『 建築音響工学総覧 』第7巻・芸術ホールのデザイン(Page 10)第9章 多角堂の持つ魔性!
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★第9章 多角堂の持つ魔性!
古来日本人の心をひきつけてやまないのが多角堂ですが...
第1節 奇才以外の「凡人は正多角堂には手を出すな!」
法隆寺夢殿に代表される、正多角型(偶数角形)は憧れても、計画するな!
モダニズム建築の大家、「正多角形・フェチ」の権化?奇才・故前川國男教祖が...。
- 1960年3月31日に旧京都会館第1ホール
- 翌年1961年に東京文化会館・大ホール&小ホール、
- 翌々年1962年に神奈川県立青少年センター
を竣工させていらい、1964年には同じルコルビッジェ門下の先輩である晩年の故山田守氏が夢殿をモチーフに「日本武道館」を完成させるにいたり全国に「多角形ホール病」が蔓延してしまい現在に至っているが。
故前川國男・教祖も1964年開館の 弘前市民会館からは音響的に面倒で手間暇かかる「正多角堂」デザインを捨て、オーソドックスな「変形扇形ホール」に回帰している。
特に1982年開館の「ザ・シンフォニーホール」(※ホール音響ナビはこちら)以来、残響の概念(※1)が広まり、1/30スケールモデル実験やコンピュータによるシュミレーション技術が発達・定着してからは、1983年竣工 熊本県立劇場(※ホール音響ナビはこちら)、最晩年の1985年 石垣市民会館に至るまで「正多角堂」には手を染めていない!
※、事実、前川國男教祖の代表作の1つとされる旧京都会館第1ホール(ロームシアター京都)は、京都市が
「建物の形状自体がホールとしての機能を低下させており、改修ではデザイン性・機能性とも要求を満たせないため、委員会の意見を取り入れた上で改築を行う」<当時の広報より引用>
以上の理由で2012年3月限りで閉鎖されその後解体され、 2016年1月10日に香山壽夫建築研究所の設計によるオーソドックスで手堅いデザインの4フロアー4層バルコニーの「モダン芝居小屋」に近い意匠の「ロームシアター」が新装開場した。
彼(前川國男)の愛弟子故丹下健三氏も師匠の教訓(正多角堂には手を染めるな!)を守りオーソドックスな「変形・扇形ホール」しかデザインしていない。
さらにはもう一人の巨匠故菊竹 清訓氏(※0)もアバンギャルドな作品群をデザインした奇才・偉人では有るが、同胞の故黒川紀章氏共々"正多角形には手を染めていない!"
菊竹 清訓氏の代表作の1つ1969年竣工旧久留米市民会館(2017年現在解体中)にしても,後述するCydic と Convexを組み合わせた平面形状を用い、対抗する壁面を極力少なくした形状であり、更には客席スロープ形状や天井反響板にも留意しホール内部から並行面を極力排除したデザインになっている。
★第2節 平土間との併用は厳禁!
どうしても,.「多角形に憧れる」なら、以下のセオリーを守るべし!
第1項 客席は急峻なスロープとせよ
「客席スロープ」と「ステージ反響板への配慮」は必須
「客席スロープ」とステージ反響板設置の配慮(客席側壁との開き角度差・壁面アンギュレーションorスラント設置)は必須で、これを怠ると悲劇が、上手く処理すれ喝采を浴びる成功が訪れる。
数少ない成功例では「瓦斯タンク」のように、高さが12分に取られており!、しかも急峻なスロープを用い高度差で定在波障害を回避している。
成功例、アトリオン音楽ホール(秋田市)/変形6角型(※ホール ナビはこちら)の例。
第2項 多角堂は平土間多目的スペース(サロン)には不向き!客席スロープが必須条件
平土間偶数正多角堂は御法度!平土間ではいくら天井をスラントさせても、サイドの対抗壁面同しが完全に平行し、ホール横断定在波の嵐になってしまう!
最悪のケース平土間サロンへの適用愚例!
偶数正多角形を採用した平土間サロン形式ホールは最悪で、ステージ背後の両袖部分の脇反響板と客席部分の対抗壁面が完全平行する場合が発生しの場合、まともに定在波障害エリアとなってしまっている。
特に、ステージ部分の背後壁に「アンギュレーションやスラント処理」を施した反響板がセットされていない場合は、事態は深刻で、聴衆のみならず?ステージ上の奏者までもが定在波の嵐に巻き込まれるている場合も多々発生している。(※例1)
※例1、平土間サロンの例
- 日立システムズホール仙台 交流ホール(※ホール音響ナビはこちら)
- 日立シビックセンター・多目的ホール/(正方形)
- あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール/8角堂 (※ホール音響ナビはこちら)
- しいきアルゲリッチハウス/正方形(※ホール音響ナビはこちら) 真打ち登場!アルゲリッチさんにお悔やみ申し上げます?
