タヌキがゆく(狸穴総合研究所)

都市伝説「音の良いホール の条件 残響時間2秒以上 」 は本当か? 《コラム2017》 残響、残凶?大便覧!

理工系出身の自治体施設課・建築課の担当者に捧げる「失敗しない・ホール計画の手引き」講座その6

プロローグ ホールはエコーガンガンのカラオケ音響ではダメ!

ホールの音響を喧伝・自賛(※1)する際に「残響時間2秒以上」となどと金科玉条の如く掲げられることが多いようですが...。

「残響時間2秒以上」は根拠に乏しい数値!

「残響時間2秒以上"」は一人の「マスコミ関係者が言い始めた根拠に乏しい数値にしかすぎません!

嘗て、1980年代に「視察団」を率いて渡欧した某在阪ラジオ局の「当時の社長」が「強く主張し」ホール完成後に大キャンペーンを行って「捏造した都市伝説」(※2)です、当時も今も「心良しとしない演奏家」は沢山います!

第1章 「エコー」と「後期残響」は別物

第1章第1節 初期反射と後期残響

残響(※3)とはステージから届く直接音が壁天井などで反射して届く初期反射(エコー)と、反射面で散乱・拡散したエコーが内壁・天井などで複雑にさん反射・散乱を繰り返して聴取位置に届く後期残響で構成されています。

エコー(初期反射)とは

山彦に代表されるいわゆるエコーは壁面間を往復し僅かな時間差※を付けたいわば「レプリカ音」で、余り繰り替えされると不快感を伴います。

※ 20mの壁面間では室温28℃の時の音速C=348.6m/secなので各壁面間を約0.115秒で往復する、つまり約0.115秒毎に楽音とほぼ同じレプリカ音が繰り返されエコー(初期反射)となる。

カラオケなどで使われる人工的な「エコー」は電気的なディレー回路(※4)を用いて原音に付加する仕組みとなっています。

後期残響は音の拡散(散乱反射)によって生まれる

後期残響と呼ばれる残響は、エコーがホール中上層部側壁の「突起部」などの「音響拡散体」によって生じた乱反射が、天井や上層部壁面で「複雑な経路」を経て反射を繰り返した音で、

生楽器の音色(周波数分布;周波数スペクトル(※5))とは異なった周波数分布を持つ複雑な波形をしている「響き」として残る「余韻」のことです。

主にホール最上層部で屈曲し凸出した側壁や装飾柱、装飾梁、テラス(ダミーを含む)、装飾窓、これら内装表面での乱反射(散乱)と多重反射で心地よい「後期残響;余韻」が生まれます。

後期残響はホールにとっていわば最後の「お化粧」程度のもの!

初期反射音は初期反響・過多が引き起こす"平衡感覚障害"で詳述した通り、放置すると重大な音響障害を伴いますが、適度な後期残響は「心地よい余韻」のシャワーとなってホール上層部から、客席に降り注ぎます!

但し「過ぎたるは及ばざるのごとし」の最たるもので、定在波の"音響傷害"(※6)や初期反響障害(※7)のない「上品で端正な素顔」に適度な薄化粧(音響拡散体)を施し、そこはかとないほのかな香り(後期残響=余韻)を醸し出すのがベストで、素性の悪いホールにいくら厚化粧(てんこ盛りの音響拡散体)を施しても、決して美人(銘ホール)にはなりません!

1982年にザ・シンフォニーホール(※ガイド記事こちら)が登場して以来一つの都市伝説として「良いホールの条件"残響2秒以上」が生まれ、カラオケ文化とも相まって、たちまち日本国中を席巻してしまいましたが...

おかげで、エコーさえかかっていれば、「定在波も初期反射」もどうでもよいとばかりに、とんでもないホールが国中に繁茂してしまったのも事実です!

