狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

『 建築音響工学総覧 』第4巻 定在波 と音響障害(Page.5)第5章  定在波障害を緩和"する手法

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★第5章 "定在波音響障害"を緩和する手法

定在波の"滞在時間を短縮"し"高次定在波を抑制"して、""定在波音響傷害!を緩和"する手法について詳述します。

第1節 吸音壁で"初期反響エコー"を押さえて定在波を抑制する手法

ホール後端壁面処理によく用いられる手法でもあり、ホール後端の場合は前途した最後列での"釣鐘効果(※611)の抑制"には大きな効果がありますが、全長20m以上もの奥行きで生ずる20Hz以下の低周波振動成分にはあまり効果が期待できません!

参※611)当サイト関連記事 『第2節 定在波音響障害とよく似た釣鐘現象 はこちら。

※画像をクリックすると拡大できます。

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第1項 ホール後端部で良く用いられる縦格子で表装した吸音壁

第1目 吸音壁(消音材)を設けることは効果的ともいえますが!...

前途しましたように、壁面(からの反射音)を無くせば定在波の"卵"は無くなる!わけで...

壁面を縦格子などで表装して2重構造として、ロックウールなどの吸音材で"反射音圧を"低減させればある程度の抑制は可能ですが、反射音の周波数特性は吸音層の容積(厚み)や材質(音響特性)により均一ではありません!

特に、両側壁に用いた場合では間口に相当する0.5波長の基本定在波周波数成分となる波長の長い低周波(低音域)周波数成分の吸音効果はあまり期待できません!

例えば間口7間(12.6m)程度の長型小型ホールの側壁間では間口相当の0.5波長の周波数成分(,波長25.2m約13.8Hz)を持つ定在波が居座りますが、"吸音材を併用"してもこの長波長(25.2m)を完璧に抑制することは不可能でしょう!

1-1-1 壁面スラント設置との併用が不可欠

この手法を用いる場合も、壁面のスラントと扇形段床の併用は不可欠です!

この手法だけで間口方向の定在波を抑止することは難しく、扇形段床と組み合わせて、定在波を回避する手法も併用する必要があります。

第2目 aspect ratioが10倍以上の細長い縦格子の(パーティション)ならば

例えば巾2インチ(50㎜)程度の角材ならば、狭いほうの反射面が有効となるために、1/2λ以下の音波はほぼ無視して通過してしまいます?

3.486KHz以上の音にしか絶対的な効果はありませんがホール幅に相当する波長の数倍程度の高次周波数成分は散乱抑制(初期エコー軽減)につながるわけで、

一方長辺が長いので幅の20倍に当たる波長の音波もごくわずかですが(入射音圧のー80dB約1万分の1!程度)反射します!

つまり、348.6m/sec÷0.05÷20≒348.6Hzの音も反射するわけです、

"吸音材"と併用して2重構造の吸音壁にすると、3.486KHz以下の低周波成分を持つ定在波の抑制も可能なはずですが...

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第2節 壁面のアンギュレーションで初期反響を拡散させて定在波を抑制する手法

屏風のように折れ曲がった壁面を用いると、対抗する並行面はある程度はキャンセルできます。

第1項 巾の狭い屈曲壁面では定在波は抑制でき無い!

但し後述するように、「幅の狭いパネル」で構成されたアンギュレーション壁(屈曲壁面)では、指向角のために、ホール間口に相当する低周波成分には効果がありません!

前項の「壁面全体のスラント」との併用は必須となります。

第2項 屈曲壁面でも壁面スラントと併用せよ

最長17mにも及ぶ波長をもつ20Hz~100Hzの重低音では

1/2波長以下に相当する細かな凹凸アンギュレーションは無視!され、

壁全面が大きな"反射面"として働くために、「壁面スラント」を併用しなければ、重低音成分を持つ定在波の阻止・駆逐はできません!

