狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

石川県立音楽堂 《ホール音響Navi》

,

金沢駅前にある北陸屈指のコンサートホールとモダン芝居小屋

北陸二県(2軒)目のシューボックススタイルの「コンサートホール」と、回り盆・本花道設備をもつ本格的芝居小屋の「邦楽ホール」、そして可変段床設備を持った多目的イベントルーム「交流ホール」の3つのホールを備えた総合文化施設。

前奏 石川県立音楽堂のあらまし

Official Website https://ongakudo.jp/

※ご注意;

※印は当サイト内の関連記事リンクです。 但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

コンサートホール

ハーモニーホールふくい(※ホールナビはこちら)に遅れること4年の2001年に開館した、2層バルコニー席を持つ3層構造の本格的シューボックス型コンサートホール。

邦楽ホール

邦楽ホールは、北陸・日本海沿岸を通じて、最大規模・有数の設備を誇る、モダン芝居小屋。 バルコニー席を設けた全国的にも珍しい「山型天井」を備えた、伝統的芝居小屋スタイルの劇場。

交流ホール

十分な高さを持つ天井と段床競り構造の後部客席を備えた、演劇・コンサートにも利用できる平土間形式の交流ホール(多目的イベントスペース)

石川県立音楽堂の施設データ


所属施設 石川県立音楽堂。
運営団体 石川県音楽文化振興事業団。
開館    2001年9月 

付属施設・その他 

石川県立音楽堂のロケーション

所在地  石川県金沢市昭和町20番1号

(公式施設ガイドはこちら)

第1主題 コンサートホールの音響

(公式施設ガイドはこちら)

3層2バルコニー2テラスの3層構造のシューボックスコンサート専用ホール

最前部平戸間部(5列)から続くなだらかな傾斜の後半部を持つ平戸間に近いメインフロアーと、比較的緩やかな斜面の2階バルコニーと急峻な3階バルコニー席を持ち、2層のサイドテラス席を持つ構成のシューボックスコンサートホールである。

高い天井を利して、2・3階のバルコニーの低層部に対するオーバーラップが最小になるように、2・3階のバルコニー席後方が大きくホワイエ部にせり出すようにデザインされているが...。

イヤー困った施設?ではある、本当に2001年9月の開館なの?と言いたくなる。

オール木質パネルを用いたホール内壁表装

ホール側壁は全て木質パネルで表装され、上層部には装飾梁と、前部から後部にかけて次第に小さくなるサイズの異なった薄い4角錐形状の音響拡散体(※1)を配している。

但し、アンギュレーション(屈曲)を施して定在波(※2)の音響障害に対する対策(※3)をしてあるのは、ステージを含む1階メインフロアー周辺壁のみであとは「ツンツルテン」のプレーンな木質パネルで表装された垂直壁!

※1、音響拡散体については「第2章第1節 音響拡散処理と音響拡散体となる要素」をご参照ください。

※2、定在波に関する解説記事 『定在波』とはこちら

※3、 第3章 ホールデザインの基本"定在波の根絶・阻止・駆逐" 法

「残狂に拘ったシューボックスホール」

『都市伝説・良いホールの条件"残凶2秒異常"(※4)に拘るあまりにこうなったのか...?まるで音響拡散体で「厚化粧した年〇女」のようなホールである。

※4、関連記事『都市伝説・良いホールの条件"残響2秒以上"は本当か?』はこちら。

お化粧手法?の数々

ホール最上層部の台形山形音響拡散体、ステージ背面壁上層部の音響拡散体、同じく側壁に配置されたサイドテラス席、ステージ上部のむき出しの照明バトン・ブリッジ、複合ヴォールト天井...等々。

特殊メイクアップアーティスト?長田音響設計の面目躍如といったホール!

