狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

『建築音響工学総覧 』第4巻 定在波 と音響障害(Page.4)第4章  ホールデザインの基本"定在波の抑止" 法

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★第4章 ホールデザインの基本"定在波の抑止" 法

芸術ホールから定在波音響障害を駆逐する最も簡単な方法は"壁面を無くす!"ことです。

つまりは各地にある「野音」が優れた施設の一つともいえます!(詳細後述)

通常の四方を床・壁・天井に囲まれたクローズド・ホールデザインにおいては壁面処理による初期反響の低減による定在波への配慮は基本中の基本であり、これを疎かにしては良いホールは生まれません!

第1節 周囲の壁を(見かけ上)排除する?

一つは、定在波のトリガーとなる壁面からの「直接反響(エコー)」を緩和して、見かけ上(聴感上)壁面をなくす!ことです。

デパートの催事場やコンベンションセンター(展示場)などの広大なスペースに"イベントブース"を設営する際の間仕切り(パーティション)にはフラットパネルを用いるよりは、後述するように「縦格子」やルーバー(鎧戸)を用いたほうが音響効果(遮音性)は高まります!

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第2節 ホール内壁から「対抗する並行面」は完全に無す!

反射の法則を利用して壁面どうし対抗させないのが最も効果的!

第1項 小規模ホールの必須条件

★特にホール・幅・奥行き・天井高さすべてに余裕のない「小規模ホール」では以下は「必須のセオリー」とります。

  • ●平行な対抗面(壁どおし)、床と天井、ステージ背面反響板と客席後方壁、など対抗する面は平行させない!
  • ●あらゆる対抗面壁面・天井・床には(15°前後の)僅かな「スラント角」「スロープ角」を与え並行面を無くす。

第2項 中規模以上のホールでは...

以下に示す手法で対抗する並行面をなくせば定在波は生じません!

しかも、壁面全面をスラントさせる必要はなく、オーディエンスの聴取位置、つまりはおおむね床面から人の背丈(約1.8m)ほどの範囲内が平行していなければオーディエンスである貴方に被害は及びません!

第1目 中規模以上のホールに於ける定在波抑止!策

  • ●セオリーその1;扇型か台形(ハの字)平面形状とする ※間口20以上の第・中規模ホールでは完全平行する対抗壁面は御法度!
  • ●セオリーその2;垂直壁面は用いない!※壁面はスラント設置
  • ●セオリーその3;平土間と平天井の組み合わせは禁止!※平土間部の天井はスラント&大きなうねりの波状天井とする。
2-2-1 扇形(台形)のフロアー形状にして並行面をなくす

※画像をクリックすると拡大できます。

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前途したように扇形ホールと呼ばれている一般的なプロセニアム形式(※31)の「多目的ホール」では、ステージ(反響板)ととそれに続くステージ(※32)被り付き部分の客席側壁部分は「ハノ字」に開いた台形配置の平面形状となっています。

更にホール全体を僅かな開き角(or絞角)でホール後方に向かって広げたり(狭めたり)している丁寧な設えのホールや不当辺不当角多角形平面(※33)としてすべての壁面から対抗する平行面を駆逐したホールも数多くあります。

定在波は対抗する壁面(天井と床の関係含む)同士が完全に並行している場合に発生するので平行する対抗面を完全になくすのが定在波に対する最良の抑止・駆逐策です!

平行していない壁面で「並行面をキャンセル」、すれば定在波は生じないのでミステリーゾーンは現れません!

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2-2-1-1 サイドプロセニアムから続く脇花道背後壁面処理

※画像をクリックすると拡大できます。

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最近この部分でも、階段状に定尺パネルを並べる手法を良く見かけますが...

アスペクトレシオが脇花道側壁高さの1/10より大きく、間口の1/20以下のパネル巾つまり0.9m巾の定尺パネルであれば、パネル部分での定在波"孵化"の心配はあまりありません、

但し基本開き角度が55度(片側22.5度)以上開いていること!が前提。

プロセニアム間口が10間(18.m)だと仮定すると

このパネルの反射限界1/2λに相当する周波数は約193.7Hz、対して間口方向の定在波波は9.7Hz/0.5λなので、階段状に広がって「かぶりつき部分」での間口方向定在波は生じません!

アスペクトレシオが脇花道側壁高さの1/10より大きく、間口の1/20以下のパネル巾であることが必須条件!となります!

第3項「H(高さ)方向定在波の音響障害」抑止策

トラディッショナルデザインの飾り立てた欧風の「シューボックスホール」で意外と見落とされがちなのが、天井の格天井やヴォールトにデザインに拘る(惚れこむ?)あまり、ステージと被り付きの平土間部分の上空・天井まで水平にデザインされている場合を多く見受けますが...(※例4)。

前節で述べた通り当然天井高さに応じた波長の周波数成分を含む定常波が居座るわけで、聴取(耳)位置が定在波のゼロクロスポイントである床面から約1m浮かんでいるので、「問題なし?」としてかたずけられている場合が多いようですが...

