『建築音響工学総覧 』第2巻 音響工学の基礎知識(音の反射と指向角 )
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前書き(要約) 音の反射と指向角の概念について
建築音響デザインを志すデザイナー(設計者)にとって、最も重要な重要な基礎知識、音の反射と指向角についてまとめました。
音波は異なった物質同士の界面では必ず反射します!
また振動面(反射面)の法線からある指向角で広がり(拡散)、これが壁等で閉鎖された空間では"エコー"となって往復して"諸悪の根源"「定在波」が生じる要因の一つともなっています!
また音響レンズなどにより"集束"させることも可能です!
「失敗しない・ホール計画の手引き」講座シリーズ第2回理論編として"音の不思議"について取り上げてみました。
第2巻 音響工学の基礎知識(音の反射と指向角 ) の目次
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第1章 音の反射
音響学的には「物質の不連続面」すなわち異なった「物質間の界面」では必ず反射が起こる!
第1節 音の反射と音響インピーダンスの関係
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異なった音響インピーダンス;Z1、Z2を有する物質1と物質2の境界について考えるた場合、反射音(圧)は音響インピーダンスZの値の「積と差の関係」になる。このことを音反射率Rという。
R%=(Z1・C1-Z2・C2)/(Z1・C1+Z2・C2)
音響インピーダンスZ=音速C(m/sec) X 密度ρ(kg/?)
音速C(m/sec)=√K/ρ なので置き換えると。K;体積弾性率
Z=√ρ・K となり 密度と体積弾性率の積の平方根となる。
第1項 音響インピーダンスと音圧反射率
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更に音圧反射率という物があって、平べったく言えば、空気中を伝わった音は「固くて重いモノ(石材等.)」に当たると「ほぼ100%」つまり同じ強さ(音量)の音が跳ね返ってしまう。
つまり並行する面が有ると、その間で距離による拡散損失以外の損失が無くなりいつまでも反響(エコー)が続くわけである(鏡を2枚立てて、間に立ったときの光景と同じイメージ)。
これが後述する「定在波の引金」となる。
だから、できるだけ空気に近いもの、つまりは軽くて柔らかい材質を吸音材・遮音材(※1)に使うわけです。
簡単に言っていまえば石材のような「硬くて・思い壁材」は強烈に反響して!
紙でできた襖・障子・からはあまり反射しません!
つまり日本家屋では通常では定在波は"障子?(しょうじ)"ずらいわけです!
但し、建築基準法並びに消防法の規定で、難燃処理をほどこした、木材かカーテン、若しくわ不燃材のグラスファイバーウール、ロックウール、しか壁材としては使えない。(ウレタンフォームは外壁・内壁間の充填剤として使用可。)
だから打放しコンクリート壁や、アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードなどの硬質材に頼らざるを得ない「安普請のホール」では後述するように、内壁の、軒形状、天井形状、柱や梁と言った突起物(凸形状)の形状と角度が重要になってく来ます!。
第2項 音響インピーダンスと反射波の位相
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さらに、Z1<Z2すなわち、音響インピーダンス小→大と進み反射した場合は位相反転は起こらない。
閉鎖された空間(ホール)で定在波が発生した場合、ホールの空間は空気で満たされておりZ1の値は微小、それに対して壁面は個体なのでZ2の値は大、すなわち前項のように壁面では進行(反射)方向に対し位相は変化しないので入射波と反射波は互いに打ち消しあい常に音圧が0に近いゼロクロスポイント(※2)となる!この現象が定在波(※3)の要因の一つともなっています。
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護岸などの水内際での現象
実際に、目にすることのできる現象として、プールなど護岸された垂直な堰堤などに「さざ波(表面波)」が進行してきた場合には、入射波と反射波が打ち消しあって、堰堤直近では波はほぼ消滅している(ゼロクロスポイント)箇所を目にすることができる。
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第2節 入射角=反射角の法則
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空気中(気体)を伝わる音は、「圧力波;弾性波=縦波」のみで有り、光同様に入射角と反射角は同じであり、次項で解説する「反射限界幅」に比べて「十分に広い幅」を持つ広い壁面にぶつかった場合は反射の法則(入射角=反射角)で「同じ角度」と広がり(指向角)で反対側に反射します。
※自然音は殆どが点音源に近い球面波でできており、法線が重なる「完全平行面」以外では余り影響は無ありません。
むしろ点音源から発せられる無指向性の球面波により、意図した方向には反射しずらく、浅い相対角で面した対抗壁面間では対抗面に届くエコー(反射波)が生じて定在波(※121)の引き金になっていしまいます!
参※121)当サイト関連記事 第1章 standing wave(定在波)は音波とは異なる物理現象! はこちら。
※クリックすると階大画像が見られます。
第3節 反射面の幅 と反射波の周波数限界
音を反射拡散させて、壁面からの反射音圧を小さくすることだけが目的ならば...
