音響研究室便り『旅するタヌキ』

定在波 ( standing wave )と音響障害( disturbance)『建築音響工学総覧 』第4巻 

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定在波とは"通り過ぎていく"音波"ではありません!

"閉鎖された空間"内に停留してBad modification(改悪)!を行う「Amplitude modulator 」音圧変調ゾーン停留域)です!

大型ホールでは、"吐き気"や・"眩暈(めまい)"強い不安感"などの"健康被害"にもつながりかねません。

定在波とその障害について、その抑止・回避方法も含めて徹底的に掘り下げてみました。

前書き 定在波で起こるDisturbance(音響障害)

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ホールデザイン上で配慮すべき最重要項目"定在波"の正体について、身の回りの現象を例にとりわかりやすく解説して、あわせて定在波が引き起こす「楽音が消失したり」「幽霊楽器」が聞こえたりする"定在波音響障害"現象についても理論式・実例などを交えて解説し、自治体で行われる設計コンペでの品定めガイドラインや、一般音楽愛好家の"チケット購入"時のお役に立てば幸いです。

《理工系出身の自治体施設課・建築課の担当者に捧げる「失敗しない・ホール計画の手引き」講座 第3回》

参※00)第2巻 芸術ホールに求められる音響とは 参照。

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『建築音響工学総覧 』の総合目次

※以下のタイトルをクリックするとシリーズ記事全てにワープできます!

プロローグ 後世に残したい真の"銘コンサートホール"74選

お住いの近隣エリアで聞きたいアーティストのコンサートが数公演予定され、どこに行けば「一番感動できるか・会場選び」で頭を悩まされた経験はありませんか?

現在日本各地には3000以上の公共ホールがあり、「タヌキも歩けばホールに当たる?」様相を呈していますが、『"音"を"楽"しめるコンサートホール』となると...

第1巻 地方公共団体のホール計画 

新耐震基準不適合と施設老巧化を「錦の御旗」に、数多くのホールリニューアル計画が水面下で検討されているようですが、いずれの計画も「最初に(興業)規模ありき」では...

自治体の「身の丈に合った規模と予算」で堅実なホール計画をすることこそ一番大事なのではないでしょうか?

第2巻 音響工学の基礎知識(音の反射と指向角 )

建築音響デザインを志すデザイナー(設計者)にとって、最も重要な重要な基礎知識、音の反射と指向角についてまとめました。

第3巻 多目的ホール での諸悪の根源"過大なエコー "

近年のカラオケ世代に警鐘!

「ワンワン」エコー渦巻くホールは健常者・障碍者両者に健康被害を及ぼします!

第4巻 "定在波"と"音響障害"の目次

第5巻 残響、残凶?大便覧!

仕組まれた"都市伝説"『音の良いホールの条件 残響時間2秒以上 信奉』を史実をもとに、仕組まれた経緯と脳科学・音響工学両面から一刀両断に!

第6巻 応用編 2題

"音響チャンバーバランス法?"と"音響シャーワー法?"聞きなれない手法ですが共に多目的ホール・コンサートホールの音響改善を図るには有効な手法です。

第7巻 現代の3大迷発明!?

残響調整装置、アダプタブルステージ、そして可変容積ホールのこと。別名「3大珍発明?」とも呼ばれており、設備業界を潤している?

第8巻 奇妙奇天烈 奇怪 面妖 摩訶不思議 な "迷ホール"

全国に3千ケ所以上あるといわれる「公共ホール」!このうちの半数以上が「奇妙奇天烈・奇怪・面妖・摩訶不思議」なホール達となっています!

付属書(1) 音の良いホールの"条件"と"評価法"

優れたホールの条件とは、真近で聞こえた「生楽器の音色」がホール隅々まで「変化しないで行き渡り」、どこで聞いてもスタインウェイはスタインウェイ、ベーゼンドルファーはベーゼンドルファーの音色が聞こえて来なければならないのではないでしょうか...

付属書(2) 新 音響測定法 について

"RT60残響測定法"(※1)はあくまでも"残響時間測定の一手法"であって、ホール音響特性の全てを表すものではありません!そこで新たなる音響測定・評価法を検討してみました。

第1章  standing wave(定在波)は音波とは異なる物理現象!

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standing wave(定在波)は平行した壁面間で繰り返される「初期反響(エコー)」のうち、壁面同しの間口・奥行き・天井高さに相当する特定の周波数成分が引き起こす複合現象で、通り過ぎていく音波ではありません!

※有名な現象では、タイヤの振動が引き金となる「スタンディングウェーブ」が有名です。


「音圧変調停留域」であり、別の見方をすればBad modification(改悪)!を行う「音響改悪ゾーン!」です!

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standing_wave.jpg

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第1節 "定在波"は"音波"と別物!

人が耳にしている音波は"周期"を持った空気(気体)の圧力変動現象です!

通常の音波は伝播する媒体の持つ固有の物理定数"弾性率"と"密度"の関係で表される"音速"で伝播していきますが...

(※第2巻 音響工学の基礎知識(音の反射と指向角 )を参照ください)

定在波は、同じ位置(閉鎖された空間)にとどまって圧力変動(振動)を続ける「停留圧力(音圧)振動」です。

つまり、「通りすぎていく音」ではなくて、いつまでも振動続ける音圧変化なのです!

これが他の音響現象と異なる点で、勘違いして簡単に考えると、手痛いしっぺ返し(音響傷害?!)を引き起こしてしまいます!

なので、"節目"に当たるゼロクロスポイントでは「全ての音」が瞬間的に消失します!

また振幅(音圧)増幅効果もあり、耐えられない大音響も誘発します!

さらに困ったことにこれらのポイントは両壁面間を周期的に彷徨(さまよ)い続けます!

定時波が停留(居座って)しているエリアは

定時波が生じて(居座って)いるゾーンは「Amplitude modulator (振幅変調装置)」として作用しています!

(音量)と音色(周波数スペクトル)のBad modification(改悪)!を行っているソーンです。

つまり"なに(残響)をさておいても"万全を尽くして定在波の発生を阻止しなければなりません!

エコールーム(※00)でさえ徹底的に(並行対抗面を無くす)対策を行い、定在波による音質劣化(周波スペクトル(音色)の変化)に対する配慮がされています。

ホールで定在波の発生を容認?する壁面デザインを施した場合には「谷間を作って」高さ方向で避ける以外は逃げ場はありません!

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valley_effect.jpg

参※00)エコーチャンバーについてのWikipediaの関連項目は こちら。

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第2節 平行する壁面間で起こる初期反響(エコー)が原因

完全平行する鏡の間に立った時に両側面の鏡には自分の虚像がほゞ無限に続くわけですが、これと同じように、完全に平行した「大きな壁面間」では「エコー(山彦)」が生じて、光同様に拡散による減衰で(聞こえ)無くなる程度まで「初期反射」(※10)が繰り返されます

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echo_sound.jpg

この時に入射する直接音と初期反射波は互いに打ち消しあい壁表面では常に音圧が"0"となる「ゼロクロスポイント」が生じています。

(※詳しくは第2巻 音響工学の基礎知識 音響インピーダンスと反射波の位相 をご参照ください。)

こうして、この「導波エリア;ミステリーゾーン」では両壁間を反復する音「エコー」が続く限り、見かけ(聴感)上 "留まっているように見える,進行しない「音速0m/sの音圧変動波!」"が生じて波形(音色)を変化させてしまうわけです、これが定在波の正体です!

参※10)第5巻 「エコー」と「後期残響」は別物参照。

参※11)片耳を壁面に耳近ず僅かに(数mm)離してみれば音が極端に小さくなっていることを実感できます。更に護岸工事された公園の池の畔やプールなどで水打ち際では「さざ波」が消える事でも確認できます。

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第3節 定在波には"倍音列成分"も含まれている!

両壁面で"音圧0"のゼロクロスポイント(節目)ができる定常波の周波数成分には、

"両壁表面の節目"を結ぶ半波長!真ん中に「節目」のある1波長、2つの(節目)のある1.5波長、同じく3つの節目を持つ2波長、4つの節目の2.5波長、5つの節目の3波長...等いくつもの定在波が合成された定在波が生じます。

両壁間が20mであったと仮定した場合の節目の数と定常波成分の関係

※気温28℃、1気圧1013hPaの場合

  • ※節目2つの1波長定在波;波長;λ=40m 周波数f≒8.7Hz
  • ●節目3つの1波長定在波;波長;λ=20m 周波数f≒17.4Hz
  • ●節目4つの1.5波長定在波;波長;λ≒13.3m 周波数f≒26.1Hz
  • ●節目5つの2波長定在波;波長;λ=10m 周波数f≒34.8Hz
  • ●節目6つの2.5波長定在波;波長;λ≒8m 周波数f≒43.6Hz
  • ●節目7つの3波長定在波;波長;λ=5m 周波数f≒52.3Hz

この場合0.5波長、1波長の定常波は可聴音域(20~20KHz)外に追い出され低周波振動成分ですが...

