旅するタヌキ

神奈川県立音楽堂 《 ホール 音響 ナビ 》故スビャトスラフ・リヒテルが「東洋一の響き」と評した逸話が語り継がれている戦後日本初の コンサート専用ホール

,

建築音響設計面から眺めた神奈川県立音楽堂

(公式ガイドはこちら)

コンサート専用ホール

ホール一体型オープンステージコンサートホールへの1里塚

プロセニアムを持たない反響板がホールと一体化するデザインのホールの走りでは有るが、伝統的な緞帳を備えた過渡期的なデザインのホールでもある。

ホールの壁面はすべて「木」

ホールの壁面はすべて「木」で作られており、開館当初より、響きの良さで定評があった。

合理的な平行壁面対策

ホール周辺反響板と扇形部分の1階スロープの周辺壁はフラットな形状。

1階客席上層部と2階平行壁部のスロープ部分の側壁は、対向面の初期反響を軽減するためと後期残響創出目的で山形形状の屏風状壁が取り囲んでいる。

更に大向こう客席上部には折り上がった反響板がセットされていおり、ステージとの間で起こるエコー(初期反響)軽減に配慮されている。

モダニズム手法でデザインされた簡素なホール内部

モダニズムの巨匠らしく、簡素でいて細部にまで心配りされた心憎いデザインは、1982年にザ・シンフォニーホールが登場する4半世紀前の残響(初期反射と後期残響)の概念(※1)が定着する以前のホールデザインとしては、秀逸である。

但しディティールデザインについては、東大生産技術研究所 渡辺要研究室 石井聖光 氏の助言があったモノと思われる。

それにしても、ネオロマネスク調の装飾に頼らず、直線と単純な曲面だけで構成された、プレーンな面構成を用いたモダニズム手法で、当時としては飛び抜けた音響特性を創出したデザイナーの力量には感服するが...

「定在波(※2)」対策

この手のシューボックスホールで問題となる部分、つまりホール最後部において、気が抜けたかのように、並行面対策をぬかっている!

故にこの部分で1点減点。

「初期反射(※1)」軽減対策

アンギュレーションを持たせた木質パネルの側壁で概ね良好だが、18番列より後方客席が「壁際までびっしり」は頂けない!

よってこの部分で1点減点。

「後期残響(※1)」への配慮

当時は、ロマネスク様式ホールの石柱の上に乗っている「梁台座」や、柱と梁の継ぎ目にある「ガセット(コーナー補強版)」や側壁の「レリーフや彫像」の音響的意味合いが解明されていなかった?時期なのでしょうがないが、現在では「音響拡散体」として後期残響生成に重要な役割を果たしていることは知れ渡っている。

たぶん石井聖光先生もこのことは助言なさったとは思うが、「ロマネスクホール」に嫌悪感?を抱いておられる、モダニズムの若き志士「前川先生」としては、簡素な壁面に執着なさったのであろう!

趣旨は分からなくもないが、「音響拡散体」が配置されえいないので1点減点。(後年の先生の作品埼玉会館などでは、上層部に深い溝を持つアンギュレーション壁で、ガセット同様の効果を出しておられる)

客席配置

定在波の項でも述べたが後半部分の客席が両側壁までびっしり詰め困れているのはいただけない。

よって2点減点。

さらにステージ直前の座席数列が千鳥配列配置になていないので、さらに1点減点させていただいた!

定在波の最たる現象「ミステリースポット」

この機会に説明(弁明?)させていただくが、配点において「定在波」に重きを置いているのは、一番「悪影響」が出易いからである。

楽器(音色)が消えうせるミステリースポット!

定在波(※1)のために、リスニングポイントで、周波数のうねり(山・谷)が生じ、最悪特定の周波数が「消失」するエリアができてしまう、言い換ええると「音色が変化」する訳で、最悪特定の楽器が聞こえなくなる現象すら発生する!

このことは、残響の概念が輸入?される以前から音響建築学の専門家の間では知れ渡っていたことで、「大熊講堂」を共同設計された佐藤武夫先生などが多くの研究をなさっており、古くから経験的にわかっているホールデザインの「セオリー」(※3)をひとつづつ検証し数多くの論文を発表なさっている。

デジタヌの独り言

電子計算機等は高価で日本には数えるぐらいしか輸入されておらず、ソロバンと計算尺が工学計算では主流で、携帯型テープレコーダー、小型ハイファイマイクロフォン、半導体アンプ、高性能ハイファイスピーカーなどの機器も皆無であった1954年当時どうやって音響測定・分析したのであろうか?非常に興味深い!

(有名なダイヤトーンP-610が市販されたのは1960年)

東通工(現ソニー)が国産テープレコーダーを発売したのが1950年

日本初のトランジスタラジオ「TR-55」の発売が1957年

ホール音響評価点:94点

§1,「定在波」対策評価点:39点/40点満点

  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、天井形状、天井高さ、等の要素をそれぞれ減点法で算出。
  • ※客席側壁がプレーンな垂直壁で「完全平行・平面」の場合は、満点x0.5=20点をベースに算出。

§2、残響その1 「初期反射」軽減対策評価点:19点/20点満点

  • ※壁面の素材・形状、客席配置、その要素で減点算出。
  • ※(コンクリート、人造大理石、タイル・陶器製などの)硬質材の客先周辺壁材仕様は、満点x0.5=10点をベースにして減点算出。

