狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

川内萩ホール 《 ホール 音響 ナビ 》 

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Official Website http://www.bureau.tohoku.ac.jp/hagihall/about/index.html

川内萩ホールのあらまし

1960年開館の「東北大学記念講堂(50周年記念建物)及び松下会館」をリニューアルし2008年に開館した。

最新の技術で蘇り「日立システムズホール仙台」(※紹介記事はこちら)と並び称されるほどの響きの良い音楽ホールに生まれ変わった。

音楽の都仙台を代表する、シューボックス型多目的ホールの1つであり、仙台市周辺のアマオケの聖地ともなっている。

建築音響デザイン面から眺めた川内萩ホール

公式施設ガイドはこちらは

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

世界水準の音響と学術会議機能を備えたホール。

500インチクラスの大型スクリーン、同時通訳設備等で、学術会議、音楽コンサートや講演会など様々な用途に使われている多目的ホール。

2スロープ2層3フロアーのシューボックスホール

高床式のサイドテラスを配したメインフロアー

最前列から2列までの平土間部分から続く平土間に近い緩やかなスロープを持つ8列目迄の前半部分と、中央の通路を挟んで、「ハノ字」段床上に配置された9列目以降の後半部分を持つメインフロアーの周辺には最後列両翼から、ホール前方に伸びた高床式のサイドテラス席が配置されている。

2層目バルコニー

比較的急峻な「扇形段床」上に配置された2・3階に相当する2層目のバルコニー席で構成されている。

大向上部4階相当部分はホール内に張り出した・映写・音響・照明調整室になっている。

壁面

全周木質パネルで表装されており、全ての壁面は「垂直設置」されている。

メインフロアー壁面

メインフロアー側壁(サイドテラス床囲い)は縦桟を配したプレーンな木質パネルで、8列目迄のメインフロアー前半部分と前半サイドテラスの両側壁は段差を持たせた凹凸状に表装してある。

1階最後列20列の背後は通路になっており、背後の壁面は約席に沿った緩やかな凹面となっている。

上層階壁面

2層目バルコニー両サイドの30m幅の上層部壁面は幅の広い装飾柱と横桟をランダムに配した格子壁となっている。

2階バルコニー大向う背後壁面

2階バルコニー大向う背後壁面は垂直壁の直線だが、側壁同様に装飾柱の間に1m幅程度のプレーンなパネルを微妙にアンギュレーションを付けて表装されている。

最上層に当たる調整・映写室の前面は大きなピッチで縦桟を配してある。

ランダム格天井とステージ反響板

天井はランダム配置の格天井(※1)デザインの基本水平な大型反響板で、平土間上部にはややスラントしたコーナー反響板?が設えられている。

ステージ周り

ステージ天井反響板は客席部分と同じランダム格天井反響板の約10.7m程度の高さの水平配置!になっている。

ステージ両側壁は、客席周辺と同意匠のパネル表装された備え付けの反響壁で客席に向かって「ハノ字」に開いた台形ステージとなっている。

総評

老兵を見捨てずに、蘇生してくださったのは素晴らしいが、各壁面が垂直・水平壁名なのはいただけない!

各フロアー共に縦桟を配したパネルで表装しているのは良いが、残響生成(※2)には効果があっても、定在波(※3)の対策にはならない!ことは先生もよくご存じのはずなのだが...。

エコー(初期反響リバーブ)と残響は別物!

更には都市伝説「良いホールの条件"残響2秒以上"」(※4)はまったく根拠のない作り話(※5)であり、さらには初期反響を利用したカラオケBOX並みのリバーブ主体の「エコー(山彦)」(※6)と「豊かな響き後期残響」は似て非なる存在です!

初期反響を持続させるために、「定在波を長居」させては本末転倒です!