2層の軒の浅いテラスを1階フロアー両側壁に配している

側壁部に設けられた2層のテラス席(2F;122席、3F:134席)はそれぞれが2列2段のひな壇状のテラス席となっている。 さらにこの部分は「ひな壇状」配置を利して、他の部分の座席とは違い、背もたれ部が高いハイバックシートを用いた「プレミアムシート?」と成っている。

中途半端な座席アレンジ

『"壁面間隔20m超"のセオリー』(※5)で述べた通りシューボックスホールの場合は「ハノ字又は扇形段床は必須!」であるにもかかわらず、施工(建設費削減)の簡素化目的?で、1階メインフロアー後半スロープ部と2・3階バルコニーは簡素なストレート段床スロープとなっている。

又ホール前半部の緩やかなスロープ部は視認性を考慮した?ハノ字配列配列の座席アレンジとなっているが、中央部は千鳥配列になっていない!等

全てにおいて「"予算の壁"に突き当たり?中途半端な座席配置」となっている。

※5、関連記事 副則1 「壁面間隔20m超」のセオリーはこちら

巨大なアーチ天井

天井はいわゆるヴォールト(蒲鉾天井)(※6)でヴォールト面に多数の4角錐型の小型ヴォールトを配置したプラスターボード(※7)製の一体型・複合ヴォールト型反響板。

強度的には優れたアーチ構造だが... このアーチ天井は約35mR(正面図より割り出した数値)の曲面で構成されており、メインフロアーの約1/2以上の範囲が「収束範囲」内に入っている。

※6、第4章第4節 「ドームとヴォールト」等のアーチ天井の音響効果に関する解説はこちら。

※7、アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての建材メーカーの解説記事はこちら

音響収束範囲内が問題!

ここでも、音響工学音痴のデザイナーの素性が露呈している!

解説に詳述しておいたが、音響的には、本来のヴォールトは半径6mていどの小さな曲率を用い、頭上遥か上空の「焦点」で一度収束させて、焦点以降の拡散エリアを用いて、客席の広い部分をカバーする手法である。

一度クロスさせた「音場」の方が、小さな「穴凹」を表面にあしらった複合アーチ天井よりは余計な付加音の少ない(フラットな周波数特性など、トランジェントの良い)心地よい余韻(※8)を創出することができる。 (※小さな穴凹は比較的高い周波数;つまり各楽器の倍音成分の散乱には効果があるが、低周波には効果がない!)

※8、第6節 「パラボラ収束音場クロス拡散法」(音響シャワー法)とは?をご覧ください。

パイプオルガン

福井ハーモニーホール同様パイプオルガンドイツ/カール・シュッケ製のパイプオルガンを設備している。

『壁面間隔20m超』のセオリー一辺倒で押し切った定在波対策と評価について

このホールはオーチャードホール(※ホールNaviはこちら)同様に天井高さ(中央最高部高さ20.5m)に至るまで『壁面間隔20m超』のセオリーで貫かれたデザインになっている。

別稿で詳述した通り、広い反射面積を持つ対抗したフラット平行壁間では「1波長の定在波」だけではなく「1.5波長」以上の倍音列に当たる定在波も生じており、このホールでは、

  • メインフロアーホール幅;19.7m(想定定在波周波数;約17.7Hz)
  • 2・3階バルコニー・テラス席幅;約23m(想定定在波周波数;約15Hzとその倍音列約30・60Hzなどの重低音域)

でアンギュレーションを施したメインフロアー以外の2・3Fフロアーでは可聴音域(20~20kHz)の高次定在波も生じている!

両サイドテラス席のハイバックシート等観客頼みの定在波対策?
「客の入り」頼みの定在波対策?

両サイドテラスのシートは一見豪華なハイバックシートであるが、これは完全に並行した対抗面との間で生じる定在波障害をごまかすための「姑息な手段?」にしかみえない。

2階席

20m超サイドテラス席がお客様で満席になることを前提にした消極策!で簡易的な定在波障害対策で終始。

バルコニー1~3列座席も、両サイドテラスが満席であれば、定在波が生じない仕組み?

但し4番列から9番列は全席倍音列定在波ゾーン!となっている。

3階席

3階席に至っては「サイドテラスの入り」に関係なく全列全席アウト!でホール横断方向定在波の荒しである!