ステージ前に平土間部分をもつホールの場合
同じく等辺多角形のフロアデザインを採用したオープンステージコンサートホールの場合も同様で、ステージ背後壁面に配慮が足りない場合、ステージ及び、被り付き平土間客席部分で、対抗する平行面によって生じた(倍音列)定在波が猛威を振るいステージ上の奏者までも被害を被っている場合も多発している。(※例2)
※例2、ステージ反響板に配慮が足りない例
- 京都コンサートホールムラタ小ホール/正6角型(※ホール音響ナビはこちら)
- 草津音楽の森国際コンサートホール/変形6角型(※ホール音響ナビはこちら)
★第3節 正統的手段・形状で勝負せよ!
第1項 基本平行する対抗壁面の多い偶数正多角形は避ける!
「偶数・正多角形ホール」は対抗する並行面が多く、定在波が生じやすく基本的にホールとしては適さない形状で有る!
多角形の平面形状ホールをデザインしたいのなら、吸音壁やマジックボックス(反響調整箱※3)に頼る様な安直な「正多角堂」デザインは捨て、壁面形状に趣向を凝らした兵庫県立芸術文化センター・小ホールのような手法をとるか、軽井沢大賀ホール/正5角型の様な奇数正多角型ホールに向かうのが適切であろう。
つまり偶数正多角形ではなく奇数正多角形とするか「変型の不当辺不当角多角形」の平面形状とするかCidic形状、Equlangular形状、を選んで対抗する平行面を駆逐すべし!

Attribution: Salix alba at English Wikipedia
第2項 正多角形に挑みたいなら、♥奇数形、5角型、9角型、とすべし!
どうしても作りたいなら「奇数角」を用いよ!
正5角型・正9角型はそれぞれ内角140度108度と割り切れる数値であり、進化した作図システム(CAD)と進化した測量機器「トータルステーション」(※101)を用いれば比較的容易に実現できる。
軽井沢大賀ホール/正5角型(※ホール音響ナビはこちら)はこの形で成功している。
※101、トータルステーション」についての Wikipediaの解説はこちら。
第3項 建築技術に挑戦!正7角型・11角型ホールの建設
7角型・11角型は内角がそれぞれ約147.27度、約128.57度と現在の進化したCADシステム・測量機を駆使しても作図?も実際の施工も困難では有るが、建築技術の粋を尽くした正7角型・正11角型ホールへの挑戦など、新たなるコンセプトづくりに向かっていただきたい物である。
★第4節「天井の高い6角堂」は安普請の「靴箱」より良い結果を生む場合も!
故前川國男教祖は何故6角形を選んだのか!多角堂のデメリット!&メリット?
多角堂に否定的なコラムではあったが、6角形(&菱形)は使いようでは「下手な靴箱?」より有利と言えなくも無い!
その1;ホール全長を短く出来る 多角堂多層ホールのメリット
長形ホールとは違いステージ間口に比べどうしてもホール幅がファットになり?、このことは収容人員の割には幅広い敷地を必要とする多角堂のデメリットの一つでもあるが、
と同時に、ステージ横幅(プロセニアム間口)に比べてホールシェルター総幅が広くなるというデメリットは、短い奥行きでも「壁面間20m超」のセオリーが全壁面間に適用しやすく基本定在波を可聴帯域(20~20kHz)外の低周波振動に逃がしてやりやすくもなる。
逆に言えば、前後長を短くでき、ステージまでの距離を短くできることとなり、多層ホールの上層階の天井桟敷の大向こうからステージの距離が短く出来る利点がある。
その2:全フロアーに渡り比較的急峻なスロープと壁際通路が必須
垂直壁の6角形でもステージ直後からスロープを形成すれば、ストレート配列の座席でも高度差だけで対向する平行面をキャンセルできる。
ただし、この手法では後半両側壁スロープ部の壁際部は対抗する前半両側壁と完全平行することとなり、側壁際は定在波の節となるために、「壁際を通路」として障害を回避するか、不当辺不当角6角形とするか「壁面スラント」と併用して、平行壁面をキャンセルし定在波の発生そのものを根絶する必要がある。(※例3)
※例3、アトリオン音楽ホール 《 ホール 音響 ナビはこちら 》、ラポルトすず(公式施設ガイドはこちら)
その3;8角形ではスロープ中央平行壁部分の処理が要
但し垂直壁の正8角形では最大幅部が完全平行となるので、シューボックスホール同様にスロープ+扇形配列(orハノ字配列)段床の「谷間効果」で(倍音列)定在波を回避するか、アンギュレーション壁で中・高音域の倍音列定在波を抑止する必要がある。
★第5節 時代を追って微妙に進化したデザイン?