§3,残響その2「後期残響」への配慮評価点:19点/20点満点

  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で減点算出。

§4,客席配置への評価点:17点/20点満点

  • ※壁際席、大向こう席、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で減算。
  • ※客席周辺壁材が硬質壁の場合は、満点x0.8=16点をベースに減点算出。

※関連記事「後悔しないコンサート会場の見分け方」まとめ  はこちら。

神奈川県立音楽堂のあらまし

Official Website http://www.kanagawa-ongakudo.com/

1885年4月18日横浜居留地に出来た日本初とされる「ヨコハマ・アマチュア管弦楽団」から面々と続く西洋音楽の歴史を誇る町「横浜」。

その横浜に1954年隣接する神奈川県立図書館とともに開館したのが、戦後初めての「コンサートホール・神奈川県音楽堂」。

この成功がその後の、1958年のフェスティバルホール開場、1960年の旧京都開館、1961年の東京文化会館、そして1982年のザ・シンフォニーホール誕生と日本における「コンサートホール」建設機運を高めたとも言える。

1999年に日本の近代建築20選(DOCOMOMO JAPAN選定 日本におけるモダン・ムーブメントの建築)に選ばれ、2018年から保存に向けて改修工事を実施することになっている。

神奈川県立音楽堂のロケーション

所在地  横浜市西区紅葉ヶ丘9-2

JR根岸線桜木町駅の北西部に位置する掃部山公園内にある。

この公園には、音楽堂と同時に建設された神奈川県立図書館、そして当館と同じ故前川國男先生の作に成る1962年開館神奈川県立青少年センター、1996年開館の横浜能楽堂、が有る文化エリアとなっている。

横浜市と周辺にある観光スポットについてのトリップアドバイザーの 口コミ ナビはこちら。

神奈川県立音楽堂へのアクセス

鉄道・バスなどの公共交通

JR桜木町駅徒歩10分、京急・日ノ出町駅徒歩10分

マイカー利用の場合

(※関係者専用駐車設備で一般車両は駐車不可、また近隣1㎞以内日出町駅、桜木町駅周辺にも複数の民間有料駐車場があるが、駅から歩いたほうが早いので公共交通機関利用がおすすめ)

首都高速みなとみらいランプより約8分/1㎞

神奈川県立音楽堂が得意のジャンル

年間を通じ数多くのクラシックコンサートが開催されている。

プロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体が利用している。

室内楽、ソリストのリサイタル、アンサンブル団体によく利用されている。

更にはジャズコンサート・邦楽リサイタル等ジャンルを選ばないクロスオーバーな使われ方をしている。

神奈川県立音楽堂の公演チケット情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら。

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

詳細データ

(公式ガイドはこちら)

  1. 所属施設/所有者 神奈川県立音楽堂/神奈川県。
  2. 指定管理者/運営団体 (公財)神奈川芸術文化財団/神奈川県。
  3. 開館   1954年11月4日
  4. 設計  前川國男建築設計事務所
  5. 音響設計 東大生産技術研究所 渡辺要研究室 担当/石井聖光 
  6. ホール様式 『扇形タイプ』コンサートホール。
  7. 客席  1スロープフロアー、収容人員;1,106人(客席配置図・座席表はこちら1)
  8. 座席数1,054席(固定席966席、可動席88席) 立見52人
  9. 舞台設備 ステージ、間口19.4m 奥行7.4m(張り出し舞台使用時8.6m) 高さ8.8m。

    オーケストラひな段(3段)、オーケストラピット(34.5m2)、
    張り出し舞台、割りどん帳等舞台装置一式

  10. 施設利用(利用料金等)案内詳しくはこちら。
  • 各種図面,備品リスト&料金表。

付属施設・その他 

  • ※リハーサル室、特別室、控室、等
  • 共用施設配置図・フロアマップこちら。

神奈川県立音楽堂のこれまでの歩み

神奈川県立音楽堂これまでの歩み
1954年11月4日に開館した日本初のコンサート専用ホール。

2018年4月から1年間掛けて耐震補強等の改修を行う。。

神奈川県立音楽堂のある横浜市とこれ迄の歩み

神奈川県

推計人口、9,161,113人/2018年4月1日

2018年現在 都道府県別の人口は東京都に次ぐ全国第2位!

で県内総生産は東京都、大阪府、愛知県に次ぐ第4位となっている、つまり首都圏にある帝都・東京のベッドタウンということになる。但し県内には政令指定都市数が3つ(横浜市、川崎市、相模原市)あり都道府県含めて最多となっている。

横浜市

神奈川県の県庁所在地。
推計人口、3,731,706人/2018年4月1日

横浜―品川 16分/¥300/京急/22.2㎞

参照覧

※1、直接音、初期反射音、残響音についての(株)エー・アール・アイさんの解説はこちら。

※2、定在波の悪影響に関する解説記事はこちら。

※3、関連舞台解説記事「芸術ホール設計のセオリーとは?」はこちら。

「都市伝説・良いホールの条件"残響2秒以上"は本当か?」はこちら

 

公開:2017年9月26日
更新:2019年2月 6日

投稿者:デジタヌ

このエントリーをはてなブックマークに追加

横浜みなとみらいホール 《 ホール 音響 ナビ 》クイーンズスクエア横浜 内にある横浜市の誇るクラシック音楽の殿堂TOP神奈川県立県民ホール 《 ホール 音響 ナビ 》


 

 

 



▲このページのトップに戻る
▲神奈川県 の劇場 コンサートホール ナビへ戻る

 

ページ先頭に戻る