なんと嘆かわしいことでしょうか!、故・佐藤武夫先生も彼の世で随分とお嘆きのことでしょう。

第1章第2節 残響時間とは

後期残響が続く時間(鳴り止むまで)を残響時間(※9)と言います。

現在用いられている測定法(RT-60法)では

後期残響が直接音に対して、 60 dB 減衰するまでの時間を残響時間と呼ぶ。残響時間は、家庭などの小さな部屋では0.5秒程度、音楽用ホールでは数秒程度である。<Wikipediaより引用>

人間の聴覚のすごさ

おおむね人間の聴覚のダイナミックレンジは120dBdB(デシベル※8)程度はあります、つまり聴覚限界の1,000,000倍の音まで、聞き分け(耐え)られます!

当節のハイレゾ録音機材で記録できるかどうかの限界値です。

明らかに静寂とは言い難い!値;-60dB

-60dBとはオーケストラの鳴り物(バスドラム、などの打楽器)付きのff(フォルテッシモ;騒音絶対値にして約110dB)が鳴り止んでから、静かな室内程度になった状態であり完全に鳴り止んでいるとはいえない状態です!

この状態ではまだ「となりの人の吐息(といき)」より30倍(+30デシベル)大きな響き?です。

これでは明らかに静寂とは言い難い!状態です。

つまり最低でも-60dB+-30dB=-90dBの値にならないと、響きが消えたとは言い難く、

『-60dBと言う数値は、基準を決めた当時の測定器の能力限界で決まってしまった数値なのす!

音はそう簡単に小さくはならない

「山彦」でもお判りの様に、音(エコー)は以外と小さく(減衰)なりません。

「山彦の正体」は実は対岸の峰では無く中腹同士:つまり貴方が叫んだ正面の峰の斜面と貴方の立っている峰の中腹を往復するエコーで、以外と「はっきりと聞こえてくる」訳です。

2回目以降はU字渓谷でも無い限りは拡散(木立などで散乱減衰)してしまい小さくなっていいくわけです。

つまりエコールーム(※7)の設計でもない限り「RT60残響測定法」で図った時間はあまり意味の無い数値と言っても過言ではありません!

事実、「音の鉄人」YAMAHAさんでは音の善し悪しの尺度としてではなく「数ある音響測定値・分析値・パラメーター」の1つ程度にしか考えていなません。(※10)

長すぎる残響時間の弊害!

極端にデッドな空間と言わなくても、余分な響きは『-90db(実数3万分の1)』程度まで無くならないとないと静寂感は出ません!

つまり 『音楽では休止符やゼネラルパウゼ(全休符)』に相当し、『演劇・話芸ではセリフの間』に当たる部分です。

第1章第3節 良いホールとは「違いの分かるホール」でなければならない!

お判りいただけたと思いますが、「心地よい韻(ひびき)」と前途のJISで規定された-60db残響時間測定とはあまり因果関係がありません!

小生がデッドであるはずの「芝居小屋や演芸場」「野音」をオススメするのはその為です。

「滑舌がはっきり聞こえる」と言うことは「音色の変化」が聞き分けられる事に繋がり。

ピアノの「メーカーの違い」「微妙なタッチの差」、バイオリンの「ボーイングの妙」などが聞き分けられると言うことに繋がります。

良いホールとは「違いの分かるホール」でなければならないのです!

作曲家の池辺真一郎氏の体験談

作曲家の池辺真一郎さんの体験談として、若かりし頃に指揮者の故・岩城 宏之氏の演奏旅行に同行した時の逸話が残されています。

ある日、前日と同じ「プログラム」なのに、「前日と全く異なったテンポで演奏された」そうです、そこで終演後恐る恐るお伺いを立ててみたら...。

「昨日はデッドなホールだったので"早め"に、今日は響き豊かなホールだったので、"遅め"のテンポにした!」と仰ったそうです。

つまり音楽にとっては「静寂がいかに大切な要素」であるかを示す例です。

エコー過多は実被害にもつながる

以上述べた以外にも、シューボックスホール等の「正多角形ホール」や「石壁・タイル張りのホール」等の初期反響(エコー)がいつまでも続くホールでは定在波による音響障害ミステリーゾーン(※6)があったり「ホール酔い」(※7)で気分が悪くなったりする実害も生じます!

