ティアラこうとう/江東区 《ホール音響Navi》
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日本初の可動プロセニアムを設備した「ティアラこうとう」。
かわいいネーミングなので「コアラこうとう」とよく間違えられる?「ティアラこうとう」。
かわいい「ティアラこうとうジュニアオーケストラ」をレジデンス団体に持つ、江東区ご自慢の施設。
※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。
ティアラこうとうのあらまし
開館当時最新鋭、日本初の「可動プロセニアム」を備えた、シューボックス型多目的ホールとして注目された。
東側は横十間川、南と西側は公園の並木、新大橋通りに面してはいるが十分の間合いを取った、優れた立地にある。
2フロアーの 1,300人収容の中規模シューボックス型大ホールと、140名収容のカワイイ小ホールの2つの施設を持つ会議室などを備えた複合施設。
ティアラこうとうのロケーション
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所在地 東京都江東区住吉2-28-36
都営新宿線・東京メトロ住吉駅からすぐ、猿江恩賜公園の中にある江東区立の文化施設。
川を挟んで、東京都立科学技術高校、広大な公園の北西の端には区立毛利小学校、当館の南には東京FC深川グラウンド、江東区スポーツ会館、等がある文教地区。
又対岸には、ザ・ガーデンズタワーが新大橋通り沿いにLIXIL資料館、その北側に日本ヒューレットパッカード等の、商業施設や高層コンドミニアムが建つ東京の先端エリアでもある。
又、目黒パーシモンホールのある錦糸町駅からも地下鉄で1駅と近い。
ティアラこうとうへのアクセス
都営地下鉄新宿線東京地下鉄半蔵門線住吉駅下車、A4出口より徒歩4分
都営バス東22系統、錦11系統「住吉駅前」下車、徒歩5分
都営バス錦28系統「江東公会堂前」下車、徒歩1分
ティアラこうとうの施設データ
Official Website https://www.kcf.or.jp/tiara/
- 所属施設/所有者 江東区江東公会堂/江東区。
- 指定管理者/運営団体 (公財)江東区文化コミュニティ財団/江東区。
- 竣工 1994年2月
- 設計 久米設計
- ゼネコン 、鹿島建設・多田建設・土屋組・丸石工業による共同企業体(JV)
- 内装(特殊メーク) 舞台音響「不二音響」
付属施設・その他
- 付属(共用)施設 ;公式共用設備ガイド(※フロアガイドはこちら、)
- ※リハーサル室、練習室、会議室等。
- 共用備品(全館共通備品リストはこちら。)
施設利用料金
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全館共通施設利用料金案内 公式使用料金表 はこちらへ
全館共通備品利用料金案内 公式使用料金表 はこちらへ。
音響工学から眺めた『大ホール』音響デザイン
シューボックス型の中規模多目的ホール。
1994年当時国内初の最新設備の可動プロセニアムを採用したシューボックス型多目的ホールという最近流行りだしたホールの走り。
2スロープ2フロアーのプロセニアム形式多目的ホール
最前列から4列目(内か列が可動床のオーケストラピット)までが平土間で5列目から緩やかな扇形段床が大向こう迄伸びるメインフロアーと、両翼から前方に伸びた1列のサイドテラス席を持つ2階バルコニー席で構成されている。
所見
ステージ周り
可動プロセニアム機構と密着型ステージ反響板により、ホール一体型のセミオープンステージコンサートホールと成るはやりのデザイン。
ホリゾント反響板は固定の設えになっているようで、4分割の天板一体型の門型自自走式の重量級反響板がマトリョーシカの様に、ステージ背後に収まるようになっている、形式は違うが杉並公会堂(ホールNavbi はこちら)同様に演劇にも使用できなくはないコンサートホールといったところである。
常設脇花道を持つステージには立派な奈落設備もあり、コンサートホールとしては、2分割のオーケストラ「ひな壇迫り」が装備され、演劇にも対応できるように小迫、も設備され・演劇・バレエにも対応したバトン類も多数具えた多目的ホールと成っている。
客席周辺平行部側壁と2階席の前縁はツンツルテンの人造大理石!?
ホール中層部2階バルコニー&テラス席周辺は木質パネルと少々奇異なコンビネーション壁ではあるが、2階席の前縁はラウンドさせてあり、中層部には装飾柱、装飾梁、音響拡散体、も配置されており、上層部から折上げられた天井など、残響(初期反射と後期残響)(※10)にも一応の配慮はされている。
参※10)当サイト関連記事 第1章 「エコー」と「後期残響」は別物はこちら。
天井
ヴォールト(※11)を連ねたような波状天井になっている。
※参11)「ヴォールト」デザインについてのWikipediaの解説はこちら。
総評
バブル経済崩壊の余波?