一般的に音波には反射限界という物があり音波の周波数fと音速Cm/secで決まる波長λmとの兼ね合いで、概ね半波長;1/2λが限界と言われています。
しかし実験的にも数学的にも1/20波長程度の反射面からも反射は起こります。
但し波長に比べて十分に小さな(径・幅を持つ)面からは「極めて小さな音圧」前途した音圧反射率の範囲内で(入射した中心音圧の)ー80dB(1/1万!)ぐらいでしか反射しないので、殆ど反射しないも同然ですが...
第1項 壁面パネルのaspect ratioと反射面サイズの関係
1/2波長(※37)のサイズの反射面が反射する音圧はそのエリアに入射した音圧(音量)が前途した音圧反射率に応じて反射します!
また、微弱ですが1/20λ程度のサイズからでも中心音圧のー80dB(1万分の1)程度の反射はあります!
第1目 aspect ratioが10倍以下の幅広壁材ならば
つまり、完全並行する対抗反射面同士が長型にの半間(0.9m)X5間(9m)の定尺パネル材X5枚で構成された壁面だと仮定すると...
短辺0.9mの20倍に相当して更に長辺9mの倍波長にもあたる波長18m≒19.4Hz以上の音は対抗面に向かって反射することになります!
第2目 aspect ratioが10倍以上の細長い柱状角材ならば...
例えば巾250㎜程度の柱やパネル保持用の額縁(プロセニアム)ならば、狭いほうの反射面が有効となるために、反射面の1/2λ以下の音波の反響(エコー)はほぼ無視できます。
つまり約697Hz 以上の音しか反射しないので、間口20mのホールだと仮定すれば、基本周波数成分は半波長つまり8.7Hzとなり、40.5倍音約706Hz以上しか散乱効果は無いことになります。
一方長辺が長いので幅の20倍相当の波長の音波約69.7Hzも反射しますが!
前途したように「極極弱い音」なので...
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つまり3.486KHz以上の音にしか絶対的な効果はありませんがホール幅に相当する波長の数倍程度の高次周波数成分は散乱抑制(初期エコー軽減)につながるわけです。
第2章 指向性(指向角)と音の広がり
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振動板(音源)と反射板(壁面)に共通して働く現象。
第1節 近距離音場と遠距離音場で生じる"指向角(性)
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『近距離音場』
指向角は近距離音場距離Xom以遠で起きる現象で振動板(反射板)直近では広がらず、このエリアを近距離音場といいます。
近距離音場距離Xoは近似式 Xo=DxD/4λ で表され。
『遠距離音場限界距離』と指向角
更にXoの1.3倍の距離を「近距離音場限界距離」と言い
振動子から1.3Xo以上離れたエリアを『遠距離音場』と呼び、このエリアでは振動板(反射板)の径(幅)に応じて安定して広がっていきます。
一種のクロスポイントで、この点を交点とするX字型の音場が形成されます。
整理すると
ここまでを整理すると以下のようになります。
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900mm巾定尺パネルでは
(図下部)
最低反射周波数 1/2λ= C/2f≒9.4Hz
近距離音場限界距離;Xo≒ 11㎜
250mm 角材では
(図上部)
最低反射周波数 1/2λ= C/2f≒69.7Hz
近距離音場限界距離;Xo≒ 3㎜!
つまり殆ど180°の平面指向角で反射することになります!
但し、10kHzになると反射波の実効半減指向角(ー6dB)は約7.7°の"狭い"範囲に反射します!(上側半分)
『肉声』も含め殆どの自然音(楽音)は点音源に近く無指向性で真横にも伝わる!
自然音は点音源に近く殆ど指向性が無く真横にいる奏者の楽音でも聞こえます!
だから、ステージ上でオーケストラ全員がお互いに音を聞きあって演奏できるわけで、多少眺望は悪くても最前列・ステージ被り付きの両端に座っていても演奏が聴けるわけです!
逆に言えば、「肉声」も含めてアクースティック楽器は「点音源」に近い球面波なので、距離の2畳に反比例する拡散による損失だけで、周波数特性は大幅には変化しません!
だから、遠くから聞こえてくる声は小さくても、誰の声か判るし何の楽器なのかも判るわけす。
PA・音響支援装置の問題点
スピーカーなどの振動板(反射板)では...
例えば、直径10㎝のスピーカーでは波長12.8cm約2.9KHz以下の低中音域の音ではほぼスピカー前面一杯に広がる"近似無指向性"となります。
逆に波長5㎝周波数約7kHzの高音域では35度まで指向角は狭まり。
波長1.7㎝の20kHzの可聴帯域(20~20KHz)限界の高音では12°まで狭まってしまい、180°の水平方向をカバーするだけでも約15個のスピーカーを扇形に並べなくてはならなくなるわけですが...
(※実際には、スピーカーなどの振動板には"分割振動"といって実際の振動板のサイズより「小さい範囲」で振動する現象が現れるために、結構高い周波数迄広い指向角で広がります!)
