狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

奈井江町文化ホール・奈井江コンチェルトホール《ホール音響Navi》

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国際教育音楽祭(PMF)のサブ会場の一つにも選ばれている北海道を代表する「プレミアムホール」の一つ。

246席の"全面木質パネルで内装された"ホールで、全国屈指の音楽ホールと呼び声が高い「コンチェルトホール」は町民の文化活動と発表の場としても親しまれていて年間 100 回程使用されてる!

奈井江コンチェルトホールのあらまし

Official Website http://www.town.naie.hokkaido.jp/bunka/bunka/bunkahall/

狸穴総研・音響研究工房・厳選『後世に伝えたい・真の銘ホール』に選出!

北海道の田舎町にある文化ホールで年間稼働率が27%というのはスゴイ!

出路樽狸の"狸穴"がある大阪の都心部難波から近郊電車でたった30分の柏原市が誇る"長田音響設計監修"による収容人員1175名の立派な?リビエールホール(※ホールナビはこちら)が毎週末に1日利用があればよいほうで、開館以来20年間以上、年間利用率が僅か2%にも満たない状況が続いている事を考えると驚異的な数値である!

音響デザイン面から眺めた 奈井江コンチェルトホール

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

フロアーレイアウト&シートアレンジ

緩やかな扇形段床上に丁寧に並べられた中央部千鳥配列の12列198席のスロープ客席に、

「明らかに後から増設した」ような16席x3列48席の補助席を前方平土間部分に押し込んだ座席配置となっている。

計画段階当初からの本来の客席と思われる段床部分には立派な「ハイバックタイプ」のシートが中央部分9・8・9...と交互に千鳥配列され、良好な視界と音響を確保しているが...

平土間増設部分48席の怪...

どういうわけか、後から増設されたらしい平土間部分の補助席は、「平土間設置」であるにもかかわらず、「重複配列」の4脚1ユニットのローバック・可動タイプの簡易的な構造の椅子となっている。

この辺りは「クライアント=施主」の強欲?が出たのであろう。

全面木質パネルの内装

フロアー客席周辺

1階相当部分にあたる客席周辺側壁は立て棧を用いた木質グルーブパネルを主に「異なった寸法の木質ブロックを集成し、表面に凹凸を持たせた木組みパネル」を上部にあしらった手の込んだ木質パネルを「内傾スラント設置」し上縁には装飾梁を配している。

上層部ホール内壁

2階相当部分・上層部側壁は下層部上縁の装飾梁から天井にかけて装飾柱を配し、その間にプレーンな木質パネルを内傾スラントさせて表装している。

最上部は直角コーナーが生じないように面取りして天井に緩やかにつなげている。

大向こう背後壁

客席大向こう背後壁表装は低層部がプレーンな木質パネルを用い、中上層部にはクロス格子を用いた2重壁で表装している。

調整室は、エントランスホール上部を利用したデザインで、ホール内部大向こう壁面には突出した部分はなくフラットな壁となっている。

ステージ回り

ステージ背後は緩やかに湾曲した木製反響板を僅かに内傾スラントさせて設置している。

天井は

天井はサイズの異なった雨樋状の木製凸面反響板を左右両側壁間に渡してホール全長に並べてある。

露出バトンを音響拡散体に

同じくステージ上部には照明バトンを露出させて配置してある流行の手法。

総評

小規模プレミアムホールになり損ねた「迷ホール」
当初計画通り198席ならば間違いなしに北国きってのプレミアムホールであったのに...

計画途中に気が変わり?平土間部分に48席の安っぽい「補助席」(可動席)を追加設置し246 席としたために、ありきたりのシューボックス型コンサートホールになり果てた哀れな「田舎ホール?」

デジタヌの独り言

ウーン、後さき考えずに過疎の町に「何とか若者を引きとどめよう」と、将来に禍根を残す地方債と国の補助金を当てにして作ったのは感心できないが、...。

PMF(※コンサートNaviはこちら)のような"超目玉興行"でもない限りの通常自主興行時は欲張らずに「198席のプレミアムホール」としての特徴を前面に押し出したほうが観光客(演奏家・聴衆)誘致のためにも得策であろう!