全風フロアーの両側壁&前列背後の後列転落防止柵?の表面に「しわを寄せた」アンギュレーション処置を講じ倍音定在波対策を講じるべきであった。

初期反響障害については、サイドテラスひな壇前列の背後面は、高さが無いので、ほぼ影響はない。

ホール背面壁

ホール背面壁は、1階と3階がアンギュレーションを施した木質プレート、2階背後壁は、親子室、調整室のガラス窓とアンギュレーションも付けていないプレーンな垂直の板壁!

つまりホール前後軸の定在波処理としてはホール真正面に「でんと構えるパイプオルガン」の設え(凹凸形状)のみ!

「可動天井反響板」を用いたステージ周りの定在波対策

但しこのホールの美点はシューボックスホールにしては素晴らしいステージ周り定在波対策にある。

格天井(※9)などを用いたトラディッショナルデザインのシューボックスホールでは、「天井デザインの統一性」に拘るあまりステージと平土間部分の被り付き部分の座席で可聴音域の「ホール上下定在波」が生じている場合が多く、聴衆のみにかかわらず「奏者」にまで定在波の実被害(※10)が及んでいることが多いが、このホールでは「ハノ字」配置の両側反響壁と「可動天井反響板」で扇形ホール同等の定在波対策が施されており、ステージ上の「奏者」は定在波から守られている。

又、天井反響板の一部は平土間部分に配置された「被り付き席」も覆っておりメインフロアーの聴衆も定在波被害から守られている。

※本来は、スラント設置されていない「垂直平行側壁部分」と「平土間部分」の処理において、「音響障害回避策」が3つ以上講じられていないので基礎点を配点50点満点x0.5=25点満点に減じるべきではあったが、今回は故岩城 宏之氏の功績と名誉に免じて50点配点に据え置いた。

また可聴帯域外の低周波振動に追いやる「デザイナーの目論見」を尊重し?満席を前提に評価した。

※9、格天井については 第4章第2節 伝統的手法『格天井』の音響効果 をご参照ください。

参※10)当サイト関連記事 定在波で起こる音響障害はこちら。

総評

次回の改修に期待する
壁面改修

よくできたシューボックスホールではあるが、2・3階フロアー両側壁がプレーンなパネルはいただけない、やはり正攻法で背後壁を1階メインフロアー同様にしわを寄せた?アンギュレーション壁面に改修するべきである。

悪くはないホールではあるが、自治体の作るホールはどうしても予算の壁に突き当たるようで、姑息な一時しのぎの個所があちこちに散見される。

ホール音響評価点:得点85点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点50点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※スラント設置されていない「垂直平行側壁部分」と「平土間部分」の処理において、
    「音響障害回避策」が3つ以上講じられていない場合は基礎点を配点50点満点x0.5=25点満点に減じます。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点18点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点12点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点5点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら。

算出に用いた値
定在波評価

基礎点B1=配点50点ー障害発生エリア数0=50点

定在波障害顕著席数;0?席

※参、倍音列可聴定在波の影響が生じている可能性のある席内訳

定在波エリア;2・3階席全域幅約23m(想定1波長基本定在波周波数;約15Hz)

1波長の「基本定在波の"節」"ミステリースポット部分;

  • 12席/2階中央19・20番席4列~9列
  • 44席2階両サイドテラスR2列1番&10から32番席(基本定在波波の"節"部分)
  • 18席/3階2列~10列の中央18・19番席(基本定在波波の"節"部分)
  • 4席/3階9&10列1&36番席(基本定在波波の"節"部分)
  • 56席3階両サイドテラスR2&L2列1から37番席

1波長の「基本定在波の"腹"」サプリズスポット部分;

  • 12席/2階4列~9列の10&29番席(基本定在波波の"腹"部分)
  • 16席/3階2列~9列の9&28番席(基本定在波波の"腹"部分)
初期反射対策評価

基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数5=20点

初期反射障害1 壁面障害席 ;102席

  • 内訳
  • 44席2階両サイドテラスR2列1番&10から32番席
  • 54席3階両サイドテラスR2&L2列1から37番席
  • 4席/3階9・10列の1&36番席)

