狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

『建築音響工学総覧 』第1巻 地方公共団体のホール計画

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要約》芸術ホールは「身の丈にあったコンセプト」作りから

新耐震基準不適合と施設老巧化を「錦の御旗」に、数多くのホールリニューアル計画が水面下で検討されているようだが、いずれの計画も「最初に(興業)規模ありき」では...

自治体の「身の丈に合った規模と予算」で堅実なホール計画をすることこそ一番大事なのではないでしょうか?

本項は理工系出身の自治体施設課・建築課の担当者に捧げる「失敗しない・ホール計画の手引き」講座シリーズ総集編として、芸術ホール計画を総括したコラムです。

工科系出身の建築課担当者に贈る「設計コンペ」の評価ポイントのガイド集としてまとめてみた。

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第1巻 地方公共団体のホール計画 の目次

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前書き 形ばかりの「ヒアリング」や「アセスメント」ではコンセプトは作れない!

全国いずれの自治体のヒアリング調査でも、

  • ●プロモーター側は収容人員2000人超規模の大型多目的ホールを要求。
  • ●利用者(市民団体)は数百人規模の小規模ホールを希望する。

結局は行政当局者の再就職先(土木・建築業界)への「ご祝儀・手土産?」目的なのか、巨額の債券(借金!)を発行してまで、分不相応な巨額投資を行っている"痴呆自治体"が多いのが現状の様です。

そしてこの傾向は大都市の周辺自治体に特に多く見られる様でもあるようです。

(ネ、明治時初期に立派な1つの県を任されていた元県庁所在地さん!※関連記事はこちら。

身の丈に合った施設計画を!

現在新規計画中の行政担当者の方は今一度立ち止まって冷静に考えてみられては如何だろうか?。

「資金の目処」どころか、「敷地の目処」も立っていないのに、いきなり「収容人員」から設定するのは「おかしい」とお思いになりませんか?

愛知県や横浜市に代表される「大規模ホールに相当する収容人員」を「狭い敷地に建てた中規模施設」に無理やり収めた結果、「悲惨な施設」と化している例は全国至る所で見受けらる。

先ずは、用地(候補地)の目処と、無理の無い資金計画で、身の丈に有った施設計画を建てるべきでは無いでだろうか?

自治体当局の担当者の貴方も個人宅の新築ならそうするでしょう!

人の金(税金)なら、高級車を乗り回して豪邸(ホール)を建てても良いのですか?

プロモーターが「まことしやか」に持ちかける「捕らぬタヌキの皮算用」!

大都市周辺自治体がプロモーターの意見通りに作っても、毎日2000人を呼べるコンサートやミュージカルが興業できるわけではありません!

更に隣接している大都市には既に「有名な大ホール」は幾つもある場合がほとんどです。

★序章 ホール建設計画は『資金計画と敷地確保』から

公共ホールも個人宅も、先ずは資金の目処を立ててから

現在全国の痴呆自治体?で、新耐震基準不適合と施設老巧化を「錦の御旗」に数多くのホールリニューアル計画が水面下で検討されているようだが...

計画が公表されている分や、既に計画実施・建設中の施設計画のどれを見ても、「最初に(興業)規模ありき」の検討案に終始している様に思えて成らないのは小生だけでは無いと思うのだが?

お金も無いのに、収容人員を欲張ってはいけません!

地方都市(大都市近郊ベッドタウン)では芝居小屋(演劇ホール)をメインに

衛星都市の大規模多目的ホール(&コンサートホール)は(都道府県庁所在地の大都市の大劇場との)競合も多く興業・招聘、集客共に運営困難に陥りやすい!

特に、主要幹線鉄道(&新幹線)から離れた政令指定都市では、大都市の陰に隠れやすい。

大都市周辺都市では、集客の容易な中規模(1000人前後)の良質の演劇・演芸ホールと小規模(600人前後)な音楽専用ホールの組み合わせが運営(興業)面でも有利。

観客心理

ウィークデーのコンサートはなるべく仕事場周辺(大都会)で、休日の娯楽・歌謡ショー程度なら地元でも...。

大都市の周辺都市では大規模多目的ホール(2000人超)は失敗しやすい

専用設計に比べ、ピントがぼけやすく、特に予算が乏しい自治体が建設した「安普請のホール」では、多枝に渡り中途半端な『多目的(にわたり使い勝手が悪い)ホール』に成りやすい。

集客以前の問題として「公演招聘競争も激しい」

あの「ザ・シンフォニーホール」(※ホール音響Naviはこちら)でさえ、これが理由で身売りをした! 

更に、興業を打てたとしても、ほとんどの聴衆(市民)は"ベッドタウン"から遠く離れた大都市に通勤している!

ホールの近くにある田舎町の市役所で働いていらっしゃる、施設担当者の方は「仕事帰りにコンサート...」となるかもしれないが...

多くの市民は近隣大都市で働いており、オフィスからも自宅からも遠く離れた途中駅にわざわざ途中下車してまで「おらが町の市民芸術文化ホール」に立ち寄るとは思えない!

それに下手をすると、開演に間に合わず「途中入場」となってしまいかねない!

例え市域の町外れの工業地帯にマイカー通勤していたとしても、岐阜県県民ふれあい会館(※ホール音響Naviはこちら)のように数千台規模の駐車設備でも無い限り仕事帰りに立ち寄ることなどまず不可能!

「市民芸術文化ホール」処か,最寄り駅周辺商業地域の駐車施設確保にも困窮している有様の自治体がほとん。(そうですよね,堺市さん?)

ある大都市近隣の地方都市の例

これまであった1965年開館の大ホール(収容人員1,395席)でチケット完売・満員御礼の公演が一体どれほどあったのか...?。

大型施設を決済した「太っ腹な市会議員」の皆さん方、

その大きなお腹(太っ腹)に手を当てて思いだしてみてはいかが......?

つまり収容人員2,000人超という数字は、

「全席完売したら、(プロモーターや指定管理者)が大もうけできる」

数字であって入りが悪ければ、ツケは市当局すなわち市民の血税で補填する結果となるのは目に見えています。

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★第1章 立地のセオリー

まずは街はずれにある「閑静で広大な敷地」確保から

公共ホールにとって、立地は重要な項目で、大都市の商業ホールでは重要となる鉄道主要駅、からのアクセスの利便性よりも、先ずは(騒音・振動問題が無い)"環境"の良い立地条件を確保できることが需要になってきます。

主要駅駅前に拘ると「虻蜂取らず」で悲惨な結果に!

むしろ、幹線道路、鉄道からはできるだけ離れ、航空路直下をさけて、閑静な住宅地の付近に立地するのが良作で、集客を優先し鉄道路線の主要駅の傍に建設しても、騒音振動対策に莫大な予算を振り向けなければならないし、しかも言っては悪いが所詮田舎町では、態々出かけてくる来場者も限られてくる!正しく「虻蜂取らず」の状況となる!

多少のアクセスの悪さは市民にとって問題とはならない!

多少不便でも、主要駅から離れた、市街地周辺ならば、しかも駅前の一等地?よりは、土地確保もたやすいし「駐車場その他のアクセス補助手段に予算を振り向けられる」

無料駐車場さえ完備されていれば、自宅に帰ってから出直すことも可能になってくる。

市民が誇れる素晴らしいホールは...

芸術に対する「理解と見識」が有り、ホール(設計)にも詳しい建築担当者がいらっしゃる自治体の「公共ホール」は素晴らしく(※例1)。

芸術・芸能に無知な「自治体長」の異見?にど素人の管財人が振り回され、しかも「見識のある技術者も在籍していないような「痴呆自治体?」のホールは「見かけ倒しで出来が悪い施設」(※例2)が多いようです。

※例1 2016年5月8日 開館長野市芸術館 《 ホール 音響 ナビ はこちら。

※例2 1998年竣工 リビエールホール 1175席/大ホール(※「お粗末極まりないホール」の音響Naviはこちら

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★第1節 環境が悪ければ"楽器としての銘ホール"は生まれない!

無理な立地は遺恨の基!

狭い敷地に無理矢理、大型ホールは禁物です、後々遺恨を残すこととなります!

1)線路には近づくな

『線路の間際は最低と心得よ!』

最低10m(歩道付き2車線)以上の側道か、幅5m以上の堀or用水路で隔てる事。

2)航空路の直下はダメ

空港の近隣では離発着航空路の真下は避けろ。

3)城跡・溜め池を探せ!

平城跡利用

回りを「お堀」と「土塁」に囲まれた平城(ひらじろ)の跡地は最高の立地!(※例3)

※例3、旧・秋田県民会館(※ホール音響Naviはこちら)など

溜め池利用

城が無ければ、溜め池、用水路際が...。

溜め池(人造湖)の一部を埋め立てしっかりした基礎で、頑強な建物を建てれば、あとは防音だけでOK。(※例4)

※例4、宮崎市民文化ホールのホール音響Naviはこちら富田林市市民会館のホール音響Naviはこちら

都市部河川の中州利用

同じ理由で「中之島」と呼ばれる、大河の河口に開けた平野の「中州」を利用するのも手。(※例5)

※例5、札幌コンサートホール Kitara (※ホール音響Naviはこちら

田んぼの中の良質なホール!を作った賢い自治体の例!

身の丈にあった「こぢんまりとした「良質」なホール」で全国的に有名になった賢い自治体の例もありますよ。

(※中新田バッハホールのホール音響Naviはこちら

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★第2章 構造物としてのシェルター(会館)の基本仕様

芸術ホールをデザイン(設計)するに当たり、念頭に置かなければならない基本デザインコンセプトのセオリーは以下に示すとおりである。

基本則;環境条件

      • 「環境条件のよい立地」と「敷地に見合った建屋計画」

第1節 振動対策

前項で述べた振動対策は重要項目です。

特に大都市近郊の公共ホールでは、集客の為に、鉄道・幹線道路に隣接した立地もやむを得ない場合もありますが

第1項 防災用貯水槽・消化用水槽で道路と隔てる

溜池が見つからないときは、幹線道路・鉄道線との間に防災用貯水槽・消化用水槽など100t(100立米)規模の大型水槽を設置したり、会館の周囲に掘割を開削して制振します。

この手法はIC製造工場などでよく使われる手法で、鐵道や大幹線道の大型車両の振動の「遮断・制振」に絶大な効果を発揮します!

