狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

名古屋市公会堂 《ホール音響Navi》

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「見栄っ張り」で「新しい物好き」の「尾張名古屋」にしては珍しい世界に誇れる「歴史的文化遺産」名古屋市公会堂。

大阪市中央公会堂(1918年完成)、日比谷公会堂(1929年完成)と並び、名古屋市公会堂は当時の代表的な建物のひとつとして知られている...

Official Website https://nagoyashi-kokaido.hall-info.jp/

序奏とテーマ 名古屋市公会堂

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

(公式施設ガイドはこちら。)

地下1階・地上4階、大ホール(定員1,994名)と四階ホール(定員780名)、9室からなる集会室等で構成され、緑豊かな鶴舞公園の一角に位置している。

大阪市中央公会堂(1918年完成)、日比谷公会堂(1929年完成)と並び、名古屋市公会堂は当時の代表的な建物のひとつとして知られている。

鉄骨・鉄筋コンクリート造、地上4階・地下1階

外壁はこげ茶色のタイルで仕上げ、直線を基調としつつコーナーは丸みを帯び、全体として調和のとれた重厚で落ち着いた感じを与えています。

また正面入口両脇の塔屋上部には、鶴舞公園にふさわしく鶴の羽根をデザインした模様が浮彫りされている。

名古屋市公会堂の施設データ

  1. 所属施設/所有者 名古屋市公会堂/名古屋市。
  2. 指定管理者/運営団体  KNS共同事業体/名古屋市。
  3. 開館   1930年9月30日完成 同年10月10日開館
  4. 設計   名古屋市建築課
  5. ゼネコン 大林組、清水組、大阪鉄工所

第1曲 大ホールの音響

公式施設ガイドはこちら。

すぐ近くを中央本線の高架が走っているが、間に樹木が生い茂る緑化ゾーンが有り「轟音」は無い。

緩やかなスロープを持つメインフロアーとステージ直近まで両翼が伸びた2階バルコニーと3階にもバルコニー席を持つ3層3スロープの多目的ホール。

前回の改修時に一階メインフロアーの中央2列が「千鳥配列」になり客席からの眺望が改善されている。

内壁は1930年開館当初は大隈講堂や一橋大学講堂のように、漆喰の表層を基本とされていたであろうが、現在は昔の映画館のように塗装仕上げのモルタルで表層されているようである。

但し各フロアーともに低層部(人の背丈位)はオリジナルのままで格子で縁取られた木質パネルを巡らせている。

天井も壁面同様に昔ながらの工法で設えた木質パネルで基板を造り、モルタルで仕上げた天井のようである。

形状自体は大きく弓形にしなった天井を波状にアンギュレーションをつけてある。

3階バルコニーの造りが、建設当時の巨大劇場・映画館的で天井が迫っているのが惜しまれる。

モダン歌舞伎小屋の前後を伸ばした様な造りのホールである。

尚、旧館(改修工事)に入る前は収容人員1,994席であったが、改修後は1,550席と大巾(444席)に定員を削減しゆとりある客席配置となる予定である。

一階部分の最前部と数列を撤去し、現脇花道部分いっぱい迄ステージを拡張(+1.8m)し、両側壁上層部は最新の「グルービング材」で表層される予定。

更に現在のプロセニアム上部前縁にあるコーナー反響板も新形状の物に換装される予定。

以下は改修後の仕様に基づいて採点しました。

改修ポイント

客席配置

メインフロアーのセンター通路を廃止し5通路から4通路に改修し、併せてセンター部分奇数列を10番から27番の18席偶数列を10から28番の19席とし千鳥配列座席とし眺望を改善した。

ステージの嵩上げ及び拡張

ステージをプロセニアム前方部まで拡張し備え付けホリゾント反響板手前(手前ローホリピット)までの有効奥行きを2間(約3.6m)拡幅し有効長11.8mとした。

またステージ幅も最大(ステージ前端で)約19.4mと拡幅されて、これにより約62.8㎡(約38畳)拡張でき、プロセニアム後部の約105㎡と合わせ約167.8㎡(101畳)となりフルオーケストラのコンサートにも対応できるステージとなった。

更にステージ全体を約54C㎝嵩上げしFl+1.14m高さに改修された。

またオリジナルの意匠を損なわない範囲・で天井をプラスターボード製1体型の大型反響板に換装し、殆んど傾斜の無かった平土間と天井間の相対スラント角を改善しこの間で発生する定在波を駆逐した!