前途したように高さ方向も間口方向同様に「ゼロクロス(節目:ミステリーピット)とアンプリファイ・エリア」が上下変動するので、"楽音消失"や"幽霊楽器"が生じてしまいます!

第1目 天井は床面とは平行させない

完全平土間部分での高さ方向定在波の抑止・駆逐法について

3-1-1 平土間、平天井の組み合わせはご法度!

バッハホール舞台図面.png

バッハホールの好例

参※当サイト関連記事 中新田バッハホール 《 ホール 音響 ナビ 》東北の真珠 はこちら。

天井高さをあまり確保できない小規模ホールでは平天井・平土間の組み合わせは絶対に避けなければなりません!

最近の「広土間とロールバック客席収納システム(※41)」を組み合わせた多目的平土間多目的スペース等では、(片流れ、山形両流れ等の)「天井のスラント設置」は必須となります。

ステージ(反響板)から続く天井は滑らかに客席に向かって広げ、ステージと被り付き平土間部分の上空はプロセニアム形式ではコーナー反響板、オープンステージホールでは天井本体のスラントで平土間部分との平行をキャンセルする必要があります!

これまで述べた理由で、

小さな凹凸(窪み)や段差を持たせた天井形状では、定在波を完全には駆逐できません!

参※41)ロールバック方式客席収納システム についてのシートメーカーの解説はこちら。

※例4、石川県立音楽堂 《 ホール 音響 ナビはこちら 》の悪例

第2目 プロセニアム前縁反響板の設置

平土間部分の天井はスラントさせて、かつステージ上は「可変角反響板」などを設置する必要があります。

プロセニアム型のホールでは、55°以上の上反角度でプロセニアム前縁反響板を設置して、平土間部分を守る必要があります。

但し後述するように0.9m巾の定尺パネルなら、可変プロセニアムタイプで約11m以上あるプロセニアム高さの1/10以下なので、階段状に"折り上げ"ても致命的な障害は発生しません!

但し"洞窟音"の原因となるステージ反響板との急激な断面積変化は避けなければなりません!

好例

東京藝術大学 奏楽堂 《 ホール 音響 ナビ 》

3-2-1 "鳴き竜"は高さで鳴き方が変化する

後述する近代建築音響学の父故・佐藤武夫先生が研究論文をまとめられた「上下方向定在波」の典型例"鳴き竜"も定在波のなせる業ですが、実は座った状態と、立った状態とでは、鳴き方が違います!

いずれにせよ、周期的な音圧振動をするわけですが、高さ方向に「音圧変調に」よる周波数特性(スペクトル)の変動があるわけです!

定在波はエコー(初期反射)が引き金となるわけですが、エコーは前途したように、反射するたびに、縫入射してる音波とは逆位相となり「キャンセリング効果」が生じるわけです!

なので、鳴き竜は泣き続けない!わけです。

だから、距離による拡散減衰以上に急激に減衰するわけです!

手拍子ではなく、ハイレゾ録音機材でピンクノイズのバースト波を用いて、スペクトル分析(※421)を行えば、更に面白い事実が解明されるでしょう。

参※421)当サイト関連記事 『建築音響工学総覧 』付属書 (2)新 音響測定法 の提案はこちら。

悪い例 あの"いずみホールも"...

いずみホール(ホール音響Navi)

彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール(ホール音響Navi)

サラマンカホール 《 ホール 音響 ナビ 》

第3項 奥行き(D)高さ(H)両方向に有効な客席スロープの活用

客席のスロープは、ホール前後軸・高さ方向定在波(並行面)対策として有効に働きます!

スロープ客席は小規模ホールで発生しやすいホール軸方向の定在波を阻止する有効な手段でもあり、完全に並行する「対抗壁面の対(つい)」を多く持つ小規模の「シューボックスホール」や正多角形を採用した「多角堂」では必須の手段でもあります。

天井と床面との「並行対抗面解消」はもちろん、ステージ背後の反響板とホール後方大向こう壁面との完全並行解消にも役立ちます。

第4目 背後壁面のコーナー面取り

扇形段床(ハノ字段床)座席アレンジを用いても、最後列大向こう席ではすべての客席が谷間のない同一断面(高度)に並ぶこととなり、最後列の全席が「ミステリーゾーン」に嵌ってしまいます!

従ってオーチャードホールの2・3階バルコニーでも実施されているように背後壁面と側壁との隅の「コーナー面取り(角を落とす)」か、

この部分の側壁を「ハの字型」に絞り込み、両サイド壁の平行部分を無くしてこの部分で生じる間口横断定在波の発生を阻止しなければなりません!

第5項 オーディトリアム出入り口サウンドロックドア部に対する配慮

大概のホールでは、オーディトリアム(客席)と廊下の「音響ロック」扉部分は「間口方向で」完全並行しています!

扉サイズは縦1間(1.8m)で左右両開き1ユニットで、1連1間(1.8m□)か2連(横2間)となっています!