コンサートホールでは"ハーモニーホールふくい "《 ホール 音響 Naviはこちら 》が代表例でしょう。

第2項 会館建屋全体を防振ゴム(耐震ゴム)で浮かす手法

耐震構造の一つでもある、防振構造で会館自体を基礎から浮かす手法。

但し、後述する、手法同様にっ中・小規模のホールにしか適用できない。

石橋メモリアルホール《 ホール 音響 Naviはこちら 》で使用されています。

第3項 オーディトリアム(客席・ステージ)を防振ゴムで浮かす手法

いわゆるサウンドロック「防音構造」を持つオーディトリアムを会館本体(外郭シェルター)と分離して防振ゴムで浮かす手法。

嘗ての京葉銀行文化プラザ・音楽ホール 《 ホール 音響 Naviはこちら 》で使用されました。

凝りすぎた失敗例

参※ 当サイト関連記事 豊田市コンサートホールはこちら。

第2節,(天井・内壁の)重量に耐えれる様、「屋根と柱の構造材」は頑強に

重量級の舞台反響板・天井反響板使用を前提に、重量物に堪える様にホール外郭は頑丈に。

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★第3節、屋根(天井シーリング)は無駄な位 高くすべし!

屋根は出来るだけ高く、「"コンニャク"」や「"はんぺん"」のように薄べったいホール(&リハーサル室)は最低!

sydney_opera_house_concert_theatre.JPG

出展:File:Sydney Opera House Concert Theatre.JPG

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Sydney_Opera_House_Concert_Theatre.JPG

第1項 1スロープの小・中規模ホールでは低い建屋デザインに注意!

「がんもどき」型と言うか、「原油タンク」のようなと言うか、天井が低い建て屋は最低で!

当然ホール天井高さに対して幅が極端に広くなり平べったいガンモドキふうの建屋になってしまいがちであり、この手の平たいホールで上手くいっている(良好な音響)例は皆無!と言ってよい。(※例4)

多角堂を現在に蘇らせたいのなら、天井は1スロープのホールでも最大幅(対抗辺距離)にたいして2/3以上(最低15m以上)は必要である。

※多角堂が流行ったのが1970年代ということもあり、1982年登場のザ・シンフォニーホールなどのニューウェーブが押し寄せる前だったので、2000人超の収容力を誇る多層大型ホール以外の中・小ホール、特に1000人前後の1スロープのホールでは「天井高さ」に対する認識があまりなかったのも事実で天井の低いホールが蔓延している?

※例4、第8巻 奇妙奇天烈 奇怪 面妖 摩訶不思議 な "迷ホール!"参照

oiltank.jpg

原油備蓄タンク
画像出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Shibushi_Oil_Stockpile_Site_2009.JPG

第4節,防音には金を惜しむな!

ホールは窓無しを基本とせよ

出来れば古来より用いられている、砂入2重コンクリート壁を採用し、防音には完璧を期すこと。

※但し騒音・振動問題が心配ない、僻地?の自治体では木造ホールでも十分。

500人未満の体育館講堂形式のホールなら、最新の集積材を使えば強度も問題なし、何より「人に心地良い響き」が得やすい。

成功例;八ヶ岳やまびこホール(※ホール音響Naviはこちら)

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★第3章 芸術ホール(オーディトリアム)に求められる音響とは

優れた芸術ホールの条件とは、真近で聞こえた「生楽器の音色」がホール隅々まで「変化しないで行き渡り」、どこで聞いてもスタインウェイはスタインウェイ、ベーゼンドルファーはベーゼンドルファーの音色が聞こえて来なければならない。

本手引き書では次章以降でそれぞれの項目について詳述する事とする。

以下に示すディティールデザインのセットで使用しなければ定在波は駆逐できず"一部の客席にしわ寄せが生じます。"

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★第1節 "銘ホール"とは「初期反響を"上手くコントール」したホール!

音(振動)は「不連続な部分」言い換えれば伝播する物質の「界面」では必ず反射します。

つまり平行した壁面間では初期反響が引き金となり、エコーが繰り返されて「定在波」(※44)が発生して、色んな音響障害(実害)(※45)が誘発されます!

前節で述べた「銘ホール」とは、言い換えれば「初期反響を"上手くコントールしたホール"」のことです。

参※42)当サイト関連記事 第1章第1節 初期反射と後期残響 はこちら。

参※44)当サイト関連記事 第4巻 定在波(standing wave )と音響障害 はこちら。

参※45)当サイト関連記事  第2章 定在波で起こる音響障害『ミステリーゾーン』 はこちら。

第1項 前提条件 お客様の耳の高さ(頭)が基本

後期残響以外は各フロアー共に床面(座席部の床面)から概ね6尺(180Cm)の身の丈ぐらいの高さ範囲内のフロアー表層・低層部の周囲壁面が対象となり、「ミューズの神がいらっしゃるはるか上空?」の最上層部は対象外。

この点を「はき違えておられる」デザイナーさんが多いので念のために...

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★第2節 素晴らしい音響空間・オーディトリアムとは?

何処に座っても(全ての座席で)生楽器の音が"明確な定位"で余分な付加音が無いクリアーな音色で鑑賞できる『トランジェントの良いホール!』のことです。

コンサートホールはエコーガンガンのカラオケ音響ではダメ!

捏造された都市伝説「音の良いホールの条件残響時間2秒以上/500Hz?」

コンサートホールの「響き・余韻」を語るときに都市伝説「残響時間2秒異常/500hz」と言う数値が金科玉条の如く誇示される場合が多いですが...

これは「(脳科学的)根拠のない作り話」です。(※46)。

芸術ホールにとって大事なのは「ほどよい韻(ひびき)、心地よい響き」です!

劇場である限り、確かに視界確保は必要ですが、観劇にしろ(音楽)鑑賞にしろ、音響が重要なファクターになってきます。

肉声で演じられる伝統芸能(芝居・能狂言・歌舞伎)の観劇や、渡来舞台芸術(オペラ、ミュージカル、現代演劇、)の場合でも、クリアーなトランジェントの良い響きが求められます。

※46)「ザシンフォニーホール誕生裏話」に関連する「日本音響学会誌」(2011年67巻2号)への寄稿記事はこちら。(P94最後部からP95にかけての数行参照) この記事からも明らかなように「良いホールの条件"残凶2病以上"」はひとりの「マスコミ関係者が言い始めた根拠に乏しい数値にしかすぎません!

第1項 「音像、定位」が明確であること

目をとじて座っても「聴覚だけでステージ上の光景が浮かぶ」つまり「音像、定位」が明確な座席(リスニングポイント)のこと。

第2項 位置(座席)に影響されないこと

ホールのどの位置に座っても素晴らしい音響の座席で満たされているホールのこと。

「S席」で測定しても無意味!

天井桟敷にあるD席E席での測定値を競うべきである!

『一体どの席で音響測定をしたのか?』と言いたいようなホールが全国に散見される!

カラヤンは大向こうの席に座った事は無い!

カラヤンが絶讃した(とされる?)ホールが大阪に2つありますが、カラヤンは大向こうで音を確かめた事実は記録されていません!

アシスタント指揮者(orコンマス)に指揮をさせ、S席ぐらいには腰掛けてホールの音響を確認した事はあったかもしれないが...?、

「壁際」や「大向こう」などの席には座った記録は残されていません! 

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★第4章 芸術ホールにおける"オーディトリアム"の音響デザイン・コンセプト

第1節 オーディトリアムの音響デザインコンセプトの柱は

      • ●十分な防振対策
      • ●「中・低層部」の客席周辺の壁面では初期反響抑制と定在波対策をしっかり行う。
      • 「後期残響」は「最上層部」の壁面・天井デザインで嬢出する。

以上3点が肝要!

でっち上げられた「都市伝説・残響2秒異常?」(※47)に拘るあまり、何を血迷った(勘違いした)のか、客席周辺壁面を"お座なり"にして「ホール上層部に定在波対策」を施した馬鹿げた事例を多く見かけるようになってます!

ホール上空には、神様(お客様)はいない!本末転倒のワンワン鳴り響くカラオケ音響ホールはもう結構!

残響などのお化粧に頼らなくても、「優れた演奏家」ならば、良い演奏を披露できるし、彼らにとっては「残響の 厚化粧」など演奏の邪魔物以外の何物でもない!

参※47)当サイト関連記事 序章 都市伝説「音の良いホール の条件 残響時間2秒以上 」 は本当か?はこちら。

第2節 "音響空間デザイン"は定在波対策を柱に!

シッカリと初期反響低減を考慮した壁面デザインを取り、特に間口「壁面間隔」の狭い小規模ホールでは、定在波が生じないような立体形状で発生源から絶つ「抑止・根絶・駆逐作戦」(※48)をとることが重要です。

残響創出に惑わされると本末転倒となってしまう!