※クリックすると階大画像が見られます。

standing_wave.jpg

Wikipediaの動画では(音響学会(音響設計事務所)の意向で?)2波長の正弦波(サインウェーブ)で説明されていますが...

実際には"同時多発テロ?"のように、両壁面が"節"となる周波数成分が生じているわけでこれら全てが累乗された上図のように複雑な波形になります!

更に困ったことに...

さらに前途したように伝播しない「音速0m/s」の停留現象なので壁面間にとどまって、音圧(音量)を変化させる音圧変調(搬送波)要素なので音圧(音量)、波形(周波数スペクトル;音色)を変化させてしまうことになります!

但し、高周波数成分は後述する壁面意匠に留意すれば"散乱・拡散"減衰させることもできて"2波長以上の"周波数成分"は生じない(難い)と考えても差し支えはありません。

上図は、"2波長の定在波の腹"の部分が"最大振幅"となる時間での定在波の"音圧分布図"であり、"時間変化と共に複雑な波形"となり、壁面間のエコーが無くなるまでその場に居座り続けます!

つまり後述する定在波の節「ミステリーピット(落とし穴)」と「定在波の腹」「amplify area(増幅域)」は常に「導波エリア;ミステリーゾーン」を「さまよい続け」ていて、

為にミステリーゾーンでは「周波数特性が著しく乱れ」て「各楽器の音色」が変化して、左右に移動(振動)するミステリーピットの為に「楽音消失」等のとんでもない定在波音凶傷害!が生じるわけです。

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第2章 定在波音響障害『ミステリーゾーン』とは

『ミステリーゾーン』とは定在波が生じている"音圧変調ゾーン停留域)"の事で、過大な初期反響(エコー)の音響障害(※21)同様に深刻な音響障害を引き起こします!

音圧変調ゾーン(停留域)では「特定周波数の音が消失したり」「幽霊楽器」が聞こえたりする現象「ミステリーゾーン現象」が現れます!

つまり楽音をBad modification(改悪)!する「Amplitude modulator (振幅変調装置)」ともいえます。

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standing_wave.jpg

参※21)当サイト関連記事 『第1章 ホールでの過大なエコー(初期反射)による音響障害 はこちら。

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第1節 音響障害域『ミステリーゾーン』の正体

ホールは前後左右上下が遮蔽物で閉鎖された空間なので各壁面間では定在波が生じて以下の現象が現れます。

第1項 ミステリーピット(音響落とし穴)

定在波(定常波)が生じると、節に当たる「壁面」と壁面間で移動する「定在波の節」が現れてミステリーピット(音響落とし穴)となります。

ミステリーピットとは居座っている音圧変調波「定在波の節目」に当たる部分で完全並行壁面の両側壁面とその間で発生する音圧ゼロクロスポイント(節目)で壁面同様にある瞬間全ての音が消失する重大音響傷害!落とし穴です。

第2項 amplify area(増幅域)

同じく壁面から離れると定在波の腹に相当する関係で音圧(音量)が増幅されるアンプリファイエリアとなります。

ミステリーピットに対して「定在波の腹」に当たるamplify areaでは、半波長の搬送波の影響で(約2倍以上の)飛び上がるほどの大振幅(大音量)と音圧が"0"の間を変動します!

図は2波長の定在波の最大振幅時の様子で、(ミリ秒単位の)時間変化と共に変化して、左右壁間をさまようので、ミステリーゾーン全域が"音響傷害エリア!"となり後述するような通路配置だけでは回避できません!

更に"低周波"定在波が生じているゾーン全体では、音量(音圧)が、常に変化して、結果としてミステリーゾーンでは周波数特性に「うねり(山(peak)や谷(trough)」)が生じて楽器の音色が変化して、幻聴ではなくて「幽霊楽器」が聞こえたり、最悪の場合「特定の楽器が消失!」(※221)する現象が発生します!

参※221)指揮者 井上道義氏の体験談はこちら

第3項 通路配置だけでは回避できない"激しくさまよう"音凶傷害落とし穴!"

可聴帯域外20Hz以下では 周期50msec(ミリ秒)以上の音圧変動が生じるので、

"トライアングル"の"ビビり"や"ピアノ音の濁り"などの音響障害(フラッター)が生じるわけです、これは波形のトランジェント(忠実度)が悪くなる為です。

人の可聴帯域は概ね健常者で「20Hz~20kHz」とされていますが、

20Khz の周期は0.05msec(ミリ秒)であり、周期50msec(ミリ秒)以上の周期で「音圧が周期変動」すると「ビビり音」(フラッター)と感じしまうわけです。

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第2節 ミステリーゾーンで生じる最悪の音響障害・低周波振動健康被害!

折角「至高のひと時」を求めてコンサートにやってきたのに、健康被害では...

過大な初期反響(エコー)による健康被害"ホール酔い"(※221)よりむしろ、定在波による「低周波振動傷害」重大な健康被害!をもたらします!

前途したように、定在波は「並行した壁面間」を反復する"エコー"が原因なので、壁面間に相当した"半波長"とその倍音列に相当した「定在波音響障害」が発生するのでホール幅間口が広い大型ホールほど波長・周期共に長くなり、"超低周波振動"が生じやすくなり、長時間にわたる聴取により低周波振動傷害!を引き起こします!

参※221)第3巻 第2章 過剰なエコーが引き起こす音響障害「恐怖感」と「ホール酔い」参照

第3節『ミステリーゾーン』で起きる音響現象

第1項 楽音の消失!

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側壁表面では、反射の法則(※220)の為に「ゼロクロスポイント」が生じます。

すなわちこのポイントでは全ての音の音圧が"0"になってしまいます!

つまり"全く無音の状態"になるわけです!(ノイズキャンセリングヘッドフォンと同じ原理!)

更にミステリーゾーンをさまよう0クロスポイント(ミステリーピット)はもちろん「定在波そのものの振幅が"0"」すなわち無音状態となる瞬間が1/10秒単位の周期で、繰り返されて、前途したトライアングルや、ピアノのような衝撃音の音圧が変動して不愉快なビビり音となりるわけです!

更に最悪の場合前途したように、ミステリゾーン(定在波エリア)ではある周期で「音が消失して」結果として長時間この環境にさらされると「不快感」を誘発します!

参※220)第3巻 音響工学の基礎編をご参照ください。

第2項 幽霊楽器が現れる現象

定在波の悪影響はミステリーピットだけではなく、定在波が居座っているゾーン内すべての部分で生し"ているので、場所によっては「幽霊楽器」が現れたりもします!

これは、「定在波の腹」に当たる部分で、音圧が増加されて、前項同様に周波数特性に乱れ(山(peak)や谷(trough)などのうねり)が生じて、結果的に「楽器固有の音色」が変化して「別の楽器」に聞こえたり、ありもしない「幽霊楽器」が現れたりもするわけです。

第3項 これらは...

人間は経験(記憶)に基づいて実際に聞こえてきた音を、脳内に作られている「楽器の周波数スペクルマップ」と照合して、楽器の音色を特定しているために、リスニングエリア内で周波数特性に乱れが生じると、「他の楽器に化けたり」その場にいないはずの「幽霊楽器」を認識してしまうためです。

ゴースト楽器の実例

草津音楽の森国際コンサートホール(※ホール音響Naviはこちら)で、弦楽四重奏のはずなのにホルンの音が聞こえてくる「ゴーストホルン」は有名です。

見落とされがちな低周波定在波による健康被害!

例えば間口20mでは、

  • 気温20度、気圧1気圧(760mmHg)の時 音速:348.6m
  • 半波長の定在波周波数成分 周波数8.7Hz 周期 約115msec (ミリ秒)

という低周波振動(音圧変動:フラッター)が生じて、重大な健康被害を生じさせます!

第3章 定在波の発生(停留)過程

定在波による音響障害を考える上では「トリガー」対策と発生後の「停留時間」抑制の2段階で考えることが大事です!

第1節 定在波の卵はどうやって"孵化"するか?

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第1項 楽音(楽器)の持つ無指向性と壁面での反射波"指向角"の問題

「第2巻 音響工学の基礎知識(音の反射と指向角 )」で詳述した通り、音波には「指向角」というものがあり、スピーカーのような平面振動板の場合は真正面より横にそれるほど「音圧(音量)」は小さくなりますが...

壁面のような reflector(反射面)では"振動板"と同じ働きをします。

つまり、壁面までは球面波として伝わった音波も、壁面からは"指向角"を持つようになるわけです!

つまり中心音圧よりサイドローブに向かって音圧が低下するわけです!