第2章 後期残響をもたらす各部の意匠

芸術ホールにおける音響デザインコンセプトの柱は、

  • 初期反響抑制(※11)と定在波対策(※12)は客席周辺の「中・低層部」でしっかり行い。
  • 「後期残響」は「最上層部」の壁面・天井デザインで嬢出する。

以上2点が肝要となります。

第2章第1節 音響拡散処理と音響拡散体となる要素

音響拡散処理とは初期反響の軽減緩和と後期反響の創出を図る為に、天井・壁面にランダムな凹凸を配し乱反射を得る手法です。

また「音響拡散体」とは主に中・上層部壁面&天井に付加する装飾突起物;オブジェと言ったところです。

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出展:File:Bilkent concert hall.jpg

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Bilkent_concert_hall.jpg

レガシーホールにみる音響散乱要素

西洋の有名レガシーホール・オペラハウスにみられる様式、例えばギリシャ神殿様式に範をとった「エンタシスの柱」や上部の梁を支える部分に設えられた「台座」や「欄間」部分の彫像、周囲にテラス、などは音響拡散効果がある「音響拡散体」の一種としてとらえることができます。

また日本の伝統的公民館によく見かける、柱と天井梁の接続部にあるガセット(補強板・アングル・梁)や伝統的芝居小屋にみられる折り上げた「格天井」や桟敷柱、桟敷の前面柵、明り取り窓の窓枠などは全て散乱効果が優れている設えです。

最近の流行の音響拡散体

最近のモダンホールでは、両側壁にあるサイド「照明コラム」にフード(囲い)を設けずにむき出しのまま設置したり、「天井照明ブリッジ」も下面だけ反響板で覆い、ブリッジ構造を剥き出しのまま天井に設置する手法等の「音響拡散効果」を狙ったデザインが増えています。

またキャットウォーク・テラス(犬走り※13)を設けたり、天井反響板を設置せずに、構造体(屋根を支える梁・補強梁などのトラス構造物)を露出させ、グリル(格子&ネット)で下面を表装?する剥き出し天井の手法も良く用いられるようになってきました。

第3章 壁面の意匠と後期残響

以下は、特殊メークアップアーティスト(音響意匠デザイナー)が"化粧品"(音響拡散体)としてよく利用する要素の数々です。

音響拡散体として有効な部材

  • むき出しの照明コラム、照明ブリッジ、空調ダクト、ホール出入口開口部、装飾窓、装飾テラス(orキャットウォーク)などの設備・艤装、豪華なシャンデリア、拡声装置(露出型スピーカーボックス)
  • 側壁のオブジェ(突起物)、装飾柱、装飾梁、梁台座、壁面照明器具などの突起物。
  • バルコニー・テラスの軒形状
  • 柱、ガセット(コーナー補強材)、壁面構成、フロアー構成、折り上げ天井、格天井などの構造材・表装の利用。
  • 天井構造材(トラス)むき出し天井
  • 最近では、「空調ダクト」などに装飾を施し、「飾り柱」、「飾り梁台座」「飾り梁」、「組格子」を模して突出させる手法が良く用いられる。

などが上げられます。

「音響拡散体」使用例 その1

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出展:File:Alumni Concert Hall, CMU.jpg

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Alumni_Concert_Hall,_CMU.jpg

このホールでは、壁面のオブジェ、装飾梁、梁台座付きの装飾柱、折り上げ天井、天井のヴォールト、などが用いられています。

「音響拡散体」使用例 その1 ガセット の利用

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この教会の場合は、勿論残響目的ではないが、突出したリブ状の補強板付き門型柱に加え、天井梁との間にもガセット(コーナー補強版)を加え補強している。

