『 建築音響工学総覧 』第7巻・芸術ホールのデザイン(Page 8)第7章 天井様式・構造の種類
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★第7章 内装・反響板としての天井様式と壁面構成
一般的な大型一体成型(吊り)天井ではプラスターボード製(※814)や木質パネルによる反響板で表装する手法が多く用いられています。
※814)、アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての建材メーカーの解説記事はこちら。
第1節 手法その1 大型一体型天井反響板
2010年5月開館の東京・上野学園・石橋メモリアルホールで採用されて以来、前章の2014年 東京文化会館大ホール改修工事などに適用されてきた手法です。

第2節 手法その2、セグメント反響板
2004年竣工 ミューザ川崎シンフォニーホール/変形10角型 奇才作品例(※ホールナビはこちら)
出展;http://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/007/527/59/N000/000/006/136539622196513223050_IMG_1777-1.jpg
この手法では、(高さ可変機構)からくり天井と併用する例も多く見受けられます。
1/20λ~1/10λ程度の幅を持つ反射面から反射するといわれている音波は、反響板幅が2.615m=1/10λ(at13Hz)より十分に大きければ天井に吊るされた天井反響板面からも反射しだし、更に反響板間の隙間を通過してホールシェルター外郭の天井(シーリング面)から反射した反射波と干渉し、低音域を減衰させる効果が期待できます。
しかし音波は1/2波長より長い幅・直径を持つ反射面からは全反射する為、直径約9m(波長18m周波数約20Hz)以上ないと可聴音域全てをカバーできず、高音域(音色にかかわってくる波長が17~23mm程度の高調波・倍音域15~20KHZ)では、凸部が無いと乱反射(散乱波)は起こらず、逆に55Hz以下の重低音(波長6.2mから17m!)ではセグメント面の隙間を無視して天井全体が1つの反射面として働き、散乱するどころか、床面との間で定在波を生じ易くもなってしまいます。

出展;File:Maison symphonique 18.jpg
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Maison_symphonique_18.jpg
第1項 欧米での円形反響板利用の例
(※以下本項についての詳細は第6巻 応用編 「パラボラ収束音場クロス拡散法」(音響シャワー法)をご参照ください。)
直径6mの平面反響板の反射音最低周波数28Hz で平面反響板では収束効果はありませんが、反射板に角度を付ける事によって、定在波対策には成ります。
最近欧米では、直径6m程度の平円盤を水平若しくは角度を付けて吊す方法が良く用いられていますが...
とても15mくらいの天井高さでは、安定して拡散しません!
第2項 逆ドーム天井反響板は気休め程度の効果しかない!
表(※以下本項についての詳細は第6巻 応用編 「パラボラ収束音場クロス拡散法」(音響シャワー法)をご参照ください。)面を逆ドーム(凸面)形状にしておけば、波長λ≒3.19m(110Hz以上)以下の音声帯域の音(※83)は反響板表面で(初期反響は)完全反射・拡散し、さらにそこから壁面や梁を経て散乱波(後期残響)創出に効果があるとされていますが...
実際には、前項の円盤同様に音響拡散効果はあっても、逆パラボラ効果はありません!
さらに、逆ドーム(凸面)天井反響版を用いてもドーム付け根に峡角コーナーが生じ、重低音の籠もり音の原因となりやすい弊害も生じたり、大掛かりな仕掛け(ドーム昇降装置)を用いても問題は残ります。(※例3)
※83 音声帯域に関する関連解説記事はこちら BTS(放送技術規格}
※例3、 京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ(小ホール)(※ホール音響Naviはこちら)
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★第3節 構造体・剥き出し天井」の音響効果
近年小規模ホール等を中心に、構造体(屋根を支える梁・補強梁などのトラス構造物)を露出させる手法が流行ってきています。
第1項「照明ブリッジ露出タイプ」
大型ホールなどでは側壁同様に客席天井にも「反響板で底面を表装」した程度の構造材むき出しの照明ブリッジを架設するホールデザインを良く見かけるようになりましたが、この手法は音響拡散体として「後期残響」創出に寄与しています。
第2項 屋根裏全面露出タイプ
平土間多目的イベントルーム、平土間中・小多目的ホールなどでの応用例
内面に直接グラス・ファイバー「断熱・耐火材」を吹き付けた屋根本体、空調ダクト・給排水設備配管、照明器具・配管などの屋根裏設備をむき出しにし、天井を反響板で表装せずに、「金属ガラリ(格子)&ネット」でホール天井を表装?した「屋根裏むき出し天井」が中小規模の演劇専用ホールなどで広く利用されてきています。
屋根裏の複雑な構成体が音響拡散体として働くだけではなく「初期反響」の減衰を促進する「消音効果(散乱減衰)」も兼ね備えています。
これは複雑な構造材(トラス組、テンションロッド材)と設備配管・ダクト類による乱反射で中・高音域(音声帯域(※815))で散乱減衰が起こるためです。
※815) 音声周波数帯域とも言われ楽器や肉声の基音となる300~3400Hzの低・中音域を指します。更には聴感ラウドネス帯域でもあり一番感じやすい音域でもあります。
ちなみに電波法のAM放送の公称伝送帯域は100 Hz~7,500 Hzです(実際には50Hz程度から12kHz程度は伝送できています。)関連記事「音の良いフルレンジスピーカー列伝」はこちら。
中・小の演劇ホール、ショッピングモール内装での応用例
ロールバックシステムを備えた天井高さ7m程度の中・小の演劇ホールでは絶大な効果を発揮して、「天井板で全面表装」した通常の天井表装に比べ約10㏈(約3倍)程度の中高音域の直接反射音散乱減衰効果が得られ、「声の通り」がよい演劇・セミナーなどに向く多目的スペースとなっています。
ショッピングモールの内装などにも
この手法はホールだけではなく、ショッピングモールなどでもよく利用されるようになり、通路との"仕切り(壁・扉)"のないオープンフロアー形式の店舗内での"騒音"退治にも役立っています!
(※壁の無いとあるオープンテンポの店外通路と約8m程度店内に入った位置での騒音比較で騒音レベルー10dB!つまり3分の1迄減少します)
天井の低い老兵達の延命策としても利用
1960・70年代に量産され建て替え時期?に差しかかっている、「全国の天井の低い老兵達」の延命・改修にはこの手法が「お手軽」でかつ「有効」な改修手法として今後普及するでしょう。(※関連記事はこちら)
★第4節 伝統的手法『格天井』
格天井(ごうてんじょう)は後期残響を醸し出すには非常に有効な手法で「モダン芝居小屋」「シューボックスホール」などでよく使われています。
第1項 格天井の色々