初期反射障害2 天井高さ不足(2.5m以下)席;82席

  • 内訳
  • 38席/2階9番列全席、
  • 44席/2階サイドテラス列R/L2列1&10~32番席、)

重複カウント ;ー44席

音響障害席総計;140席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数6=14点

眺望不良席数;48席/1F平土間中央部座席2~5列11から22番

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0?席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;102席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足席;82席

重複カウント ;ー44席

音響障害席総計;188席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

コンサートホールの施設データ

ホール様式 『シューボックスタイプ』音楽専用ホール 高さ;19.7m(天井反響板下面最後部)
客席   

1F最大幅約19.7mW(2F・3F推定最大幅23.m)x長さ約39m(大向こう壁面→オルガン背後壁面)最高部高さ20.5m(反響板下面最後部) 3スロープ3フロアー、収容人員1560席、

  • 内訳;1F;704席(車いすスペース8台)、2F; 414席(テラス部:122席)、3F:442席(テラス部:134席)、親子室x2室、フローリング、
舞台設備 オープンステージ形式

 間口;最大19.7m、最大奥行12.9m ステージ高さ;FL+80cm、高さ19.7、ステージ天井高さ;最高部高さ;StL+19.7m、バトン類高さ;標準設定StL+15m、
上部反響板(高さ可変3枚セット)、オーケストラ平台、ひな段用けこみ、
パイプオルガン、フルコンサートピアノ(スタインベック、ヤマハ)
各種・図面・備品リスト&料金表
座席表(客席配置図)はこちら
フロアー配置図;1階客席&フロアー2階客席&フロアー3階客席&フロアー、
施設別図面;舞台平面図舞台断面図ホール(客席)断面図)、ホール(客席)正面(立面)図

クローク備品リストはこちら、
付属施設 
主催者控室、応接室、洋室楽屋X10(一部シャワー室付き)、シャワー室(男女各々x1)
バーコーナー、クローク、ホールホワイエ、
施設利用(付帯施設利用料金等)案内 はこちら。

第2主題 邦楽ホールの音響



(公式施設ガイドはこちら)

北陸屈指の「モダン芝居小屋」

最大727席の小ホールにしては間口約24mx2階部分奥行き約21m高さ14.5mの大きな客席を持つ立派なモダン芝居小屋。

プロセニアムを持つ舞台形式は、日本の誇る伝統芸能・舞台芸術に、フォーカスした舞台設備(直径7間の回り舞台、大迫り、小迫り、分割迫り、可動花道!)と残響時間1.2秒以下と言う音響特性で本格的な歌舞伎公演、人形浄瑠璃(文楽)、日本舞踊、その他の伝承芸能に最適な、北陸屈指の「芝居小屋」となっている。

周囲に桟敷席(テラス席)を配した、伝統的芝居小屋形式の2層2階の芝居小屋で有りながら、現代の需要にマッチするように、座席を配置したモダン芝居小屋となっている。

芝居小屋として申し分のない立派な舞台設備

ステージ機構として直径7間の回り舞台、大迫り、小迫り、分割迫りを、日本の伝統芸能独特の「本花道」を設置可能としている、さらに、幕設備として定式幕はもちろん、緞帳、ヒキワリ幕などの多数の幕設備、舞台照明ブリッジや多くの美術バトンを備えて要る。

音響反射板

「モダン芝居小屋」らしく、筝、尺八、三味線などの邦楽演奏の際には、楽器の生の音を客席に伝えるため、正面、側方、天井面に、音響反射板を仮設することが出来る。

芝居小屋に適した壁面構成

1階側壁はプレーンな木質壁で上縁が木組み格子の立派な木製プロセニアムを持ち、プロセニアム周辺壁と2階壁面は壁紙で表装した和室仕立ての木質パネル。

天井は天井梁を露出させた和風の山形天井。

『"壁面間隔20m超"のセオリー』で定在波対策

大ホール同様に間口約24m(1階桟敷の高床囲い間が約19m)x奥行き約20.8m/上部プロセニアム→2階大向こう壁面間で『"壁面間隔20m超"のセオリー』を適用して定在波対策を行っている。

但し大ホール同様に壁面はプレーンなパネルで表装されている為に壁面間では倍音列の定在波は生じている!

