920年

Othello and Tacoma⇔ a further 207 miles (333 km)を電化。

第1目 電力回生ブレーキは実用に供していなかった!のではないか...

謎に包まれた Milwaukee Road の直流(以降DC)3kv電化に関しては、利点としていろいろな都市伝説!が挙げられていますが...

電力回生ブレーキは実用にはなっていなかったでしょう! 何故なら、電化区間が"単線"だったからです!

疑問...その1)"回生ブレーキ失効"の問題
抑速ブレーキ

勾配区間では必須となる抑速ブレーキですが...

単線区間では通常、抑速ブレーキ(Motor & Generator)で生じた電力は"車載抵抗器"で熱に変換して空気中に放熱(捨てて)しています!

この余剰・電力を架線に戻して再利用を計るのが電力回生ブレーキです。

つまり「釣瓶井戸」と同じ仕組みで「勾配区区間」を降りるときに抑速ブレーキ(Motor & Generator)で生じた電力を、架線に戻して、登り方向の列車に供給するしくみです。

回生失効

つまり同じ給電区間に「昇り降りする列車」が存在しないと成立しません!

いわゆる回生失効が生じます。

疑問点その2)回生電圧の問題

架線に「回生」する電圧も問題となるために、1909年当時にDC3000v電化を担当したゼネラル・エレクトリック社(GE)」が回生システムを開発できていたかは「疑問?」の持たれるところです。

さらに、一度DC3,000V に"変電"した電力を再度3相交流AC60Hz(※51)に変換して、送電線に戻すことは(当時も今も)技術的・設備的に難しいので、同じ給電区間に上下線が存在しない単線区間では変電所に"抵抗器"を設置して「熱に変換して」捨てる!のが通例となっています。

参※51)アメリカは西日本と同じ60Hzです

疑問点その3)

現在でも、20~25mile/h(約32から40㎞/h)以上で走行していないと架線への「電力回生」は出来ないのに、ビデオをご覧の通り電力回生技術が確立しかけた?第2次大戦後のMilwaukee Road末期の時代には、Railway track(軌道)の保線状況が極めて悪く、20mile/h(約32㎞/h)以下の必殺徐行(速度制限!)処置があり、実質架線への電力回生は不可能な状況でした。

その他の問題点

Pacific Railroad Acts により初期に開通した大陸横断鉄道では、USA政府が鉄道の軌道から100フィート(30 m)以内のすべての公有地と、更に敷設距離1マイル(約1.6㎞)ごとに 10平方マイル(26km²)の公有地が無償で供与される内容だったので、USAの鉄道には、frontage road(側道)が設けられていて、保線作業の業務用車両の通路となっているわけですが...

(Pacific Railroad Acts の恩恵に預かれなかった!)Milwaukee Road 特に山岳地帯には frontage roadが無く、事が起こった場合に「迅速に対応できなかった」点も挙げられます。

※この点も現状のJRグループのregional line(地方交通線)と共通しています!

※)以下はFirst Transcontinental Railroadとして有名なUP roadの例。

第2項 輸送量(輸送密度)に見合わない電化設備!

Railway Mania (鉄道狂)にとっては都合が悪い!ので、日本語版Wikipediaからは割愛されていますが...

輸送密度に比較して電化設備の維持管理・設備更新費が莫大となり、経営の足を引っ張る結果になった訳です!

当時総額2700万ドル!を投下した1000㎞以上にも及ぶ電化事業は、まだ蒸気機関貨車が主流だった1920年の"電化当初"は、年間100万ドル以上の(燃料費)節約に繋がりましたが...

1930年代に実用化された電気式ディーゼル機関車と比べると

その後1930年代に実用化された電気式ディーゼル機関車に比べて、給電設備(変電所・架線)や車両そのものの維持管理・設備更新費がかさみ、老朽化が始まった第2次大戦以前にはメリットが無くなってきていました!

電化当初、100mile/h(約160km/h)以上の最高速度を誇った路線も、廃止まじかの頃は、レール交換すらままならない状況で、ビデオの通りのありさまでした!

つまり、前途した通りPacific Railroad Acts(太平洋鉄道法:沿線開拓)とは無関係に自己資金調達で全通した Milwaukee Road では、"都会"を避けて!"建設されたために、沿線都市間の貨物需要も少なく、

第2次大戦をピークに需要・貨物共に減少傾向となり1日当たり10本程度の運行(※52)では、採算に合わなくなったのです!

JR東日本も電化区間の♥非電化改修!を検討

日本のJR東日本も低輸送密度の地方の(本線も含む!)regional line(地方交通線)電化区間の非電化改修!を検討しだしたのはこのためです!

第3項 アメリカでは電化が即「 近代化・効率化では無い!」

日本では「電化が鉄道近代化の決め手」(※41)のように誤解されてますが...

アメリカのように内陸部に大運河が無い大陸国では、鉄道網は船に代わる大量貨物輸送手段「陸蒸気」に特化しているわけです。

なので電化は必須ではなく、むしろ「電化はデメリットのほうが多い!システム」となっています。

Youtube動画でも明らかなように、総積載重量10,000ton!にも及ぶ、日本に比べて桁外れに大量の貨物を扱うには「2段積みコンテナ」、170両の「長大編成」が当たり前で、架線(日本では4.5m以上)があっては邪魔!だし、総積載重量10,000ton!にも及ぶ貨物列車を動かすには電化では「変電設備」「給電設備」が追い付かなるのです!