『肉声』も含め殆ど楽音は点音源に近く殆ど無指向性で真横にも伝わる!

歌声も含めて楽音(楽器音)はすべからく「点音源」に近くしたがってほぼ無指向性の"球面波"として前後左右・上下に広がってゆきます。

逆に言うと、下図左のように「かぶりき」の両側壁が完全に平行していれば、定在波が発生することにもなります!

つまり上図左のような長型(シューボックス)ホールでは、バスドラムのような重低音周波数成分を持つ低音楽器では、側壁で反射する"エコー"(初期反響)の主音圧は反射の法則(※311)で入射角と同じ角度で反射しますが、可成りの音圧は対抗面に向かいホールを横切る事になります!

完全に平行していないはずの「V字谷でも山彦(エコー)が聞こえる」のはこのためです。

つまり完全並行した壁面間では"エコーが干渉して「定在波」が生じる"わけです。

しかし、前途したように、反射波(エコー)は反射面サイズに応じた"指向角"(※312)を持つために、スラント(傾斜)またはハノ字に開いて対抗面と並行しないようにすると、対抗面への音圧は抑制できます!

プロセニアムから続くステージ被り付き側壁が「ハノ字」に開いている訳

点音源に近いバスドラムやコントラバス、ピアノなどから客席に放射された音波がステージ直前の平行した壁間で定在波を生じさせることがままあり、プロセニアムに続くステージの「被り付きエリア」は「ハノ字に開いた大きな広い面」でデザイン(設計)される理由です。

従来型の扇形ホールのように平土間「かぶりりつき」部分側壁は、ホリゾント反響板から「17.3m(※★)」以上はハノ字側壁として定在波の孵化を阻止すべきです。

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一部のホールでは何を"血迷った"のか、本来ハノ字形状で広がっているはずの"かぶり付き部分"の壁面を態々平行させてしまっていたり、更には客席最後部の数列をこれもまた完全平行壁面で囲ってしまっているような暴挙?も行われたりしています...

おそらくデザイナーはステージから到達する直接音は、壁面に可成りの入射角で到達するので、対抗面には反射せずにしたがって対抗面からも音は届かず、「定在波」は生じない?と勘違いされているのでしょうが...

どっこい天井やホール途中壁面からの直接音と全く相似波形の「ディレー音」であるエコー「初期反響」音が壁面に垂直に近い角度で入射するために、ホール後部でもやはり「定在波」は発生しています!

ご理解いただけましたN田音響設計のモデラーさん?

参※★)当サイト関連記事 第2節 狙った方向に反射させるにははこちら。

参※31)当サイト関連記事 第3節 入射角=反射角の法則

参※32)当サイト関連記事 第2章 指向性(指向角)と音の広がりはこちら。

第2項 ラウドネス等価による問題

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Lindosland - http://en.wikipedia.org/wiki/Image: Lindos1.svg より引用

人の聴覚にはラウドネス特性(※33)というものがあり、音声帯域(※34)のほぼ中心1kHzを中心にその前後では急激に聴覚(感度)が衰えます!

特に低周波振動に近い"重低音"では、通常人の耐えられる騒音レベル限度100dB(※35)でさえー30dB(約1/30)感度が悪くなっています!聞き取れる限界の0㏈の時には1kHzに対して-80㏈(1万分の1!)迄聴覚が衰えます!

それで、音楽では、っ見かけ上(聴感上)フラットに聞こえるように、コントラバスなどの低音楽器やバスドラムなどの「鳴り物」は騒音ともいえるほどの大音響を発するわけです!

つまり、ピアニッシモ(20dB程度)の時には、光同様に拡散により壁面間距離の2乗で急激に減衰して、左右の壁面間で"反射を繰り返すエコー"つまり定在波には至らない訳ですが...

ピーク値130dBつまりピアニッシモから110dB(3万倍!)以上もの大音響が鳴り響くと、簡単に左右の壁面間で反射を繰り返して"定在波"となってしまいます!

(お判りいただけましたかN田音響設計の残教信者モデラー?の皆さん)

参※33)ラウドネス特性に関する国立研究開発法人産業技術総合研究所の公開ページはこちら。

※34)、音声周波数帯域とも言われ楽器や肉声の基音となる300~3400Hzの低・中音域を指します。ちなみに電波法のAM放送の公称伝送帯域は100 Hz~7,500 Hzです(実際には50Hz程度から12kHz程度は伝送できています。)関連記事「音の良いフルレンジスピーカー列伝」はこちら。

参※35) デシベルをわかりやすく紹介したサイト はこちら

騒音計がフォンからデシベル表示になった理由

その昔の"騒音計"は、このラウドネス効果を勘案してAスケール、Bスケールという補正感度(フィルタリング)を行いフォン(phon)という単位で計測していましたが...

近年、可聴帯域(20~20kHz)外の「聴覚では感じられない低周波振動」等の重低音域での"健康被害"がクローズアップされてこのフィルタリング表示単位「フォン」が無くなりました

音楽ではワンポイントとして必要な重低音

音楽(楽器)では、オルガン・ピアノ・低弦・バスドラムに代表されるように"重低音"が重要なファクターを占めており(※36)、特にフォルテッシモでは前途した"聞こえずらい低音域"がさらに"大音響"となりやすい傾向にあります!

つまり"重低音域"(概ね真ん中のA音(Ra)440Hzの2オクターブ下の領域100hz以下)の定在波は"定在波音凶傷害"の真犯人といっても過言ではありません!

低周波音圧変動(低周波振動)に長時間さらされると、"健康被害(めまい、吐き気、強い不安感など)が生じることが確認されています(国立研究開発法人産業技術総合研究所の公開資料の最後の部分に「低周波振動」によって引き起こされる健康被害についての記述があります。

これに限らず、ホールを使った「低周波振動健康障害」に関する"人体実験?"は数多く行われており、長時間(30分以上)可聴音域外の重低音にさらされると、大きい割合で「眩暈、吐き気、強い不安感」を感ずる人が生じることが確認されています!

参※36)当サイト関連記事 ギタリストは知っている「重低音」の重要性!...オン・マイクの効果とは?はこちら。

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第2節 定常(停留)する条件とは

一方定在波となって孵化?してからは、その停留時間が問題となります!

この問題に対しては、壁材の「音響インピーダンス」と「反射面のサイズ」が大きく影響してきます!

第1項 「音響インピーダンスと反射音圧」

詳しくは第2巻 音響工学の基礎知識(音の反射と指向角 ) 第1項 音響インピーダンスと音圧反射率を参照いただくとして...

簡単に言っていまえば石材のような「硬くて・思い壁材」強烈に反響して!

紙でできた襖・障子・からは殆ど反射しません!

つまり日本家屋では通常では定在波は"障子(しょうじ)?"ずらいわけです!

第2項 壁面のスラント(傾斜)設置と効果的なスラント角度は

基本的に並行する対抗面の多い「シューボックスホール」の場合は、壁面を外反(外傾)or内傾させて、対抗壁面との平行をキャンセルします。

対抗する完全並行面を防ぐもっとも簡単で確実な方法は「内壁のスラント(傾斜)設置」であり、内傾でも外傾(上反)スラント設置どちらでも効果は同じです。

波長に対して十分に幅広い壁面で反射する場合

可聴音域最低周波数を20Hzとした場合、波長λは17.4m、つまり約9m幅以上の壁面があれば完全に反射してくれますが...

9m幅の壁面では「第3巻音響工学の基礎知識1 指向角と音の反射」で詳述した通り 近距離音場限界距離Xo≒ 58㎜なので、壁面でほぼ球面波となって反射音が対抗面に届くことになります。

30度のスラント角が与えられると

第2巻 音響工学の基礎知識第2章第2節で述べた通り35°以上!ものスラント設置(※★)が可能なら対抗面には至らず、可聴音域内の定在波周波数成分はほぼ完全に抑止・抑制できることとなりますが。

実際には対抗面に届く音圧が0でなくてもよいので、ー6㏈に当たる半減指向角の近似式が;半減指向角θ(-6㏈)=55°xλ/Dなので、相対角度で30度(スラント角度15°)を付ければ音声帯域内の音の拡散には効果があります!

参※★)当サイト関連記事 『神戸女学院小ホール』音響Naviはこちら。

第3項 壁面パネルのaspect ratioと反射面サイズの関係

1/2波長(※37)のサイズの反射面が反射する音圧はそのエリアに入射した音圧(音量)が前途した音圧反射率に応じて反射します!

また、微弱ですが1/20λ程度のサイズからでも中心音圧のー80dB(1万分の1)程度の反射はあります!

詳しくは 第2巻 音響工学の基礎知識 壁面パネルのaspect ratioと反射面サイズの関係を参照。

第3節 「壁面間隔20m超」の伝承手法の誤り!について

第1項 「壁面間隔20m超」の伝承手法とは...

