春日井市民会館 《ホール音響Navi》
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松竹大歌舞伎の尾張地方公演の舞台ともなっている老兵「春日井市民会館 」。
建設当時流行した六角堂スタイルの天井の低い「はんぺん型」の多目的ホール。
しかもこれまた当時流行っていた「打ち放しコンクリート」の内壁を持つ「巨大エコールーム仕様」の通常のプロセニアム形式だが、元々天井が低いので、ステージ半響板と客席部分がスムース?につながっていることが幸いして...
春日井市民会館のあらまし
Official Website http://www.kasugai-bunka.jp/archives/taxo_guide/shiminkaikan
大ホールのある春日井市民会館棟、と視聴覚ホールと図書館が同居している「文化フォーラム春日井棟」と2つの施設からなっている。
春日井市民会館 のロケーション
ところ 春日井市鳥居松町5丁目44番地
JR中央線春日井駅からの県道204号線(線路沿い)を西(名古屋方面)へ辿り最初の地下道入り口にある交差点を右折してそのまま204号線を西北に辿り八事南交差点をそのまま県道25号沿いに辿った「市役所東交差点」を左に入った一角に春日井市役所、文化フォーラム春日井(春日井市図書館)と共に佇んでいる。
春日井市民会館 へのアクセス
公共交通機関
JR中央本線「春日井駅」北口より
・ 名鉄バス「鳥居松」下車、西へ徒歩2分
・ 北へ徒歩約20分
・ レンタサイクル(無料・月〜土8:30〜19:00・日祝休み)で約5分
かすがいシティバスでお越しの方
・ 「市役所」下車すぐ
マイカー利用の場合
文化フォーラム春日井地下駐車場または、春日井市民会館地下駐車場をご利用ください。
※駐車台数に限りがあります。なるべく公共交通機関をご利用ください。
春日井市民会館 の豆知識
春日井市民会館 のある春日井市のあらまし
名古屋市の北東に隣接する町。
市の南部には庄内川が流れ、JR中央線および国道19号が市を横断している。市の西部には県営名古屋空港の一部があるほか、市庁舎や商工会議所および古くからの商店街が広がる。一方、東部は大規模団地が開発され、名古屋市のベッドタウンとなっている。
推計人口、306,936人/2017年10月1日
春日井駅ー名古屋 22分/320円/JR/18.1km
春日井駅ー(名古屋)--品川 2時間2分/11090円/在来線ー新幹線/377.3㎞
春日井市民会館 のこれまでの歩み
1966年1月22日 市政20周年事業として市民会館開館。
1999年11月11日市政50周年記念事業として文化フォーラム春日井開館。
春日井市民会館がお得意のジャンル
(公財)かすがい市民文化財団が積極的な自主興行を行っている。
大ホール
松竹大歌舞伎の地方公演の舞台となっている。
オーケストラコンサート、バレエ公演ソリストのリサイタル、アンサンブルの演奏会、小編成の室内楽コンサートなども行われミュージカル、Jポップ関係のコンサートや往年のアイドル・エンタテイナーのワンマンショウ、ジャズコンサート、演劇・伝統芸能、歌謡歌手の歌謡ショー、懐メロ歌手の歌謡ショー、大衆演劇、落語・演芸寄席、着ぐるみヒーローショー、大道芸、パフォーマンス・ショーなどの色物などジャンルに拘らないバラエティーに富んだイベントが行われている。
またプロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体も利用している。
春日井市民会館 の公演チケット情報
大ホールで催されるコンサート情報
施設面から見たホールの特色
※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。
春日井市民会館
故前川國男先生が全国に蔓延させた多角堂ブームの時期に作られたホールの一つ。
いやまあ 「お見事」というべきか?
このホールをデザインした人は「確信犯」というか...単なる模倣ではなく故前川國男先生の作品群(関連記事、東京文化会館のホールNaviはこちら)をよく研究なさっている。
フロアデザイン
六角堂スタイルの天井の低い「はんぺん型」の1フロアーの多目的ホール。
研究しつくした壁面意匠
サイドプロセニアムとそれに続く客席前半部側壁
脇花道の背後まで続くサイドプロセニアムは「打ち放しコンクリート」それに続く前半側壁も当然先生の作品に倣い同様の設え。
後半は木質パネルで表装され1964年5月開館の弘前市民会館(※ホールNaviはこちら。)の改修後の姿にそっくり!で壁面に音響拡散体となる長形パネルをランダムにはりつけてある。(オリジナル弘前市民会館は窪み)
特異な大向こう処理
客席最後部は4段のスタンド席?になっており、回りをお堀?(通路)でかため、通路の背後は全面を音響ネットで表装した左右で前後奥行きを違えた巨大な吸音壁(防音壁)になっている。
大向こう上部、ホール内に張り出した映写室
大向う上層部はホールに張り出した形で「調整室・映写室」が設えてありもちろんこちらの前面も吸音構造!
