しいきアルゲリッチハウス/別府市内《ホール音響Navi》
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別府アルゲリッチ音楽祭の為に造られたサロン
公益財団法人アルゲリッチ芸術振興財団が別府アルゲリッチ音楽祭と若手演奏家の場として創建した。
『しいきアルゲリッチハウス』の音響デザイン
Official Website http://www.argerich-mf.jp/haus/usage-info.html
※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。
(永田音響設計の自画自賛レポートはこちら)
凝ったデザインのタービュランス型天井反響板がご自慢?
天井はプラスターボード製の大型一体成型でこしらえた凝ったデザインの十文字の開口部持った風車のような凸面が仕組まれた変型ヴォールト(蒲鉾天井)天井(※1)。
シートは本物のプレミアムシート
全席椅子だけは木製のしっかりした本物のプレミアムシート?。
想定される定在波と定在波障害回避策評価について
※以下、音速は室温28℃、海面標準気圧1013hPaの時の348.6m/sec で計算してあります。
間口方向想定定在波
メインフロア完全平行部分
- メインフロアー側壁間約13.2m;約26.4Hz/1λ、約39.6Hz/1.5λ、約52.8Hz/2λ、約66Hz/2.5λ、約79.2Hz/3λ、92.5Hz/3.5λ、105.6Hz/3.5λ
- ※両側壁のアンギュレーション処理で高次定在波抑制。
- ※座席アレンジによる通路配置で定在波の「節・腹部」を回避。
ステージ床面&・平土間床→天井最高部高さ方向
- 客席平土間部 ※定在波はプロセニアムコーナー反響板・タービュランス波状天井・で抑止・抑制?
赤字は可聴音域内重低音。
という訳で平面方向定在波については抜本的な対策が講じられていないので、基礎点は25点、音響障害エリア点減点は、1エリア(全エリア)として-1点、1波長定在波による音響障害席は標準推奨座席配置の中央部
総評
おきて破りの正方形!
13.2m□の正方形の平土間音楽堂?というとんでもない仕様(※2)のホール!
天井高さが9mとそれなりに高いのが唯一の救い?
永田音響設計がプロジェクトに参加していながらなぜこんな(正方形)代物をこしらえてしまったのか?
不可能に挑戦し、「イグノーベル賞」でも狙ったのか?
残響に定在波も「おまけ」につけて
長田音響設計お得意の特殊メイク?で残響(※3)タップリでおまけに定在波(※4)までてんこ盛り?の大サービス!
定在波周波数に換算して約26.4Hz/28℃/1013hPa この音はまさにグランドピアノの最低音A(ラ)の白鍵と重なる!。
正多角形の平土間ホールは『対抗する並行面』が多く、定在波の嵐になってしまうためにしたがって通常は「タブー」とされている形状!(※5)
壁面にアンギュレーションを持たせたりしては入るが、この程度(5㎝程度)では気休めにしかならない!
ホール周囲壁面は木質のグルービング材をアンギュレーションを持たせて設置してあるが、定在波(※4)の解説をご覧いただければご理解いただけると思うが、神戸女学院ホール(※ホール音響Naviはこちら)のように周囲側壁を大胆に35度以上傾けでもしない限りは1辺13.2mの反響板からは約26.4Hzの初期反響(エコー)が起こりこの重低音定在波は反響が続く限り無くならない!
精精0.5m幅程度の屈曲では15度近く屈曲させたとしても、波長にして1m約348Hz以上の音を躱せるだけでそれ以下の周波数では対抗面に戻りエコーが続く結果となり定在波が発生してしまい、定在波障害が生じてしまう!
正多角堂においてアンギュレーションや、グルービングパネルだけでは定在波を制御しきれないのは、周知の事実であり、各地で悲惨な結果を招いていることぐらいよくご存じのはずである。素人に解かり易すく言えば『大吊金の中』では音が無くなる!のと同じ理由。
標準的なホールお勧め座席配置では、ミステリースポット(※6)の発生エリアである中央部に通路を設定することで逃げている様であるが?
ホール中で発生している周波数特性の乱れ
最悪の現象「ミステリ―スポット」の発生エリアは1波長定在波に限って壁面と中央部だけだとしても、周波数特性の乱れは定在波発生エリア全域で起こっており「各場所での音色の変化(違い)」「特定音の音割れ」「場所によるダイナミクスの変化」などが発生しているであろう!