天井は山形で床との平行面(定在波)をキャンセルしている。

最新手法を用いた音響設計

露出タイプの側面照明コラム、や照明バトンなどの流行のデザインを採用し、シャンデリアや桟敷、張り出した後部照明テラス等違和感のない程度の残響創出にも配慮している。

総評

大径の和太鼓さえ使わなければ問題なし!歌舞伎などでは多少床が響いたほうが迫力が出てよし!?

ホール音響評価点:得点89点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点50点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※客席側壁が ホール床面積の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な平面壁」で囲まれているときには 配点25点に減ずる。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点20点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点15点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点4点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら。

算出に用いた値;

定在波評価

※本花道設営時は、1階下手側の5番席は本花道となり実質被害席ではなくなるが、今回は、「邦楽ホール」として、長唄、舞踊などの公演を前提にフルスペック727席仕様で評価した。

また、定在波の実障害は生じていない?として基礎点50点は据え置いた。

基礎点B1=配点50点ー障害発生エリア数0=50点

初期反射対策評価

※壁外で表装した木質パネル壁として素材基礎点を設定しました。

基礎点B2=素材基礎点23点ー障害発生エリア数2=21点

初期反射障害1 壁面障害席 ;20席/2階サイドテラス席全席

初期反射障害2 天井高さ不足席;0席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;20席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数3=17点

眺望不良席数;39席/1F平土間中央部座席2~4列8~22番席

音響不良席その1 定在波実障害席 ;0?席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;20席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(2.5m以下)席;0席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;59席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

邦楽ホールの施設データ


ホール様式 プロセニアム形式『モダン芝居小屋』

客席  

間口約24mx奥行き約21m/2階、2スロープ2フロアー
収容人員727席(花道使用時 691席)、タイルカーペット敷
内訳;1F(桟敷席、車いす5台分)、2階バルコニー&サイドテラス席。

舞台設備 

;幅約30?、ステージ奥行約15?、プロセニアム・:間口16.5m(約9間)x高さ6.3m、ステージ高さ;FL+90cm、ブドウ棚、バトン類
脇花道、本花道(すっぽん迫り付き)、回り盆(回り舞台;直径直径7間12.7m)、大・中・小迫り、所作台、演台、花道用所作台、
松羽目、竹羽目、金・銀屏風、鳥の子屏風、鳥屋囲・日舞用あてものパネル、地絣、紗幕・浅葱幕・定式幕・ホリゾント幕、中ホリゾント幕・紅白幕・緞帳、映写スクリーン。
仮設能舞台セット、寄席セット、
反響板、平台、ひな段用けこみ、スモークマシン。

付属施設 


楽屋和室x6、洋室X3、邦楽練習室、主催者控え室等、浴室、他。
その他の備品 和太鼓(口径不詳)

各種・図面・備品リスト&料金表

標準座席表(客席配置図)はこちら、本花道設置座席表はこちら

施設別図面;舞台平面図舞台断面図標準仕様ホール1F平面図本花道仕様ホール1F平面図ホール2F平面図ホール(客席)断面図

施設使用料金表(&備品利用料金表含む) はこちら。

第3主題 交流ホールの音響

(公式施設ガイドはこちら)

幅約20m、最大奥行き約27天井高さ約8.4m、9分割迫り上がり舞台(※10)、客席も9段床迫りでスロープ配置可能な設備を持つカラクリ小屋。

このホールも平面的には「20m超のセオリー」でデザインされており、平面方向の可聴帯域内の基本定在波は生じていないが、4周が平面パネルで表装されたプレーンな壁面なので倍音列の定在波は生じている。

床面はフローリングでそれなりに丁寧な設え。

※10、その2、アダプタブルステージ についてはこちら。

簡易的な遮音デザイン

音響的には特別な配慮はされておらず、地下1階、地上階共にホワイエとは簡単な金属製の遮音パネルを用いたパーティションで仕切られ、音響ロックは2重にはなっていない。

部分的に有孔音響ボードで表装した簡易遮音壁

基本地階メイン周囲はオープンの通路になっており、スライドタイプの簡易遮音壁で区切る、分割利用可能な会議室と同じ手法。

ネックはスチール吸音パネルの釣り天井!

