狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

パルナソスホール /姫路市《ホール音響Navi》

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パルナソスホールのあらまし

姫路市立姫路高等学校の敷地に隣接した公益財団法人姫路市文化交際交流財団が運営する音楽ホール。

公会堂形式の天井構造とパイプオルガンを備えた兵庫県内きっての、「学校施設コンサートホール」として有名。

姫路市立姫路高等学校に隣接。
所属施設である姫路市立姫路高等学校の式典にも利用されている。

松本市にある1985年10月生まれのザ・ハーモニーホール(※ホール 音響 ナビはこちら )と異母兄弟?に当たる第2次公共ホール乱造ブームで生まれた「コンサートホール?」。

バブル経済真っ只中の1989年に建設されたホールらしく、国宝姫路城並みに豪華絢爛の見栄えのするホール?でもある。

オープンステージはフルオーケストラにも対応しており。

海外招聘の室内管弦楽団の地方巡業?の舞台とも成っている。

パルナソスホールのロケーション

ところ  兵庫県姫路市辻井九丁目1番10号

アクセス

最寄りの駅 「姫路高校前」バス停下車すぐ

パルナソスホールの施設データ

Official Website http://parnassushall.himeji-culture.jp/

  1. 所属施設 姫路市立姫路高等学校
  2. 運営団体 公益財団法人姫路市文化交際交流財団
  3. 開館   1989年10月11日
  4. 設計   赤松菅野建築設計事務所
  5. 音響設計 By Nagata Acoustics Design
  6. 付属施設 第1練習室、第2練習室、控え室x2、主催者控え室、応接室事務室、ホワイエ、玄関ホールその他。
  7. 施設利用(利用料金等)案内 全施設料金表はこちら

建築音響工学から眺めたパルナソスホール

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

(公式施設ガイドはこちら)

.※永田音響設計の公式コメントはこちら

1スロープのオープンステージ・コンサートホール

ステージ前の最前列2列の平土間部分から続く緩やかなハノ字段床スロープから中央通路を挟んで比較的急峻なストレート段床が2階相当部分の低層部装飾梁にいたるスロープを形作る1スロープ1フロアーのオープンステージコンサートホール。

中世の修道院?を思わせる、石柱(コンクリート)柱と、レンガ壁(地元産石材張りパネル)で構成されている無宗派修道院の礼拝堂?

石壁を模した3層の壁面

壁面は3層に分かれており、低層部・中層部・上層部の間には装飾梁が設けられ、中・低層部の壁面には長手レンガ積み(※1)を模した石材タイル張りのパネルをアンギュレーションを持たせて表装してある。

見事?な音響拡散体

最上層部には各柱とその中間から最上部の梁を支えるようなかたちで「傘を逆さに吊した」ような形状の音響拡散体(※2)を連続させたコーナー反響板が天井反響板につながっている。

傘型・コーナー反響板の間に垂直なレンガ積み面が除くサブヴォールトを形成している。

並列ヴォールト天井

コーナー反響板から続く天井はヴォールト(※3)を並べたプラスターボード製(※4)の一体成型水平反響板で構成されている。

音響スクリーンで表装された大向こう壁面

客席後方大向こうは、中央部に音響ロック(並列した観音扉)があり、両袖は、アンギュレーションを持たせた音響スクリーンで表装された遮音壁(吸音壁)が波状面を形成して対抗壁面との完全平行をキャンセルし、奥行き方向定在波(※5)に対処している。

(※出入り口の観音扉はプレーンで垂直な平面だが、対抗面がパイプオルガンの凹凸面なので、定在波は抑制されている。)

大向上部は全面にキャットウォークテラスを備えた映写&音響・照明調整室となっており、前面は客席同様に音響スクリーンで表装された遮音壁(吸音壁)となっており、壁面全体に大きなアンギュレーションが施されている。