プロセニアム上部とステージ反響板
上部プロセニアム前縁は木質の大型凸型コーナー反響板でステージ半響板と客席天井反響板をスムース?につないでいる。
天井
天井はプレーンな形状のアクリルエマルションペイント仕上げプラスターボード製(※1)の反響板。
意味不明の2階特別席の天蓋
折角客席周辺に十分すぎる?ぐらいの無駄スペース(通路)を取りながら、どういうわけか天蓋を付けて「シマッタ!...」
総評
プレーンな「完全平行壁面」のオンパレードではあるが、客席周囲の全周壁面にわたり通路を配しホール横断定在波(※2)の「節目」を上手くかわし、最悪のホール前後軸定在波は客席スロープとステージ反響板のアンギュレーショ
ンと大向こうに配された「お堀?」でかわし、平土間と天井の上下定在波はスラント設置した天井反響板で阻止するなど実にお見事! 定在波対策(※3)のお手本のようなデザインである。
...にしても幅に比べて低すぎるてんじょう
ステージ前端から大向こう壁面までのホール奥行きが約30mでホール幅は上層部幅方向対角線で約33m(実際の幅は約30m)等辺6角形を基本にしたフロアデザインなので幅が広いのは致し方ないとして、天井最高部下面で高さ約12mしかないのは、 ちょうど同時期(1967年6月開館)に建設された同規模の改修前の「あおいホール(岡崎市)」(※ホール音響Naviはこちら)と同様に極端に不足している。
今後の改修に期待!
天井については今後再度の改修をのぞむしだいである!
ちょうど「あおいホール(岡崎市)」と同じような規模でもあり、当館もホールシーリングライト上面(本体天井裏面)迄なら約15mあり、いっそのこと「あおいほーる」同様に天井反響板を撤去し、屋根本体構造体を露出(※4)させれば天井からの初期反射が激減し「代わって心地よい後期残響」が降り注ぐホールとなるであろう。
「あおいホール」とイメージが被るのが嫌なら「中規模演劇専用ホール」風に「アルミ格子+ネット」で表装し直せば「今風」になる。
デジタヌの独り言
ウーン、改修してまだまだ使いつもりなら、YAMAHAさんに相談してください!(関連記事;老ホール に朗報 仕事人「YAMAHA」現る!はこちら)
ホール音響評価点:得点92点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点50点/配点50点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
- ※客席側壁が ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは、 基礎点25点に減ずる。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点21点/配点25点
- ※木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
- ※障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点17点/配点20点
- ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価;得点4点/配点上限5点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
- ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。
算出に用いた値;
※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら。
定在波評価
※甚大障害発生席数が0?なので50点とした。
基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数0=50点
定在波障害顕著席数;
定在波「節」部席;0席
定在波「腹」部席;0席
定在波障害顕著席総計;0席
初期反射対策評価
※障害エリア壁面材質が木質プレーンパネルなので素材基礎点23点とした。
基礎点B2=素材基礎点23点ー障害発生エリア数1=22点
初期反射障害1 壁面障害席 ;0?席
初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;22席/2階特別席全席
音響障害席総計;22席
客席配置評価
基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数2=18点
眺望不良席数;10席/1階平土間中央部座席2列20番~29番
音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0?席
音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;0?席
音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;22席
重複カウント ;ー0席
音響障害席総計;32席
算定式
評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数
視聴覚ホール
鉄筋4階建ての文化フォーラム春日井の中にある施設。
