狸穴ジャーナル『タヌキがゆく』

温故知新《 アメリカの鉄道網がどのようにして"再建・復興" 出来たか?についての考察 》ー第4回ー

第4回 アメリカの鉄道網・鉄道会社を理解するうえで...

第1項 最早アメリカでは各鉄道事業者同士の競合関係はない!

競合関係がお好きな日本のrailway mania (鉄道狂)、"お子ちゃま鉄道オタク"は、西部開拓初期の鉄道会社間の「"殺し屋"まで雇った、血で血を洗う抗争劇」がお気に入りのようで?、日本語版Wikipediaでは特に入念な熱の言った?表現が用いられていますが...

鉄道黎明期当時から200年近く経過した結果、ホールディングス(※31)による企業買収によるグループ化や、アライアンス関係(※32)による主要幹線の"共同所有"共同維持管理、distribution基地の共同運営などは理解できないようで?「あやふやな表現の説明」しかされていません!

これらは日本との制度上(鉄道に関する法律・税制)の違いが「鉄オタ」では理解できないのでしょう!

最早USAに限らず鉄道事業者相互が覇権を争う時代では無くなっています!(※33)

参※31)当サイト内関連記事 ホールディングスとは はこちら。

参※32)当サイト内関連記事 広範囲にわたる企業提携(アライアンス)関係とは? はこちら。

参※33)当サイト内関連記事 鉄道事業者 同士が覇権を争うライバル 関係の ご時世 では無くなっている! はこちら。

第2項 第二種鉄道事業に当る Leasing とTrackage rights

英文で度々登場するLeasing(リース)とTrackage rights(誤訳の追跡権???)とは、日本で言うところの、第二種鉄道事業に当たる契約のことです。

日本では第一種鉄道事業のJR各社や3セクが保有している路線を、JR貨物(第二種鉄道事業が使用して運行しているのと同じです。

最も、現状の鉄道事業法(1986年12月4日に公布)そのものが、1987年4月1日の国鉄解体!国営怪社化を行いやすくするために、諸外国の先例(制度・法律)を取り入れて日本国有鉄道法地方鉄道法を統合して制定された法律なので、鉄道先進国・欧米諸国の制度が先と言うことになりますが...

Leasing(リース)契約

長期間に渡りLeasing(リース契約)を行う事で、日本の第2種鉄道事業者はこれに当たります。

長期に渡る、路線リース契約で、契約条件(内容項目)次第でJR貨物のコンテナターミナルのように、「借用路線内に鉄道事業者が独自に施設」を設ける契約もあります。

鉄道施設の維持管理・設備更新は貸し手、日本の第1種・第3種鉄道事業者とおなじで施設を保有する鉄道会社(又は事業団)が行うわけです。

Trackage rights 契約

Leasingに対するTrackage rightsとは、「低頻度単発"乗り入れ"」に関する契約で、レンタル契約に当たります。

$/1ton・mire(㎞)と言った風に、利用した「輸送密度X走行距離」に応じたレンタル現金決済が基本となります。

勿論、事業者間の協議内容(契約条件設定)により、排他的条件が加わり、借り手が随意に利用できない場合もあります。

AmtrakTrackage rights 契約!

「自社で路線も有する!」Amtrakですが...

長距離のinter-city passenger traffic(都市間旅客)便については、鉄道各社から上記Trackage rights(レンタル)契約で路線を借りて運行されています。

但し、Amtrakに関する特別法で借り手側の「Amtrakが優先的に使用できる排他契約」となっています。

第3項 更には単線並列(並走)区間の存在も

日本では見られない光景で、全線複線程の輸送密度が確保できない区間では、並走する2社がお互いに複線のように並走していて、要所要所に"渡り線"を設けてお互いに行き来できるようにして、Trackage rights(追跡権)契約で「万が一の時」の運行障害を起こさないようにしているわけです。

夫々は単線なので、勿論それぞれの路線の要所要所には、"マイルトレーン"に対応した2㎞程度の行き違い退避線が設けられていて、各社夫々で上下方向の交互運行を行っていますが。

場所によっては完全に複線のように近接している個所があり、「同じ方向に列車が走行する」様子も見られます。

日本でも、JR各社と私鉄が並走している区間がありますが、軌間が異なる場合もあり、お互いに路線を"融通"しあう光景は拝めません!

嘗ての競合時代に敷設された"競合区間?"で多く散見される

嘗て19世紀後半から20世紀初頭にかけて、各社が"凌ぎ"を削っていた当時に、都市間に夫々別々の2・3つの路線が存続したのは日本と同じです!