ステージ周り

ステージ周りも客席同様のタイル張りパネルのアンギュレーションのある側壁と、ステージ背後のホリゾントには大胆なアンギュレーションを施した塗装仕上げの打ち放しコンクリート製の反響板が備え付けになっており、中上層部はオルガンテラスにおなっており、背後壁面両袖は丁寧に面取りされており更に、客席大向こうと対抗する中層部はアンギュレーションも施されている。

パイプオルガン

須藤宏氏製作による県内有数のパイプオルガンを装備。その他に二台のコンサートグランド(スタインウェイD-274、ベーゼンドルファー290インペリアル)と、フォンナーゲルフレンチダブルBACH239チェンバロを常備している。

想定される定在波と定在波障害回避策評価について

間口方向定在波
メインフロア平土間平行壁部分
  • メインフロアー側壁間約20m;約17.4Hz/1λ、約26.1Hz/1.5λ、約34.8Hz/2λ
  • 「壁面間隔20m超」のセオリー適用で1波長定在波を可聴帯域(20~20KHz)外にチューニング。
  • ※両側壁のアンギュレーション処理で高次定在波抑制?
  • ※両側壁際通路配置で定在波「節部」を回避。
前半スロープ平行壁部分
  • メインフロアー側壁間約20m;約17.4Hz/1λ、約26.1Hz/1.5λ、約34.8Hz/2λ、
  • 「壁面間隔20m超」のセオリー適用で1波長定在波を可聴帯域(20~20KHz)外にチューニング。
  • ※両側壁のアンギュレーション処理で高次定在波抑制?
  • ※両側壁際通路配置で定在波「節部」を回避。
  • ※扇形段床配列座席で定在波層を回避。

後半ストレート段床部平行壁部分
  • メインフロアー側壁間約20m;約17.4Hz/1λ、約26.1Hz/1.5λ、約34.8Hz/2λ、
  • 「壁面間隔20m超」のセオリー適用で1波長定在波を可聴帯域(20~20KHz)外にチューニング。
  • ※両側壁のアンギュレーション処理で高次定在波抑制。
  • ※両側壁際通路配置で定在波「節部」を回避。

最大奥行き方向
1F(ステージホリゾント反響板→1F大向こう壁面)
  • 最大奥行き約38m;定在波はステージ反響板のアンギュレーションと、大向こう背後壁面処理(波状・アンギュレーション・縦格子)で抑制。

ステージ床面&・平土間床→天井最高部高さ方向
  • 客席平土間部約13.6~14m;約24.9Hz/1λ、
  • ※高次定在波は波状(ヴォールト)天井のアンギュレーションで抑制?
  • 客席スロープで抑制。

赤字は可聴音域内重低音。

一応平行する対抗面間で生じる1波長の基本定在波は高さ方向定在波24.9Hz以外は20m超のセオリーで躱しており?「被り付き2列」の平土間席が怪しいが、ヴォールトの溝でタブー高さ(※6)はさけており、ステージ上も含め定在波による音響障害は無し?として、音響障害席も"0"査定、他は3種以上の定在波による音響障害回避策(※7)を用いているので基礎点も50点に据え置いた。

総評

壁際は全て通路とするなど、壁面材以外はセオリー(※8)に忠実なホールでもある。

但し欧風靴箱に多い高さ方向定在波に対する配慮が欠けており今後改善の余地は残されている。

今後の改宗?に期待

中央部最前列から1席撤去して千鳥配列に。

ステージ上部にはスラントさせた角度高さ可変タイプの天井反響板を設置したほうがよかろう。(※設置例1)

壁面はやはり地元産の「間伐材」?をふんだんに用いた木質壁に換装すべきであり、その際には、客席周辺、中低層部の内傾スラントもお忘れなく。

ホール音響評価点:得点91点/100点満点中

※811席(車椅子スペースX7台含む)のコンサートホールとしての評価。

※評価ポイント詳細は「"ホール音響ナビ"に用いた用いた評価法とは」をご参照ください。

§1 定在波対策評価;得点50点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • スラント設置されていない「垂直平行側壁部分」と「平土間部分」の処理において、
    「音響障害回避策」が3つ以上講じられていない場合は基礎点を配点50点満点x0.5=25点満点に減じます。
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点18点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点13点の間6段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点18点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点5点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