3段階の幅の異なる側壁と想定定在波対策

このホールのは、『"壁面間隔20m超"のセオリー』(※7)と後は「扇形段床」上の客席アレンジを併用した定在波対策(※8)で定在波の音響障害(※9)を回避する手法を適用している。

  • メインフロアー間口約20.5m;17Hz/1λ、25.5Hz/1.5λ、34Hz/2λ、42.5Hz/2.5λ、51Hz/3λ
  • サイドテラス席間口約25.3m;13.8Hz/1λ、20.7Hz/1.5λ、27.6Hz/2λ、34.5Hz/2.5λ、41Hz/3λ、
  • 2階バルコニー席間口約28.4m;12.3Hz/1λ、18.5Hz/1.5λ、24.6Hz/2λ、30.8Hz/2.5λ、40Hz/3λ、
  • 1F奥行き約34m;10.3Hz/1λ、15.4Hz/1.5λ、20.5Hz/2λ、25.6Hz/2.5λ、30.8Hz/3λ、
  • 2F奥行き約40m;8.7Hz/1λ、13Hz/1.5λ、17.4Hz/2λ、21.8Hz/2.5λ、26Hz/3λ、
  • ステージ上天井高さ約10.5m;33.2Hz/1λ、49.8Hz/1.5λ、66.4Hz/2λ、83Hz/2.5λ、99.6Hz/3λ、

赤字の周波数が可聴帯域内の重低音に相当するが、ホール軸方向も含め「完全に平行する対抗面」が多く定在波の嵐?になっている。

壁面には、定在波の引き金となる初期反響(※2)低減のために縦・横の桟(装飾柱)が設けられているが、ピッチが荒いために余り効果は無く!壁面の凹凸もエッジ部分での音響拡散(※10)効果はあるが初期反射軽減には効果は見られない。

問題なのはステージ上

ステージ上では天井の水平反響板の為に「高さ方向定在波」が生じてしまっている事である!

ひな壇上以外の多くの奏者はこの高さ方向定在波の洗礼?を受けている。

耳の高さが定在波の節目に当たる床面から約1m約1/10波長浮いてはおり倍音列定在波も含めゼロクロスポイント;ミステリースポット(※9)は避けられているが、2波長66.4Hzの定在波の腹すなわちサプライズポイント(※9)と、まともに被さってしまっており、可成りブーミーな周波数特性となってしまっている!

定在波障害実被害席査定について

各フロアー共に1波長の基本定在波は可聴帯域外の低周波振動に追いだしており、両サイドテラス席以外は、壁面に通路と扇形段床で実被害を回避しているとしてサイドテラス2エリア2点のみ減点し実被害席は"0"査定とした。但し全周に渡り垂直で平行壁部分が全客席に及んでいるので、基礎点は25点に減じた。

再度の改修を望む!

先生には申し訳ないが、構造の専門家で耐震補強の名人でおられるとは思うが、「雰囲気は出ている」が?この内装ではコンサートホールとしてはいただけない!

せめて、ステージ上の奏者が気持ちよくカラオケ環境?を味わえるように、ステージ上部反響板はステージ背後に向かって17度以上傾斜(※11)させたスラント設置に改修いただきたい。

まあ後は、相当費用が掛かりそうなので...

出来れば、サイドテラス席背後壁は、凝った2重壁の現内壁を撤去し 上部に隙間を設けるのではなく。2階バルコニー席サイド壁に向かって、外反スラントさせる方がよろしかろう。

壁面に耳を接しているわけではないので、後列はゼロクロスポイントではないが、相当に低域の周波数特性が乱れていると思われ、現状ではクラシック音楽鑑賞には適さない「特別桟敷席」になっている可能性が高い。

ホール音響評価点:得点60点/100点満点中
§1 定在波対策評価;得点23点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※但し、壁間距離が20m以上あり定在波周波数が可聴帯域外(20Hz以下)の場合は基礎点50点にすえおく。
  • ※また扇形段床などの座席アレンジで、実被害を回避し、被害席が生じていない場合も基礎点50点にすえおく。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点19点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点13点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点5点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

算出に用いた値;