凝ったデザインのタービュランス型天井反響板で「高さ方向定在波」の発生だけは阻止?
ご自慢のこーったデザインので変型ヴォールトで高さ方向9m想定周波数約39Hzの定在波だけは阻止できた模様?
もっとも頭部(耳)が地上(定在波の節)から1/9波長程度離れていることもあり,たとえ定在波が生じていても水平方向に比べれば実被害は少ないと考えられる。
改修について
とりあえず真四角なので、抜本的な改修は「建て替え以外に道は無い」!と思われるが...。
その1、コーナー反響板の設置
とりあえずは、コーナーの背後(角;かど)に幅約1間(1.8m)のコーナー反響板を仮設する。
※設置例;東京文化会館小ホール(※ホール音響Naviはこちら)
その2、扇形段床(仮設雛壇)の設置
天井が高いので、壁面3面を利用して東京文化会館小ホールの様に扇形段床(雛壇)を設置する。
この場合、現状のホール扉利用を想定した場合、はホール入口側の片方のコーナーをステージとして利用し、現出演者控室とびら側の壁面は1m程度の通路を設け、出入り口側には階段を設けて雛壇に上り下り出来るデザインとすれば実現可能であり、雛壇そのものを仮設資材(扇形平台)で構築すれば、今まで通りピアノの出し入れも可能となる。
※、最低1波長の基本定在波対策として
側壁際はもちろん最低中央部に「十時」通路を設け、定在波の節目を避け、側壁から、東西壁面間16.3m、南北壁面間17.7mを其々4分割し、其々壁面から4m、約4.4mの位置も通路としてステージ前も含め東西5本、南北5本の通路で隔てた部分にブロック状にスタッキングチェアーを配置して使用すべきである!
これからでも間にあるコンサート対応「仮設客席雛壇」
このルームは基本的に「対抗壁面間定在波」に対する配慮が「全く無い!」といても言い過ぎでない「真四角ルーム」であり今更壁面スラント内角の変更による異形化(四辺形化)は無理なので、発想を転換しポータブルステージ使用ではなく「仮設客席雛壇」の準備をお勧めする。
南東角に1間(約1.8m)幅の仮設コーナー反響板を設けステージに
ティアラこうとう小ホールの例に倣い
※例、ティアラこうとう小ホール(ホール音響Naviはこちら)の平面図はこちら
南東角に1間(約1.8m)幅の仮設コーナー反響板を設け「平土間ステージ」として使用し、ステージ前は2列程度の平土間客席部分として、コーナーから約6mあたりの位置から幅約1m段差10㎝程度の(安全柵付き)「1/4扇形同心円」の仮設ひな壇を設置する。
東側タイル壁、と北側鏡面を雛壇最後列の背面とし、東西3か所の出入り口の前は幅30cm程度の踊り場を設け20cm幅のステップを切れば最後列にもあがれ、消防法(&市の条例)にも抵触しないであろう両側壁と南西ステージ部分と北東角を結ぶ対角線上の3本通路とすれば、東西・南北壁間に「谷間」が出来て、平戸ステージ部分も含め「ホール横断定在波層」は回避できる!
但しティアラこうとは異なり、ステージ(演台)平台は使用しない!
移動スタジアム型式のひな壇
「蹴込み使用」の通常の仮設雛壇ではなく、スタンド形式の分割タイプにすれば、強度的にも問題はないし、ゴム輪の大型キャスター付きにすれば、床面も傷つかない。
この手法は各地の平土間正方形ホールに提案させていただいている手法で、比較的天井高さに余裕のある正方形平土間イベントルームの有効な音響改善手法(定在波対策)だと自任している?