大型の芝居小屋や、ホールで用いられる代表的な手法の一つで、

近代建築音響学の父故・佐藤武夫先生が確立した?手法で、先生作の「大隈講堂(※ホールNaviはこちら)」や近代コンサート専用ホールの先駆け「神奈川県立音楽堂(※ホールNaviはこちら)」でも用いられている伝承手法の一つですが...、

「対抗面間の距離」で1波長定在波の周波数成分を可聴帯域外(20Hz以下の低周波振動)に逃がして音響障害を躱そうというアイデアですが...

概ね18mよりホール幅が広ければ

つまり概ね18mよりホール幅が広ければ1波長の周波数成分を可聴周波数帯域から追い出せて前章の直接被害軽減に通じるはずなのですが...

周波数f=音速V/波長λ であるから、fに最低周波数20Hzを代入すると 

C;m/sec  気温;t℃とすると/1013㍱

音速の近似式 V=331.5+0.61t

f;(周波数Hz)とすると

又 波長λは λ=C/f

一般的に言われている340mは14℃ に相当し 可聴限界20Hzとするとこの時の波長;λ=17m

同じく

  • 20℃で 約344m/sec 波長λ≒17.2m
  • 20℃で 約344m/sec 波長λ≒17.2m
  • 28℃で 約349m/sec 波長λ≒17.4m(定在波の波長;λ=20mの時の周波数f=約17.5Hz) 
  • 30℃で 約350m/sec 波長λ≒17.5m
  • 32℃で 約351m/sec 波長λ≒17.6m

実際には効果がありません!

※クリックすると階大画像が見られます。

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実際には前途したように音圧変調ゾーン(停留域)で生じるミステリーピットアンプリチュードエリアは、ある周期で変動(移動)していますので、この手法では次項にとり上げる、通路配置同様に効果はありません!

実際には前途したよう、壁面がゼロクロスとなる周波数成分は0.5波長以外にも1波長1.5波長、2波長、2.5波長、3波長などの高次倍音周波数成分も存在するので、これらの周波数成分が合成された定常波(音圧変動ゾーン)の節(ミステリーピット)と腹(音圧増幅ゾーン)は時々刻々壁面間をさまよい、この間に到達する楽音を変化させてしまいます!

むしろ前途した半波長の低周波振動を誘発していまい、健康被害を生じさせる恐れがあります!

並行壁面の間では定在波音凶傷害?を引き起こす「定在波」は生じているので間口8.7m以上の中大型ホールでは壁面をスラント設置させて「並行面をキャンセル」しないと健康被害は防げません!

大熊講堂(※001)の場合でも、大部分の壁面は釣鐘の断面形状のように極力並行させないように工夫されていますからそちらの効果のほうが大きいわけです!

  • 定在波周波数成分は約8.71Hz/0.5λ、約17.4HzHz/1λ、 約26.15Hz/1.5λ、 約34.86Hz/2λ、 約43.58Hz/2.5λ、 約52.3Hz/3λ、

第2項 中小規模ホールに成功例が多い理由とは...

健康被害の観点からは、間口が狭い小ホール・音楽サロンが有利。

『健康被害を避けるための間口8.7m!以下のセオリー』

可聴帯域外の低周波振動成分を避けるには間口を8.7m以下に設定することが良作の一つです。

つまり気温20度、気圧1気圧(760mmHg)の時 音速:348.6m/sec なので

可聴帯域ぎりぎりの20㎐では定在波の条件に当てはまる半波長は8.7mとなります。

つまり、これ以下の低周波成分は生じません!

和風に言うと間口4.8間巾という事になります。

つまり、小規模の"プレミアム音楽サロン"や音楽練習室、そして伝統的芝居小屋(※532)がこれに当てはまります!

第1目 間口17m以下のホール!の心地よさの秘密とは...

波長が最長17mにも及ぶ20Hz~100Hzの重低音では、前途した理由で「壁面スラント」を併用しなければ、低域周波数成分を持つ定在波の阻止・駆逐はできません!

つまり、間口17m以下ならば、1波長の定在波成分は20Hz以上で、半波長の基本定在波周波数でも10Hzとなり、よほどのことがない限りは定在波による健康障害(※221)の恐れは無くなるわけです!

更に、反射限界の半波長に当たる8.5m高さの壁面高さが確保できれば、幅が1/5の1間巾(約1.80㎝)の定尺パネルでも、スラントとアンギュレーションを組み合わせて30度の(15°の開き角)以上の相対角を設定すれば、355㎐以上の可聴帯域定在波成分の"対抗壁間エコー"は効果的に、壁面高さに応じた355Hz以下41Hz以上の低周波成分も散乱効果で抑制できて、健康を害する10Hzのて低周波成分も抑制することができます!

つまりストレスの無い「心地よい音響空間」を創出しやすくなります!

全国の小規模ホールが比較的音が良いのはこのためです!

これが名古屋の"三井住友海上しらかわホール "(※533)が間口16.5mを主張する真の理由でもあるわけです!

三井住友海上しらかわホール では元となる音速を一般的に言われている340m/secで計算しているために340㎧÷20Hz=17m から余裕をみて16.5m幅としたのでしょう!

『保険会社だけあって健康被害にまで神経を使っているとはさすが!...』と言いたいところですが...

残念ながら、このホールでは壁面処理がまずく評判の割には"ダメホール"で"自画自賛の「美味しく無いラーメン屋」(※534)"と似たり寄ったりでしょう。

このホールでは、西欧の名サロンのサイズはまねていますが、肝心の「定在波対策」も「定在波回避」もなされていません!

これでは、「音圧(音量)と音色(周波数スペクトル)のBad modification(改悪)!「Amplitude modulator (振幅変調装置)」そのもので、観客はたまったものではありません!

但し ジャスト17m間口サイズの「掛け値なしに素晴らしいホール」(※535)もあります!

参※533)当サイト関連記事 三井住友海上しらかわホール 《 ホール 音響 ナビ 》はこちら。

参※535)当サイト関連記事 自画自賛の『 コンサートホールとラーメン屋 』の共通点!?《 コラム 令和元年 》はこちら。

参※535)当サイト関連記事 岡崎市 岡崎市シビックセンター コロネット 《 ホール 音響 ナビ 》 間口 17m 収容人員421名 満点ホール はこちら。

その他の間口17m以下の小型ホールの成功例は...
個人宅のリスニングルームでは

個人宅のリスニングルームでは最大でも20畳(2.5間x4間)程度つまり4.5mX7.2m程度なので、"健康被害が生じる20Hz以下の可聴帯域外低周波振動が生じる心配はありませんが...

つまり、前途したように「 健康被害の観点からは、間口が狭い小ホールのほうが(間口)波長に応じた壁面の必要有効反射面巾・高さが小さくてすみ、スラント設置などの対策も立てやすくなりるわけです。

参※532)当サイト関連記事 白雲座 《 伝統的芝居小屋 ナビ 》 岐阜県下呂市 はこちら。

第4節 意外と多い定在波のトリガー

可聴帯域(20~20khz)ぎりぎりの重低音を出す楽器というと、パイプオルガンのペダル音(足で弾く最低音域)を思い浮かべる人が多いと思いますが...

パイプオルガンだけではなく意外と身近な楽器でも「重低音」はふんだんに出ています!

第1項 重低音を鳴り響かせている楽器

例えばフルコンサートピアノの最低音は「A」すなわち「ラ」の音で、チューニングに使う真ん中のA=440Hzの4オクターブ下つまり2の4乗分の1で可聴音ぎりぎりの約27.5Hzとなり実際にはもう少し低めに調律されているのでほぼ可聴音域ギリギリの25Hz近辺となっています。

更にこれは「芯の音」で2次4次の倍音列の音はもちろん、更に下の25Hz以下の可聴音域帯域より低い12.5Hzなどの多くの"側波帯"も含まれています。

コントラバスも同様に20Hz近傍の重低音を鳴らし、和楽器の大太鼓、バスドラムやティンパニーなどの太鼓類、などは可聴帯域(20~20KHz)外の超低周波振動も含めて広い周波数帯域(スペクトル)を占めており重低音(低周波振動)が豊富?に鳴り響いて(含まれて)います。

つまりコンサートでは可聴音限界前後の重低音が始終鳴り響いていてしかも前途したように高レベルなので、「定在波のトリガー(引金)」はいくらでもある事になります。

第4章 ホールデザインの基本"定在波の抑止" 法

芸術ホールから定在波音響障害を駆逐する最も簡単な方法は"壁面を無くす!"ことです。

つまりは各地にある「野音」が優れた施設の一つともいえます!(詳細後述)

通常の四方を床・壁・天井に囲まれたクローズド・ホールデザインにおいては壁面処理による初期反響の低減による定在波への配慮は基本中の基本であり、これを疎かにしては良いホールは生まれません!