実際のスピーカーシステムの場合はこれを考慮して、高い音を受け持つツイーター(高音用スピーカー)は指向角θを大きくとり良好なリスニングエリアを稼ぐために十数ミリ程度の小口径(D)としてあります。
"音響支援装置?"声や楽器の音色が変わってしまう!
野外コンサートなどで使用されるPAや、"音響支援装置?"では、リスニング位置(座席)によって、声や楽器の音色が変わってしまうのは「スピーカーの指向特性」による周波数特性の乱れで"音色を決定付ける高調波(倍音成分)"が失われてしまうためです!
つまり野外コンサートやアリーナ(体育館)コンサートでは、PAシステムのスピーカーの指向特性の影響で、「良く広がる低音」ばかり大きく聞こえ、歌手の「声色(こわいろ=倍音成分)」や楽器の音色が変わってしまうのはこの為です。
サブウーファーを設置する場合は
30cmのウーファーと呼ばれる低音用スピーカーの場合は...
直径30cmのスピーカーでは約410Hz以下の低音域では指向角が90度以上つまり正面全面に広がる"疑似球面波"となりほぼ疑似無指向性となる為に、特に重低音専用スピーカー「サブウーファー」では部屋中どの方向に向けても同じ結果となります!
※ただし釣鐘現象(※21)を回避するためにはリスニングポイントの背後壁とは平行にならないように注意する必要があります!。
参※21)当サイト関連記事 『第2節 定在波音響障害とよく似た釣鐘現象 はこちら。
※画像をクリックすると拡大できます。
第2節 狙った方向に反射させるには
定在波を防ぐためには、出来るだけ対抗面に反射音が届かないように、"反射音にソッポを向かせる"必要があります。
そこで、反射面の指向性(指向角)が重要になってくるわけです。
前章で述べた、ように単に散乱させるだけならば、細長い角材を格子状に並べても良い訳ですが...
狙った方向に、反射させようとすると、"無限大平面"でも、"波長の1/2の長辺を持つ反射板"でもうまくいきません!
何故なら前途したように、波長に対して十分に広い"無限大平面"に近い反射面では、
近距離音場限界距離1.3Xoが"0"となり、球面波で届いた無指向性音波が、そのまま反射してしまうためです!
指向角近似式とλ/Dレシオ
"ゼロ輻射角θ0°の近似式"というのがあって、中心軸から最初に音圧が"無くなる角度"ゼロ輻射角θ0°は
近似式θo°≒70°xλ/Dであらわされます。
つまり波長と振動板(反射板)サイズが同じになるポイントが70°であり、
可聴帯域の下限20Hz では波長λ=c/fなので17.4mとなり、側壁がハノ字に広がる扇形ホールでもエコー(初期反射波)に「ある程度の指向角70°(両開きで140°)を持たせるには、λ/Dレシオを1以下に設定する必要があります。
更に70度の相対角度を持たせようとすると対抗面と35度以上開く(orスラント)ようにしないと"有効ではない"ことになりますが...
※画像をクリックすると拡大できます。
半減指向角 θ(-6dB)
但し実用的には音圧が"半減(ー6dB)すれば、対抗壁面間との距離による拡散減衰と相乗して対抗壁面に到達する音圧は、可成り小さくなりますから、
近似式θ(-6dB)°≒55°xλ/D
を適用すれば、スラント角度55/2約27.5度として、垂直壁のスラント設置にも応用できるわけです!
いずれにせよ可聴帯域内で定在波を阻止するにはをλ/Dレシオ=1つまり 壁面有効巾・高さ17.4mとスラント角30°が基本となるわけです。
第3節;近距離音場離と音響レンズの関係
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近距離音場距離;Xo=D2/4λ
と言う物理法則があって。
又Xoの1.3倍の距離を近距離音場限界距離と言い、この1.3Xomの距離以遠は概ね安定して拡散していく。
そしてこの時の円盤の中心軸との角度をゼロ輻射角と言い概ねその周波数の反射音圧が0に成る角度であり。近似式θo°≒70°xλ/Dであらわされる。
Xo(m)以上の距離では収束(レンズ効果)も有効に働かない!
近距離音場距離 Xo m以下の近距離音場内であれば、レンズ効果で音波は収束(拡散)出来る、これが音響レンズ(パラボラ;ドーム)の原理であり、
つまり最近よく見られる天井高さとほぼ同じ直径15m半径15m程度の大型ドームでは、可聴帯域(f=20~20Khz;λ=17.4m~17.4mm)約46.5Hz以上の殆んどの周波数が近距離音場内に入り収束効果がある、代わりに「ドーム真下の地表面」にある1点に音が集中してしまい、フォーカスポイントでは悲惨な状況が生じる。
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公開:2017年9月22日
更新:2022年6月10日
投稿者:デジタヌ
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