参※48)当サイト関連記事  第3章 ホールデザインの基本"定在波の根絶・阻止・駆逐" 法 はこちら。

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★第3節 オーディトリアムの フロアー(平面)形状のタイプ

第1項『扇形タイプ』

多目的公共ホールに最も多く使用されているフロアー形状のホールで完全な扇形は珍しく、通常は次項に述べる「プロセニアム」から扇形に広がった台形部分の客席フロアーと、後半長形部分を合わせた変型6角形のホールが多い。

多層フロアーの場合は比較的軒先の深い多層バルコニー型式のホールが多い。

ホール客席形状は「ステージ反響板の延長上で拡がる形状」が基本で平行壁面対策上からもホリゾント反響板(ステージ背後反響板)から連続的に後方に向かって拡がるホーン形状が基本となり、吊り天井の天井反響版と反響板同士の間を照明器具ガラリや、空調ギャラリブリッジやキャットウォーク(※53)に使うのが一般的。

代表例として フェスティバルホール(ホールNaviはこちら)が挙げられる。

※53、キャットウォークについてのWikipediaの解説はこちら

第2項『馬蹄形』

オペラハウスなどに良く用いられる形式で、平土間に近いメインフロアーの周囲壁面に「比較的浅い多層のバルコニ・テラス席」を配置する形式の総称で、Ω型のメインフロアー形状を持つ馬蹄形に近いメインフロアー形状のホールが多いのでこの名称となった、但しメインフロアーが6角形や8角形のような多角形であったり、円形に近いフロア形状のホールもある

代表例としては神戸国際会館こくさいホール(ホールNaviはこちら)、よこすか芸術劇場(ホールNaviはこちら)などがある

第3項『シューボックスタイプ』

ギリシャ神殿のような長形のフロアー形状のホールの一般通称。

西欧の銘ホールに倣い「ステージ背後」にオルガンテラス・コーラステラスと呼ばれるステージ背後席を設けたホールもある。

代表例としてザ・シンフォニーホール(※ホールNaviはこちら)が挙げられる

第4項『ワインヤード(アリーナ)型』

馬蹄形・とシューボックスホールの折衷のような形式で、ステージ背後にもコーラス席(客席)を設け、基本馬蹄形のように多層えではなく、ステージを取り囲むように天蓋(上層部の軒)の無いテラスが、ブドウ畑(段々畑風)のようにスロープ状に配置されているのでこう呼ばれるようになった。

野球場やサッカースタジアム型式に近い形式である。

代表例として「サントリーホール」(※ホールNaviはこちら)などが挙げられる。

第5項 オーディトリアム平面形状と定在波

オーディトリアム(ホール内部空間)のフロアー平面形状で『扇形タイプ』『シューボックスタイプ』『馬蹄形』『ワインヤード型』などと別れる。

第1目 扇形ホールが有利

基本的に両側壁が完全平行していない「扇形フロアー形状」のホール幅方向定在波が発生しない。

つまり、ステージ背後壁と客席大向こう背後壁間で生じる最悪の「奥行き方向定在波」と床と天井間で生じるZ軸定在波(対抗する完全平行部分の処理)にだけ注視するだけでよいわけである。

第2目 シューボックス長形ホールデザインは不利

当世流行の平土間に近いシューボックスデザインはこの点ではかなり不利で、完全平行部分となりやすい左右両側壁、平土間と天井、ステージ背後(ホリゾント)反響板と客席大向こう背後壁と、X,Y、Z軸すべてにわたり平行面キャンセル手法が必要となってくる。

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★第4節 ステージ形式による分類と留意点

大きく分けてプロセニアム形式(多目的ホール)とオープンステージ形式(コンサート専用ホール) に分かれる。

第1項 オープンステージ形式

最近のコンサート専用ホールに多く採用されている形式。

広義には、武道館やさいたまアリーナ、よこはまアリーナなどのアリーナ型式に代表されるようにステージと客席を隔てるプロセニアムがなく、ホール全体が一体化したオーディトリアムになっているホールで、ステージ反響板を使用するプロセニアム形式のホールに比べ横断面面積の急変が少なく、洞窟音が無い良好な音響空間が作りやすい。

第2項 プロセニアム形式ホール

多目的公共ホールに一番多い形式で、プロセニアム(額縁)で客室部分とステージ部分が別々の空間に分けられている形式。

第1目 プロセニアム形式ホールにおける留意点  ステージ反響板

1960年代から始まった第1次公共ホール建設ブームの時代に建造されたプロセニアム形式ホールの多くは「多目的(に使い物にならない)ホール」となっている場合が多い、「虻蜂取らず」の典型でもある。

為に以下の点に配慮すべきである。

第2目 可動プロセニアム&自走式を含む重量級反響版は21世紀の必須条件!

「軽量鉄骨フレーム+合板」スタイルの旧来型のステージ反響板では、共振を起こしたり、反射(率)効果が小さいので、できれば側面・背後反響板のみでも木材で表装した発泡コンクリート製重量タイプを採用すべし。

第3目 プロセニアムホールでもオープンステージは組める

最新流行のホール「一体デザイン反響板」に拘るな、重量級のバルクヘッド(隔壁)で舞台とホール(客席)を分離し平土間部分(オーケストラピット部分)に拡張オープンステージを設置(迫り上げて)して一体型ホールとする例も増えている。

1990年竣工川口総合文化センター・リリアメインホール(※ホールナビはこちら)

第3項 平土間多目的イベントスペース

講堂様式・公民館様式平土間ホール

最近の数多く見かけるようになった中小規模の平土間多目的イベントスペースで可変段床アダプタブルステージ(※54)を備えセンターステージ、エンドステージ等のマルチステージが構成でき、ロールバックシステム客席収納(※55)を備えて1スロープの小規模ホールにもなるスペース。フロア形状としてはシューボックスタイプのスペースが多い。

参※54)題7巻 第1節 アダプタブルステージ参照。

参※55)ロールバック方式客席収納システム についてのシートメーカーの解説はこちら。

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★第5章 オーディトリアムの音響デザインセオリー

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ホール空間を神様(奥客様)のいらっしゃる客席周辺の低・中層部、とミューズ神の支配する?上部空間との「層状の立体空間」としてとらえ、ホール内面(床・壁・天井)の内装デザインに配慮しなければならない!

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★本則1 対向する壁面から完全平行部分を駆逐する!

詳しくは"定在波の抑止・駆逐" と "定在波による障害の回避策をご参照ください。

第1項 平面形状タイプ別

扇形ホール

ホール後方に向かって広がる「扇形」「台形」や逆に窄まる「逆台形」を用いて平行壁面を駆逐する。

馬蹄形ホール

Ω型、楕円形などで平行する対抗平面を無くす。

変型多角形ワインヤードタイプ

ワインヤード型式などの不等辺・不等角の変型多角形を利用する。

第2項 側壁スラント設置(ホール横断面形状)の留意点

壁面のスラント設置で断面形状を台形(逆台形)にシェープし、対抗する壁面との完全平行をキャンセルする。

その3 ホール奥行き方向・断面の留意点
客席スロープの活用

客席スロープを有効に使ってステージ背後・天井との完全平行をキャンセルする。

天井は床面とは平行させない

特にトラディッショナルな"平天井"デザインを用いたシューボックスホールでは、ステージ・被り付き平土間部分上空の"高さ方向定在波"処理に注意。

第3項 その他の留意点

第1目 ホール内壁・天井接合部で狭角コーナーはデザインしない

両隣の内壁どおし、「大向う壁面」と天井等全ての箇所に直角以下の狭角コーナーは作るな!

逆ホーン効果で音(特に重低音の定在波)が集中しやすく成る。

※但し、客席の遥か上空!客席が無い所は関係ない!東京文化会館小ホールの例。(※ホールナビはこちら

第2目 反響板とホール本体(客席部)とは滑らかに...

プロセニアムタイプなら、重量級舞台反響板、可動プロセニアム、プロセニアムタイプ前面可動コーナー反響板で、ホールとの急激な段差や、急激な断面積変化が無い、連続的に繋がった1体空間創出が可能なデザインとすること。

※急激な断面形状変化をもつ旧来のステージ反響板はステージ部分が「ダクト」となり「共鳴」を生みだし、洞窟音になりやすい!

但し特殊な例として垂直な固定プロセニアムで、ステージとフロアーが分離されているホールでも特殊な手法(※51)で好結果を得ている東京国際フォーラムホールC(※ホール音響Naviはこちら)もある。

参※51)題6巻 音響チャンバーバランス法 参照。

第3目 4隅には客席を配置する51

4隅は面取りでコーナーを落としたとしても基本「直角」なのでホーン効果が起きやすく、定在波を集めてしまう!

特に、100Hz前後の低音で顕著に現れ、低音がこもりやすい。!

こんな場所に客席を設けるのは、「非常識極まり無い」としか言いようがありません!(※例1)

※一般のお宅(家屋)でも定在波は発生しているので、壁面近傍効果(増幅効果)はオーディオ装置で音楽を流しながら部屋中を「うろうろ」すれば、部屋の隅で低音が強調されていることが確認できる。

例1、愛知県芸術劇場(※ホール音響ナビはこちら) 横浜みなとみらいホール 《 ホール 音響 ナビはこちら 》

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★第1節 タイプ別での留意点

第1項 シューボックスホール・長形ホールの場合の必須事項

シューボックスホール等の対抗する平行壁面が多い長形ホールの場合の必須事項。

セオリー1  扇形(ハノ字)段床座席アレンジ

扇形段床(ハノ字)段床(※52)上に客席を配置して「横断面に生じる谷間」効果で定在波発生層を回避する手法。

参※52)当サイト関連記事  第1節 扇状段床座席を用いたホール横断定在波の障害回避策 はこちら。

セオリー2 客席周囲(壁際)の通路

客席周辺壁際で発生する初期反響(エコー)の影響を避ける為に、壁際に通路を配置する手法。(※53)

参※53)当サイト関連記事 第1節・基本則 壁際に席を押し込むな! 客席周辺壁際は通路に はこちら。

セオリー3 背後壁面のコーナー面取り

扇形段床配列で最、最後列大向こう席の両サイド側壁(背後壁面)のコーナーは大きく「面取り」処置を行い、両サイド壁の平行部分を無くす。

セオリー4 壁材の選定と壁面のアンギュレーション処理

壁面は、木質プレートなどの「音響インピーダンス」が小さく「内部損失の大きい」素材を用い、アンギュレーションを施した波状壁として、定在波のトリガーにもなる初期反響を和らげる処置を講じる手法。(※54)

参※54)当サイト関連記事 『第1節 基本則(禁則)天井や壁面は木材等の軟質・軽量素材で、内壁面に硬質重量材は禁物! はこちら。

セオリー5 やむなくテラス席を重ねる場合は十二分に軒先を高くすべし!