第1節 周囲の壁を(見かけ上)排除する?

一つは、定在波のトリガーとなる壁面からの「直接反響(エコー)」を緩和して、見かけ上(聴感上)壁面をなくす!ことです。

デパートの催事場やコンベンションセンター(展示場)などの広大なスペースに"イベントブース"を設営する際の間仕切り(パーティション)にはフラットパネルを用いるよりは、後述するように「縦格子」やルーバー(鎧戸)を用いたほうが音響効果(遮音性)は高まります!

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第2節 ホール内壁から「対抗する並行面」は完全に無す!

反射の法則を利用して壁面どうし対抗させないのが最も効果的!

以下に示す手法で対抗する並行面をなくせば定在波は生じません!

しかも、壁面全面をスラントさせる必要はなく、オーディエンスの聴取位置、つまりはおおむね床面から人の背丈(約1.8m)ほどの範囲内が平行していなければオーディエンスである貴方に被害は及びません!

セオリーその1;扇型か台形(ハの字)平面形状とする

※間口20以上の第・中規模ホールでは完全平行する対抗壁面は御法度!

セオリーその2;垂直壁面は用いない!※壁面はスラント設置

セオリーその3;平土間と平天井の組み合わせは禁止!※平土間部の天井はスラント&大きなうねりの波状天井とする。

特にホール・幅・奥行き・天井高さすべてに余裕のない「小規模ホール」では「必須のセオリー」。

  • 平行な対抗面(壁どおし)、床と天井、ステージ背面反響板と客席後方壁、など対抗する面は平行させない!
  • あらゆる対抗面壁面・天井・床には(15°前後の)僅かな「スラント角」「スロープ角」を与え並行面を無くす。

第1項 扇形(台形)のフロアー形状にして並行面をなくす

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前途したように扇形ホールと呼ばれている一般的なプロセニアム形式(※31)の「多目的ホール」では、ステージ(反響板)ととそれに続くステージ(※32)被り付き部分の客席側壁部分は「ハノ字」に開いた台形配置の平面形状となっています。

更にホール全体を僅かな開き角(or絞角)でホール後方に向かって広げたり(狭めたり)している丁寧な設えのホールや不当辺不当角多角形平面(※33)としてすべての壁面から対抗する平行面を駆逐したホールも数多くあります。

定在波は対抗する壁面(天井と床の関係含む)同士が完全に並行している場合に発生するので平行する対抗面を完全になくすのが定在波に対する最良の抑止・駆逐策です!

平行していない壁面で「並行面をキャンセル」、すれば定在波は生じないのでミステリーゾーンは現れません!

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第1目 サイドプロセニアムから続く脇花道背後壁面処理

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最近この部分でも、階段状に定尺パネルを並べる手法を良く見かけますが...

アスペクトレシオが脇花道側壁高さの1/10より大きく、間口の1/20以下のパネル巾つまり0.9m巾の定尺パネルであれば、パネル部分での定在波"孵化"の心配はあまりありません、但し基本開き角度が55度(片側22.5度)以上開いていることが前提となりますが...

プロセニアム間口が10間(18.m)だと仮定すると

このパネルの反射限界1/2λに相当する周波数は約193.7Hz、対して間口方向の定在波波は9.7Hz/0.5λなので、階段状に広がって「かぶりつき部分」での間口方向定在波は生じません!

アスペクトレシオが脇花道側壁高さの1/10より大きく、間口の1/20以下のパネル巾であることは必須条件となります!

第2項「H(高さ)方向定在波の音響障害」抑止策

トラディッショナルデザインの飾り立てた欧風の「シューボックスホール」で意外と見落とされがちなのが、天井の格天井やヴォールトにデザインに拘る(惚れこむ?)あまり、ステージと被り付きの平土間部分の上空・天井まで水平にデザインされている場合を多く見受けますが...(※例4)。

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前節で述べた通り当然天井高さに応じた波長の周波数成分を含む定常波が居座るわけで、聴取(耳)位置が定在波のゼロクロスポイントである床面から約1m浮かんでいるので、「問題なし?」としてかたずけられている場合が多いようですが...

前途したように高さ方向も間口方向同様に「ゼロクロス(節目:ミステリーピット)とアンプリファイ・エリア」が上下変動するので、"楽音消失"や"幽霊楽器"が生じてしまいます!

第1目 天井は床面とは平行させない

完全平土間部分での高さ方向定在波の抑止・駆逐法について

平土間、平天井の組み合わせはご法度!

天井高さをあまり確保できない小規模ホールでは平天井・平土間の組み合わせは絶対に避けなければなりません!

最近の「広土間とロールバック客席収納システム(※41)」を組み合わせた多目的平土間多目的スペース等では、(片流れ、山形両流れ等の)「天井のスラント設置」は必須となります。

ステージ(反響板)から続く天井は滑らかに客席に向かって広げ、ステージと被り付き平土間部分の上空はプロセニアム形式ではコーナー反響板、オープンステージホールでは天井本体のスラントで平土間部分との平行をキャンセルする必要があります!

これまで述べた理由で、小さな凹凸(窪み)や段差を持たせた天井形状では、定在波を完全には駆逐できません!

参※41)ロールバック方式客席収納システム についてのシートメーカーの解説はこちら。

※例4、石川県立音楽堂 《 ホール 音響 ナビはこちら 》の悪例

第2目 プロセニアム前縁反響板の設置

平土間部分の天井はスラントさせて、かつステージ上は「可変角反響板」などを設置する必要があります。

プロセニアム型のホールでは、55°以上の上反角度でプロセニアム前縁反響板を設置して、平土間部分を守る必要があります。

但し後述するように0.9m巾の定尺パネルなら、可変プロセニアムタイプで約11m以上あるプロセニアム高さの1/10以下なので、階段状に"折り上げ"ても致命的な障害は発生しません!

但し"洞窟音"の原因となるステージ反響板との急激な断面積変化は避けなければなりません!

好例

東京藝術大学 奏楽堂 《 ホール 音響 ナビ 》

"鳴き竜"は高さで鳴き方が変化する

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後述する近代建築音響学の父故・佐藤武夫先生が研究論文をまとめられた「上下方向定在波」の典型例"鳴き竜"も定在波のなせる業ですが、実は座った状態と、立った状態とでは、鳴き方が違います!

いずれにせよ、周期的な音圧振動をするわけですが、高さ方向に「音圧変調に」よる周波数特性(スペクトル)の変動があるわけです!

定在波はエコー(初期反射)が引き金となるわけですが、エコーは前途したように、反射するたびに、縫入射してる音波とは逆位相となり「キャンセリング効果」が生じるわけです!

なので、鳴き竜は泣き続けない!わけです。

だから、距離による拡散減衰以上に急激に減衰するわけです!

手拍子ではなく、ハイレゾ録音機材でピンクノイズのバースト波を用いて、スペクトル分析(※421)を行えば、更に面白い事実が解明されるでしょう。

参※421)当サイト関連記事 『建築音響工学総覧 』付属書 (2)新 音響測定法 の提案はこちら。

悪い例 あの"いずみホールも"...

いずみホール(ホール音響Navi)

彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール(ホール音響Navi)

サラマンカホール 《 ホール 音響 ナビ 》

第3項 奥行き(D)高さ(H)両方向に有効な客席スロープの活用

客席のスロープは、ホール前後軸・高さ方向定在波(並行面)対策として有効に働きます!

スロープ客席は小規模ホールで発生しやすいホール軸方向の定在波を阻止する有効な手段でもあり、完全に並行する「対抗壁面の対(つい)」を多く持つ小規模の「シューボックスホール」や正多角形を採用した「多角堂」では必須の手段でもあります。

天井と床面との「並行対抗面解消」はもちろん、ステージ背後の反響板とホール後方大向こう壁面との完全並行解消にも役立ちます。

第4項 背後壁面のコーナー面取り

扇形段床(ハノ字段床)座席アレンジを用いても、最後列大向こう席ではすべての客席が谷間のない同一断面(高度)に並ぶこととなり、最後列の全席が「ミステリーゾーン」に嵌ってしまいます!

従ってオーチャードホールの2・3階バルコニーでも実施されているように背後壁面と側壁との隅の「コーナー面取り(角を落とす)」か、この部分の側壁を「ハの字型」に絞り込み、両サイド壁の平行部分を無くしてこの部分で生じる間口横断定在波の発生を阻止しなければなりません!

第5項 オーディトリアム出入り口サウンドロックドア部に対する配慮

大概のホールでは、オーディトリアム(客席)と廊下の「音響ロック」扉部分は「間口方向で」完全並行しています!