参※41)当サイト関連記事 近畿 で始まった日本の 電化 と インターアーバン の歴史 はこちら。

第1目 沖縄電力・石垣発電所に匹敵する「移動ディーゼル発電所」が

なので『発電所ごと移動できる電気式ディーゼル機関車』が主流となっているのです。

GE エボリューション・シリーズの例、1両当たり4,400hp≒3,300Kw!標準的な編成で6両、実に1万9千8百キロワットにもなり、石垣島一島を賄っている沖縄電力・石垣発電所に匹敵する「ディーゼル発電所」が移動していることになります!

以下はBNSF鉄道の先頭牽引x4両、中間x3両、後押しx3両 合計10両!DL編成の例 4,400hpX10=44,000hp≒33,000Kw!

第2目 長距離路線電化は3Eに繋がらない

冒頭で述べたように、21世紀は『現状の♥ resource を有効活用して無駄な重複投資を省き、ecology(エコロジー)economy(節約)に配慮した evolution (進化)の3Eを並立すべき世紀』なのですが...

3000㎞にも及ぶ経距離路線を電化するという事は、"送電ロス"を伴い、ecology(エコロジー)economy(節約)に反する!のです。

なので、USAではバッテリー機関車!の開発を真剣に行っているのです。

現状では...

JRグループ各社もそうですが、現状では

高効率・低公害(大気汚染対策済)のディーゼル発電機を搭載した、ディーゼルカーやDLを有効利用するほうが、ecology(エコロジー)economy(節約)に通じるのです。

(お解りですか?、元学生運動闘志!の鉄坊主さん)

参※)当サイト関連記事 今どきの 鉄道系・交通系Youtuber、鉄道コラムニストとは?... はこちら。

細長く伸びきった日本劣等!も

ほぞ長く伸びきった"日本劣等"も同じで、軽量化が要求される震撼線以外の regional line は、非電化改修して高性能DLでコンテナ列車をけん引したほうが、ずっと効率的にecology(エコロジー)economy(節約)を実現できます。

鉄道は自走式高効率発電機搭載の電気式ディーゼルカーで

更に、現状化石燃料に頼る波動需要対応を考えると...夏場・冬場、昼間・夜間の波動電力需要の為に、日本の生命線"食い扶持""を握る製造業むけの産業電力を途切れさすわけにはいかない!のです。

つまり、波動需要対策だけの為に、今以上に余剰発電設備を建設して、夜間や低需要期に揚水式発電所などで非効率に対応させるよりは...

高効率の且つ(排出ガス規制した)クリーンなディーゼル機関による自走式小規模?発電機を備えたDLと電気式ディーゼルカーで対応するほうが、ずっと経済的ににecology(エコロジー)economy(節約)に貢献できるのです。

高出力DL DF200型 (SDA12V170-1形エンジン 定格出力 1,800PS/1,800rpmx2基 =3600hp!≒2,700kw 1時間持続出力 1,920kw!

第4項 時代を読めなかった運営陣

第1目 鉄道に高速性を求めたが...

第1次世界大戦後の世界大恐慌(1929→第2次大戦まで)が始まる前の1927年には最高時速100 mph(160 km / h)超の革新的な列車を運行していた時期もありました。

第2次大戦前、日本の電車特急こだま登場(1958年11月)より4半世紀早い1935年に Chicago ⇔St. Paul(Minneapolis)410 miles (約660 km) を 6時間半で結ぶ最高運転速度100mile/hのビジネス特急Twin Cities Hiawathaを重油炊きSLで運行開始して、1941年にはディーゼル機関車牽引に代わり...

第2次大戦終戦後の1948年5月29日には、有名なスカイトップパーラー展望車付きの2代目Twin Cities Hiawathaが登場しましたが...

inter-city passenger traffic(都市間旅客運輸)は既に空路の時代になろうとしていました!(※42)

(※42)お判りですか?big talkが得意な鉄某頭?先代鳥鉄?ご両人。

参※)当サイト内関連記事 今どきの鉄道傾!Youtuber、タレント、シナリオライター、 コラムニストとは?... はこちら。

第2目 経営環境(トレンド)についていけなかった運営陣!

戦後の一時期を除き「1950年代から航空機が台頭」しだして長距離旅客需要は減退していき、

空路の時代となり、近距離inter-city も Interstate Highway( 州間高速道路)の整備が進みautomobile(自動車)いわゆるマイカー利用に変化してきていました。

更に、中核都市を避けて?建設されたMilwaukee Roadでは、両端以外は大規模なdepot(貨物駅)を持たない(必要ない)為に、transcontinental cargo transportation(大陸横断貨物)に需要を見出すしか無くなりました。

Southern Pacificとの提携でサービスエリアを拡大

1970年に前途した Burlington Northern Railroadが誕生して、Seattle⇔ Chicago 間のinter-ocean cargo transportationは窮地に立たされますが、当時、transcontinental railroadしか所有していなかったたBNに対抗して、Southern Pacificと業務提携(Trackage rights契約)してコロンビア州・カリフォルニア州にまたがる西海岸一帯にサービスエリアを拡大して何とか切り抜けます。

当初はMilwaukee Roadは シアトル港経由の海上コンテナ輸送の50%を占め、Milwaukee Roadの輸送量の80%を賄っていました。(※と言っても1日10往復程度!)

しかし、合併を繰り返して大きくなったMilwaukee Roadは、膨大な債務(社債)を抱えており、1970年代半には、金利を賄うために鉄道設備の維持管理・設備更新が後回し!にされ、ご自慢の電気機関車、変電所などの電化施設、軌道すべてが最悪の状況となっていました。

Milwaukee Roadは廃業までに2度の破産を経験!

1925年と1935年に2度破産して、一時政府の管轄下になり refinance(再投融資)されてその都度新しい会社になっています。

 

公開:2021年10月15日
更新:2024年4月 5日

投稿者:デジタヌ

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