国内では旧東京音楽学校奏楽堂(※ホールNaviはこちら)、兼松講堂(※ホールNaviはこちら)など、露出天井梁とともに多くの近代西洋建築で用いられている。

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出展:File:Interior of Victoria Concert Hall, Singapore - 20141101-28.JPG
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Interior_of_Victoria_Concert_Hall,_Singapore_-_20141101-28.JPG

第4章 天井様式の数々と後期残響

第1節 天井反響板による表装法

一般的な大型一体成型(吊り)天井ではプラスターボード製(※14)や木質パネルによる反響板で表装する手法が多く用いられています。

手法その1 大型天井反響板

2010年5月開館の東京・上野学園・石橋メモリアルホールで採用されて以来、前章の2014年 東京文化会館大ホール改修工事などに適用されてきた手法です。

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手法その2、セグメント反響板

前項とは反対に、天井(反響板)をセグメント(分割構造)とし、隙間(梁相当部分)に間隙をとり吊す手法です。

1/20λ~1/10λ程度の幅を持つ反射面から反射する(※15)といわれている音波は、反響板幅が2.615m=1/10λ(at13Hz)より十分に大きければ天井に吊るされた天井反響板面からも反射しだし、更に反響板間の隙間を通過してホールシェルター外郭の天井(シーリング面)から反射した反射波と干渉し、低音域を減衰させる効果が期待できます。

しかし音波は1/2波長より長い幅・直径を持つ反射面からは全反射する為、直径約9m(波長18m周波数約20Hz)以上ないと可聴音域全てをカバーできず、高音域(音色にかかわってくる波長が17~23mm程度の高調波・倍音域15~20KHZ)では、凸部が無いと乱反射(散乱波)は起こらず、逆に55Hz以下の重低音(波長6.2mから17m!)ではセグメント面の隙間を無視して天井全体が1つの反射面として働き、散乱するどころか、床面との間で定在波を生じ易くもなってしまいます。

但し、表面を逆ドーム(凸面)形状にしておけば、波長λ≒3.19m(110Hz以上)以下の音声帯域の音(※16)は反響板表面で(初期反響は)完全反射・拡散し、さらにそこから壁面や梁を経て散乱波(後期残響)創出に効果があるとされています。

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出展;File:Maison symphonique 18.jpg

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Maison_symphonique_18.jpg

※ 効果的に利用した好例

2004年竣工 ミューザ川崎シンフォニーホール/変形10角型 奇才作品例(※ホールナビはこちら)

第4章第2節 伝統的手法『格天井』の音響効果

格天井

格天井(ごうてんじょう)は後期残響を醸し出すには非常に有効な手法で「モダン芝居小屋」「シューボックスホール」などでよく使われています。

格天井の音響特性

組格子部分は音響拡散体として音声帯域に有効に働きます。

洋風建築に多い7フィート(約2.13m)以上で10インチ角(約250mm)幅程度の組格子で支えた天井の場合

完全反射限界;1/2λとして重低音オルガンのペダル音の最低音約13Hzの波長約26.8mなので梁下面は反射面とはなりませんが1/20λ程度から反射しだすと言われており、250㎜幅の20倍の波長;λ=5m/約70Hz 程度から反射しだすので、天井面からの反射波と干渉して、低音域の初期反射波の減衰・散乱に寄与します。

梁幅250mmの倍波長λ=0.5m/約697Hzの音は梁表面(軒下)から完全に反射します、つまり側壁からの反響音は完全反射するので天井面からの反射波と干渉・重畳し初期反射の減衰・散乱波の創生相方に寄与でます。

また、エッジ部分で散乱するので、心地よい残響を創出する音響拡散体としても有効に働きます。

適用例 2008年竣工 いわきアリオス・大ホール/(※ホールナビはこちら

第1項 格天井の色々

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出展:SP9912 : Ashridge House - Wyatt Room

http://www.geograph.org.uk/photo/4117873

段付き折り上げ天井

「装飾梁」を用いて、階段状に折上げる手法で音響拡散効果が大きい手法です。

「和風建築に範を取れ」

奇抜で醜悪な天井(※例1)より京都南座(※ホールナビはこちら)の「折上小組格天井」を見習いましょう!