合わせて、上部プロセニアム前部に天井一体成型のコーナー反響板が設置されたことにより、開口部の急激な変化を無くして音響改善を図った。

但しステージ反響板はこれまで通りの「作り付け」背後ドーム壁だけでステージ反響板の新生は見送られた。

2階サイドテラス席の改修

2階サイドテラス席から最前部の座席を撤去し、燭台風にデザインされたベースを新設し流行の剥き出しのサイド照明コラム設置し、オリジナルの打ち放しコンクリートサイドプロセニアムから続くようにプラスターボード製のフードで覆った。

3階バルコニー席の大幅改修

総評

オリジナルの良さを生かした銘改装であるといえる。

定在波対策は「幅20m超」で可聴帯域外へ

このホールも建設当初から"壁面間隔20m超"のセオリー(※1)で作られており、客席周辺壁面は簡単な縁取りのついたプレーンな木質の垂直パネルで表装されているが、1・2階共に約24mのホール幅があるので、定在波は可聴帯域外の約14.3Hzの低周波振動域に追い出されており実被害は生じていない?

※1、『"壁面間隔20m超"のセオリー』「音の良いホールの条件とは」はこちら。

さらに客席アレンジで念入りに回避

更にメインフロアーは扇形スロープ、2階フロアーはハノ字段床で定在波から守られ、2・3階フロアーでは従来通り5本通路の4ブロック配置の座席アレンジで、定在波の「節と腹」を回避している。

客席周囲に配された通路

2階バルコニー席の大向こうの一部座席13列のみ通路にはなっておらず壁面に張り付いた形になっているが、この部分以外の壁際は全て通路(間隔)となっている。

但し3階大向こう部2列は 8列がセンター部分で約2mと低く更に10番列は天井シーリング床面が約2.8mあるが「幅約1.2mの溝」になっており約123Hzの「床ー天井」間の定在波が生じてしまっており、床から頭(耳元)までの距離を考慮に入れても、低域がブーミーすぎてポップスコンサート等では飛び上がる程の低音であろう。

ということでこの2列は補助席程度と考えたほうがよかろう。

次回の改修では

次回の改修では、1度目の改修時に改修された今風?の天井反響板を、新調して、3階大向こう部天井にある意味不明の溝を解消していただきたい!

ホール音響評価点:得点88点/100点満点中

§1 定在波対策評価;得点48点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲が「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは 基礎点25点に減ずる。
  • ※但し、壁間距離が20m以上あり定在波周波数が可聴帯域外(20Hz以下)の場合は基礎点50点にすえおく。
  • ※また扇形段床などの座席アレンジで、実被害を回避し、被害席が生じていない場合も基礎点50点にすえおく。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点20点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点17点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点3点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

算出に用いた値;

※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら

定在波評価

※平行壁面で囲まれているが定在波障害実被害席がほゞ0なので基礎点50点とした。

基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数1=49点

定在波「節」部席;0席

定在波「腹」部席;14席/3階バルコニー最後部10列全席

重複カウント ;ー0席

定在波障害実被害席総計;14席

初期反射対策評価

※障害発生エリア壁面材質がプレーンな木質プレートなので素材基礎点23点とした。

基礎点B2=素材基礎点23点ー障害発生エリア数2=21点

初期反射障害1 壁面障害席 ;12席/2階13列全席、

初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;26席/3階9列全席、

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;38席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数2=18点

眺望不良席数;0席/1階平土間中央部座席千鳥配列済み

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;14席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;12席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(2.5m以下)席;26

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;52席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

大ホールの詳細

ホール様式
  • 公民館様式・平土間(一部スロープ)プロセニアム型式舞台付き多目的ホール。
  • 床面積 建物設置面積約2,670㎡、
客席仕様

3スロープ3層・最大幅約24.3mx最大奥行約28.6m、
収容人員1552席、車椅子用スペースX10台分,Pタイル張り、

内訳
  • 1階席X842席;1階可動席X132席含む、車椅子用スペースX10台分、1階中央部千鳥配列。
  • 2階席X400席;可動席X12席、2階サイドテラス席(桟敷席)X44席、含む。
  • 3階席X310席;可動席X24席含む。
舞台設備
プロセニアム形式
  • 有効幅約21.8mx(最大奥行き約11.8m/ステージ前端→ローホリゾントピット)有効奥行き約6.97m/緞帳→大黒幕、有効面積;約179㎡(約108畳)ステージ高さ;FL+約114cm、
  • プロセニアムアーチ:間口約15.2m、高さ約5.4m、ステージ高さ;FL+約114cm、
  • 吊りもの類 照明ブリッジ・バトン;サスペンションライトX2本、ボーダーライトX1、美術バトン;10本(幕装備除く)、

各種・図面・備品リスト&料金表

  1. 付属施設 
    • 主催者控室、東控室、西控室、洋室楽屋X4、和室楽屋x1、楽屋3室(増設)

第2曲 4階ホールの音響

公式施設ガイドはこちら。)