参※)当サイト関連記事 『第7章「低い天井」の影響 はこちら。

※十二分に軒先を高くとった好例

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出展.;http://www.wbjc.com/2015/wbjc-programs/interviews/historic-day-for-the-bso/

※軒の低い棚田風?多重テラスのとんでもない例

川口総合文化センター「リリア・メインホール」(※ホールナビはこちら)

愛知県芸術劇場・大ホール&コンサートホール(※ホールナビはこちら)

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★第2項 ワインヤード(屋根付きコロシアム&ドーム型アリーナ)には安直に手を出すな!

ドーム型アリーナ形状を含むワインヤード型ホールは定番デザインが無く、入念なモデル音響実験(シュミレーション)が必要で、低予算&安普請ではとても手に負えないホール形式である!

第1目、ワインヤードに天蓋(てんがい)は必要無い
多層テラス(段々テラス)は良いが、多重テラスは避けろ!

ワインヤードは日あたり(高層部からの後期残響)が良く?ホール天井から音が降り注ぐように。

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出展;File:Suntory hall - inside - August 2014.jpg

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Suntory_hall_-_inside_-_August_2014.jpg

第2項 コロシアム(円形競技場)に屋根は要らない!
どうしてもコロシアムに憧れるなら、野外劇場を作るべし?


This photo of Hollywood Bowl Museum is courtesy of TripAdvisor

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File:The Big outdoor stage of Sapporo Art Park.jpg

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:The_Big_outdoor_stage_of_Sapporo_Art_Park.jpg

国内例 札幌・芸術の森 野外ステージ(※野音Navi記事はこちら

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★第3項 平土間多目的スペースについて

中小・講堂様式・公民館様式・平土間多目的イベントスペースの盲点と留意点

需要調査結果からもわかる通り、一番需要(利用率・稼働率)が多い分野です。

「分割可動段床客席、ロールバック方式客席収納システム」(※611)との組み合わせの場合が多いようです。

演劇・演芸用途では、残響「初期反射と後期残響」封じ込めに留意さえすれば、定在波障害は露呈しずらいですが、コンサート会場としてみた場合は、もろに奥行き・幅・上下3軸方向の'定在波'障害が問題となる事例が多くなります。

参※611)ロールバック方式客席収納システム についてのシートメーカーの解説はこちら。

小規模ロールバックシステム採用多目的平土間スペースの問題点
十分な天井高さの確保が問題

天井高さ7mくらいの小規模ロールバックシステム採用のホールの場合。

400席前後の小規模ホールでは間口・奥行き・天井高さすべてが狭く、特に天井高さが不足している場合が多いようです。

単純な音響有孔ボードをもちいた2階抜け程度の吊り天井だと、ロールバック段床スロープ部以外では半波長7m周波数約25Hz程度の重低音周波数成分を持つ定在波が生じ、寄席・演芸ならいざ知らずとても音楽鑑賞、特にピアノリサイタル等聴けたものではなくなる。

ステージ部分上部とスタッキングチェアーを並べる平土間部分の天井には、傾斜をつけた、「セパレートタイプの天井反響板」を並べるぐらいの配慮はほしいものです。

軒(天井)からの初期反響問題

150席程度のロールバック方式客席収納システムと組合す場合でも、最後部は2m程度となり、+2.5mの天井高さを確保するにはやはり2階吹き抜け程度の天井高さでは最後列大向こう席での天井高さ不足が目立つケースが多い。

「構造材(トラス)むき出し天井」&「音響ガラリ(格子)」の採用が進んでおり、天井からの初期反響の影響はかなり改善される方向には進んでいる。

側壁からの初期期反響と定在波の問題

小規模ホールでは完全平行する対抗面は厳禁!

天井デザインはかなり改善されてはきたが、いまだ(2019年現在)側壁デザインに問題(定在波障害)を抱えるホールが続出している状況である。

ロールバックシステムを採用している場合は最低でも2階席相当の側壁部分までは出来れば「外反or内傾スラント」か「アンギュレーション(屈曲)」設置が縦格子で表装した"吸音壁"として「プレーンな完全平行壁面」は絶対に避けなければならない!(※613)

参※613)当サイト関連記事  第2節 基本則 ホール内壁から「対抗する並行面」は完全に無す! はこちら。

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★第6章 フロアー構成

収容人員はスペース(敷地面積)で稼げ、多層バルコニー・テラスで稼ぐな!

用地確保が困難ならば、大型ホールはあきらめましょう!

★第1節 狭い敷地に大型ホール(客席2,000人超)は禁物!

多層バルコニー・テラスで収容人員は稼がないこと!

多層フロアー・バルコニー(テラス)席と天井障害への配慮

多層フロアーは階下への影響を考え、できる限り奥行きの浅いテラス風に

収容人員を稼ぐ目的での「3フロアー以上」での「軒先の深い」構造は避けましょう!

せいぜい2フロアーでとどめ、多層バルコニーは避けたほうがよいでしょう。

無理をすると各フロアー、特に天井桟敷や大向こうの天井高さが稼げずに、音響に問題を抱える場合が多くなります。

第3項、「2階以上のテラス」は「軒先程度」に浅くしろ

テラスは壁を背に、壁との間には"通路"を設け浅め(せいぜい2列)で軒先は短く。

第4項 軒先(天井)は高くしろ

      • フロアーの場合;最後部通路上で最低2.5m以上。(※711)
      • テラスの場合;テラス前端の軒先高さが奥行きの2倍以上or付け根で2.5m以上!
      • 各フロアーの大向こうでの十分な天井高さ(2.5m以上)が確保出来ないと、映画館スタイルのワンワンホールに成ってしまいやすい。

参※711)当サイト関連記事 『第7章「低い天井」の影響 はこちら。

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★第2節 シートアレンジ

第1項 客席アレンジ

平土間でも工夫次第で視界は稼げる

※但し定在波抑止の意味では、出来るだけ急峻なスロープを巡らせた方が得策ではあるろ、参考写真では山形天井と組み合わせて平土間ー天井間の平行部分をキャンセルし高さ方向の定在波の発生を阻止している。

A、平土間デザインの小規模ホールの後部座席の視界は「桟敷」を有効に使え

1階桟敷は浅く(せいぜい2列席)、平土間の周囲に同じ高さで巡らせろ

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出展:Acoustical Society of America 159th Meeting Lay Language Papers

http://acoustics.org/pressroom/httpdocs/159th/boner.htm

B、千鳥配列座席を有効に使え


This photo of Philharmonie de Paris is courtesy of TripAdvisor

座席を千鳥配置することにより収容人員はほんの僅か(列数の1/2)減少するが、平土間部分や緩やかなスロープでも視界は確保出来るようになる。

さらに視界だけでなく、音響的にも前列の聴衆の頭部による、「直接音の遮断」と「音の回り込み」が防げ良好な音響特性(周波数特性と定位)が得られる。

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★第7章 天井

第1節 シェルター(屋根シーリング)一体成型の天井

シューボックスホールなどでは繊維強化発泡コンクリートを用いた外郭構造物(ホール本体)との一体成型の天井も見られるようになりました。(※例2)

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出展:File:Bilkent concert hall.jpg

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Bilkent_concert_hall.jpg

第1項「ドーム、ヴォールト」等のアーチ天井

日本でもアーチ、ドーム、ヴォールトは共に古くから良く使われ特に小型ヴォールトは旧・奏楽堂(※ホールNaviはこちら)等でも用いられて、最近でもリハーサルルームなどの小規模多目的ルームではよく用いられる手法です。

第1目「日本のドームは煩い(うるさい)」のが一般的!

構造的(強度的)に有利なドーム型天井は使いたくても安直に使うな!

日本では、ドーム・ヴォールト(※811)等のアーチ構造は「構造力学」上の有利さが強調され、音響に関する考察はされていないのが普通ですが。

※811)、「ヴォールト」デザインについてのWikipediaの解説はこちら。

パラボラ効果でドーム中央に音が集中し悲惨な結果を招きやすい

最近の多くのドーム屋根はアーチ部分の曲率半径(=音響収束点)がフロアー直上1・2mの高さに有り、これでは収束効果(※812)で煩くて当たり前です。

参※812)当サイト関連記事 第2節;近距離音場離と音響レンズの関係はこちら。

参※813)当サイト関連記事 「パラボラ収束音場クロス拡散法」(音響シャワー法)とは?はこちら。

第2目 「舟底型」ないしは「半割玉子」形状で

構造面(予算面)で使わざるを得ない場合は、「舟底型」ないしは「半割玉子」形状で頂点をホール後方にoffsetする必要があります!