天井は水平設置!の事務所用難燃性天井材のスチール製(表面有孔スチールパネル+吸音材)の有孔音響遮音パネルの簡素な作り。(でこれが結構反響する!/実体験より)

前半約7.3m後半8.4m、最上部2階の立見席(通常キャットウォーク部)の天井が4.5mのそれぞれ「完全水平の釣り天井」になっている。

迫り上がり舞台、段床競り客席を利用して小規模な室内楽コンサート等が開かれる時もあるが主にイベントホールとして使用されておりコンサートには余り使用されない!

第1変奏 デジタヌの見聞録

以下実体験レポート

モニター時は段床を用いない平土間構成であったが、天井もスチール製の有効音響遮音パネルの簡素な作りで結構反響していた。(実体験より)

天井の遮音パネルを撤去してみては?

公表されている断面図では天井部分本体(2階コンサートホール床)はスラントしているので、いっその事安っぽい天井の遮音パネルを撤去し、軽量アルミ格子とネットで表装し直した剥き出し天井(※11)に改修したほうが、良い結果を生みそうではある。

但し、パンフでは本格的コンサートに対応しているとなっているが、あくまでも簡易的な遮音構造なので、本格的なサロンコンサートには向かない?

※11、「剥き出し天井」の効果についての詳述は第7節ホール構造体剥き出し天井の音響効果 をご参照ください。

少なくとも以下の2点でコンサートは不可能?

まず消防法(市条例?)定員の平土間300席配置は不可能?

まずステージを0.6m高さに設定したとして24席x11列が限度で264席が精いっぱい!で平土間でしうか300席は無理!

平土間構成では定在波回避は不可能!

次に前半約7.3m後半8.4m、上標準60cm高さのステージで天井高さ6.7mの完全平行部分でそれぞれ

  • ステージ上; 約52Hz/28℃・1013h㎩
  • 客席前半; 約48.5Hz
  • 客席後半;約41.5Hz/28℃・1013h㎩

の可聴音上下軸定在波が発生し、ピアノ等では最低音域で支障(※12)が出る!

※12、定在波で起こる音響障害『ミステリーゾーン』はこちら。

客席の定在波被害を最小限に防ぐには

段床カラクリを用い、9段の段床をつくれば段床部分での上下定在波には対処できるが、後部5列が幅約16.8mの地上階側壁部分に挟まれ約21Hzの可聴音重低音ホール幅方向定在波の餌食に!

そして最前列2列はそのまま約48.5Hzの上下定在波エリアに但し上下定在波は頭部(耳)の高さがフロアレベルから約1m程度つまりこの部分の天井高さ7.3mの1/7程度の「定在波の腹」になり、低音域がダンプされて聴きやすいかもしれないが同時に倍音列定在波の生じているので100Hz前後の低域で著しく周波数特性が乱れている可能性があり、ごホールご自慢のスタインウェイフルコンサートピアノも本領を発揮できないであろう!