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出展:NJ9406 : St Nicholas Room

http://www.geograph.org.uk/photo/3129165

ピッチ半間(半けん=0.91m)以下の小組格子ではさらに、複雑な反響を生み、役者の定位感に悪影響を与える、「音声帯域」の1次反響を急激に減少できる。

第4章第2節第2項 平土間(部分)との併用は厳禁!

トラディッショナルデザインにこだわるあまり、ステージ&被り付き平土間客席上部にまで格天井を張り巡らせた「シューボックスホール」では「上下高さ方向方向定在波」(※17)に悩まされている例を多く見かけます。

小さな「突起や窪み」などを設けても音響拡散効果はりますが、定在波は阻止できずステージ上の定在波阻止には「新・奏楽堂」(※ホール音響Naviはこちら)のような「大掛かりなカラクリ釣り天井」か石川県立音楽堂(※ホール音響Naviはこちら)のような「別建ての可変天井反響板」でフロアー面との平行を回避する必要があります。

第3節 一体成型天井

シューボックスホールなどでは繊維強化発泡コンクリートを用いた外郭構造物(ホール本体)との一体成型の天井も見られるようになりました。(※例2)

第4章第4節 「ドームとヴォールト」等のアーチ天井の音響効果

第1項 「日本のドームは煩い(うるさい)」のが一般的!

構造的(強度的)に有利なドーム型天井は使いたくても安直に使うな!

日本では、ドーム・ヴォールト(※18)等のアーチ構造は「構造力学」上の有利さが強調され、音響に関する考察はされていないのが普通ですが。

パラボラ効果でドーム中央に音が集中し悲惨な結果を招きやすい

最近の多くのドーム屋根はアーチ部分の曲率半径(=音響収束点)がフロアー直上1・2mの高さに有り、これでは収束効果(※19)で煩くて当たり前です。

第2項「舟底型」ないしは「半割玉子」形状で

構造面(予算面)で使わざるを得ない場合は、「舟底型」ないしは「半割玉子」形状で頂点をホール後方にoffsetする必要があります!

適用例 みやまコンセール 霧島国際音楽ホール (ホール音響Naviはこちら

第4章第4節第3項 逆ドーム天井反響板は気休め程度の効果しかない!

例え、逆ドーム(凸面)天井反響版を用いてもドーム付け根に峡角コーナーが生じ、重低音の籠もり音の原因となりやすい弊害も生じたり、大掛かりな仕掛け(ドーム昇降装置)を用いても問題は残ります。(※例3)
但し、思い切って天井を「高~く」し、カブトガニ?風の「分割セグメント天井構造」にする事で「効を奏している」場合もあします。(※例4)

第4章第5節 何故バチカン大聖堂は煩(うるさ)く無いか!「音響シャワー」効果とは?

バチカン大聖堂のドーム屋根に代表される「ドーム」構造やベルサイユ宮殿に用いられている、「ヴォールト(アーチ)」構造は強度的な面だけではなく使い方次第では音の集中スポットを解消する「音響シャワー」効果を持ち合わせています。

バチカン大聖堂のドーム径は約30m曲率約15mの完全お椀型のドームで、天井高さは約75mです。

この場合全ての音はドーム部が始まるところ、つまり聖堂全体の天井の約2倍のポイントで収束した後は、「砂時計の側面」のように球面波で拡散しています。

つまりドームの真下でも煩(うるさ)くないわけです!

カソリックに限らず、ロシア正教、ギリシャ正教、イスラムのモスクも全て、地上面(GL+)よりかなり高いところで音波が収束するデザインとなっています!

音響工学の基礎のお浚い

第1項、円形反響板の効果;近距離音場限界距離と音響レンズの関係

近距離音場限界距離;Xo=D2/4λと言う物理法則があって。

Xo(m)以上の距離では収束(パラボラ効果)も拡散反射鏡(&凸面音響レンズ)も有効には働きません!