以上の改修で、アーティストへの定在波による音響障害は回避できる。
ホール音響評価点:48点/100点満点
150席のホールとしての評価。
§1,「定在波」対策評価;得点18点/配点50点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
- ※スラント設置されていない「垂直平行側壁部分」と「平土間部分」の処理において、
「音響障害回避策」が3つ以上講じられていない場合は基礎配点50点満点x0.5=25点に減じます。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2、残響その1 「初期反射」軽減対策評価;;得点25点/配点25点
- ※木質パネル等持ち点25点から硬質壁在持ち点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
- ※障害箇所1点/1箇所で基礎素材点を減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3,「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点0点/配点20点
- ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4,残響その2「後期残響」への配慮評価;得点5点/配点上限5点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
- ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。
※音響評価ポイント詳細は「"ホール音響ナビ"に用いた用いた評価法とは」をご参照ください。
算出に用いた値;
定在波評価
基礎点B1=配点25点ー障害発生エリア数1=24点
1波長定在波音響障害席数;24席/節部(ど真ん中1列)、12席/腹部(1/4)幅分部
重複1席
音響障害席35席
初期反射対策評価
基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数0=25点
初期反射障害1壁面障害 0席
初期反射障害2 天井高さ不足 0席
重複カウント ;ー0席
音響障害席総計;0席
客席配置評価
基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数1=19点
眺望不良席数;150席(全席)
音響不良席その1;定在波障害席35席
音響不良席その2 ;初期反射障害1壁面障害 0席
音響不良席その3 ;初期反射障害2 天井高さ不足 0席
重複カウント ;ー35席
音響障害席総計;150席
算定式
評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数
しいきアルゲリッチハウスホールの施設データ
- ホール様式 平土間音楽専用ホール。
- 客席 約13.2mx約13.2m、有効床面積約174.24㎡(約105畳)最高部高さ約9m 1フロアー
- 収容人員150席(スタッキングチェアS)、
- フローリング、
- 舞台設備 バトン類
-
- オーケストラひな壇(可動分割迫り)、エプロンステージ迫り(可動床客席収納)、オーケストラ平台、ひな段用けこみ、
- スタインウェイ ピアノ D-274 (No.531520)
- 付属施設
- 控室、洋室楽屋X
- 付帯施設利用料金等 詳しくはこちら公式ガイドへ。
しいきアルゲリッチハウスの施設データ
- 所属施設/所有者 公益財団法人アルゲリッチ芸術振興財団。
- 指定管理者/運営団体 公益財団法人アルゲリッチ芸術振興財団。
- 開館 2015年
- 設計 東九州設計工務(株)+(株)水野宏建築事務所+(株)佐伯建設 (音響設計 By Nagata Acoustics Design)
- ゼネコン (株)佐伯建設
付属施設・その他
- 付属施設
- 楽屋x1、エントランス、ホワイエ、控え室、
-
野外ステージ
- 客席床面積 106.5㎡(約32畳)
- 舞台設備 間口5.1mx奥行3.9m面積19.89㎡
- 施設利用料金等 詳しくはこちら公式ガイドへ。
しいきアルゲリッチハウスのロケーション
ところ 大分県別府市野口原3030-1
アクセス
最寄りの駅 別府駅
しいきアルゲリッチハウスがお得意のジャンル
別府アルゲリッチ音楽際(※音楽祭Naviはこちら)の会場となっている。
ソリストのリサイタル、アンサンブルの演奏会、小編成の室内楽コンサートなども行われている。
またパーティー・レセプションなどの会場としてもつかわれている。
豆知識
しいきアルゲリッチハウスのある別府市のあらまし
大分県の東部のほぼ中央に位置し、別府といえば、別府温泉と高崎山のお猿さんで有名なところで国際会議観光都市にも認定されており年間800万人を超える観光客でにぎわっている。
推計人口、120,285人2017年10月1日
別府ー大分 14分/280円/JR/12.1km
別府ー(大分空港)-(羽田空港)ー品川 4時間19分/42,100/バス/JAL/京急
デジタヌの独り言
兵庫県立芸術文化センターの「神戸女学院・小ホール」(※ガイド記事はこちら)のように壁面を極端にスラントさせるか、前途の東京文化会館小ホールのように不当辺不当角の変形4辺形にでもしない限りは定在波退治はできないのはジョーシキ!であり基本中の基本!
エコールーム(※7)でさえ、その点には留意してある。
...タクーどうしてこんな代物をこさえてしまったのか?全く理解に苦しむ。
参照欄
※1、第4章第4節 「ドームとヴォールト」等のアーチ天井の音響効果に関する解説はこちら。
※2、第10章 多角堂の持つ魔性!こちら。
※4、定在波に関する解説記事 『定在波』とはこちら。
※5、第3章 藝術ホールデザインのセオリー はこちら
※7、エコールームに関する「音工房Z」さんの解説記事はこちら。※本物のエコールームでは定在波対策(平行壁面対策)はしっかり施されています。
公開:2017年11月13日
更新:2022年9月30日
投稿者:デジタヌ
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