適用例 みやまコンセール 霧島国際音楽ホール (ホール音響Naviはこちら

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★第2節 内装・反響板としての天井様式

一般的な大型一体成型(吊り)天井ではプラスターボード製(※814)や木質パネルによる反響板で表装する手法が多く用いられています。

※814)、アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての建材メーカーの解説記事はこちら

第1項 手法その1 大型一体型天井反響板

2010年5月開館の東京・上野学園・石橋メモリアルホールで採用されて以来、前章の2014年 東京文化会館大ホール改修工事などに適用されてきた手法です。

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第2項 手法その2、セグメント反響板

2004年竣工 ミューザ川崎シンフォニーホール/変形10角型 奇才作品例(※ホールナビはこちら)

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出展;http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/007/527/59/N000/000/006/136539622196513223050_IMG_1777-1.jpg

 

この手法では、(高さ可変機構)からくり天井と併用する例も多く見受けられます。

1/20λ~1/10λ程度の幅を持つ反射面から反射するといわれている音波は、反響板幅が2.615m=1/10λ(at13Hz)より十分に大きければ天井に吊るされた天井反響板面からも反射しだし、更に反響板間の隙間を通過してホールシェルター外郭の天井(シーリング面)から反射した反射波と干渉し、低音域を減衰させる効果が期待できます。

しかし音波は1/2波長より長い幅・直径を持つ反射面からは全反射する為、直径約9m(波長18m周波数約20Hz)以上ないと可聴音域全てをカバーできず、高音域(音色にかかわってくる波長が17~23mm程度の高調波・倍音域15~20KHZ)では、凸部が無いと乱反射(散乱波)は起こらず、逆に55Hz以下の重低音(波長6.2mから17m!)ではセグメント面の隙間を無視して天井全体が1つの反射面として働き、散乱するどころか、床面との間で定在波を生じ易くもなってしまいます。

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出展;File:Maison symphonique 18.jpg

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Maison_symphonique_18.jpg

第3項 欧米での円形反響板利用の例

(※以下本項についての詳細は第6巻 応用編 「パラボラ収束音場クロス拡散法」(音響シャワー法)をご参照ください。)

直径6mの平面反響板の反射音最低周波数28Hz で平面反響板では収束効果はありませんが、反射板に角度を付ける事によって、定在波対策には成ります。

最近欧米では、直径6m程度の平円盤を水平若しくは角度を付けて吊す方法が良く用いられていますが...

とても15mくらいの天井高さでは、安定して拡散しません!

第4項 逆ドーム天井反響板は気休め程度の効果しかない!

表(※以下本項についての詳細は第6巻 応用編 「パラボラ収束音場クロス拡散法」(音響シャワー法)をご参照ください。)面を逆ドーム(凸面)形状にしておけば、波長λ≒3.19m(110Hz以上)以下の音声帯域の音(※83)は反響板表面で(初期反響は)完全反射・拡散し、さらにそこから壁面や梁を経て散乱波(後期残響)創出に効果があるとされていますが...

実際には、前項の円盤同様に音響拡散効果はあっても、逆パラボラ効果はありません!

さらに、逆ドーム(凸面)天井反響版を用いてもドーム付け根に峡角コーナーが生じ、重低音の籠もり音の原因となりやすい弊害も生じたり、大掛かりな仕掛け(ドーム昇降装置)を用いても問題は残ります。(※例3)

※83 音声帯域に関する関連解説記事はこちら BTS(放送技術規格

※例3、 京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ(小ホール)(※ホール音響Naviはこちら)

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★第3節 構造体・剥き出し天井」の音響効果

近年小規模ホール等を中心に、構造体(屋根を支える梁・補強梁などのトラス構造物)を露出させる手法が流行ってきています。

「照明ブリッジ露出タイプ」

大型ホールなどでは側壁同様に客席天井にも「反響板で底面を表装」した程度の構造材むき出しの照明ブリッジを架設するホールデザインを良く見かけるようになりましたが、この手法は音響拡散体として「後期残響」創出に寄与しています。

屋根裏全面露出タイプ
平土間多目的イベントルーム、平土間中・小多目的ホールなどでの応用例

内面に直接グラス・ファイバー「断熱・耐火材」を吹き付けた屋根本体、空調ダクト・給排水設備配管、照明器具・配管などの屋根裏設備をむき出しにし、天井を反響板で表装せずに、「金属ガラリ(格子)&ネット」でホール天井を表装?した「屋根裏むき出し天井」が中小規模の演劇専用ホールなどで広く利用されてきています。

屋根裏の複雑な構成体が音響拡散体として働くだけではなく「初期反響」の減衰を促進する「消音効果(散乱減衰)」も兼ね備えています。

これは複雑な構造材(トラス組、テンションロッド材)と設備配管・ダクト類による乱反射で中・高音域(音声帯域(※815))で散乱減衰が起こるためです。

※815) 音声周波数帯域とも言われ楽器や肉声の基音となる300~3400Hzの低・中音域を指します。更には聴感ラウドネス帯域でもあり一番感じやすい音域でもあります。

ちなみに電波法のAM放送の公称伝送帯域は100 Hz~7,500 Hzです(実際には50Hz程度から12kHz程度は伝送できています。)関連記事「音の良いフルレンジスピーカー列伝」はこちら。

中・小の演劇ホール、ショッピングモール内装での応用例

ロールバックシステムを備えた天井高さ7m程度の中・小の演劇ホールでは絶大な効果を発揮して、「天井板で全面表装」した通常の天井表装に比べ約10㏈(約3倍)程度の中高音域の直接反射音散乱減衰効果が得られ、「声の通り」がよい演劇・セミナーなどに向く多目的スペースとなっています。

ショッピングモールの内装などにも

この手法はホールだけではなく、ショッピングモールなどでもよく利用されるようになり、通路との"仕切り(壁・扉)"のないオープンフロアー形式の店舗内での"騒音"退治にも役立っています!

(※壁の無いとあるオープンテンポの店外通路と約8m程度店内に入った位置での騒音比較で騒音レベルー10dB!つまり3分の1迄減少します)

天井の低い老兵達の延命策としても利用

1960・70年代に量産され建て替え時期?に差しかかっている、「全国の天井の低い老兵達」の延命・改修にはこの手法が「お手軽」でかつ「有効」な改修手法として今後普及するでしょう。(※関連記事はこちら)

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第4節 伝統的手法『格天井』

格天井(ごうてんじょう)は後期残響を醸し出すには非常に有効な手法で「モダン芝居小屋」「シューボックスホール」などでよく使われています。

第1項 格天井の色々

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出展:SP9912 : Ashridge House - Wyatt Room

http://www.geograph.org.uk/photo/4117873

段付き折り上げ天井

「装飾梁」を用いて、階段状に折上げる手法で音響拡散効果が大きい手法です。

「和風建築に範を取れ」

奇抜で醜悪な天井(※例1)より京都南座(※ホールナビはこちら)の「折上小組格天井」を見習いましょう!

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出展:NJ9406 : St Nicholas Room

http://www.geograph.org.uk/photo/3129165

ピッチ半間(半けん=0.91m)以下の小組格子ではさらに、複雑な反響を生み、役者の定位感に悪影響を与える、「音声帯域」の1次反響を急激に減少できる。

方形セグメントを並べて"逆格天井"として併用する手法

"格天井"の逆パターンで前途した方形セグメントを隙間を開けて並べる手法も増えてきています。

この手法も、セグメントのエッジ部を音響拡散に用いた一種の格天井と言えます。

第2項 格天井の音響効果

組格子部分は音響拡散体として音声帯域に有効に働きます。

洋風建築に多い7フィート(約2.13m)以上で10インチ角(約250mm)幅程度の組格子梁で支えた天井の場合

完全反射限界;1/2λとして重低音オルガンのペダル音の最低音約13Hzの波長約26.8mなので梁下面は反射面とはなりませんが1/20λ程度から反射しだすと言われており、250㎜幅の20倍の波長;λ=5m/約70Hz 程度から反射しだすので、天井面からの反射波と干渉して、低音域の初期反射波の減衰・散乱に寄与します。

梁幅250mmの倍波長λ=0.5m/約697Hzの音は梁表面(軒下)から完全に反射します、つまり側壁からの反響音は完全反射するので天井面からの反射波と干渉・重畳し初期反射の減衰・散乱波の創生相方に寄与でます。

また、エッジ部分で散乱するので、心地よい残響を創出する音響拡散体としても有効に働きます。

適用例 2008年竣工 いわきアリオス・大ホール/(※ホールナビはこちら

平土間(部分)との併用は厳禁!

トラディッショナルデザインにこだわるあまり、ステージ&被り付き平土間客席上部にまで格天井を張り巡らせた「シューボックスホール」では「上下高さ方向方向定在波」(※816)に悩まされている例を多く見かけます。

小さな「突起や窪み」などを設けても音響拡散効果はりますが、定在波は阻止できずステージ上の定在波阻止には「新・奏楽堂」(※ホール音響Naviはこちら)のような「大掛かりなカラクリ釣り天井」か石川県立音楽堂(※ホール音響Naviはこちら)のような「別建ての可変天井反響板」でフロアー面との平行を回避する必要があります。

参※816)当サイト関連記事  第2節「高さ方向定在波の音響障害」回避策 はこちら。

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★第8章 壁面

前途したように、床・天井・側壁で"閉鎖"されたオーディトリアム空間では"過大な反響"とそれによって誘発される"定在波"対策が最大の課題となりますが、そのうちでも"壁面意匠"は重要な役割を負います。

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★第1節 会館建屋外郭をサウンドロックとする手法

いわゆるサウンドロック「防音構造」を会館シェルター(外郭)壁に直接受け持たせて、オーディトリアム内壁は、縦格子などを用いたパーティション構造とする手法です。

オーディトリアム内壁の間口が十分に確保できない場合、会館シェルター外郭そのものを頑強にして防音・遮音構造とし、内郭オーディトリアムとは縦格子などを用いたパ-ティションで"区切る"手法です。

代表例としては、京都コンサートホール《ホール音響Naviはこちら》が有名です。

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★第2節 初期反響対策と定在波対策として重要な壁面構成

別項(※89)で述べた通り、初期反響を軽減するには「素材と形状」が重要となります。

更に定在波対策としては前途したフロアー平面形状と共に、壁面のスラント(傾斜)設置とアンギュレーション(屈曲)処理必須事項といえるでしょう!