講堂スタイルの平土間多目的スペース。

大ホールの真上なのでこのホールも幅24m(長さは約31m)あり定在波は可聴音域外に追い出されている。

但しほぼ平面に近いアーチ屋根を備えたフローリング床の講堂なので、天井ー床の定在波が発生している。

壁面は漆喰仕上げだが、一部プラスターボード製の反響板に置き換えられている。

ホール後方壁面は有孔石膏ボードで表装した吸音壁に改修されている。

天井は梁構造(左右ブリッジ)のアーチ天井で、空調ダクトを縦方向に配し間をヴォールト天井とし,新たに内装した天井面に今風のセード付きの照明器具をランダム配置してある。

サロンホールというよりは「中規模講堂」と言った施設で講演会、会議、展示スペース、レセプション会場として使用される前提のようである。

ルーム音響評価点:70点

※会議室、宴会場、展示会場などがメイン用途のためルーム音響評価を適用しました。

§1,「定在波対評価点:25点/50点満点

  • ※ルーム低層部に1対以上の並行したプレーンな垂直壁がある場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。

§2、「初期反射」対策評価点:45点/50点満点

  • ※ルーム低層部3面以上がプレーンな垂直壁の場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。

4階ホールの詳細

  1. ホール様式 講堂様式、平土間オープンステージ付き多目的イベントスペース。
  2. 床面積 24.2mx30.97m、床面積約833㎡(約503畳)最高部天井高さ約5.5m
  1. 客席   天井高さ(最高部)約5.5m 1フロアー 
    • 収容人員576席、
    • 内訳;スタッキングチェアーX576席、
    • 木質パーケット床、
  1. 舞台設備  幅約12mx奥行約4.68m、ステージ高さFL+60cm、床面積約55㎡(約33畳)バトン類、スクリーン。
  2. 舞台仕様・詳細寸法などに関する仕込み図面集はこちら公式ガイド:(舞台図面ホール平面図はこちら
  1. 付属施設 主催者控室、
  2. その他の備品 アップライトピアノYAMAHA U3H(主催者控室常設・移動不可?!)

付属施設・その他 

館内付属施設 
  • 集会室x7、特別室
  • 和室x、
  • 喫茶スペース(新設)展示コーナー(新設)

付属施設配置・見取り図

施設利用手引き

終曲 豆知識

名古屋市公会堂のロケーション

ところ  名古屋市昭和区鶴舞一丁目1番3号

鶴舞駅東側に広がる鶴舞公園の北端に位置している。同公園内には名古屋市鶴舞中央図書館、総合運動グランド「テラスポ鶴舞」名古屋市立鶴舞小学校などの施設が建っている。

北正面は名古屋大学鶴舞キャンパス&医学部付属病院の建て屋が立ち並んでいる。

名古屋市公会堂へのアクセス

鉄道・バスなどの公共交通

JR中央本線・地下鉄鶴舞線 鶴舞駅下車徒歩2分

マイカー利用の場合

(※駐車設備が少ないので公共交通機関利用がおすすめ)

名古屋高速2号東東山線吹上西行き出口3分/800m。東行き出口5分1.4km

名古屋市公会堂のこれまでの歩み

昭和5(1930)年10月10日に昭和天皇のご成婚を祝し名古屋市の記念事業として開館し、以後、国内有数の文化と社交の殿堂として広く市民に親しまれていた。

第2次大戦中には防空部隊の司令部がおかれ、戦後は米国空軍に接収され娯楽・厚生施設となり、この期間「公会堂の機能は全面的に停止していた。」

1956年2月に戦後11年あまりを経てやっと名古屋市に戻り、市が施設の整備拡充を行い、再び市民の利用施設として活用されだした。

1980年 戦災は免れたものの老朽化が激しく大改修を施す、現在に至っています。

1989年には名古屋市都市景観条例に基づき、都市景観重要建築物に指定された。

2017年4月1日 大規模改修工事のために休館。

2019年4月1日 再開館。

名古屋市公会堂がお得意のジャンル

大ホール

オーケストラコンサート、ソリストのリサイタル、アンサンブルの演奏会、小編成の室内楽コンサートなども行われ、ミュージカル、Jポップ関係のコンサートや、往年のアイドル・エンタテイナーのワンマンショウ、ジャズコンサート、歌謡歌手の歌謡ショー、懐メロ歌手の歌謡ショー、などジャンルに拘らないバラエティーに富んだイベントが行われている。

またプロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体も利用している。

4階ホール

主にセミナー、講演会、市民団体の集会、お稽古事の発表会などに用いられ、落語・演芸寄席、着ぐるみヒーローショー、大道芸、パフォーマンス・ショーなどの色物などジャンルに拘らないバラエティーに富んだイベントが行われている。

またパーティー・レセプションなどの会場としてもつかわれている。

 

公開:2018年5月23日
更新:2022年9月30日

投稿者:デジタヌ


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