狸穴ジャーナル『タヌキがゆく』

連載《 欧米の都市で復興した LTR・トラム網への3つの取り組み方とは...》ー 第5回ー

第5回 チューリッヒ方式(市内併用軌道用)超低床 Tram の近郊鐡道路線への直通方式とは?

軌道法に基づくチンチン電車(軌道走行車両)が専用軌道の延長路線として interurban 「近郊路線」に直通する方式で、前途した通り日本でもこの方法が主流なりつつあります。

第1項 ハードルが低く日本の地方鉄道事業者にとって導入メリットが最も大きい方式です!

後述する、ブリュッセル方式も含めて日本の地方の中小鉄道事業者にとっては、

「スピードアップ」を狙うカールスルーエタイプより、「超低床トラム車両」の郊外線・鉄道線直通方式の方がハードル(ホーム)が低くて♥取り組み安いシステム!です。

♥ナチュラルバリアフリー!「低床トラム」&低いプラットホーム「転落事故」の危険をなくして、 駅設備を簡素化することの方が、トータルでの設備投資額とそれに伴う原価償却の負担小さくなり「メリット」が大きいといえます!

第1目 費用を賭けずにナチュラルバリアフリー化

低床車両を用いた方式では前途した過剰投資一切が必要無くお手軽に駅の"親切"も可能となるわけです!

つまり、高床車両の京阪京津線では、地下鉄線区内同様に地上区間でもゆくゆくは...

同じく床を持ち上げた都営荒川線も全駅橋上駅舎・ホームドア完備!のありふれたInterurban(都市圏近郊電車)とならざるを...

そして、JR東日本グループ?となった静鉄(※21)も...

参※21)当サイト内関連記事 静岡鉄道 が 東急 から離れて JR東日本 グループ入りで生き残り?... はこちら。

第2目 ヨーロッパではトランジットモール(ホコ天)とのセットで

日本の場合は、(ホコ天)歩行者天国と公共交通は別々に受け取られていますが、日本同様に城塞都市(城下町)から発展して市街地中心部の道路拡張・市街地改造が難しいヨーロッパの中核都市では、公共交通(路面電車・バス)以外の一般車両を締め出した「トランジットモール」が、都市活性化の1手法として用いられるようになってきています。

第2項 トラム型車両の郊外線直通の歴史

第1目 先駆者USAのノースショア鉄道

前途したようにアメリカの(現CTAの始祖)ノースショア鉄道(Chicago North Shore and Milwaukee Railroad)が元祖チューリッヒ方式の路面電車の郊外線乗り入れタイプでした。

1891年に設立されてイリノイ州ウォキーガンで路面電車を運営していたウォキーガン・アンド・ノースショアー・ラピット・トランジット社が起源で、その後1919年にノースウェスタン・高架鉄道(現ループ線)の線路使用権を獲得して、シカゴ都心部の路面電車網(現在のシカゴループLラインの起源)から北部のミルウォーキーに路線を伸ばしたシカゴ・ノースショアー・アンド・ミルウォーキー鉄道が起源です。

こちらは、市内併用軌道線を走るチンチン電車が郊外の専用軌道?に遠征して、隣町ミルウォーキーに達した例です、4連接の高速路面電車?エレクトロライナーElectroliner(※3)で有名でした。

但し、途中の町々の市街地に併用軌道部分が存在していて、しかも市街地を高速運行(最高運転速度140㎞/H!)で突っ走っていたために、フリーウェイの整備とともに1963年1月20日に廃止となりました。

※参3)小生も、嘗て試乗して食堂車でランチを頂いたことがあります!(但し鉄道博物館所有の動態保存車両の構内線公開運転で)

第2目 日本でも数多い実用例が

いわばチンチン電車の専用軌道走行と同じで東京で言えば一部区間((山手線)大塚駅前⇔(京浜東北線)王子駅前間)のみ路面電車の都電荒川線(全長12.2㎞・制限速度全線40㎞/h)の走行している姿を想像していただければよいでしょう。

また大阪ではあべのハルカス前と堺市大道通りの併用軌道を走行している阪堺電気軌道(併用軌道部制限速度40㎞/h)の大半が専用軌道(制限速度50㎞/h)を走行しているのと同じです。

日本における元祖チューリッヒ方式の江ノ島電鉄(1910年11月4日開業)

江ノ電江ノ島電鉄線(営業距離10.0㎞) 江ノ島駅⇔腰越駅間約980m 制限速度40㎞/h(本線上45㎞/h)の併用軌道区間を 2両固定編成 全長25.4mx全幅2.45mx全高3.9mx重量41.8ton/1501編成の鉄道用車両が通常2編成連結全長50m超で運行!していますが...

もともと戦時中までは「軌道法」に下ずくチンチン電車でした!

元は軌道法で開業したチンチン電車だった

1910年11月4日に有名な江ノ島⇔腰越区間の併用軌道を含む小町(現在廃止)までが"軌道法"により開業しました。

※1933年10月の福井鉄道市内軌道線乗り入れに先立つ23年も前ですが、当時は軌道特許によるチンチン電車の時代でした!

