東京藝術大学 奏楽堂 《ホール音響Navi》
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藝大の新しい奏楽堂
現東京藝術大学奏楽堂は、旧奏楽堂跡地に1998年に開館した。
多目的ホールで有りながら、音楽会と演劇公演それぞれに最適の音響特性が得られるように?数々の趣向を凝らしている!
東京藝術大学 奏楽堂の音響
Official Website https://www.pac.geidai.ac.jp/
1890年に音楽教育の練習、発表の場として永く使用されてきた日本最古の公会堂・初代奏楽堂は建物の老朽化が進み、音楽の演奏形態の拡大等に対応できなくなってきたため1984年に解体されその後上野公園内に移築再建された。
現東京藝術大学奏楽堂は、その跡地に1998年に開館した。
多目的ホール全体で有りながら、音楽会と演劇公演それぞれに最適の音響特性が得られるように数々の趣向を凝らしている?。
東京・春・音楽祭サブ会場としても利用される。
レジデントオーケストラ
芸大フィルハーモニア管弦楽団(日本オーケストラ連盟加盟)が専属オーケストラとして定期コンサートを行っている。
※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。
フロアデザイン
サイドテラスのある1スロープのボックス型多目的ホール。
はっきり言って、東京芸大にはそぐわない「妙ちきりん」なデザインセンスのホールである。
メインフロアー
メインフロアーは大きく分けて前半の緩やかな扇形スロープ部分と後半の急峻なストレート段床部分に分かれている。
扇形配列座席フロアー部分
最前列から7列までが広大な平土間部分となっており内4列目までが2組に分かれたオーケストラピット&エプロンステージとなっている。
9列目~18列目までは緩やかな扇形段床上に座席が配置されているセオリー(※1)通りの座席配列。
後半ストレート段床
ホール後半19列目以降は比較的急峻なストレート段床上に座席が配置されている。
サイドテラス席
ホール後部26列目にあたる部分両翼から前方に2段2列のサイドテラス席が前方に向かってステージ間際まで伸びている。
特徴的な横断面と2重壁デザイン
ホール横断面は特徴的な凸型形状となっており、2階高床サイドテラス部分の上部に最上層部の大向こう背後壁面と同じ幅の上部構造を重ねた2段構造になっている。
大谷石の内壁を持つ2重壁
サイドテラス前縁は上層部内壁と同じ額縁付きの横桟をあしらったアンギュレーションのある木質パネルで表装され、福井 のように壁面に刻まれた溝のなかに奥まったようなかたちで設けられており、背後壁下部はグルービングパネル(※2)で表装されており、扇形のパネルが上部に張り付けられている。
サイドテラスの下部はホール内の廊下になっており、更にホール内とを隔てるホール内面が凹凸した大谷石のパーティションが設置されている。
ホール側壁際に設置された通路
ホール側壁(内壁.)際は通路になっている。
カラクリ天井
天井は山形の溝を持つボールトユニットを並べた構造でステージ上部のユニットが上下・迎え角可変の「からくり天井」(※3)となっており、スラントさせて、上部反響板としても利用できる。
ステージサイド揺動隔壁
ステージサイド下層部壁面はアンギュレーションのある4分割面で構成され内奥側3面が揺動タイプになっており、ハノ字に開いて反響板として使用したり、開ききって、可動サイドプロセニアムと併用すれば、演劇用途のプロセニアム型劇場として使用できるデザインになっている。
エプロンステージ両側壁
エプロンステージ部分1・2列(オーケストラピット1)の両サイド側壁は塗装仕上げの木質パネルを「ハノ字」に開いて設置されている。
パイプオルガン設置
フランスのガルニエ製オルガンを設置している。
総評
3大迷発明?「アダプタブルステージ(※3)、疑似残響可変装置、可変天井(客席可変・容積変化方式ホール;※関連記事はこちら)」の内、2つまで備えている芸大の「からくり小屋」。
芸大には、造形科はあっても、音響建築学科は無いらしい!?