更にはいずれの客席アレンジでもステージ上では上下方向52Hzとその倍音列定在波、19.8幅方向約17.6Hzとその倍音列の定在波が襲っており、ピアニストにとっては本番はおろかリハーサルでもたいへんであろう。

ルーム音響評価を適用

ということで多目的イベントスペースとしてルーム音響評価を適用します。

ルーム音響評価点:37点
§1「定在波対策」評価点:12点/50点満点

※段床スロープを用いたとして

  • ※ルーム低層部がプレーンな垂直壁で囲まれ、天井・床面を含む「並行した対抗面」が1対以上ある場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
§2「初期反射」対策評価点:15点/50点満点
  • ※ルーム低層部壁面3面以上がアンギュレーションやカーテン設備などが無い「プレーンな壁面」の場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。

交流ホールの施設データ

ホール様式 平土間型式多目的ホール

  • 最大幅;約19.8mx最大奥行き約26.8m(ステージ背後壁→2階背面通路・立ち見席背後壁間)
  • 最高部高さ; 約9.45m(メインフロアー→吊り天井下面)
  • 実効高さ;約8.4m(床→客席後部天井)

客席   1フロアー( 1スロープ)コンサート使用時定員300席(消防法上の規定?)

  • ホール壁面幅19.8m
  • スロープ;9段(9分割)スラント型可動式階段迫り
  • 段床幅;14mx1.38mx9段(階段部29段幅約16.9m)


舞台設備 

  • オープンステージ形式9分割アダプタブルステージ(可動床)
  • 間口16.8mx奥行き9mxステージ高さ4段階可変設定;0、0.3、0.6、0.9m
  • ライトバトンx7(サイドバトンx2含む)、美術バトンx4
その他の設備 

、控室X2、

各種・図面・備品リスト&料金表

終曲 デジタヌの呟き(総括)


石川県音楽堂の設立趣意に共感した故岩城博之氏がオーケストラ・アンサンブル金沢を創設・育成力し後半生を通じて世界的オーケストラに育て上げてくださった功績にあやかり、施設名称が「石川県音楽堂」と呼称されているが、本来は「石川県総合舞台芸術センター」と呼ぶに相応しい施設で有るとおもう。

岩城先生は決して満足しておられなかったのでは...?

先生は「ホールごとにテンポ設定を変える」(※13)等「音楽の間(ゼネラルパウゼ;全休符)」を大事にされていたアーティストの一人であった。

そんな先生だから、リハーサルでは「ステージ上の指揮台」だけではなく、時にはアシスタントに指揮を任せ客席で「ハーモニーのバランスを確認」されていたに違いない、そんな先生は決してこのホールに満足はされていなかったと思う?

音響化専門家の間では「ザ・シンフォニーホール」(※ホール音響ナビはこちら)誕生以来シューボックスホールにおけるホール後半部座席の音響に「問題が生じやすい」事は公知の事実であり、定説化し、半ば諦めているようでもあるが...。

...が? 小生に言わすとこれは「あまりにも無責任な姿勢である!」 諦める(音響設計を放棄する?)なら、ホール後半部には客席を設けるべきではない!

客席を設置するからには、音響デザイナーが「責任ある態度で処置」を講じて、「聞くに堪えうる音響環境」にシェープするべきである。

※13、第1章第3節 良いホールとは「違いの分かるホール」でなければならない! 作曲家の池辺真一郎氏の体験談 はこちら。

体験レポート評

(※本項は2018年5月3日のコンサート体験に基づくレポートです!調査位置(聴取位置)3階8列16番)

収容人員を欲張ったしわ寄せが3階バルコニーに...
3階バルコニー部は

急峻なスロープのおかげで見晴らしはよいが、大向こう部分の天井高さ(約2.85m)がやや不足している。

さらに施設案内にはない「立ち見席」が、主催者判断で設けられいた配慮は褒められるが、この天井高さで立ち見(立ち聞き)はないでしょう!

さらに両端(壁際)に「コーナー席」を設けたのは明らかに「セオリー(※14)破りの愚行」であったのではないか?

8から10列のそれぞれ5席併せて10席と大向こうにあたる10列13番~24番の席は「音学を楽しめる」様な環境には無いと思われる!