※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら

定在波評価

基礎点B1=基礎点25点ー障害発生エリア数2=23点

定在波「節」部席;0?席

定在波「腹」部席;0?席

定在波障害実被害席総計;0席

初期反射対策評価

※障害発生エリア壁面材質が木質グルービンパネル擬きなので素材基礎点25点とした。

基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数4=21点

初期反射障害1 壁面障害席 ;42席/サイドテラス後列R・L2列全席、

初期反射障害2 天井高さ不足(2.5m以下)席;83席(26席/1階20列全席、10席/サイドテラス19番~21番、47席/2階31列全席)

重複カウント ;ー6席

音響障害席総計;119席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数5=15点

眺望不良席数;16席/1階平土間中央部座席2列10番~25番

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0?席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;42席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(2.5m以下)席;83席

重複カウント ;ー6席

音響障害席総計;135席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

デジタヌの独り言

東北大学も度々仕事で訪れたが、不覚にもこのホールには気づかなかった、最も小生が訪れていた頃(1992年~1996年)はかなりくたびれた状態で、殆ど利用されていなかったらしいが...。

詳細データ

  1. 所属施設 東北大学
  2. 運営団体 東北大学
  3. 開館   改修後の再開館2008年(建物完成は1960年10月30日)
  4. ホール様式 『シューボックスタイプ』多目的ホール。
  5. 収容人員 1235名 客席配置図・座席表はこちら
  6. 舞台設備 可動式ひな壇(迫り)
  7. その他の設備 
  8. 付属施設 控室(楽屋大中小あわせて6室(1階に4室、2階舞台袖に2室)
  • 各種図面,備品リスト&料金表。

付属施設・その他 

施設利用料金

川内萩ホールのロケーション

所在地  宮城県仙台市青葉区川内40

仙台市と周辺にある観光スポットについてのトリップアドバイザーの 口コミ ナビはこちら。

川内萩ホールへのアクセス

最寄りの駅 地下鉄東西線・国際センター駅より徒歩5分、または、川内駅より徒歩7分

川内萩ホールがある仙台市とは

宮城県の中部に位置する東北地方最大の都市で同県の県庁所在地。

本州最北端の地下鉄が走っている町としても有名?


推計人口、1,083,148人/2018年4月1日

仙台-東京 1時間34分/11,400円/新幹線/351.8km

川内萩ホールがお得意のジャンル

主にセミナー、講演会、市民団体の集会、お稽古事の発表会などに用いられ、オーケストラコンサート、.ソリストのリサイタル、アンサンブルの演奏会等、小編成の室内楽コンサートなども行われている。

またプロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体が利用している。

川内萩ホールの公演チケット情報

大ホールで催されるコンサート情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら。

参照覧

※1、格天井 については各部の意匠その2 天井をご参照ください

※2、直接音、初期反射音、残響音についての(株)エー・アール・アイさんの解説はこちら。

※3-1、定在波に関する解説記事 音響工学の基礎知識"平行した対抗面間で生じる『定在波』"はこちら

※4、関連記事『都市伝説・良いホールの条件"残響2秒以上"は本当か?』はこちら

※5「ザシンフォニーホール誕生裏話」に関連する「日本音響学会誌」(2011年67巻2号)への寄稿記事はこちら。(P94最後部からP95にかけての数行参照) この記事からも明らかなように「良いホールの条件"残響2秒以上"」はひとりの「マスコミ関係者が言い始めた根拠に乏しい数値にしかすぎません!

※6、エコールームに関する「音工房Z」さんの解説記事はこちら。※本物のエコールームでは定在波対策(平行壁面対策)はしっかり施されています。

※7、関連記事『"壁面間隔20m超"のセオリー』「音の良いホールの条件とは」はこちら。

※8、定在波対策については『第4章 セオリーその1 "定在波の駆逐" と "定在波障害の回避策"』をご覧ください

※9、定在波ので起こる音響障害については『ホールに潜む ミステリー ゾーン (スポット)とは?』をご参照ください。

※10、音響拡散体については、『ホールデザインのセオリー 第9章第3節第1項 音響拡散処理と音響拡散体となる要素』をご参照ください。

※11、音響工学の基礎知識、「反射面(幅)サイズと波長の関係」はこち

 

公開:2017年9月 8日
更新:2019年5月20日

投稿者:デジタヌ


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