参※89)当サイト関連記事 『第3章 天井材・壁材について はこちら。

第1項 縦格子を用いた2重壁構造

前節同様に、オーディトリアム本体壁内面にロックウールなどの吸音材を張り付け、縦格子を用いて表装する2重壁構造とする手法で、ステージと対抗する大向壁面などによく用いられる手法でもあります。

音声帯域(※921)の初期反響軽減には効果があり、十分な距離が稼げる奥行き方向については高次定在波の発生も少ないので大向壁面などに有効な手段としてよく用いられますが...

しかし中小・規模ホールの完全並行対抗側壁部の垂直側壁への応用では、音響ネットで表装した吸音壁同様に吸音材の十分な厚みが確保できないこともあり、定在波の原因となる低周波ではあまり効果が期待できません!(※922)

なので、側壁自体をスラントさせる必要があります。

※参921)音声周波数帯域とも言われ楽器や肉声の基音となる300~3400Hzの低・中音域を指します。ちなみに電波法のAM放送の公称伝送帯域は100 Hz~7,500 Hzです(実際には50Hz程度から12kHz程度は伝送できています。)関連記事音の良いフルレンジスピーカー列伝」はこちら。

参※922)吸音壁の失敗例 当サイト関連記事 『アンサンブルホールムラタ(小ホール)』ホール音響ナヴィはこちら。

第2項 通常の表装に使う素材について

第1目  天井や壁面は木材等の軟質・軽量素材で、内壁面に硬質重量材は禁物!

壁面からの直接反響音を緩和するには壁面の素材が重要な要素。

エコールーム紛いのデザインで、壁面が「石壁」や「タイル張り」、「打放しコンクリート」等の「音圧反射率」の大きい「硬質・重量」素材で表装した壁面は初期反射が大きく反響だらけのワンワンホールになってしまい「芸術ホール」には適しません!

※参)エコールームに関する「音工房Z」さんの解説記事はこちら。※本物のエコールームでは定在波対策(平行壁面対策)はしっかり施されています。

内壁のタイル張りは危険でもある!

特にタイル張りは危険でもあり、2018年の北大阪震災では、実際に高槻芸術劇場で「内壁タイル剥落」が発生し、休館に追い込まれています。

音響インピーダンスが小さく、内部損失が大きい素材を用いる

音響インピーダンス(※923)が小さく"音圧反射率"の小さい、反射音圧(音量)そのものが小さくなる素材を用いることが重要です。

良質のホールでは内部損失(※924)も大きい木質パネルが好んで使用されています。

参※923)当サイト関連記事 第1項 音響インピーダンスと音圧反射率はこちら。

参※924)内部損失;音波が物質内部を伝播(でんぱ)する際に、要素(結晶等)の界面などで乱反射して、散乱により熱に変換されて減衰すること。

第3項 表面形状(処理)・表装による初期反響低減策

凹凸のある複雑な壁面形状のほうが初期反響低減効果が高い!

フラットで硬質材の表装は不愉快な初期反響の嵐と成り、「心地良い余韻」にはつながりません。

凹凸のある複雑な表面形状のほうが乱反射で反響音が拡散され、耳障りな壁面反射エコーが軽減されて、更には心地よい「後期残響」の創出にもつながります。

第1目 表面凹凸加工による初期反響低減と石材内装ホール改修(改築)について

更に凹凸表面処理もー1㏈程度の初期反響緩和効果、つまりプレーン・パネル使用の場合X0.9倍程度の反射率改善効果があります。

しかしコンクリート打ち放し壁や、人造大理石壁面を"再加工"する「工期・加工費(人工費)」を考えた場合、壁面をそのままにしてホール内部に「新たな表装」を追加したほうが、安上がりでしょう!

なので、"石壁"の手前に縦格子や"和装表具"を追加する手法はコスパが高い改修策といえるでしょう!

初期反響音低減に有効な表面(表装)処理
      • 打ち放しコンクリート壁の表面凹凸処理
      • グルービングパネルの使用。
      • 凸面湾曲パネルの使用。
      • (30cm以下の)小さなアンギュレーション(屈曲シワ)を付ける。
      • 鎧張り(下見板張り)等の(30cm程度の)小型パネルの段差表装

但し以下の表面(表装)は音響拡散効果はあるが反射音圧軽減効果は少ない

      • 一間幅(約1.82m)以上の大型パネルの段差表装。

手法1 「グルービング(溝)加工」をほどこした壁面用パネル 

320px-quadratic_diffusor.gif

出展;File:Quadratic diffusor.gif

https://en.wikipedia.org/wiki/File:Quadratic_diffusor.gif

あなたの耳の構造を思いだしていただければ分かりやすいと思いますが、圧力波である音波は狭所でも入り込みます。

つまり溝のボトムから跳ね返ってくる反射波と溝表面で跳ね返る反射波を干渉させて、反射波の音圧を下げようと言うのがグルービング材(※925)です。

参※925)当サイト関連記事 『第3節 1/4波長程度の「グルービング(溝)加工」をほどこした壁面用パネル の効果 はこちら。

 
第2目 表装素材と形状の組み合わせでは...

つまり遮音効果が少ない「障子、襖(ふすま)、などの和装内壁」が最もよく、コンクリート打ち放し壁が最悪となります!(※926)

参※926)当サイト関連記事 『第1節 基本則(禁則)天井や壁面は木材等の軟質・軽量素材で、内壁面に硬質重量材は禁物! はこちら。

第4項 スラント設置と併用が原則!

但しこのパネルだけでは初期反響は軽減できても「低音域」で問題となる定在波駆逐には効果はありません!

壁面に格子状のグルービング加工をほどこした木質パネルを用いた例ではホール平面形状や壁面のスラント設置で定在波対策を行っています。

2013年3月改修工事竣工 三鷹市公会堂・光のホール/(※ホールナビはこちら

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★第3節 音響拡散に用いられる壁面装飾オブジェ"音響拡散体"

音響拡散処理とは初期反響の軽減緩和と後期反響の創出を図る為に、天井・壁面にランダムな凹凸を配し乱反射を得る手法です。

また「音響拡散体」とは主に中・上層部壁面&天井に付加する装飾突起物;オブジェと言ったところです。

第1項 レガシーホールにみる音響拡散要素

西洋の有名レガシーホール・オペラハウスにみられる様式、例えばギリシャ神殿様式に範をとった「エンタシスの柱」や上部の梁を支える部分に設えられた「台座」や「欄間」部分の彫像、周囲にテラス、などは音響拡散効果がある「音響拡散体」の一種としてとらえることができます。

また日本の伝統的公民館によく見かける、柱と天井梁の接続部にあるガセット(補強板・アングル・梁)や伝統的芝居小屋にみられる折り上げた「格天井」や桟敷柱、桟敷の前面柵、明り取り窓の窓枠などは全て散乱効果が優れている設えです。

以下は、特殊メークアップアーティスト(音響意匠デザイナー)が"化粧品"(音響拡散体)としてよく利用する要素の数々です。

音響拡散体として有効な部材
      • むき出しの照明コラム、照明ブリッジ、空調ダクト、ホール出入口開口部、装飾窓、装飾テラス(orキャットウォーク)などの設備・艤装、豪華なシャンデリア、拡声装置(露出型スピーカーボックス)
      • 側壁のオブジェ(突起物)、装飾柱、装飾梁、梁台座、壁面照明器具などの突起物。
      • バルコニー・テラスの軒形状
      • 柱、ガセット(コーナー補強材)、壁面構成、フロアー構成、折り上げ天井、格天井などの構造材・表装の利用。
      • キュアットウォーク、天井構造材(トラス)むき出し天井
      • 最近では、「空調ダクト」などに装飾を施し、「飾り柱」、「飾り梁台座」「飾り梁」、「組格子」を模して突出させる手法が良く用いられる。

などが上げられます。

「音響拡散体」使用例 その1

640_alumni_concert_call.jpg

出展:File:Alumni Concert Hall, CMU.jpg

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Alumni_Concert_Hall,_CMU.jpg

このホールでは、壁面のオブジェ、装飾梁、梁台座付きの装飾柱、折り上げ天井、天井のヴォールト、などが用いられています。

「音響拡散体」使用例 その1 ガセット の利用

gusset.jpg

この教会の場合は、勿論残響目的ではないが、突出したリブ状の補強板付き門型柱に加え、天井梁との間にもガセット(コーナー補強版)を加え補強している。

国内では旧東京音楽学校奏楽堂(※ホールNaviはこちら)、兼松講堂(※ホールNaviはこちら)など、露出天井梁とともに多くの近代西洋建築で用いられている。

victoria_concert_aall640.JPG

出展:File:Interior of Victoria Concert Hall, Singapore - 20141101-28.JPG
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Interior_of_Victoria_Concert_Hall,_Singapore_-_20141101-28.JPG

第2項 近年の音響拡散手法

むき出しの「照明コラム」の利用

最近のモダンホールでは、両側壁にフード(囲い)を付けないむき出しの「照明コラム」を設置して音響拡散体としても利用しています。

ダミーテラスやキャットウォーク・テラスの利用

ダミーテラスやキャットウォーク・テラス(犬走り)を壁面に設置して張り巡らす等の「音響拡散効果」を狙ったデザインも増えています。

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★第4節 シューボックスホールでの留意点

このタイプのホールは基本的に平行する対抗壁面が多く、オーチャードホール(※ホール音響Naviはこちら)のような例を除き、高さ方向にまで"壁面間隔20m超"のセオリーを適用できたホールは珍しく、次項に述べる「ロールバックシステム採用の小規模多目的イベントスペース」同様にトラディッショナルな欧風建築風・公会堂デザインの"水平設置"の格天井などをホール全長に渡り採用すると床面とプレーンな面同士で完全平行することとなり、「高さ方向の定在波」)に悩まされる結果となります。

為に「形状に工夫して」ステージ&被り付き最前部客席平土間部分上部はスラントさせた反響板とするか、タケミツ メモリアル(※ホールNaviはこちら)のように教会風の三角屋根にして上下方向の定在波発生に留意する必要もあります。

第1目 シューボックス特有の壁面処理

シューボックス型ホールは平行する対抗面が多く、エコー(初期反響)の嵐と成りやすい、と同時にプレーンな壁面で構成すると「後期残響:乱反射」が得にくい一面もある!