涙ぐましい悪あがきに免じて?「マアいいか...」で狸穴総研・音響研究室・厳選『後世に伝えたい・真の銘ホール50選』に選ばせていただく。

ホール音響評価点:得点95点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点48点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※客席側壁が ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは 基礎点25点に減ずる。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点25点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点17点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点5点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

算出に用いた値;

※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら

定在波評価

※平行壁部分がほぼ"0"なので基礎点50点とした。

基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数1=49点

定在波障害顕著席数;

定在波「節」部席;4席/1階平土間中央部座席補1・2列8・9番席、

定在波「腹」部席;0?席

重複カウント ;ー4席

定在波障害顕著席総計;4席

初期反射対策評価

壁面材質が木質グルービングパネルなので素材基礎点25点とした。

基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数0=25点

初期反射障害1 壁面障害席 ;0?席

初期反射障害2 天井高さ不足席;0席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;0?席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数1=19点

眺望不良席数;24席/1階平土間中央部座席補1~補3列5番~12番

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;4席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;0?席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足席;0席

重複カウント ;ー4席

音響障害席総計;24席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

コンチェルトホールのロケーション

ところ  北海道 空知 郡 奈井江 町 243−24

奈井江町の一等地?奈井江駅前ロータリー広場に面してたたづんでいる。

1本裏道を挟んで西側にはJRと並行する形で国道12号が通っている。

辺りは綺麗に区画整理された住宅街と成っている。

駅舎の反対側東側には農耕地が拡がっている。

町の北部奈井江駅から6kmほど離れた旭川市よりの奈井江町と砂川町の境界部分の当町内に道央道最寄りICはあるが、「奈井江・砂川IC」と称している。

じゃらんの周辺観光ガイドはこちら。

アクセス

JR奈井江駅より徒歩2分。

コンチェルトホールが得意のジャンル

国際教育音楽祭(PMF)(※ガイド記事はこちら)奈井江公演を開催している。

主にセミナー、講演会、市民団体の集会、お稽古事の発表会などに用いられている。

又奈井江町ゆかりの音楽家による演奏会、アンサンブルの演奏会等、小編成の室内楽コンサートなども行われている。

更に伝統芸能以外にも歌謡歌手の歌謡ショー、エンタテイナー・懐メロ歌手のワンマンショー、演芸・寄席、等大衆芸能等ジャンルに拘らない幅広い演目でこのエリアの多くの人達に受けいれられている。

施設データ

  1. 所属施設/所有者 奈井江町文化ホール/奈井江町。
  2. 指定管理者/運営団体 奈井江町
  3. 開館   1993年11月
  4. ホール様式 『シューボックスタイプ』音楽専用ホール。間口約12m 奥行き約27m最後部天井高さFl+約10.5m
  5. 客席    1フロアー、座席数246席(固定席198・移動席48・車椅子スペースあり)1階スロープ中央部千鳥配列
  6. 舞台設備  オープンステージ形式ステージ間口約12m・奥行約8m・高さ約10m 照明バトンx2、美術バトンx3
  7. その他の設備 
  8. 付属施設  控室x3、交流談話室、練習室、会議室x2、和室x、
  9. 施設利用(利用料金等)案内 詳しくはこちら公式ガイドへ。

参照覧

現代の3大迷発明!「からくり小屋列伝」はこちら。

※定在波の悪影響に関する解説記事はこちら。

※直接音、初期反射音、残響音についての(株)エー・アール・アイさんの解説はこちら。

「都市伝説・良いホールの条件"残響2秒以上"は本当か?」はこちら

残凶時間2病(sec)異常(over)の"都市伝説"が蔓延し残響時間の長さを競う風潮にあるが、耳障りで過大な残凶音は、定在波の悪影響とともに、「ホール酔い」の一因でも有り「過ぎたるは及ばざるのごとし!」の典型ではある。

※エコールームに関する「音工房Z」さんの解説記事はこちら。

※アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての建材メーカーの解説記事はこちら

 

公開:2018年2月15日
更新:2022年9月27日

投稿者:デジタヌ


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