又Xoの1.3倍の距離を近距離音場限界距離と言い、この1.3Xoの距離以遠は概ね安定して拡散していきます。

そしてこの時の反射板の中心軸との角度をθo°をゼロ輻射角と言い概ねその周波数の反射0に成る角度で、近似式≒70°xλ/Dで割りだせます。

第2項 人の聴覚指向特性

人間の聴感(方向感覚)は主に1KHz以上の高周波数領域に依存しています。

この特性を利用し、周波数1KHzの時の波長約0,35m/28℃ でXo=6m の円形反射板を用い反射面から7.8m≒8mの位置に近距離音場限界距離がくる様に考えると。

円盤の直径Dは D=√4λ/1.3Xo と成り

D=1mと成ります。

但し、式からお判りの様に周波数が高くなると近距離音場限界距離は遠くなるので、この直径では1Khz以下の音にしか効果がありません。

第3項 円盤反射体直径と限界周波数の関係

音波の反射限界は概ね1/2λなので

前項の直径1mの円盤で反射できる周波数fは 波長2m/約174Hz

つまり174~1000Hzの音にしか拡散効果は無く天井から降り注ぐ残響のシャワーは期待できません!

第1項 欧米での円形反響板利用の例

直径6mの平面反響板の反射音最低周波数28Hz で平面反響板では収束効果は無いが、反射板に角度を付ける事によって、定在波対策には成る!

最近欧米では、直径6m程度の平円盤を水平若しくは角度を付けて吊す方法が良く用いられています

6mの円盤だと 

348.6/2x6約29Hzから反射する事に成りほぼ可聴帯域(20Hz~20Khz)を満足出来ます。

また可聴帯域の上限周波数20KHz(実はこの辺りの高い周波数が耳障りでも有り、方向感覚を狂わせやすい)

で逆にXoを求めると

Xo=D2/4λなので465m 

近距離音場限界距離1.3Xo≒604m

と「とんでもない数値」に成りとても15mくらいの天井高さでは、安定して拡散しないことになってしまいます!

第4章第6節 「パラボラ収束音場クロス拡散法」(音響シャワー法)とは?

日本でもドームとヴォールトは共に古くから良く使われ特にヴォールトは旧・奏楽堂(※ホールNaviはこちら)等でも用いられ、最近でもリハーサルルームなどの小規模多目的ルームではよく用いられる手法です。

第1項 直径6m曲率半径6mの「パラボラ収束音場クロス拡散法」(音響シャワー法)

半径6mぐらいの凹面鏡すなわち、直径6m有効曲率半径6mのパラボラ反響板の場合

直径6m曲率半径6mの凹面反射板を用いた想定音響収束点すなわち近距離音場限界距離Xo=6mでは

fHz=4C/D2≒38.7Hz となり38.7Hz以下の周波数では遠距離音場と成り平板同様に収束効果はありませんが、38.7Hz以上の音は反射面から6mの位置で収束出来ることと成り可聴帯域(20~20KHz)内の殆どの音がこの点で収束し後は安定して拡散します、つまり音のシャワーが完成することになります!

日本の場合アルミ材のヘラ絞り加工で正確な凹面音響反射板(パラボラ反射板)を作る技術があるので、この直径6m曲率半径6mのアルミパラボラにFRPの裏打ちを組み合わせた音響反射板を制作し、地上12m以上の高い空間にセットすればドーム下での音響集中を回避する有効な手段として応用できます!