具体的には、Ogden⇔Salt Lale City間や、デンバー⇔プエブロ間のサンタフェ鉄道とリオグランデ鉄道、ナローゲージで有名なColorado and Southern Railwayの3路線並走区間などがあげられますが、現在は低輸送密度区間は統廃合されてUPのみの路線になってSNSFはTrackage rights(追跡権)契約で南北の自社路線を繋いでいます。(※32)

日本で言えば東武鉄道と旧国鉄の関係でしょうが、日本では相互直通運行はしても、"路線の統廃合"までは進まなかったようです!

参※32)但し、Salt Lale City、Denver共にauthority(公共事業機関; 公社.)のLRT網があり、UP、BSNFが夫々authorityにAmtrak同様の排他的Trackage rightsを与えています。

参※LRTとはLight rail transit (公共交通機関)の事で、和製カタカナ英語の"チンチン電車"の意味ではありません!

第2目 "丸本"の乗り入れも!

鉄オタならご存じの通り、JR貨物以外に地方で稀に見られるだけになった、「乗務員丸ごとの乗り入れ運行」ですが...

日本では、他社線直通は勿論の事、JR各社内でも、営業局管内ごとに乗務員(運転手)が入れ替わりますが、

米国では乗務員(運転手)丸ごと他社路線内も乗務して、文字通りの"乗り入れ運行"を行っているわけです。

米国でも嘗て旅客営業主体だったころには、日本の旧国鉄と民鉄間の貨車受け渡しのように、貨車だけの直通だったのでしょうが...

合理化の為に乗務員丸ごと他社線に乗り入れているわけです。

※日本で一般的に言われている、相互乗り入れは、「車両のみの直通運行」で、

運行は直通側の鉄道会社が行い、運賃収入も当然直通先の"儲け"となります。

つまり車両レンタルと同じなので、一般的には直通車両の、運行(営業)距離を同じにしてレンタル料を"相殺"しているわけです。

なので、鉄オタ用語の"アルバイト運用"?、つまり「京急車両の京成電鉄内折り返し完結運用」もあるわけです!

分けるところはしっかり分けて!いる

更に面白いのはDenverのように鉄道の要衝で各方面から列車が集まる近郊区間では、UPとBNSFの路線が一見複々線のように、ほぼ同じところを走っている区間でも、...お互いに完全に分けられているprivate路線区間になっていて、勿論distribution centerやfreight depot(貨物駅)も 別々ですが...センター手前ではお互いに行き来が出来るように"渡り線"が設けられています。

新規に共同使用のdistribution center,reight depotを設ける場合も

更に、米国全土の「お互いのsphere of business(営業範囲)が重なる部分」では、

Cheyenne近郊のようにお互いの路線をrestructuring(統廃合・再構築)することにより、新たなnode(結節点)を設けて大規模なdistribution center&reight depotを隣接して"親切"した例も見受けられます。(※シャイアン近郊を拡大してみてください)

第3目 線形の特徴

アメリカではデルタ線を用いたJC.が多い

日本では、main line(幹線)とbranch line(支線)が交わる junction Pointには、駅が設けられていて、折り返し運行となるわけですが...

アメリカの鉄道網の「活きているジャンクション」ではデルタ線が殆どを占めています!

アメリカでは、京葉線二俣新町ジャンクションや、瀬戸大橋線歌津ジャンクション、近鉄中川ジャンクション、のように駅から離れた場所に設置された junction Pointにデルタ線が設けられていて各lineが相互に接続される構成がとられています!

頭端型terminal station

勿論、現在本業のcargo transportation(貨物輸送)においては、Depot(貨物駅、車両基地)と呼ばれる施設は頭端型行き止まりタイプのterminal stationが殆どで、途中駅タイプは地方のRegional Depot(地方駅)に限られます。

勿論これは貨物輸送に主眼を置いているためでですが、旅客営業を行っていたころからの伝統でもあります。

つまり、行き止まり路線は一応branch line(支線)扱いなのでしょうが、その他の網の目のように張り巡らされた地方の中核都市を結ぶinter-city line(都市間)は、夫々が旅客取り扱い時代からmain line(幹線)扱いで、夫々の都市間に別系統(直通便)が存在したからです。

但しニューヨークやシカゴのような大都市では、ヨーロッパ型のターミナル(頭端型終着駅)も多く、デンバー共同駅のように近年新設された旅客扱い専用のターミナル形式駅もあります。

circle line

更には、cooperation depot(企業団地貨物駅)、mining lineに多いstorage (集積施設)、reservoir(給水所、貯蔵器、(貯)水槽、貯蔵、蓄積所)などと呼ばれる、積み込み施設では、"機回し"の必要がないcircle line(環状線)が多く用いられています。

 

公開:2021年8月26日
更新:2024年4月 5日

投稿者:デジタヌ

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