ワインヤード型を含め「シューボックス形状は(内部装飾に)金がかかる」ことを覚悟せよ!

柱間のパネル間仕切り壁は額縁風に

柱・梁間に木質パネル壁などを直接埋め込む際は、接合部直角コーナーが生じ無い様に額縁風に飾り棧でコーナー封じを行え。

goldproceniamu_640.jpg

木質パネルには装飾を施せ

上記同様アンティーク家具調(ビクトリア王朝風)に出来るだけ装飾凸部(貼り合わせ)を設け単調な平面は避ける。

wallsampl.jpg

出典TQ3082 : St. Pancras Renaissance London Hotel, Euston Road, NW1 - a comfy corner in the Booking Office Bar

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★第9章 多角堂の持つ魔性!

古来日本人の心をひきつけてやまないのが多角堂ですが...

第1節 正多角堂は奇才以外の「凡人は手を出すな!」

法隆寺夢殿に代表される、正多角型(偶数角形)は憧れても、計画するな!

モダニズム建築の大家、「正多角形・フェチ」の権化?奇才・故前川國男教祖が...。

        • 1960年3月31日に旧京都会館第1ホール
        • 翌年1961年に東京文化会館・大ホール&小ホール、
        • 翌々年1962年に神奈川県立青少年センター

を竣工させていらい、1964年には同じルコルビッジェ門下の先輩である晩年の故山田守氏が夢殿をモチーフに「日本武道館」を完成させるにいたり全国に「多角形ホール病」が蔓延してしまい現在に至っているが。

故前川國男・教祖も1964年開館の 弘前市民会館からは音響的に面倒で手間暇かかる「正多角堂」デザインを捨て、オーソドックスな「変形扇形ホール」に回帰している。

特に1982年開館の「ザ・シンフォニーホール」(※ホール音響ナビはこちら)以来、残響の概念(※1)が広まり、1/30スケールモデル実験やコンピュータによるシュミレーション技術が発達・定着してからは、1983年竣工 熊本県立劇場(※ホール音響ナビはこちら)、最晩年の1985年 石垣市民会館に至るまで「正多角堂」には手を染めていない!

※、事実、前川國男教祖の代表作の1つとされる旧京都会館第1ホール(ロームシアター京都)は、京都市が

「建物の形状自体がホールとしての機能を低下させており、改修ではデザイン性・機能性とも要求を満たせないため、委員会の意見を取り入れた上で改築を行う」<当時の広報より引用>

以上の理由で2012年3月限りで閉鎖されその後解体され、 2016年1月10日に香山壽夫建築研究所の設計によるオーソドックスで手堅いデザインの4フロアー4層バルコニーの「モダン芝居小屋」に近い意匠の「ロームシアター」が新装開場した。

彼(前川國男)の愛弟子故丹下健三氏も師匠の教訓(正多角堂には手を染めるな!)を守りオーソドックスな「変形・扇形ホール」しかデザインしていない。

さらにはもう一人の巨匠故菊竹 清訓氏(※0)もアバンギャルドな作品群をデザインした奇才・偉人では有るが、同胞の故黒川紀章氏共々"正多角形には手を染めていない!"

菊竹 清訓氏の代表作の1つ1969年竣工旧久留米市民会館(2017年現在解体中)にしても,後述するCydic と Convexを組み合わせた平面形状を用い、対抗する壁面を極力少なくした形状であり、更には客席スロープ形状や天井反響板にも留意しホール内部から並行面を極力排除したデザインになっている。

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★第2節 平土間には絶対に使用するな!

どうしても,.「多角形に憧れる」なら、以下のセオリーを守るべし!

第1項 多角堂は平土間多目的スペース(サロン)には不向き!客席スロープは必須条件

平土間偶数正多角堂は御法度!平土間ではいくら天井をスラントさせても、サイドの対抗壁面同しが完全に平行し、ホール横断定在波の嵐になってしまう!

最悪のケース平土間サロンへの適用

偶数正多角形を採用した平土間サロン形式ホールは最悪で、ステージ背後の両袖部分の脇反響板と客席部分の対抗壁面が完全平行する場合が発生しの場合、まともに定在波障害エリアとなってしまっている。

特に、ステージ部分の背後壁に「アンギュレーションやスラント処理」を施した反響板がセットされていない場合は、事態は深刻で、聴衆のみならず?ステージ上の奏者までもが定在波の嵐に巻き込まれるている場合も多々発生している。(※例1)

※例1、平土間サロンの例

ステージ前に平土間部分をもつホールの場合

同じく等辺多角形のフロアデザインを採用したオープンステージコンサートホールの場合も同様で、ステージ背後壁面に配慮が足りない場合、ステージ及び、被り付き平土間客席部分で、対抗する平行面によって生じた(倍音列)定在波が猛威を振るいステージ上の奏者までも被害を被っている場合も多発している。(※例2)

※例2、ステージ反響板に配慮が足りない例

客席は急峻なスロープとせよ
「客席スロープ」と「ステージ反響板への配慮」は必須

「客席スロープ」とステージ反響板設置の配慮(客席側壁との開き角度差・壁面アンギュレーションorスラント設置)は必須で、これを怠ると悲劇が、上手く処理すれ喝采を浴びる成功が訪れる。

数少ない成功例では「瓦斯タンク」のように、高さが12分に取られており!、しかも急峻なスロープを用い高度差で定在波障害を回避している。

成功例、アトリオン音楽ホール(秋田市)/変形6角型(※ホール ナビはこちら)の例。

第3節 正統的手段・形状で勝負せよ!

第1項 基本平行する対抗壁面の多い偶数正多角形は避ける!

「偶数・正多角形ホール」は対抗する並行面が多く、定在波が生じやすく基本的にホールとしては適さない形状で有る!

多角形の平面形状ホールをデザインしたいのなら、吸音壁やマジックボックス(反響調整箱※3)に頼る様な安直な「正多角堂」デザインは捨て、壁面形状に趣向を凝らした兵庫県立芸術文化センター・小ホールのような手法をとるか、軽井沢大賀ホール/正5角型の様な奇数正多角型ホールに向かうのが適切であろう。

つまり偶数正多角形ではなく奇数正多角形とするか「変型の不当辺不当角多角形」の平面形状とするかCidic形状、Equlangular形状、を選んで対抗する平行面を駆逐すべし!

polygon_types.svg.png

Attribution: Salix alba at English Wikipedia

第2項 正多角形に挑みたいなら、奇数形、5角型、9角型、とすべし!

どうしても作りたいなら「奇数角」を用いよ!

正5角型・正9角型はそれぞれ内角140度108度と割り切れる数値であり、進化した作図システム(CAD)と進化した測量機器「トータルステーション」(※101)を用いれば比較的容易に実現できる。

軽井沢大賀ホール/正5角型(※ホール音響ナビはこちら)はこの形で成功している。

※101、トータルステーション」についての Wikipediaの解説はこちら

第3項 建築技術に挑戦!正7角型・11角型ホールの建設

7角型・11角型は内角がそれぞれ約147.27度、約128.57度と現在の進化したCADシステム・測量機を駆使しても作図?も実際の施工も困難では有るが、建築技術の粋を尽くした正7角型・正11角型ホールへの挑戦など、新たなるコンセプトづくりに向かっていただきたい物である。

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★第4節「天井の高い6角堂」は安普請の「靴箱」より良い結果を生む場合も!

故前川國男教祖は何故6角形を選んだのか!多角堂のデメリット!&メリット?

多角堂に否定的なコラムではあったが、6角形(&菱形)は使いようでは「下手な靴箱?」より有利と言えなくも無い!

その1;ホール全長を短く出来る 多角堂多層ホールのメリット

長形ホールとは違いステージ間口に比べどうしてもホール幅がファットになり?、このことは収容人員の割には幅広い敷地を必要とする多角堂のデメリットの一つでもあるが、

と同時に、ステージ横幅(プロセニアム間口)に比べてホールシェルター総幅が広くなるというデメリットは、短い奥行きでも「壁面間20m超」のセオリーが全壁面間に適用しやすく基本定在波を可聴帯域(20~20kHz)外の低周波振動に逃がしてやりやすくもなる。

逆に言えば、前後長を短くでき、ステージまでの距離を短くできることとなり、多層ホールの上層階の天井桟敷の大向こうからステージの距離が短く出来る利点がある。

その2:全フロアーに渡り比較的急峻なスロープと壁際通路が必須

垂直壁の6角形でもステージ直後からスロープを形成すれば、ストレート配列の座席でも高度差だけで対向する平行面をキャンセルできる。

ただし、この手法では後半両側壁スロープ部の壁際部は対抗する前半両側壁と完全平行することとなり、側壁際は定在波の節となるために、「壁際を通路」として障害を回避するか、不当辺不当角6角形とするか「壁面スラント」と併用して、平行壁面をキャンセルし定在波の発生そのものを根絶する必要がある。(※例3)

※例3、アトリオン音楽ホール 《 ホール 音響 ナビはこちら 》、ラポルトすず(公式施設ガイドはこちら

その3;8角形ではスロープ中央平行壁部分の処理が要

但し垂直壁の正8角形では最大幅部が完全平行となるので、シューボックスホール同様にスロープ+扇形配列(orハノ字配列)段床の「谷間効果」で(倍音列)定在波を回避するか、アンギュレーション壁で中・高音域の倍音列定在波を抑止する必要がある。

第5節 時代を追って微妙に進化したデザイン?