この、「ドーム天井」「音響反射板」を用いた音響設計手法を「パラボラ収束音場クロス拡散法」と称することにしました。

※実用新案、特許の類は申請しませんのでどうぞご自由にお試し下さい。

!但しWEB 上での著作申請(Web出版)を行いますので、このアイデアは「公知の事実」公開情報と成ります、以後本件に関連する特許・実用新案などは申請できませんのでよろしく...。

第4章第7節 「構造体・剥き出し天井」の音響効果

近年小規模ホール等を中心に天井を反響板で表装しないで、構造体や設備配管・ダクト類を露出させる手法が流行っています。

第1項 「照明ブリッジ露出タイプ」

大型ホールなどでは側壁同様に客席天井にも「反響板で底面を表装」した程度の構造材むき出しの照明ブリッジを架設するホールデザインを良く見かけるようになりましたが、この手法は音響拡散体として「後期残響」創出に寄与しています。

第2項 屋根裏全面露出タイプ

平土間多目的イベントルーム、平土間中・小多目的ホールなどでの応用例

内面に直接グラス・ファイバー「断熱・耐火材」を吹き付けた屋根本体、空調ダクト・給排水設備配管、照明器具・配管などの屋根裏設備をむき出しにし、天井を反響板で表装せずに、「金属ガラリ(格子)&ネット」でホール天井を表装?した「屋根裏むき出し天井」が中小規模の演劇専用ホールなどで広く利用されてきています。

屋根裏の複雑な構成体が音響拡散体として働くだけではなく「初期反響」の減衰を促進する「消音効果」も兼ね備えています。

これは複雑な構造材(トラス組、テンションロッド材)と設備配管・ダクト類による乱反射で中・高音域で散乱減衰が起こるためです。

中・小の演劇ホール、ショッピングモール内装での応用例

ロールバックシステムを備えた天井高さ7m程度の中・小の演劇ホールでは絶大な効果を発揮し、「天井板で全面表装」した通常の天井表装に比べ約10㏈(約3倍)程度の中高音域の直接反射音減衰効果が得られ、「声の通り」がよい演劇・セミナーなどに向く多目的スペースとなっています。

ショッピングモールの内装などにも

この手法はホールだけではなく、ショッピングモールなどでもよく利用されるようになり、通路との"仕切り(壁・扉)"のないオープンフロアー形式の店舗内での"騒音"退治にも役立っています!

(※壁の無いとあるオープンテンポの店外通路と約8m程度店内に入った位置での騒音比較で騒音レベルー10dB!つまり3分の1迄減少します)

天井の低い老兵達の延命策としても利用

1960・70年代に量産され建て替え時期?に差しかかっている、「全国の天井の低い老兵達」の延命・改修にはこの手法が「お手軽」でかつ「有効」な改修手法として今後普及するでしょう。(※関連記事はこちら)

エピローグ 全国にある優れた野外ステージの音響

(※全国野音Naviのメニューテーブルはこちら)

全国にある野外ステージでは、「天井から降り注ぐ響き」や、周りの「壁からの反響」も期待できず、ましてや「人為的残響時間2秒」など期待できるはずもありませんが、どの施設を訪れてもわかることですが、PAなしでも最後列まで殆どのアコースティック楽器の音(但しギタ・マンソロは除く)が到達し、肉声も良く通る施設が殆どです。(実際のコンサートでは大がかりなPAは不可欠?ですが)

今どきの演奏家はエコーが無いと演奏できないのか?!

過日、グランキューブ大阪(※ホール音響ナビはこちら)メインホールに関するWikipediaを閲覧して、起筆者のカラオケ感覚に唖然とした次第です。

もしもN音響設計の関係者(信奉者)の起筆だとしたら全く呆れかえった「さくら」が起筆した 提 灯持(ちょう ちんも)ち解説です。

耐震強度不足解消を錦の御旗にしたホール立て替え強要ビジネス

20世紀の「補助金を当て込んだ おらが町 の 多目的ホール建設」ブームのおかげで日本津々浦々3000ヶ所にも迫ろうとするホール網?がいき渡りました。

更に、「お上」の後押しも有り耐震強度不足を「錦の御旗」に 第2次ホール建設ブーム とでも言えそうな 立て替えラッシュ の兆しが見えだしています。(※関連記事はこちら)

全く懲りもせずに、あの手、この手と「手を変え 品を変え」お役所の箱物行政が続く事です!