※前途したように1.8m□木質パネルの場合、オーディトリウム内壁からそれぞれ15°以上開いて屈曲させれば、アンギュレーション壁面だけで、150Hz以上の倍音列を含む定在波の周波数成分抑止には効果がありますが...、健康被害の元ともなる150Hz以下の重低音域の抑止には、

壁面全体のスラント設置(ホール奥行き方向の平面的広がりと高さ方向の立体的傾き)を併用する必要!があります。

※例3、壁面スラントと帷子で定在波に対して「鉄壁の構え」を施した例 いわきアリオス 《 ホール 音響 ナビはこちら 》

参※当サイト関連記事 『第2節 定在波音響障害とよく似た釣鐘現象 はこちら。

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第3項 幅1間(約1.81m)以上のフラットパネルの屈曲設置効果

1間巾の定尺木質パネルを、屏風のように折れ曲がったアンギュレーション(屈曲)をもたせて表装する手法です。

幅1間(約1.8m)以上のフラットパネルを屏風に様に、

屈曲、ないしは「帷子(かたびら)」風に「重ね返した」壁を15°程度の開き角で設置すると、

 反射限界周波数が一般的な1/2波長と考えても、

  • ●1間幅(約1.82m幅)の壁面で反射する初期反響音の半減指向角30度相当する周波数は 約355Hz 。

なので音声帯域(※51)は、ほぼカバーできますが、

★参※51)音声周波数帯域とも言われ楽器や肉声の基音となる300~3400Hzの低・中音域を指します。ちなみに電波法のAM放送の公称伝送帯域は100 Hz~7,500 Hzです(実際には50Hz程度から12kHz程度は伝送できています。)関連記事「音の良いフルレンジスピーカー列伝」はこちら。

第3節 ホールでは定在波は"壁面間隔!"に依存する

耳穴に例えれば、非常に狭い区間ですが、圧力波である重低音も最深部にある鼓膜に届きます!

つまり閉鎖された空間(ホール)では対抗する壁面間で、その間隔に応じた周波数(波長)成分をもつの定在波が生じます。

つまり解放空間である野外(野音※★)と異なるのは、壁面高さは影響しない!という事です。

参※★)当サイト関連記事 ★ はこちら。

第1項 巾20m以上の大型ホールでは

気温20度、気圧1気圧(760mmHg)の時 音速:348.6m の時の定在波の周波数成分は

  • ●基本周波数 1/2λ:周波数8.7Hz 
  • ●1波長の17.4Hzも"健康被害帯域"
  • ●1.5 λ;26.1Hz
  • ●有効に阻止できるのは20.5次!の高調波成分の357Hz以上

26.1Hzの周波数成分(節目4つがある可聴音定在波)がビンゴヒットして停留!するわけです。

※クリックすると拡大画像が見られます。

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つまり、0.5波長8.7Hzから20波長348.6Hzまでは無制御!状態で、

特に健康被害に繋がる 0.5波長8.7Hzと1波長の17.4Hzの低周波振動は放任状態!となります。

前途したように、クラシック音楽では、バスドラムの強打や、オルガンのペダル音が、トリガーとなる8.7Hzの低周波成分が含まれており、重大な健康被害(低周波障害)に繋がるのです。

★第2項 aspect ratio(長短比)が10倍以下の壁材を組み合わせた場合

つまり、完全並行する対抗反射面壁面同士が、長型0.9mX9mのプレーンなパネル材で構成されていると仮定すると...

  • ●(短辺0.9mの20倍に相当して、更に長辺9mの倍波長にもあたる)波長18m≒19.4Hz以上の音は反射角度をつけることにより制御可能です。

しかし、前途したように音圧が130dBにも及ぶ重低音!が壁面(天井・床)に届くと壁面間の反響を繰り返して「定在波」が"孵化"するわけです!

参※37)当サイト関連記事 第2節 反射面の幅 と反射波の周波数限界はこちら。

第3項 音響パーティションを用いてシェルター壁をサウンドロック(遮音・防音)壁とする手法

第1目 縦格子を用いたパーティションの効果

ホール本体外壁をサウンドロック(遮音・防音)構造としてオーディトリアム(ホール客席)とを
格子状のパーティションなどで区切り客席後方にホール内廊下を設ける手法です。(※例2)

50mm□程度の角材を100㎜程度のピッチで並べた"格子"は高音域の音響拡散効果で「高音域初期反響」を軽減しますが、

半波長が50㎜(3.8KHz)より大きな低周波(3.8KHz以下)は、格子を無視(通過)してシェルター(音響ロック壁=防音壁)の内側まで到達してから反射!します。

従って、20m以上の十分に幅のあるシェルター外郭構造で適用する場合には「壁面間20m超」の伝承技法が適用できる筈なのですが...