扉サイズは縦1間(1.8m)で左右両開き1ユニットで、1連1間(1.8m□)か2連(横2間)となっています!

この場合は、アスペクトレシオが10以下なので、大きいほうのサイズが有効に働き、

1連1対(1間巾)両開き扉(1.8m□)では96.8Hzが反射下限周波数に、

2連2対(2間巾3.6mx1.8m)両開き扉では48.4Hzが反射下限周波数となります。

"細やかな配慮が出来る"デザイナーさんは側壁扉は脇花道側方のプロセニアム同様にハノ字・扇形配置してあります。

更に、扉の表装も人口レザー&吸音材で覆って「音圧反射率」(※33)を軽減する処置を講じています!

※但し後述する間口が4間(7.2m)以下の"プレミアム音楽サロン"ではずばりビンゴ!なので、2連2対の開き戸を設置するのは問題となります!

凸出扉の効用

以下の周波数成分は阻止できるので間口20mでも健康被害に通じる低周波周波数成分を持つ定在波は生じません!が...

更に通常多い奥まった凹面形状のサウンドロックフロア平面では"ウェーブガイド"の役目を果たして、より対抗面に対して"強い指向性"を持つ結果となり、両端も含めて節(ミステリーピット)が7つある3波長の周波数成分を持つ定在波が生じる可能性があります!

一部のホール(※34)で採用されている凸型設置の扉部分では、反射エコーが"拡散"して対抗面に到達する音圧は更に小さくなりますから通常高次高調波に当たる48.4Hz、や96.8Hzの周波数成分をもつ定在波の発生の確率は極めて少なくなります。

第6項 露出した柱・プロセニアムの影響は

さらに巾400㎜の十分な長さ(4m以上)を持つ柱面ならば、43,5Hz以上の音波も反射するわけですが、壁面プレートの垂直支持枠(柱・プロセニアム)に採用しても、間口20mならその差は50倍にもなるので、その部分特有の定在波の生じる懸念はありません

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第7項  最後部に"レゾネーター"を設ける手法

オリジナル大隈講堂(※11)の秘密・謎の「拡幅並行壁部分を最後部に設ける手法」がこれに当たります!

大隈講堂が、建設された当時は「吸音・遮音壁」の技術が開発されていなかったので、大向壁面からの3次反射による、ホール最深部での「定在波音響障害」(音色の変化)を防ぐ有効な手立てが無くせいぜい「分厚い音響カーテン」を半後壁前面に敷設するぐらいしか、対抗策が無かった時代です。

そこで、「東照宮の鳴き竜」研究で得た知識を生かして、前途した「コーナー面取り」の逆転発想でこの部分の「両側壁を拡幅して」わざと「レゾネーター」として共鳴させて、側壁からの1次反射波と背後壁からの1次・2次反射波の位相差による複雑な干渉による音響特性を抑制しようとされたのではないでしょうか?

事実、この手法はうまくいったと思われますが、残念ながら近年の"怪修"?工事で、大向立見席が廃止されて着座環境となったために意味を無くしてしまったようです!

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音波は、壁面で反射を繰り返す毎に、進行方向に向かっては位相変化しませんがホール後端などでUターンする波形は「見かけ上」進行してきた音波とは"逆相"の関係となるために打ち消し合ってしまいます!

更に最後端では、側壁からの「位相遅れ」の1次反射波の音波(いずれも全く相似形!)も重乗される(※11-1)ために、ステージ上から発せられた現波形(音色)からは「程遠い」トランジェント(忠実度)の悪い波形(音色)になってしまいます!

参※11)大隈講堂の適用例(ホール音響ナビ)はこちら。

参※11-1) 『第2節 定在波音響障害とよく似た釣鐘現象 参照。

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第3節 方形(シューボックス)ホールデザインに関する注意!

第1項 スラント設置のセオリー(垂直壁は禁物!)

前項で述べたように多くの一般的な多目的ホールでは前半部分は扇形ですが、中央、後半フロアー部分の平面形状は長形で左右側壁が平行しているデザインが殆どです。(※例1)

平行壁面部分がある長型ホールでは定在波の阻止・駆逐(完全平行キャンセル)には壁面のスラント設置以外の道はありません!

「垂直でプレーンな完全平行壁は厳禁」です!

※内壁は基本天井に向かって外反させろ

嘗て、1958年に初代フェスティバルホールが誕生して以来、1960年代の第1次公共ホール建設ブームの頃は初期反射;エコーが重視されていた時期でもあり埃対策のうえからも「ホール上部に向かってすぼめる構造」が良しとされた時期でもあった。
1980年代に入り、1982年に「ザ・シンフォニーホール」誕生に際し、諸外国の有名ホールの調査・データ収集が行われ、1/30模型によるスケールモデル音響実験が採用され、音響拡散・乱反射による後期反響の存在が唱えられるようになり、以後初期反射軽減と乱反射創出のため、天井に向かって拡がるスラント壁が広く用いられるようになっています。

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第5章 "定在波音響障害を回避"するフロアデザイン

定在波の居座りを許すと、「座席配列で谷間を作って滞留ゾーンを躱す」以外に道はありません!

特にシューボックスを代表とする対抗する平行壁面の多い「長形ホール」の場合には重要な回避策となります。

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第1節 扇状段床座席を用いたホール横断定在波の障害回避策

「シューボックスホール」でも、ギリシャの野外円形劇場のように「扇型のすり鉢状」に客席配置をすれば、客席聴取位置(頭・耳の高さ)での定在波は回避できます。

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客席を扇形の段床(又はハノ字段床)に配置すると、客席中央部にはすり鉢状の「谷間」が生じて(上図左下)着席状態の「耳元の高さ」は定在波発生層(上図左上)からは外れて定在波の影響を受なくなります。

但し、フロアー面から高さ1.8m程度以下の周囲の壁面は、前途した「壁面スラント」or「アンギュレーション壁」若しくは「吸音壁」を併用しないと、(両端の)両側壁際の客席が定在波障害(音圧変動障害) に見舞われます。

1998年開館不二羽島文化センター(※ホールNaviはこちら)での適用例

 1,290席/スカイホール&384席/みのぎくホール 両ホール共に、アンギュレーション壁と、扇形段床配列客席で定在波に対して「鉄壁」の備えをしています。

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第6章 "定在波音響障害"を緩和する手法

定在波の"滞在時間を短縮"し"高次定在波を抑制"して、""定在波音響傷害!を緩和"する手法について詳述します。

第1節 吸音壁で"初期反響エコー"を押さえて定在波を抑制する手法

ホール後端壁面処理によく用いられる手法でもあり、ホール後端の場合は前途した最後列での"釣鐘効果(※611)効果の抑制"には大きな効果がありますが、全長20m以上もの奥行きで生ずる20Hz以下の低周波振動成分にはあまり効果が期待できません!

参※611)当サイト関連記事 『第2節 定在波音響障害とよく似た釣鐘現象 はこちら。

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第1項 ホール後端部で良く用いられる縦格子で表装した吸音壁

吸音壁(消音材)を設けることは効果的ともいえますが!...

前途しましたように、壁面(からの反射音)を無くせば定在波の"卵"は無くなる!わけで...

壁面を縦格子などで表装して2重構造として、ロックウールなどの吸音材で"反射音圧を"低減させればある程度の抑制は可能ですが、反射音の周波数特性は吸音層の容積(厚み)や材質(音響特性)により均一ではありません!

特に、両側壁に用いた場合では間口に相当する0.5波長の基本定在波周波数成分となる波長の長い低周波(低音域)周波数成分の吸音効果はあまり期待できません!

例えば間口7間(12.6m)程度の長型小型ホールの側壁間では間口相当の0.5波長の周波数成分(,波長25.2m約13.8Hz)を持つ定在波が居座りますが、"吸音材を併用"してもこの長波長(25.2m)を完璧に抑制することは不可能でしょう!

この手法を用いる場合も、壁面のスラントと扇形段床の併用は不可欠です!

この手法だけで間口方向の定在波を抑止することは難しく、扇形段床と組み合わせて、定在波を回避する手法も併用する必要があります。

第1目 aspect ratioが10倍以上の細長い縦格子の(パーティション)ならば

例えば巾2インチ(50㎜)程度の角材ならば、狭いほうの反射面が有効となるために、1/2λ以下の音波はほぼ無視して通過してしまいます?

3.486KHz以上の音にしか絶対的な効果はありませんがホール幅に相当する波長の数倍程度の高次周波数成分は散乱抑制(初期エコー軽減)につながるわけで、

一方長辺が長いので幅の20倍に当たる波長の音波もごくわずかですが(入射音圧のー80dB約1万分の1!程度)反射します!