しかも、2000年以降は文科省もからみ、多目的文化ホール を立て替えて コンサート専用ホール の建設に動き出す痴呆自治体も多く見受けられます。

アマチュア音楽家の端くれとして、上質の音楽ホール増産?は歓迎するべきなのかもしれませんが...。

この「上質の」と言う言葉が問題なのです

何処でどう間違ったのか、「上質=エコーたっぷり」の風潮が生まれ、お風呂場真柄?のホールが続出してしまっています!

ニワカ演奏家・演奏団体が続出しワンワン渦巻くエコーの中、演奏家の微妙な音色(ニュアンス)の変化を伝えられない様なホールで「まやかしコンサート」を繰り広げています。

「コンサート専用ホールとはこうあるべき」と言う間違った「エコー信奉」が喧伝・吹聴された結果でしょう

言わせていただけば、小生にとっては自宅の「自慢のオーディオホール?」(※自慢記事?はこちら)で音楽鑑賞している方が「余程まし」なような「酷い音響のホール」が続出している昨今です。

エコーマニアとホール・テイスター?の風評(悪評)被害

小生が警鐘を鳴らしているのは、デッドなのでコンサートに不向きと決めつける「エコーマニア」と「ホール・テイスター?」達の「風評(悪評)被害」です。

金科玉条の如く残凶2秒以上を唱え、エコーが無いと音学が奏(かな)でられないと思い込んでいる様な「まやかし演奏家」共は、銭湯でリサイタルでも開けば良いのです!

※実際に首都圏のとある施設では月に一度の洗い場コンサートが開かれています。(いました?)

音楽知らずの痴呆自治体3例

とんでもない音楽専用施設の例。

例1、評判の高いホールに似せた、紛い物コンサートホールの例その1。(※粗悪ホールナビはこちら

例2、評判の高いホールに似せた、紛い物コンサートホールの例その2。(※粗悪ホールナビはこちら)

例3、某音響設計の作になる、線路際の騒音(轟音)渦巻くホール。(※粗悪ホールナビはこちら)

参照欄

※1、自画自賛のラーメン屋とコンサートホールの共通点!?

※2「ザシンフォニーホール誕生裏話」に関連する「日本音響学会誌」(2011年67巻2号)への寄稿記事はこちら。(P94最後部からP95にかけての数行参照)

※3、Wikipediaの用語解説はこちら。

※4、ディレイ (音響機器)に関するについてのWikipediaの解説はこちら。

※5、周波数スペクトルについてのWikipedia解説はこちら

※6、 第2章 定在波で起こる音響障害『ミステリーゾーン』はこちら。

※7、「過剰な残凶?」で起こる音響障害『ホール酔い 現象 とは?』はこちら

※8 デシベルをわかりやすく紹介したサイト はこちら

※9、RT60残響時間測定法についての(株)エー・アール・アイさんの解説はこちら。

※10、ヤマハのあおいホール改修に関する参考例はこちら。

※11、第3章、過大な初期反響の緩和・回避策;壁際処理と壁材の選択セオリー はこちら。

※12 ホールデザインの基本"定在波の阻止・駆逐" 法はこちら

※13、キャットウォークについてのWikipediaの解説はこちら

※14、アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての建材メーカーの解説記事はこちら

※15、音響工学の基礎知識、「反射面(幅)サイズと波長の関係」はこちら

※16 音声帯域に関する関連解説記事はこちら BTS(放送技術規格

※17 第4章第1節「高さ方向定在波の音響障害」回避策 はこちら。

※18、「ヴォールト」デザインについてのWikipediaの解説はこちら。

※19、第2節;近距離音場離と音響レンズの関係 はこちら。

※例1、愛知県芸術劇場 ・コンサートホール《 ホール 音響 ナビはこちら》

※例2、1995年開館 紀尾井ホール(※ホールナビはこちら

※例3、 京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ(小ホール)(※ホール音響Naviはこちら)

※例4、適用例 ミューザ川崎シンフォニーホール (※ホール音響Naviはこちら)

※ご注意;

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公開:2017年9月19日
更新:2019年5月31日

投稿者:デジタヌ

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