ホール音響評価点:得点82点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点46点/配点50点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
- ※客席側壁が ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは、 基礎点25点に減ずる。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点19点/配点25点
- ※木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
- ※障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点12点/配点20点
- ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価;得点5点/配点上限5点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
- ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。
算出に用いた値;
※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら。
定在波評価
※障害発生エリア席数が収容人員の1/3 以下なので基礎点50点とした。
基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数2=48点
定在波障害顕著席数;
定在波「節」部席;16席(10席/1階平土間中央部座席3~7列18・19番席、6席/1階後部中央部座席26~28列18・19番席、)
定在波「腹」部席;16席(10席/1階平土間両袖座席3~7列、6席/1階後部両袖座席26~28列)
重複カウント ;ー0席
定在波障害顕著席総計;32席
初期反射対策評価
※障害発生エリア壁面材質が木質パネルなので素材基礎点25点とした。
基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数2=23点
初期反射障害1 壁面障害席 ;26席/1階30列全席、
初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;144席/サイドテラス席全席
重複カウント ;ー0席
音響障害席総計;170席
客席配置評価
基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数4=16点
眺望不良席数;72席/1階平土間中央部座席2~7列13番~24番
音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;32席
音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;26席
音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;144席
重複カウント ;ー12席
音響障害席総計;262席
算定式
評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数
施設データ
- 所属施設 東京藝術大学 奏楽堂。
- 運営団体 東京藝術大学。
- 開館 1998年
- ホール様式 『シューボックスタイプ』音楽専用ホール。
- 客席 1,100席(1階956席、バルコニー席144席、オーケストラピット使用時978席)
- 舞台設備 主舞台(13.5m×21.4m、開口幅19.8m) 可動フロセ二アム,迫り ひな段(間口12m×奥行き5.2m、4分割電動式)、
- 道具迫り(間口16.Om×奥行き2.0m)
- その他の設備 、パイプオルガン,可変天井(客席部天井3分割、可変高さ 最低10.8m~最高15.8m)オーケストラピット(4.8m×18m、2分割、4管編成対応、昇降手摺、前舞台として使用可能)
- 付属施設 楽屋x8
- 設計 岡田新一設計事務所
- ゼネコン 大林組
- 音響設計協力 株式会社 永田音響設計
東京藝術大学 奏楽堂のロケーション
ところ 東京都台東区 上野公園12?8
東京藝術大学 奏楽堂へのアクセス
最寄りの駅
JR 上野駅・鴬谷駅 下車徒歩10分
地下鉄 銀座線・日比谷線上野駅 下車徒歩15分
千代田線・根津駅 下車 徒歩約10分
京成電鉄 京成上野駅 下車徒歩15分
東京藝術大学 奏楽堂がお得意のジャンル
大ホール
- 同大学のオーケストラコンサート、オペラ・バレエ、舞台演劇以外にも卒業生による、リサイタル、アンサンブルの演奏会等、小編成の室内楽コンサートなどが行われている。
- その他学内行事(非公開)に使われている。
東京藝術大学 奏楽堂の公演チケット情報
デジタヌの独り言
芸大教職員・院生で構成されている「芸大フィルハーモニア管弦楽団」がプロ・オーケストラの親睦団体である日本オーケストラ連盟に加盟したとは......。
故淡谷のり子さんもあの世でキット『マア、驚いたわね!』と津軽ナマリでおっしゃっていることだろう。
※参照覧
※1、定在波対策については『第4章 セオリーその1 "定在波の駆逐" と "定在波障害の回避策"』をご覧ください
※2、グルービングパネルについては『第9章第1節 「初期反響」対策への配慮と異形壁面材 の使用』をご覧ください。
※3、現代の3大迷発明!「珍妙からくり(残響調整装置、可変段床設備、高さ可変吊り天井)」に関する記事はこちら。
公開:2017年9月 7日
更新:2022年9月30日
投稿者:デジタヌ
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