1960年台の東京文化会館・大ホール開館当時は完全な正多角形・垂直壁の多角堂であったが、コンピューターの発達などで、年を追うにつれCADによる製図や施工面では電子化による測量機トータルステーションの飛躍的な進化により、各辺の内角(外角)が割り切れる数値で構成された正多角形(正6多角形/外角60度、正8多角形/外角45度)から、各辺の内角・外角が異なる変形多角形に微妙に進化しては来ている。

しかし相変わらず「完全並行対抗壁」を残したまま単に多角形を押しつぶし、各辺の内角を120度から外したような垂直壁の(音響的に)厄介なホールも造り続けられている。(※例5)

※例5、コンサートホールATM 《 ホール 音響 ナビはこちら 》、草津音楽の森国際コンサートホール 《 ホール 音響 ナビはこちら 》

第6節 日本で花開いた「夢殿」文化ではあるが...

世界にも類をみない正多角形ホールは、音響的には並行面が多い「非常識な形状」ではあるが、花ビラ5枚の一重桜に代表される、日本独自の形状である事には違いない。

第7節 日本で多角堂が進化した背景

古来から、外角が45度の8角堂や、同じく外角60度の6角堂は、原始的な測量法や墨付け器具でも、実現が容易であり、ハチの巣に代表されるように構造的にも頑強である。

さらに、安定感あるアピアランスが見るものと「デザイナー」を引き付ける魅力(魔力)も持ち合わせており、日本では好まれるのであろう。

第8節 「はかない桜」は散り際の美学?

正多角堂に挑み「はかない桜」の如く華々しく散る?のも日本の美学?かもしれないが、

「舞台芸術ホールは音響が命」華々しく散って(失敗して)もらっては困る!

この章の参照欄

※注0. 現代の巨匠菊竹 清訓(1928年4月1日 - 2011年12月26日)氏の作品について

福岡県久留米市し出身1928年生まれの故菊竹 清訓氏は6才年下の黒川 紀章と共に「建築と都市の新陳代謝、循環更新システムメタボリズム」を提唱し、1905年生まれのモダニズム建築の巨匠故前川国男氏とは違ったスタンスで創作し続けたデザイナーである。

一過性のはかない芸術作品?

彼の唱えたメタボリズムを象徴する作品群は、

        • 1970年;万国博覧会/エキスポタワー、2003年3月解体撤去
        • 1975年; 沖縄海洋博/、アクアポリス 閉会後解体
        • 1985年;筑波科学博のパビリオンデザイン、閉会後解体
        • 1988年 なら・シルクロード博覧会/奈良公園館(2004年シルクロード交流館としてリニューアルオープン2014年閉館)
        • 2005年 日本国際博覧会(愛地球博)マスタープラン

参加に象徴されるように、

謂わば「建築物はその時々の時代の要求に\即したコンテンポラリーな現代芸術作品である!」

と言うような「哲学的観念論」から生まれているように思う。

『建築物も人と同じ生き物、時代と共に歩む「儚い命」で有って良い』

と言った所で、「死して何々を残す」と言った普通の建築家ではなく、舞台・演劇演出家に近い「時空芸術家」であった様に思う。

従って最初から必要最小限の強度で、長期の使用に耐えるような耐用年数はあまり考慮されておらず、21世紀まで生き延びている作品は少ない、特に1981年の新耐震基準適用以前に生まれた作品は、消えつつ有る。

一流の構造設計(構造計算)屋さんでもあった

彼の育った時代には、現在のような分業化(デザイン&構造設計(計算))がされておらず、彼は1流の構造屋サンでもあった。

事実1995年に早稲田大学より「軸力ドームの理論とデザイン」と言う論文で工学博士号を取得している。

だから、ソフィテル東京

        • 着工 1990年11月
        • 竣工 1994年6月
        • 開業 1994年6月16日
        • 解体 2008年5月

東京テアトルビル

        • 竣工1987年1月31日
        • 解体着手2014年8月25日

のようにたった18年間や27年の短い命でも、彼の存命中に解体されようが全く拘りが無かったのであろう、

むしろ2003年3月完全撤去されるまでエキスポタワー、を眺めるのはつらかったであろう!

だからこそ晩年の2005年愛地球博のマスタープランにも喜んで参加したのであろうと確信する。

晩年に至までメタボリズムを貫いた人であったように思う。

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★第10章 「カラクリ」に頼らず「丁寧な設えのオーソドックス」なホールを目指せ!

第1節 カラクリに頼らず、正攻法で勝負せよ!

音響支援システム や 残響調整装置 などの「カラクリ」(※111)に頼らず、「丁寧な設えのオーソドックス」なホールを目指せ!

参※111)当サイト関連記事 『建築音響工学総覧 』第7巻 現代の3大迷発明?!はこちら。

第1項 カラクリの代表格マジックボックス(残響調整装置)

カラクリの代表格マジックボックス;残響調整装置が流行っている様だが、ホール常駐の「電気・設備技師」が機能を熟知していない場合が多く、まさしく「宝の持ち腐れ」設備の代表格!でもある。

但し演奏者へのフィードバック(エコー?)には成って要るようではある。

第2項 アダプタブルステージとカラクリ天井

マルチ分割アダプタブルステージ

共に、不要不急設備の代表格で特に「マルチ分割アダプタブルステージ」は組み換え費用(組み換え時間料金)が出演者の負担になっている場合がほとんどで、ロングラン公演ができる有名劇団は別として、「1日公演」の小劇団やコンサートでは利用される機会が無く「東京芸術劇場・中ホール」のように28分割のアダプタブルステージの利用が皆無に近く改修時に「4分割」に集約された施設もある。

カラクリ天井

これも「不要不急施設」の代表格で、「大掛かりな仕掛け」なのでマルチ分割アダプタブルステージ同様に「組み換え時間」がかかり、めったに利用されていないケースが多い。

部分貸し(空席があっても)でも音響の良いホール

このようなカラクリに頼らなくても、単に「フロアー出入口」や「階段」を締め切って、部分貸し出ししているホールの方が、利用者からは好評を得ている。

好例

札幌コンサートホール Kitara (公式ガイドの料金表はこちら

第2節 音響支援システムの盲点は「周波数特性」にある!

大阪城ホールに代表されるようなアリーナ(巨大体育館)にある音響支援システムは、「音響工学の基礎知識1 指向角と音の広がり」で詳述した通り、スピーカーの指向特性上の不都合が有り、スピーカーのサービス・エリア外では周波数特性が著しく乱れ、クラシックの演奏会には不向きとしか言いようがない。

★後書き 理想のオーディトリアム空間と『 匠の技 』

郊外の丘陵地のように立地環境さえ整えば、球場のようなオープンステージに"すり鉢状"の人工芝を敷き詰めた観客席の構成で、EXPO`70大阪万博の「お祭り広場」のような"構造材むき出しのできれば木質の軽量ハイブリッド天井(※91)を上空20m以上の高さに設置して、客席周囲の柱間は「2重構造の木質縦格子」の外壁で覆い、欄間と障子や襖などの和装表具で外気を遮れば"素晴らしい音響の芸術空間"が生まれることとなるでしょう。

但し、ドーム天井は別途したように"音響集束効果"があるので避けたほうが良いでしょうが、小さなヴォールトの集合天井なら問題はありません。

同じく木質の平土間は"定在波"が生じるので避けたほうが賢明です。

つまり西武球場のように、すり鉢状のスタンドを"巨大屋根"で覆うのが周囲の壁面も低くて済み、かつ、対候性(空調)を確保したうえで、最良の音響空間が構築できるでしょう。

参※91)木質軽量ハイブリッド屋根構造についての外部記事はこちら。

『 匠の技 』とは...

『藝術ホールデザインの セオリー』をまとめるに当たって"ホール上空には、神様(お客様)はいない!"

再度申し上げておくが、以上の手法はお化粧(残響付加)を除き「あくまでも聴取位置=着席時の耳の位置」周囲の現象とその対応策であって、各フロアー面から概ね1.8m以下の低層部への適用例である。

ホール上空には、神様(お客様)はいない!本末転倒のワンワン鳴り響くカラオケ音響ホールはもう結構である!

1 ,大林組の取り組み

特集「心に響く良い音」は素人にもわかりやすく「ホールデザイン(設計)のツボ」を解説紹介したレビュー記事。

2,鹿島建設の取り組み

特集:舞台への招待「音響の楽しみ」は軽井沢大賀ホール(※ホールナビはこちら)のデザイン(設計)を例に、同社の音響への「拘り」と「姿勢」を紹介したレビュー記事。

3, 日本音響エンジニアリングの取り組み

トップメッセージはちと頂けないが?、「研究・実験施設」はピカイチ!、特に「室内音響の測定

-インパルス応答の読み方-」は素人(奏者&聴衆)には難しいかもしれないが、「ホールデザイン・コンペ」を主催(公募)する立場の「施設計画者(行政・建築課)」の諸氏は1度目を通して頂きたい「レビュー」である。

特別寄稿の故北村 音一氏(元九州芸術工科大学名誉教授、1995年2月18日没)の「エッセイ(私の夢)」は、同感の連続の極みで、「理屈ありきの姿勢」はみじんも無く!真摯に「良い音」に向かう姿勢に感動した。

おそらく、学生に対してもある面厳しく、「単位」さえ取れれば...とか理論は良く学んでいるが、測定データと解析にこだわり「聴感」を無視したようなレポートを提出する「優等生」には厳しかったのでは無いだろうか?

ご存命中に、1度お目にかかってお話を聞いてみたかった。

全国石壁ホール根絶推進運動市民の会 名誉顧問  狸穴総研・建築音響研究所 出自多留狸

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appendix Ⅲ  後世に残したい真の"銘コンサートホール"74選

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現在日本各地には3000以上の公共ホールがあり、「タヌキも歩けばホールに当たる?」様相を呈していますが、『"音"を"楽"しめるコンサートホール』となると...

 

公開:2017年9月22日
更新:2022年9月12日

投稿者:デジタヌ


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