つまり、348.6m/sec÷0.05÷20≒348.6Hzの音も反射するわけです、

"吸音材"と併用して2重構造の吸音壁にすると、3.486KHz以下の低周波成分を持つ定在波の抑制も可能なはずですが...

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第2節 壁面のアンギュレーションで初期反響を拡散させて定在波を抑制する手法

屏風のように、折れ曲がった壁面を用いると対抗する並行面はある程度はキャンセルできます。

但し後述するように、「幅の狭いパネル」で構成されたアンギュレーション壁(屈曲壁面)では指向角のためにホール間口に相当する低周波成分には効果がなく、前項の「壁面全体のスラント」との併用は必須となります。

第1項 屈曲壁面でも壁面スラントと併用せよ

波長が最長17mにも及ぶ20Hz~100Hzの重低音では、1/2波長以下の細かな凹凸やアンギュレーションは無視され、壁全面が大きな"反射面"として働き「壁面スラント」を併用しなければ、低域周波数成分を持つ定在波の阻止・駆逐はできません!

※前途したように1.8m木質パネルの場合オーディトリウム内壁からそれぞれ15°以上開いて屈曲させればアンギュレーション壁面だけで波長;150Hz以上の倍音列を含む定在波の周波数成分抑止には効果がありますが...、健康被害の元ともなる150Hz以下の重低音域の抑止には壁面全体のスラント設置(ホール奥行き方向の平面的広がりと高さ方向の立体的傾き)を併用する必要があります。

※例3、壁面スラントと帷子で定在波に対して「鉄壁の構え」を施した例 いわきアリオス 《 ホール 音響 ナビはこちら 》

参※当サイト関連記事 『第2節 定在波音響障害とよく似た釣鐘現象 はこちら。

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第2項 幅1間(約1.81m)以上のフラットパネルの屈曲設置効果

1間巾の定尺木質パネルを屏風のように折れ曲がったアンギュレーション(屈曲)をもたせて表装する手法です。

幅1間(約1.8m)以上のフラットパネルを屏風に様に屈曲、ないしは「帷子(かたびら)」風に「重ね返した」壁を15°程度の開き角で設置すると、

 反射限界周波数を一般的な1/2波長と考えても、1間幅(約1.82m幅)の壁面で反射する初期反響音の半減指向角30度に相当する周波数は、

約355Hz となり音声帯域(※51)はほぼカバーできます、が壁面高さが18m(10間)あると仮定すると...

反射有効最低周波数は19Hz となり更に間口20mの大型ホールでは...

参※51)音声周波数帯域とも言われ楽器や肉声の基音となる300~3400Hzの低・中音域を指します。ちなみに電波法のAM放送の公称伝送帯域は100 Hz~7,500 Hzです(実際には50Hz程度から12kHz程度は伝送できています。)関連記事「音の良いフルレンジスピーカー列伝」はこちら。

間口20mの大型ホールでは

※クリックすると階大画像が見られます。

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定在波基本周波数は0.5波長なので、基本周波数成分は約8.7Hzとなり、1波長の17.4Hzも"健康被害帯域"で、20.5次!高調波成分の357Hz以上でないと有効に抑制できないことになります!

つまり0.5波長8.7Hzから20波長348.6Hzまでは無制御!状態で特に0.5波長8.7Hz、1波長の17.4Hzの健康被害を及ぼす低周波振動は放任状態となります!

前途したように、クラシック音楽では、バスドラムの強打や、オルガンのペダル音にきっかけとなる8.7Hzの周波数成分が含まれており、重大な健康被害を及ぼすこととなるわけです!

第3項 aspect ratioが10倍以下の定尺壁材ならば

つまり、完全並行する対抗反射面同士が長型0.9mX9mのプレーンなパネル材だと仮定すると...

短辺0.9mの20倍に相当して更に長辺9mの倍波長にもあたる波長18m≒19.4Hz以上の音は対抗面に向かって反射することになります!

前途したように音圧が130dBにも及ぶ大音響が反射面に届くと壁面間の反響を繰り返して「定在波」が"孵化"するわけです!

参※37)当サイト関連記事 第2節 反射面の幅 と反射波の周波数限界はこちら。

この時先ほど同様に間口が20mのホールだったとすると。

  • 気温20度、気圧1気圧(760mmHg)の時 音速:348.6m
  • 定在波周波数成分 1/2λ:周波数8.7Hz 、1.5λ:26.1Hz

つまり26.1Hzの周波数成分を持つ節目4つがある可聴音定在波がビンゴヒットして停留するわけです!

※クリックすると拡大画像が見られます。

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第4項 音響パーティションを用いてシェルター壁をサウンドロック(遮音・防音)壁とする手法

縦格子を用いたパーティションの効果

ホール本体外壁をサウンドロック(遮音・防音)構造としてオーディトリアム(ホール客席)とを
格子状のパーティションなどで区切り客席後方にホール内廊下を設ける手法です。(※例2)

50mm□程度の角材を100㎜程度のピッチで並べた"格子"は高音域に対する音響拡散効果で「高音域に対する初期反響」を緩和し、低周波は格子を無視(通過)してシェルター(音響ロック壁=防音壁)の内側で反射します。

従って、20m以上の十分に幅のあるシェルター外郭構造で適用する場合には「壁面間20m超」の伝承技法が適用できる筈なのですが...

このシェルター(ホール外郭)を音響ロック(遮音・防音壁)とする手法では、シェルター壁そのものを扇形とするか兵庫芸文小ホール(※531)のように大胆に(35度以上)スラントさせて「ハノ字壁面」にしないと、シェルター内面の「吸音壁」のわずかなアンギュレーション程度では定在波そのものの抑止・抑制にはつながらなくて健康被害の原因になります!

つまり間口の、1/20以下の幅のパネルならスラント(傾斜・開き角)させて並べても、間口の半波長に相当するような低周波成分を持つ定在波は抑制できませんが、高調波成分なら拡散効果で抑制が可能です!

定在波の高次周波数成分が抑制できれば、結果論として、周波数特性の"うねり"は幾分改善できます?

※例2、京都コンサートホール(ホール音響Naviはこちら)、オリンパスホール八王子(ホール音響Naviはこちら)等。

第4節 その他の定在波対策に効果のない幾つかの気休めプラシーボ?処置

第1項 座席アレンジメント(通路配置)による定在波障害目晦まし策?

定在波の発生しやすいシューボックスホールの通路配置によく用いられる手法で、定在波の"節"に当たる"ミステリーホール(穴)スポット"を避けて通路として座席を配置して障害を避けようとする魂胆のようですが...

  • 1波長周波数成分の「ミステリーピット(節目)」を想定して側壁間際と中央部分を通路とする3本(5本)通路配置。
  • 1.5次高次周波数成分の「ミステリースピット(節目)」となる側壁間際と間口の1/3、2/3を通路とする4本通路配置。

1波長・1.5波長の「ミステリースピット(節目)」に当たる部分には席を設けずに(客席=被害者のいない)通路を設け「5本通路配置」として、「座席アレンジで実障害部分(定在波の節・腹)を回避してしまおうというアイデアで、いわば定在波による顕著な音響障害(苦情)が生じないようにシートアレンジメントで誤魔化そうとする?消極策ですが...

ミステリーピットとamplify areaは特定の位置には留まら無いので全く効果はありません!

※クリックすると階大画像が見られます。

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前途したように定在波の根本原因「並行する壁面間の反射」を抑止!しないと、Wikipediaの「単一周波正弦波定在波」の説明とは異なり、前途したようにミステリーピット(落とし穴)、amplify areaは一定の場所には表れない!ので、通路配置でごまかそうとしても間口いっぱいに広がる「ミステリーゾーン」の回避には、全く効果はありません!(お判りですか?N田音響設計のスタッフの皆さん!)

垂直壁を売りにしている?オーチャードホール※ホール音響Naviはこちら)などで採用された手法でオーチャードホールに限らず、名古屋市公会堂(※ホールNaviはこちら)等で大正時代から採用されており例が無かったわけではありませんが、効果がないことと「中央に陣取る」ことの好きな聴衆が多い日本では「中央部の通路配置」普及していないのも事実です。

第2項 その他の気休め手法

以下の手法は初期反響を緩和して「定在波の定在時間(停留時間)」の短縮や高次の定在波周波数成分の抑制には繋がりますが「定在波傷害?の撲滅」にはつながりません!

