連載《 臨海鉄道 や 専用線 が日本の港湾都市から消えて行った訳は...》ー第9回ー
第0項 石油化学コンビナートでは「お呼びで無い」!
重要なのは、臨港鉄道が受け持つのは、燃料輸送に限られ、重化学コンビナートで算出される石油製品輸送には使用されない点。
つまり敗戦後の高度成長期以降に、誕生した第3期四日市石油コンビナート(1972年操業開始霞ヶ浦地区)等では、最初から臨港鉄道計画すらなかった訳!
つまり重化学コンビナートでは、各プラント(工場)間がパイプラインで結ばれていて、しかも製品の殆どは、鉄道輸送には適さない代物!が多く。
臨港鉄道(専用線・引き込み線)が必要ない!訳。
第1目 内陸部にパイプラインで繋がっていない大費先がある場合のみ!
更に、米軍横田基地⇔千葉臨鉄道間のジェット燃料輸送などがこの例。
また、名古屋臨海鉄道→西濃鉄道上田石灰製造㈱神尾燃料輸送、
関西本線貨物支線→関西線の燃料輸送などなど...
港⇔内陸部の事業所間の鉱石運搬は特殊な例!
関西本線四日市貨物支線⇔三岐鉄道の石灰石輸送、
岩手開発鉄道(株)の石灰石輸送、などは特殊な例。
★第1項 四日市臨港鉄道(関西本線四日市貨物支線)
この市(コンビナート)こそ、臨海鉄道の「必要性と時代遅れの両面」を如実に表しているコンビナートは無いだろう!
四日市公害で一世を風靡した?石油コンビナートの町だが、臨海鉄道が敷設されたのは、古くからあった南部の石油精製エリアだけ!
前途したように、第3期増成分の北部の霞ヶ浦地区(1972年操業開始)の重化学コンビナートでは最初から臨海鉄道計画は無かった!
当時完成しつつあった国道23号名四国道(1972年全通)で十分と判断されたのであろうが、全くその通りだった!
南部の第1コンビナート(塩浜地区1958年操業開始)第2コンビナート(午起地区 1963年操業開始)の石油精製コンビナートに張り巡らされた四日市臨海鉄道(関西本線四日市貨物支線)は今も健在で、元気に石油製品(燃料)をタンク車で出荷している、また関西線経由で三岐鉄道富田駅から製品セメントを出荷港まで運んでいる。
複雑な運行形態
四日市駅周辺の貨物支線(四日市⇔塩浜駅(塩浜本町信号場)はJR東海の関西本線に含まれますが...
そこから先の昭和四日市石油専用線と、先述の石灰石積出港への四日市貨物支線は、四日市駅構内!とみなされていて、後述する名古屋臨海鉄道が運行を受託しています。
つまり、路線はJR東海(第一種鉄道事業の所有で。
運行は(第二種鉄道事業)JR貨物が行っているわけですが...
専用線(引き込み線))直通の都合で、JR貨物関連会社の名古屋臨海鉄道が受託運行(alliance;業務提携)契約をしています。
なので、名古屋臨海鉄道のDLが、受け渡し駅四日市駅から貨物列車をけん引しています。
小中学生には、難しいでしょうが、鉄道事業法上の第二種鉄道事業と受託業務(alliance)は異なるので、事故などに対する社会的責任(民事・損害賠償)はJR貨物が負うことになり、常務上過失等の刑事責任は、運行管理者個人(乗務員・駅員)が負うことになります。
第2項 名古屋臨海鉄道
名古屋臨海鉄道主要株主(2018年3月31日現在)
- ●JR貨物 46.8%
- ●名古屋港管理組合 38.1%
- ●日本通運 2.1%
- ●JXTGエネルギー 2.0%
- ●名古屋鉄道 1.9%
千葉臨海鉄道と非常によく似ている臨海鉄道が名古屋臨海鉄道!
こちらも、燃料輸送で程細と生計を立てているわけだが、消費者(燃料輸送先)の都合でいつ廃線になるかも予測できない臨港鉄道の一つ。
千葉臨海鉄道同様に、沿線には住宅地も控えているが、こちらはこまめに乗客を拾うことを得意とする?名鉄ライン。
おまけに首都圏程の旅客需要も無い...
非常に残念だが、今世紀前半には...