※東海道線が敵の空襲で不通になった場合の代替え輸送路として、戦時中の1944年(昭和19年)11月 軍部の要請により軌道法から地方鉄道事業に免許変更されました。

日本最古のチューリッヒ方式鉄道路線乗り入れを行っていた名古屋電気鉄道・枇杷島線!

名古屋電気鉄道→旧・名古屋鉄道(&名古屋市交通局)→旧・名岐鉄道と合併し現・名古屋鉄道誕生

1898年5月6日 : 栄町線 笹島(後の名古屋駅前) - 県庁前(後の久屋町)間 (2.2km) 開業。
1901年(明治34年)2月19日 : 押切線 柳橋 - 押切町間 (2.3km) が開業。
1903年(明治36年)1月31日 : 栄町線 久屋町 - 千種(後の西裏)間 (1.8km) が開業。
1908年(明治41年)5月3日 : 熱田線 栄町 - 熱田駅前間 (4.6km) が開業

1910年5月6日 名古屋電気鉄道枇杷島線として押切町⇔ 枇杷島間全線専用軌道で開業。日本初のチューリッヒ方式トラムカー郊外線乗り入れ開始。

1921年7月1日 に名古屋電気鉄道が郊外5路線 54.9kmを(旧名岐鉄道とは別の)旧・名古屋鉄道に譲渡し、市内線は名古屋市交通局に明け渡して解散した。

名鉄揖斐線を快走する在りし日のチンチン電車(その後一部の車両は福井鉄道にも譲渡されている)の雄姿!

1935年4月29日 : 名鉄・木曽川橋梁の完成により名岐線(現名古屋本線)の新一宮(現・名鉄一宮) ⇔ 笠松間が開通し、押切町⇔新岐阜(現・名鉄岐阜)間が全通。同区間を34分で結ぶ。

1941年(昭和16年)8月12日 : 新名古屋地下トンネルが竣工。東枇杷島駅(移設) ⇔ 新名古屋(現、名鉄名古屋)駅間が開業。

犬山線系統の小型郊外電車による名古屋市電「柳橋」駅までのstreet runningの歴史を終えました。

第3目 現存する日本最古のチューリッヒ方式鉄道路線直通♥広島電鉄宮島線

市内線(軌道法による併用軌道線)⇔宮島線(鉄道事業法による鉄道線)直通!

1910年創業の広島電鉄は、広電宮島線(制限速度60㎞/hの鉄道線!)として1922年8月22日 に己斐町(現在の広電西広島) - 草津間が開業して1931年2月1日 に新宮島 ⇔ 電車宮島の区間を延伸開業させました。

敗戦後の1958年4月1日 に臨時運行の市内線(軌道法に基づく併用軌道線)のトラム車両(チンチン電車)を使った鉄道線(宮島線)への郊外線乗り入れが始まりました。

そして1963年5月6日 からは市内線・宮島線広電宮島までの定期運行を開始して1991年8月7日 にはそれまで運行していた宮島線専用車(高床車)を廃止して、市内併用軌道走行用トラム車両による鉄道線乗り入れ(制限最高速度60㎞/H)方式のチューリッヒ方式に完全シフトしました!

えちぜん鉄道に後からトラム乗り入れ用の低いホームが追加されたのと似ている駅低いホームと背の高いホームが残っている駅があるのは、1991年8月7日 迄 宮島線専用車(高床車)が走っていた名残です。

第4目 日本初のトラムトレイン方式福井鉄道もチューリッヒ方式へ路線転換!

福井の福井鉄道武福線⇔福井鉄道市内線⇔えちぜん鉄道三国粟原線の相互直通運行

長年鉄道車両による自社路線「市内併用軌道」への乗り入れを行ってきた福井電鉄ですが、

2006年から後述の名鉄岐阜市内線廃止により大量に発生した(車軸タイプ高速路面電車を譲り受けて、福井市内併用軌道線の近代化!を図り、好評をもって市民に受け入れられました!

そこで2016年3月27日の 「えちぜん鉄道(2003年2月1日営業開始(※6)」三国芦原線直通運行開始を機会に新型超低床車両「フクラム」&えちぜん鉄道「ki-bo(キーボ)」によるチューリッヒ方式に路線を転線!しました。

※参6)旧京福電鉄・三国粟原線

1928年12月30日 福井口⇔芦原(現在のあわら湯のまち)間が三国芦原電鉄により開業。

1929年10月1日 京都電燈越前電気鉄道線の福井 ⇔ 福井口間に乗り入れ開始。

1942年8月1日 三国芦原電鉄が京福電気鉄道に合併・三国芦原線となる。

2001年6月25日 越前本線での事故のため、全線休止!

2003年2月1日 京福電気鉄道からえちぜん鉄道へ事業譲渡。

2003年7月20日 福井口 ⇔西長田間が運行再開!

2016年3月27日 鷲塚針原⇔越前武生間相互乗り入れ開始!

 

公開:2019年8月18日
更新:2024年4月 8日

投稿者:デジタヌ

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