この場合は、アスペクトレシオが10以下なので、大きいほうのサイズが有効に働き、

1連1対(1間巾)両開き扉(1.8m□)では96.8Hzが反射下限周波数に、

2連2対(2間巾3.6mx1.8m)両開き扉では48.4Hzが反射下限周波数となります。

"細やかな配慮が出来る"デザイナーさんは側壁扉は脇花道側方のプロセニアム同様にハノ字・扇形配置してあります。

更に、扉の表装も人口レザー&吸音材で覆って「音圧反射率」(※33)を軽減する処置を講じています!

※但し後述する間口が4間(7.2m)以下の"プレミアム音楽サロン"ではずばりビンゴ!なので、2連2対の開き戸を設置するのは問題となります!

凸出扉の効用

以下の周波数成分は阻止できるので間口20mでも健康被害に通じる低周波周波数成分を持つ定在波は生じません!が...

更に通常多い奥まった凹面形状のサウンドロックフロア平面では"ウェーブガイド"の役目を果たして、より対抗面に対して"強い指向性"を持つ結果となり、両端も含めて節(ミステリーピット)が7つある3波長の周波数成分を持つ定在波が生じる可能性があります!

一部のホール(※34)で採用されている凸型設置の扉部分では、反射エコーが"拡散"して対抗面に到達する音圧は更に小さくなりますから通常高次高調波に当たる48.4Hz、や96.8Hzの周波数成分をもつ定在波の発生の確率は極めて少なくなります。

第6項 露出した柱・プロセニアムの影響は

さらに巾400㎜の十分な長さ(4m以上)を持つ柱面ならば、43,5Hz以上の音波も反射するわけですが、壁面プレートの垂直支持枠(柱・プロセニアム)に採用しても、間口20mならその差は50倍にもなるので、その部分特有の定在波の生じる懸念はありません

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第7項  最後部に"レゾネーター"を設ける手法

オリジナル大隈講堂(※11)の秘密・謎の「拡幅並行壁部分を最後部に設ける手法」がこれに当たります!

大隈講堂が、建設された当時は「吸音・遮音壁」の技術が開発されていなかったので、大向壁面からの3次反射による、ホール最深部での「定在波音響障害」(音色の変化)を防ぐ有効な手立てが無くせいぜい「分厚い音響カーテン」を半後壁前面に敷設するぐらいしか、対抗策が無かった時代です。

そこで、「東照宮の鳴き竜」研究で得た知識を生かして、前途した「コーナー面取り」の逆転発想でこの部分の「両側壁を拡幅して」わざと「レゾネーター」として共鳴させて、側壁からの1次反射波と背後壁からの1次・2次反射波の位相差による複雑な干渉による音響特性を抑制しようとされたのではないでしょうか?

事実、この手法はうまくいったと思われますが、残念ながら近年の"怪修"?工事で、大向立見席が廃止されて着座環境となったために意味を無くしてしまったようです!

※画像をクリックすると拡大できます。

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音波は、壁面で反射を繰り返す毎に、進行方向に向かっては位相変化しませんがホール後端などでUターンする波形は「見かけ上」進行してきた音波とは"逆相"の関係となるために打ち消し合ってしまいます!

更に最後端では、側壁からの「位相遅れ」の1次反射波の音波(いずれも全く相似形!)も重乗される(※11-1)ために、ステージ上から発せられた現波形(音色)からは「程遠い」fidelity(忠実度)の悪い波形(音色)になってしまいます!

参※11)大隈講堂の適用例(ホール音響ナビ)はこちら。

参※11-1) 『第2節 定在波音響障害とよく似た釣鐘現象 参照。

第3節 方形(シューボックス)ホールデザインに関する注意!

第1項 スラント設置のセオリー(垂直壁は禁物!)

前項で述べたように多くの一般的な多目的ホールでは前半部分は扇形ですが、中央、後半フロアー部分の平面形状は長形で左右側壁が平行しているデザインが殆どです。

並行壁部分が多い長型ホールでは定在波の阻止・駆逐(完全平行キャンセル)には、

壁面のスラント設置以外の道はありません! 、

「垂直でプレーンな完全平行壁は厳禁!」です。

第1目 内壁は基本天井に向かって外反させろ

嘗て、1958年に初代フェスティバルホールが誕生して以来、1960年代の第1次公共ホール建設ブームの頃は初期反射;エコーが重視されていた時期でもあり埃対策のうえからも「ホール上部に向かってすぼめる構造」が良しとされた時期でもありましたが...

第2目 2階ベランダ席がステージ後方迄廻り込む回廊デザインが流行りだすと


1980年代に入り1982年に「ザ・シンフォニーホール」誕生に際し、諸外国の有名ホールの調査・データ収集が行われ、1/30模型によるスケールモデル音響実験が採用され、ホール最上層(客席上空)での音響拡散・乱反射による後期反響の存在が唱えられるようになり、以後『初期反射軽減と乱反射創出』のため、天井に向かって拡がるスラント壁が広く用いられるようになっています。

3-1-1 側壁部分の通路が確保しやすい利点も...

後述する、壁面間際での定在波障害緩和の目的で、へ壁際は通路!とする場合も多いのですが...

この際、「手摺」設置も行いやすくなります。

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公開:2017年9月22日
更新:2024年12月15日

投稿者:デジタヌ


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