  • 1間幅未満の細かなアンギュレーション(シワ模様)処理は音響拡散による初期反響軽減策です。
  • 壁面の細かな凹凸処理も音響拡散による初期反響軽減策です。
  • 額縁で縁取った「ビクトリア朝」パネルも音響拡散による初期反響軽減策です。
  • グルービングパネルも音響拡散による初期反響軽減策にはなりますが垂直設置では定在波抑制にはつながりません!。
  • 内部に吸音材を持たない縦格子を用いた2重壁も音響拡散による直接反響(エコー)軽減策で、縦格子の単独使用では定在波抑制には効果がありません!
第1目 気休め程度の段付きパネル配置

一部のホールでみられる1間幅(約1.8m)以上のプレーンなパネルを段付きで配置する手法は、位相差を用いて段差部分ごとの定在波を干渉させて定在波の解消を狙っているようですが?(※例4)

並行面が存在する限りは平行部分で、形状(音圧分布)の異なった複数の定在波が居座るだけでこの手法では定在波の抑制には全く効果がありません!

間口の1/10以上の 巾を持つパネルでは間口に相当する波長の音波を反射します!

一般的な反射面の反射限界径は1/2波長とされていますが、実験的には1/10波長(ミニマム1/20λ/-80dB(約1/10000))程度の小面積からでも微弱な反響が認められています!(数学的(波動方程式)にも証明されています!)

つまり間口18m(10間)のホールでは1波長18mに相当する19.4Hzの音波が1.8m□のパネルからでも微弱ながら反射して、"定在波の元エコー(初期反響)"が生じるわけです。
さらに前途したように「健康被害」が問題となる低周波振動では、聴覚のラウドネス特性の影響でfffの大音響時(100dB時)には一番聴覚が良い1KHにバランスさせるために+30dB(約30倍)/20Hz大きな音圧となっています!
つまりこの大音圧では、簡単に対抗面に届き「定在波」が生じてしまいます!

なので、1間(1.8m)幅のフラットパネルを30㎝程度の段差を設けて設置しても、"対抗面と完全に並行"していれば20mもあるホール間口の定在波さん?からは、細かな凹凸同様に無視されて、19.4Hz前後の低周波定在波が健康被害をもたらすわけです。

なので、反射エコーを更に小さくして「定在波を抑制」するには「壁面スラント設置」との併用は必須となるわけです。

先生ご理解いただけたでしょうか?

※例4、川内萩ホール 《 ホール 音響 ナビ はこちら》、ハーモニーホールふくい 《 ホール 音響 ナビはこちら 》

「1間幅以下の幅の狭い面」で構成された壁面アンギュレーション(シワ)は

N田音響などが良く用いる鎧張り(下見板張り)の帷子(かたびら)幅0.5m程度では波長1m周波数約348Hz以上の中音域の(倍音を含む)定在波周波数成分の抑制は出来ますが...

実障害の大きい低音域には効果は無く!むしろ「残響」創出の為の「音響拡拡散効果」を狙った表装と考えて良く、単独では定在波の低周波成分の抑止効果はありません!

壁面の細かな凹凸表面処理は

打ち放しコンクリート壁などでよく見かける表面の溝加工は音響拡散効果で初期反響の多少の軽減は期待できますが低周波定在波抑制・軽減対策にはなりません!

同様に「ビクトリア朝」パネル、グルービングパネルの使用、縦格子を浮かせた2重壁も音響拡散効果で初期反響軽減効果はあっても定在波対策にはなりません!

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第3項 その他の定在波対策に効果のない幾つかの気休め処置

以下の手法は何れも前項同様に残響抑制には効果がありますが、定在波対策にはなりません!

残響調整装置(吸音装置)

「最近流行りの誤った処置」がこれで、後期残響と定在波は別物であり、ホール上層部にある吸音壁構造では客席周辺の定在波には全く効果がありません!

但しマジックボックス(※54)の設置部では、該当周波数の定在波の正体「壁面間で生じる初期反射(エコー)」は軽減されホール上層部での定在波抑制の効果は期待できますが、殆んどの場合は客席(聴衆の頭)周辺ではなく客席「遥か上空」の残響嬢出エリアに設けられており、客席での「定在波による傷害?」の緩和には寄与していません!

音響設備機器メーカーは受注金額(設備費)確保のためにこの装置の設置を進めたがりますが、はっきり言わせてもらて、「サプリメント(健康補助食品)」ほどの効果もない「紛い物装置」の典型ではあります!

※54、第8巻 現代の3大迷発明!「珍妙からくり(残響調整装置、可変段床設備、高さ可変吊り天井)」をご参照ください。

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エピローグ 定在波は味方?に出来ない!

standing_wave.jpg

定在波は両側壁面が節目の「伝播しない音速"0"」の居座り振幅変調ゾーンなので、しかも基本周波数成分は半波長の"低周波振動"です!

可聴帯域の下限20Hzの周期50msec(ミリ秒)~数秒周期の超低周波音圧変動が生じて「めまい、吐き気、強い不安感」等の健康障害を誘発させてしまいます!

並行した壁面間では定在波は生じるので、「壁面スラント」」で並行キャンセルするか「扇形段床」などで、定在波の音響障害エリアを回避しないと「上記の健康被害」が生じてしまいます!

第1節 ホール後方の音圧確保は...

第1目 姑息(こそく)な手段?として

前途した『伝承手法でホール幅を20m以上に設定して、可聴帯域外の(低周波振動)成分をミステリーゾーンから追い出して、節目と腹さえ回避できれば...』と考えたのでしょうが...

定在波は「伝播しない音速"0"」のBad modification(改悪)!「Amplitude modulator (振幅変調装置)」居座りエリアでしかも短1周波数のサイン波ではなくおまけに基本は0.5波長の超低周波振動です!

なので前途したように1波長の節目と・腹に当たる5か所に5本の通路を設けても、「さまよえる幽霊船」には効果がありません!

シューボックスホール後部座席の音量(音圧)確保のために、態(わざ)と左右に平行壁を設けて「低音部分」の音量(音圧)を上乗せしようと悪巧(わるだくみ)をたホールも数多く見受けられますが...

悪巧みが成立しないどころか、悲惨な結果(※99)になっているのはこのためです!

参※99)当サイト関連記事 石川県立音楽堂 《 ホール 音響 ナビ 》コンサートホールでのコンサート体験 はこちら。

第2節 定在波による音響障害がない優れた「コンサート会場」は野音!と球場?

640px-theatre_of_epidaurus.jpg

出展;Dosya:Theatre of Epidaurus OLC.jpg

https://tr.m.wikipedia.org/wiki/Dosya:Theatre_of_Epidaurus_OLC.jpg

野音と言えばすぐに北海道にある広大な敷地の施設でPAガンガンのポップスコンサートを思い浮かべられる方も多いと思いますが、意外や意外前途したように殆どの「野音(&球場)」では定在波による音響障害が全くありません(周りに壁がないから当たり前?)、

特に高さ10m以上の"遮音林"に囲まれた"野音"は

回りの木立から降り注ぐ適度な残響だけで、過度な残凶(ざんきょう)に悩まされる事もなく、トランジェント(付加物の無い素直な)の良い「癖のない」優れた「楽音・肉声」の通りの良い音響が確保された理想形(※92)の一つともいえます!

ステージに近い数百人のエリアでは「アコースティック楽器」の音色や「歌手」の生声が十二分に楽しめる素晴らしい音響の野音となっている例(※91)がたくさんあります。

参※91)当サイト関連記事 全国野音ナビはこちら。

嘗ての、EXPO`70大阪万博の「お祭り広場」のようなセミクローズド空間でも...

つまり立地環境が許せば 所沢西武球場のように、扇形スタンドの観客席周辺の垂直壁は無くてして「大屋根だけ設けたセミオープン環境」を構築すれば、初期反響&定在波による障害は生じません!(※西武球場が意外と反響しないのはこのためです!)

後書き

閉鎖された空間で生じる"定常波"若しくは"定在波"と呼ばれる現象に対する対策は、コンサートホールという"閉鎖された空間"をデザインするデザイナー(設計者)にとって頭の痛い問題の一つです。

音響工学を極めて最高の舞台芸術環境を構築する芸術ホールを設計する「建築音響専門家」を目指すのであれば、"永遠の課題・定在波"と真摯に向き合い「最良の方策(デザイン)」を探求し続けなければなりません。

アーティスト気取りで"見世物小屋デザイン"を専門とする造形作家?を目指す方には、関係のない(関心のない)話かもしれませんが、音響工学を探究しているクリエイターには頭の痛い正解(解決策)の見つからない永遠の課題であるのかもしれません...

一部の、造詣デザイナー(哉差アーティスト)気取のアーキテクト紛いデザイナーがこのことを忘れ「アピアランス(見た目)と、眺望」だけを追求している昨今の風潮に警鐘を鳴らす意味も含めてこの項をまとめました。

2018年7月31日 狸穴総研・音響研究所 代表 出自多留狸

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公開:2018年7月31日
更新:2021年1月16日

投稿者:デジタヌ


『建築音響工学総覧 』第7巻 現代の3大迷発明?!TOP音の良いホールの"条件"と"評価法"について『建築音響工学総覧 』付属書 (1) 


 

 

 



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