第3項 先行き不安な"北関東"の鹿島臨海鉄道・JR鹿島線(成田線)
そして次に心配なのが、鹿島臨海鉄道と、鹿島線・成田線...
鹿島臨海鉄道は、ご存じの通り、加島工業地帯の出荷ラインとして、誕生した殖産臨海鉄道だが...
こちらも、石油製品を生産しているのは1事業所のみだった、大半はトラック輸送に頼る、石油化学製品!
つまり頼みの綱の、燃料輸送が1983年以来途絶えて久しい今、何時廃業しても不思議でない状況!
おまけに、コンテナ貨物輸送は、鹿島スタジアム駅(貨物駅)でJR貨物(※531)に受け渡しており、自社は鹿島臨港部のみ!
おまけに旅客営業は臨港部では行って無く、通常JR鹿島神宮駅まで直通して鹿島線との連絡を計っているが...
肝心のJR鹿島線自体が、工場エリアから離れており、ビジネス客はほとんどが「便利な高速バス」を利用しており、小生が指摘した21世紀のアクセスモデル。
地方都市間の「インターシティーは高速バス」利用(※532)の形態になってしまっている!
そしてついに、先ごろ特急電車が昇天なさったようである。
鹿島市は鹿島スタジアムがあることだし、鹿島線は無くならないだろうと「タカをくくっている」ようですが...
サッカー開催日以外は惨憺たる状況で、お隣香取市の佐原駅以遠の鹿島線・成田線は利用客も少なく、前途した燃料輸送が無くなると、確実に廃止3セク転換話が持ち上がるでしょう。
つまりそうなると、サーッカー開催時の、数万人の入場者を高速バスだけで裁くのは困難となり、さりとて、鹿島臨海鉄道がJRの後を引き受けたとしても、レールバス?のピストン輸送ではとても...
それに、サッカー特需の為だけに、佐倉⇔鹿島サッカースタジアム間を電化しておくのも"もったいない"お話だし、と言うことはJR乗り入れを期待することもできず...
ココは、お隣神栖市さんにお願いして、臨港部の貨物専用線を、旅客路線(LRT)(※533)として復活?させる方向で協議するいがいには...
LRT化すれば頼りになる市民の足に!
LRT路線化すれば、朝夕のラッシュ時間帯の停滞に巻き込まれることも無く通勤・通学・お年寄りの病院通いにも便りになる生活路線が誕生することになり。
一先ずは、鹿嶋臨港鉄道の延命は何とかなりそうで?...
さらに最新のバッテリーカーを用いれば、駅周辺だけの電化だけで済み、全線電化の必要もなくなり誠に都合よくl事が進むわけ!
いずれにせよ、鹿島サッカースタジアム⇔桜⇔松岸駅(銚子市)は鹿島臨海鉄道が引き受けざるを得なくなるでしょう!
他県に跨ることを茨城県が不服とするならば、鹿嶋市・神栖市・潮来市の3市は高速バス以外の帝都東京への公共交通を無くすこととなり、サッカー開催も危ぶまれることに...
参※531)鹿島臨海鉄道は、JR貨物と茨城県が主要株主となっている3セクで、親会社のJR貨物はJRTTの100%子会社です!
つまり、殆どお役人で構成された会社です!参)当サイト内関連記事 鉄道建設・運輸施設整備機構が改組できれば 整備新幹線網建設"妄想"が... はこちら。
参※532)当サイト内関連記事 21世紀の広域交通網は発想の大転換が必要では! はこちら。
参※533)当サイト内関連記事 ヨーロッパ各地で LRT が復興した背景 はこちら。
参※)1990年代小生がセールスマンで活躍していたころ、当地を良く訪問したが、当時から高速バスを利用するのが常だった。
ヘソ曲がりで鉄オタの小生は特急に乗って見たく、一度だけ利用したことがありましたが...
当時の鹿島神宮駅の吹き曝しのホームで"冬場"に1時間近く待つのは"荒行"に近いものでした!
公開:2021年7月21日
更新:2024年3月21日
投稿者:デジタヌ
連載《 臨海鉄道 や 専用線 が日本の港湾都市から消えて行った訳は...》ー第8回ー< TOP >連載《 臨海鉄道 や 専用線 が日本の港湾都市から消えて行った訳は...》ー第10回ー
▲日本の鉄道史研究班へ戻る