4分割アダプタブルステージと可動(搖動)プロセニアㇺとロールバック収納システム.により天井は4.0mと少々低いがプロセニアム形式の1スロープの小ホールとしても利用できる。
視聴覚ホール
天井が迫っているのが難点ではあるが、新しいだけに市民会館よりは数段まともなホールである。
アダプタブルステージ(※2)を採用しており流行りの搖動型サイドプロセニアムを開けばセミオープンステージのホールとしても使え、さらにはロールバック収納席をたためば?平土間の多目的イベントルームとして展示ホールなどにも転用できるフローリング床の施設。
客席側壁は立て格子で表装したプレーンな一般建築用の石膏ボード壁。
大向う「通路」背後は調整室・映写室になっており前面は音響グリルで表装された吸音構造。天井は照明器具(フード)を利用したセグメント構造。
ホール前部客席上にむき出しの照明ブリッジを設置した流行りのデザイン。
ホール音響評価点:79点
§1,「定在波対」策評価点:20点/40点満点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、天井形状、天井高さ、等の要素をそれぞれ減点法で算出。
- ※客席側壁がプレーンな垂直壁で「完全平行・平面」の場合は、満点x0.5=20点をベースに算出。
§2、残響その1 「初期反射」対策評価点:20点/20点満点
- ※壁面の素材・形状、客席配置、その要素で減点算出。
- ※(コンクリート、人造大理石、タイル・陶器製などの)硬質材の客先周辺壁材仕様は、満点x0.5=10点をベースにして減点算出。
§3,残響その2「後期残響」への配慮評価点:19点/20点満点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で減点算出。
§4,客席配置への評価点:20点/20点満点
- ※壁際席、大向こう席、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で減算。
- ※客席周辺壁材が硬質壁の場合は、満点x0.8=16点をベースに減点算出。
春日井市民会館 の施設データ
- 所属施設/所有者 春日井市民会館/春日井市。
- 指定管理者/運営団体 (公財)かすがい市民文化財団/春日井市。
- 開館 1966年1月22日開館/市民会館、1999年11月11日/文化フォーラム春日井
- 設計 日建設計/市民会館 、安井建築設計事務所/文化フォーラム春日井
- ゼネコン 佐藤工業/市民会館、佐藤・土屋・イリヤ特別共同企業体/文化フォーラム春日井
- 内装(音響マジック)
大ホール
- ホール様式 、プロセニアム型式六角堂多目的ホール。
- 客席 1スロープ 収容人員 1022席、内訳車椅子用スペースX6、、
- 舞台設備 ステージ奥行;約8ⅿ、プロセニアムアーチ:間口:約19.3m 高さ:約8m、ブドウ棚(すのこ)高さ:17.6m、バトン類高さ:15.7m、
- 本花道(すっぽん迫り付き)、脇花道、花道用所作台、所作台、
- 松羽目、金・銀屏風、
- 反響板、オーケストラ平台、ひな段用けこみ、オーケストラピット&エプロンステージ迫り(可動床客席収納)、バレエ用シート
- 舞台仕様・詳細寸法などに関する仕込み図面集はこちら公式ガイド:(舞台図面&舞台設備使用料金表)
- その他の設備 パイプオルガン、フルコンサートピアノスタインウェイD-274 &ヤマハC.F、洋室楽屋X5、和室楽屋x5、浴室、
- 施設利用(付帯施設利用料金等)案内 詳しくはこちら公式ガイド。
視聴覚ホール
- ホール様式 、間口13.25mX奥行17mx高さ4.0m床面積274㎡(約165.5畳)平土間多目的イベントスペース。
- 客席 間口13.25mX奥行13m床面積約172㎡(約104畳) 1フロアー 収容人員 198席、内訳:126席(ロールバック方式客席収納システム)、72席(可動椅子)
- 舞台設備 4分割アダプタブルステージ、可動プロセニアムアーチ:間口:9m 奥行:4m 高さ:4.15m、ステージ高さ;FL+60cmブドウ棚(すのこ)高さ:StL+4.43m、バトン類高さ:StL+4.3m、金屏風、
- その他の設備 控室x2、フルコンサートピアノヤマハCF Ⅲ&カワイ RX-A
- 施設利用(付帯施設利用料金等)案内 詳しくはこちら公式ガイド。
付属施設・その他
- 付属施設 、会議室x2、和室x2、文化活動室x、市民ギャラリー、
- 施設利用(利用料金等)案内 詳しくはこちら公式ガイドへ。
参照覧
※1、アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての建材メーカーの解説記事はこちら。
※2-1、定在波の悪影響に関する一般人向けnatuch音響さんの解説記事はこちら
※2-2、定在波に関するWikipediaの(技術者向け)解説はこちら。
※3、定在波対策については『第4章 セオリーその1 "定在波の駆逐" と "定在波障害の回避策"』をご覧ください
※4、剥き出し天井についての詳述は『第10章第3節ホール構造体剥き出し天井』 をご参照ください。
※1エコールームに関する「音工房Z」さんの解説記事はこちら。
公開:2018年4月 4日
更新:2022年9月30日
投稿者:デジタヌ
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