1960年台の東京文化会館・大ホール開館当時は完全な正多角形・垂直壁の多角堂であったが、コンピューターの発達などで、年を追うにつれCADによる製図や施工面では電子化による測量機トータルステーションの飛躍的な進化により、各辺の内角(外角)が割り切れる数値で構成された正多角形(正6多角形/外角60度、正8多角形/外角45度)から、各辺の内角・外角が異なる変形多角形に微妙に進化しては来ている。
しかし相変わらず「完全並行対抗壁」を残したまま単に多角形を押しつぶし、各辺の内角を120度から外したような垂直壁の(音響的に)厄介なホールも造り続けられている。(※例5)
※例5、コンサートホールATM 《 ホール 音響 ナビはこちら 》、草津音楽の森国際コンサートホール 《 ホール 音響 ナビはこちら 》
第1項 日本で花開いた「夢殿」文化ではあるが...
世界にも類をみない正多角形ホールは、音響的には並行面が多い「非常識な形状」ではあるが、花ビラ5枚の一重桜に代表される、日本独自の形状である事には違いない。
第1目 日本で多角堂が進化した背景
古来から、外角が45度の8角堂や、同じく外角60度の6角堂は、原始的な測量法や墨付け器具でも、実現が容易であり、ハチの巣に代表されるように構造的にも頑強である。
さらに、安定感あるアピアランスが見るものと「デザイナー」を引き付ける魅力(魔力)も持ち合わせており、日本では好まれるのであろう。
第2目 「はかない桜」は散り際の美学?
正多角堂に挑み「はかない桜」の如く華々しく散る?のも日本の美学?かもしれないが、
「舞台芸術ホールは音響が命」華々しく散って(失敗して)もらっては困る!
この章の参照欄
※注0. 現代の巨匠菊竹 清訓(1928年4月1日 - 2011年12月26日)氏の作品について
福岡県久留米市し出身1928年生まれの故菊竹 清訓氏は6才年下の黒川 紀章と共に「建築と都市の新陳代謝、循環更新システムメタボリズム」を提唱し、1905年生まれのモダニズム建築の巨匠故前川国男氏とは違ったスタンスで創作し続けたデザイナーである。
一過性のはかない芸術作品?
彼の唱えたメタボリズムを象徴する作品群は、
- 1970年;万国博覧会/エキスポタワー、2003年3月解体撤去
- 1975年; 沖縄海洋博/、アクアポリス 閉会後解体
- 1985年;筑波科学博のパビリオンデザイン、閉会後解体
- 1988年 なら・シルクロード博覧会/奈良公園館(2004年シルクロード交流館としてリニューアルオープン2014年閉館)
- 2005年 日本国際博覧会(愛地球博)マスタープラン
参加に象徴されるように、
謂わば「建築物はその時々の時代の要求に\即したコンテンポラリーな現代芸術作品である!」
と言うような「哲学的観念論」から生まれているように思う。
『建築物も人と同じ生き物、時代と共に歩む「儚い命」で有って良い』
と言った所で、「死して何々を残す」と言った普通の建築家ではなく、舞台・演劇演出家に近い「時空芸術家」であった様に思う。
従って最初から必要最小限の強度で、長期の使用に耐えるような耐用年数はあまり考慮されておらず、21世紀まで生き延びている作品は少ない、特に1981年の新耐震基準適用以前に生まれた作品は、消えつつ有る。
一流の構造設計(構造計算)屋さんでもあった
彼の育った時代には、現在のような分業化(デザイン&構造設計(計算))がされておらず、彼は1流の構造屋サンでもあった。
事実1995年に早稲田大学より「軸力ドームの理論とデザイン」と言う論文で工学博士号を取得している。
だから、旧ソフィテル東京
- 着工 1990年11月
- 竣工 1994年6月
- 開業 1994年6月16日
- 解体 2008年5月
東京テアトルビル
- 竣工1987年1月31日
- 解体着手2014年8月25日
のようにたった18年間や27年の短い命でも、彼の存命中に解体されようが全く拘りが無かったのであろう、
むしろ2003年3月完全撤去されるまでエキスポタワー、を眺めるのはつらかったであろう!
だからこそ晩年の2005年愛地球博のマスタープランにも喜んで参加したのであろうと確信する。
晩年に至までメタボリズムを貫いた人であったように思う。
公開:2018年8月 6日
更新:2024年12月15日
投稿者:デジタヌ
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