算出に用いた値;

定在波評価

※音響障害席数は1波長の基本定在波に基づき定在波の「節」「腹」に当たる重大音響障害席数を評価対象としてカウントする。

基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数0=50点

定在波「節」部席;0?席

定在波「腹」部席;0?席

重複カウント ;ー???席

定在波障害実被害席総計;???席

初期反射対策評価

※障害発生エリア壁面材質がアンギュレーションのある軟質窯業材なので素材基礎点18点とした。

基礎点B2=素材基礎点18点ー障害発生エリア数0=18点

初期反射障害1 壁面障害席 ;0?席

初期反射障害2 天井高さ不足(2.5m以下)席;0?席

音響障害席総計;0?席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数1=19点

眺望不良席数;12席/1階平土間中央部座席B列13番~24番

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0?席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;0席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(2.5m以下)席;

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;12席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

ホールの施設データ

ホール様式
  • 『シューボックスタイプ』1スロープ型音楽専用ホール。
収容人員
  • 804名

舞台設備

  • オープンステージ 間口20mx奥行き13m
  • パイプオルガン、
その他の設備
  • スタインウェイD-274、ベーゼンドルファー290インペリアル、フォンナーゲルフレンチダブルBACH239チェンバロ

その他の付属施設

2つの練習室


完全防音の練習室を2室完備している。

第1練習室:床面積94㎡(約57畳)
第2練習室:床面積89㎡(約54畳)

    パルナソスホールがお得意のジャンル

    学校行事以外にもオーケストラコンサート,オペラ・バレエ,舞台演劇、伝統芸能等に貸し出されている。

    ル・ポン国際音楽祭(※ガイド記事はこちら

    ル・ポン国際音楽祭の開催施設の1つ。

    デジタヌの独り言

    手の込んだ細部の作りこみで丁寧な設えが随所にみられるホールだが、どうして石壁なの?

    ウーンご自慢のスタインウェイD-274、ベーゼンドルファー290インペリアルが可愛そう!

    姫路瀬戸内特産?の大谷石の壁材、剥き出しの床、チープな椅子のわりにはよく頑張った方かもしれない?が...。

    これでは、「楽器の違い」、「繊細なタッチの差」等到底望むべくも無く、単なるエコーガンガンのカラオケBOXと大差無い!

    建設当初から

    パイプオルガンをあきらめて予算を振り当てれば全周木質パネルで覆われた素晴らしいホールになっていたかもしれない!

    豆知識

    パルナソスホールのこれまでの歩み

    参照覧

    ※1 レンガの積み方いろいろについてはこちら。

    ※2、音響拡散体については「第2章第1節 音響拡散処理と音響拡散体となる要素」をご参照ください。

    ※3、第4章第4節 「ドームとヴォールト」等のアーチ天井の音響効果に関する解説はこちら。

    ※4、アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての建材メーカーの解説記事はこちら

    ※5、定在波に関する解説記事 『定在波』とはこちら

    ※6 第4章第1節「高さ方向定在波の音響障害」回避策 はこちら。避けなければならない天井高さは7、8、10、12、14、16、20m!

    ※7, 第4章 副則「定在波による音響障害」の回避策

    ※8、第3章、過大な初期反響の緩和・回避策;壁際処理と壁材の選択セオリー はこちら。

    ※例1、吊り天井?(反響板)使用例

    石川県立音楽堂 コンサートホール《 ホール 音響 ナビはこちら

     

    公開:2017年9月14日
    更新:2022年9月30日

    投稿者:デジタヌ


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