※14. 第3章 ホールデザインの基本"定在波の根絶・阻止・駆逐" 法

ヴォールト(蒲鉾天井)について

シューボックスホールの欠点の一つは平行する対向面が多く「定在波」が発生しやすい点にある。

大型のパイプオルガンを備える施設として、定在波対策にはこだわり?前途したように天井高さに至るまで"壁面間隔20m超"のセオリーを適用し更にメインフロアー内壁にはアンギュレーションを設けるなどの配慮も見られ?、その一環として、平戸間に近い床面を持つホールの上下軸「定在波」対策としてヴォールト天井が用いられたのであろうが...。

天井高さ(ヴォールト最高部高さ)が約20mもあるのだから、曲率半径6m程度のヴォールトをせめて2列、できれば3列並べるべきであった。

こうすることによって、メインフロアーのかなり上空(天井から6m、地上12m3階バルコニー軒先程度)で焦点が結ばれ、焦点以遠となるメインフロアー客席では、周波数特性に山谷の無い平坦な音響特性が得られたように思われる。

都市伝説?良いホールの条件「残響2秒以上」の悪影響!

木質壁面であるので、初期反射音(エコー)自体は耳障りでは無かったが、この壁面(プレーンで倍音定在波てんこ盛りの環境)で後期残響2秒異常?は"異常"に長すぎる!

今回のリスニング位地3階8列16番では直接音に対して後期残響(&定在波の悪影響※15)のレベルが大きすぎ、実際の測定(RT60法)では2秒を遙かに超えているのでは無かろうか?とさえ思えたぐらいであった。

定在波対策を見直したうえで、現状の「カラオケルーム並みの音響」をもう少し改善して欲しい気はする。

※15.、第2章第2節『ミステリーゾーン』で起きる現象はこちら

音像と定位はまあまあであった

小生の調査ポイントでは各楽器の定位は極端には悪くはなく、方向感覚を損なう(※12)程では無かったが(定在波の悪影響により周波数特性の乱れた)この環境で響きすぎるのは良くないし!小生の好みでは無かった!さらに各楽器の音像がぼやけ、音色も変化していたように感じた。(他ホールとの比較)

というわけで3階すべてのエリアはお勧めできない!

参※12)当サイト関連記事 第2章第3節『ミステリーゾーン』で起きる現象はこちら。

コンサートホール以外の邦楽ホールや交流ホールの影が薄くなっているように感じる

邦楽ホール

特に、北陸唯一の本格的芝居小屋である本施設は日本の伝統芸能を世界に向かって紹介できる施設として もっと宣伝しても良いのではないか。

豆知識

石川県立音楽堂へのアクセス
最寄りの駅 

JR金沢駅東口より徒歩1分

マイカー利用の場合

有料駐車施設(152台)があるが、金沢駅前にあるので、公共交通機関の利用がお進め。

石川県立音楽堂がお得意のジャンル

いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭

2017年より旧ラフォルジュルネ金沢に代わり装いを一新して、改めてゴールデンウィーク「春の音楽祭バーゲンセール」に新規参入した「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭」のメイン会場となっている。

コンサートホール

オーケストラ・アンサンブル金沢のフランチャイズ 故岩城宏之氏が創設したオーケストラ・アンサンブル金沢のフランチャイズとして定期演奏会場として使われている。

またオーケストラ公演以外にも、ソリストのリサイタル、アンサンブルの演奏会等、小編成の室内楽コンサートなどが行われている。 プロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体が利用している。

邦楽ホール

伝統芸能以外にも、お稽古事の発表会などに用いられ、ジャズコンサート、小編成バンド、のコンサートや落語・演芸寄席、大道芸、パフォーマンスショーなどジャンルに拘らないバラエティーに富んだ催しが行われている。

交流ホール

主にセミナー、講演会、市民団体の集会、お稽古事の発表会などに用いられ、ジャズコンサート、小編成バンド、のコンサートや落語・演芸寄席、大道芸、パフォーマンスショーなどジャンルに拘らないバラエティーに富んだ催しが行われている。

石川県立音楽堂の公演チケット情報

コンサートホールで催されるコンサート情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら。

邦楽ホールで催されるコンサート情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら。

石川県立音楽堂以外の石川県のホール

石川県のホール』まとめナビ のメニューテーブルはこちら

 

公開:2017年9月10日
更新:2022年9月30日

投稿者:デジタヌ


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