出展:SP9912 : Ashridge House - Wyatt Room
http://www.geograph.org.uk/photo/4117873
第1目 段付き折り上げ天井
「装飾梁」を用いて、階段状に折上げる手法で音響拡散効果が大きい手法です。
「和風建築に範を取れ」
奇抜で醜悪な天井(※例1)より京都南座(※ホールナビはこちら)の「折上小組格天井」を見習いましょう!

出展:NJ9406 : St Nicholas Room
http://www.geograph.org.uk/photo/3129165
ピッチ半間(半けん=0.91m)以下の小組格子ではさらに、複雑な反響を生み、役者の定位感に悪影響を与える、「音声帯域」の1次反響を急激に減少できる。
第2目 方形セグメントを並べて"逆格天井"として併用する手法
"格天井"の逆パターンで前途した方形セグメントを隙間を開けて並べる手法も増えてきています。
この手法も、セグメントのエッジ部を音響拡散に用いた一種の格天井と言えます。
第2項 格天井の音響効果
組格子部分は音響拡散体として音声帯域に有効に働きます。
洋風建築に多い7フィート(約2.13m)以上で10インチ角(約250mm)幅程度の組格子梁で支えた天井の場合
完全反射限界;1/2λとして重低音オルガンのペダル音の最低音約13Hzの波長約26.8mなので梁下面は反射面とはなりませんが1/20λ程度から反射しだすと言われており、250㎜幅の20倍の波長;λ=5m/約70Hz 程度から反射しだすので、天井面からの反射波と干渉して、低音域の初期反射波の減衰・散乱に寄与します。
梁幅250mmの倍波長λ=0.5m/約697Hzの音は梁表面(軒下)から完全に反射します、つまり側壁からの反響音は完全反射するので天井面からの反射波と干渉・重畳し初期反射の減衰・散乱波の創生相方に寄与でます。
また、エッジ部分で散乱するので、心地よい残響を創出する音響拡散体としても有効に働きます。
適用例 2008年竣工 いわきアリオス・大ホール/(※ホールナビはこちら)
第3項 平土間(部分)との併用は厳禁!
トラディッショナルデザインにこだわるあまり、ステージ&被り付き平土間客席上部にまで格天井を張り巡らせた「シューボックスホール」では「上下高さ方向方向定在波」(※816)に悩まされている例を多く見かけます。
小さな「突起や窪み」などを設けても音響拡散効果はりますが、定在波は阻止できずステージ上の定在波阻止には「新・奏楽堂」(※ホール音響Naviはこちら)のような「大掛かりなカラクリ釣り天井」か石川県立音楽堂(※ホール音響Naviはこちら)のような「別建ての可変天井反響板」でフロアー面との平行を回避する必要があります。
参※816)当サイト関連記事 第2節「高さ方向定在波の音響障害」回避策 はこちら。
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公開:2018年8月 6日
更新:2024年12月15日
投稿者:デジタヌ
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