第2目 シェルター壁面をスラントさせないと

このシェルター(ホール外郭)を音響ロック(遮音・防音壁)とする手法では、シェルター壁そのものを扇形とするか、兵庫芸文小ホール(※531)のように大胆に(35度以上)スラントさせて「ハノ字壁面」にしないと、シェルター内面の「吸音壁」のわずかなアンギュレーション程度では定在波そのものの抑止・抑制にはつながら無く!健康被害!の原因になります。

つまり間口の、1/20以下の幅のパネルならスラント(傾斜・開き角)させて並べても、間口の半波長に相当するような低周波成分を持つ定在波は抑制できません!但し高調波成分拡散効果で抑制が可能!です。

定在波の高次周波数成分が抑制できレバ、結果論として、周波数特性"うねり"は幾分改善できます?。

※例2、京都コンサートホール(ホール音響Naviはこちら)、オリンパスホール八王子(ホール音響Naviはこちら)等。

第3節 その他の効果のない幾つかの気休め『プラシーボ?』処置

第1項 座席アレンジメント(通路配置)による定在波障害の"目晦まし策?"

定在波の発生しやすいシューボックスホールの、通路配置によく用いられる手法で、定在波の"節"に当たる"ミステリーピット"を通路として、避けて座席を配置して障害を躱そうとする魂胆のようですが...

第1目 高次周波数成分の節目(0クロス)を避ける消極策!
  • 1波長周波数成分の「ミステリーピット(節目)」を想定して側壁間際と中央部分を通路とする3本(5本)通路配置。
  • 1.5次高次周波数成分の「ミステリースピット(節目)」となる側壁間際と間口の1/3、2/3を通路とする4本通路配置。

1波長・1.5波長の「ミステリースピット(節目;ゼロクロスポイント)」に当たる部分には、席を設けずに、(客席=被害者のいない)通路を設け「5本通路配置」として、「座席アレンジで実障害部分(定在波の節・腹)を回避してしまおうというアイデアで、いわば定在波による顕著な音響障害(苦情)が生じないようにシートアレンジメントで誤魔化そう!とする?消極策ですが...

3-1-1-1 高次定在波が存在する限り効果はない!

前途した通り、高次の定在波が存在する限りミステリーピットとamplify zone は特定の位置には留まらずに徘徊する!ので全く効果はありません。

前途したように定在波の根本原因「並行する壁面間の反射」を抑止!しないと、(Wikipediaの「単一周波正弦波定在波」の説明とは異なり)前途したようにミステリーピット(落とし穴)、amplify zoneは一定の場所には表れない!ので、通路配置でごまかそうとしても間口いっぱいに広がる「ミステリーゾーン」の回避には、全く効果はありません!(お判りですか?N田音響設計のスタッフの皆さん!)

3-1-1-2 日本では中央通路配置は普及しない!

垂直壁を売りにしている?オーチャードホール※ホール音響Naviはこちら)などで採用された手法で、

オーチャードホールに限らず名古屋市公会堂(※ホールNaviはこちら)等で大正時代から採用されており、例が無かったわけではありませんが、効果がないことと

「中央に陣取る」ことの好きな聴衆が多い日本では「中央部の通路配置」は普及していない!のも事実です。

第2項 その他の気休め手法

以下の手法は初期反響を緩和して「定在波の定在時間(停留時間)」の短縮や高次の定在波周波数成分の抑制には繋がりますが「定在波傷害?の撲滅」にはつながりません!

  • 1間幅未満の細かなアンギュレーション(シワ模様)処理は音響拡散による初期反響軽減策です。
  • 壁面の細かな凹凸処理も音響拡散による初期反響軽減策です。
  • 額縁で縁取った「ビクトリア朝」パネルも音響拡散による初期反響軽減策です。
  • グルービングパネルも音響拡散による初期反響軽減策にはなりますが垂直設置では定在波抑制にはつながりません!。
  • 内部に吸音材を持たない縦格子を用いた2重壁も音響拡散による直接反響(エコー)軽減策で、縦格子の単独使用では定在波抑制には効果がありません!

第1目 気休め程度の段付きパネル配置

一部のホールでみられる1間(けん)幅(約1.8m)以上のプレーンなパネルを段付きで配置する手法は、位相差を用いて段差部分ごとの定在波を干渉させて定在波の解消を狙っているようですが?(※例4)

並行面が存在する限りは平行部分で、形状(音圧分布)の異なった複数の定在波が居座るだけでこの手法では定在波の抑制には全く効果がありません!

3-2-3-1 間口の1/10以上の 巾を持つパネルでは間口に相当する波長の音波を反射します!

一般的な反射面の反射限界径は1/2波長とされていますが、実験的には1/10波長(ミニマム1/20λ/-80dB(約1/10000))程度の小面積からでも微弱な反響が認められています!。

※数学的(波動方程式)にも証明されています!

つまり間口18m(10間)のホールでは1波長18mに相当する19.4Hzの音波が1.8m□の段付きパネル部分からでも反射して、"定在波の元エコー(初期反響)"が生じるわけです。
さらに前途したように「健康被害」が問題となる低周波振動では、聴覚のラウドネス特性の影響でfffの大音響時(100dB時)には一番聴覚が良い1KHにバランスさせるために+30dB(約30倍)/20Hz大きな音圧となっています!
つまりこの大音圧(大音量)では、簡単に対抗面に届き「定在波」が生じてしまいます!

なので、1間(1.8m)幅のフラットパネルを30㎝程度の段差を設けて壁面に設置しても、

"対抗面と完全に並行"していれば20mもあるホール間口の定在波さん?からは、細かな凹凸同様に無視されて

19.4Hz前後の低周波定在波が生じて!健康被害をもたらすわけです。

なので、反射エコーを更に小さくして「定在波を抑制」するには「壁面スラント設置」との併用は必須

となるわけです。

3-2-3-2 吸音材も低周波には効かない!

更に、例え京都コンサートホールの様に、

壁面を吸音構造としても、多少反射が軽減されるだけで、シェルター外壁を無くさない!限りは低周波には効果がありません!

先生ご理解いただけたでしょうか?

※例4、川内萩ホール 《 ホール 音響 ナビ はこちら》、ハーモニーホールふくい 《 ホール 音響 ナビはこちら 》

3-2-2-3「1間幅以下の幅の狭い面」で構成された壁面アンギュレーション(シワ)は

N田音響などが良く用いる、巾0.5m程度の鎧張り(下見板張り)の帷子では、波長1m周波数約348Hz以上の中音域の(倍音を含む)定在波周波数成分の抑制は出来ますが...

実障害の大きい低音域には効果は無く!、

むしろ「残響」創出の為の「音響拡拡散効果」を狙った表装と考えて良く、単独では定在波の低周波成分の抑止効果はありません!

3-2-3-4 壁面の細かな凹凸表面処理は

打ち放しコンクリート壁などでよく見かける表面の溝加工は、

音響拡散効果により初期反響の多少の軽減は期待できますが、

低周波定在波抑制・軽減対策にはなりません! 。

同様に「ビクトリア朝」パネル、グルービングパネルの使用、縦格子を浮かせた2重壁も、

音響拡散効果で初期反響軽減効果はあっても定在波対策にはなりません!

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第3項 その他の定在波対策に効果のない幾つかの気休め処置

前項同様に以下の手法は何れも、残響抑制には効果がありますが、定在波対策にはなりません!

第1項 残響調整装置(吸音装置)

「最近流行りの誤った処置」がこれで...

後期残響と定在波は別物!であり、ホール上層部にある吸音壁構造では客席周辺の定在波には全く効果がありません!

但しマジックボックス(※54)の設置部では、該当周波数の定在波の正体「壁面間で生じる初期反射(エコー)」は軽減され、ホール上層部での定在波抑制の効果は期待できますが...

第1目 客席での定在波抑制には繋がら無い!

殆んどの場合は客席(聴衆の頭)周辺ではなく客席「遥か上空」の残響嬢出エリアに設けられており、

客席での「定在波による傷害?」の緩和には寄与していません!

音響設備機器メーカーは受注金額(設備費)確保のためにこの装置の設置を進めたがりますが、はっきり言わせていただいて、「サプリメント(健康補助食品)」ほどの効果もない「紛い物装置」の典型!です。

※54、第7巻 現代の3大迷発明!「珍妙からくり(残響調整装置、可変段床設備、高さ可変吊り天井)」をご参照ください。

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公開:2017年9月22日
更新:2024年12月15日

投稿者:デジタヌ


『建築音響工学総覧 』第4巻 定在波 と音響障害(Page.4)第4章  ホールデザインの基本"定在波の抑止" 法TOP『 建築音響工学総覧 』第4巻 定在波 と音響障害(Page.6)第6章  "定在波音響障害を回避"するフロアデザイン


 

 

 



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