バブル経済崩壊の影響をまともに受け、税収が切迫している時に計画、建築された。
為に、音響設計にはそれほど注力していない様で、当時既に一般的していた「1/30」スケールモデルによるモデル実験やコンピューターによる音響「シュミレーション」等のシュミレーション実験はおろそかにされたのであろう、勘と経験と従来手法の模倣・踏襲だけでデザインされた様なフシがある。
以前の旧公会堂が「日本の建築音響学の父」故佐藤武夫先生の手になる、響きの良さで定評のあったホールだけに残念なところではある。
大ホールは低音域がブーミーな多少癖のある音響
この設計事務所が手がけた作品は、内装に「石材、打放しコンクリート壁」を好んで使用する傾向があり、石材使用には自信がある様であるが...。
天井が高いのと、パイプオルガンが装備されていないので、波長26m/13Hzと言った長波長の重低音による定在波共振は考慮しなくてもよく、完全直方体に近いこのようなデザインになったのであろう。
せめて中・上層部はホール内側にスラント(内傾)させていただきたかった。
悪くは無いが、低音域がブーミーな多少癖のある音響ではある。
更に平土間部分についても「この程度の天井の凹凸」では定在波抑止は難しいが、危険高さを上手に回避しているのでこれもまた不問とした。
扇形段床、壁際通路などの配慮があり、定在波による音響障害対策(※12)
参※12)当サイト関連記事 第3章 ホールデザインの基本"定在波の根絶・阻止・駆逐" 法 はこちら。
定在波対策についての考察
両側壁のこの程度の波状面では、高次の定在波は防ぎきれず、AからC列までの被り付き3列は背後席の谷間効果(※13)の恩恵にもあずかれずほゞ無防備状態なので、着席(座席指定)は避けたほうがよかろう。
ということで、両側面扉に挟まれた前半スロープ最後列H列も、無防備で中央左右両袖中央の合わせて4席で定在波による音響障害が生じていると思われるが、
※以下、音速は室温28℃、海面標準気圧1013hPaの時の348.6m/sec で計算してあります。
参※13)当サイト関連記事 第1節 扇状段床座席を用いたホール横断定在波の障害回避策 はこちら。
※クリックすると拡大画像になります
側壁平行部分(間口方向)
メインフロアー平土間部側壁平行部分(A~D列)
- 側壁間約21.3m;定在波周波数成分;約8.2Hz/0.5λ、約16.4Hz/1λ、約24.5Hz/1.5λ、約32.7Hz/2λ、約40.9Hz/2.5λ、約79Hz/3λ、
- ※両側壁の表装(アンギュレーション処理)で高次定在波抑制?
メインフロアースロープ前半側壁平行部分(E~H列)
- 側壁間約21.3m;
- 定在波周波数成分;約8.2Hz/0.5λ、約16.4Hz/1λ、約24.5Hz/1.5λ、約32.7Hz/2λ、約40.9Hz/2.5λ、約79Hz/3λ、
- ※両側壁の表装(アンギュレーション処理)で高次定在波抑制?
- ※扇形(ハノ字)段床配列座席で定在波層を回避。
メインフロアースロープ後半側壁平行部分(I~X列)
- 側壁間約21.3m;
- 定在波周波数成分;約8.2Hz/0.5λ、約16.4Hz/1λ、約24.5Hz/1.5λ、約32.7Hz/2λ、約40.9Hz/2.5λ、約79Hz/3λ、
- ※両側壁の表装(アンギュレーション処理)で高次定在波抑制?
- ※扇形(ハノ字)段床配列座席で定在波層を回避。
2Fバルコニー・テラス平行部分
2Fバルコニー部側壁平行部分(2A~2H列)
- 側壁間約21.3m;
- 定在波周波数成分;約8.2Hz/0.5λ、約16.4Hz/1λ、約24.5Hz/1.5λ、約32.7Hz/2λ、約40.9Hz/2.5λ、約79Hz/3λ、
- ※両側壁の表装(アンギュレーション処理)で高次定在波抑制?
- ※扇形(ハノ字)段床配列座席で定在波層を回避。
2Fサイドテラス部側壁平行部分(BR~BL列4~24番)
- 側壁間約21.3m;
- 定在波周波数成分;約8.2Hz/0.5λ、約16.4Hz/1λ、約24.5Hz/1.5λ、約32.7Hz/2λ、約40.9Hz/2.5λ、約79Hz/3λ、
- ※両側壁の表装(アンギュレーション処理)で高次定在波抑制?
2Fサイドテラス部側壁平行部分(BR~BL列1~3番)
- 側壁間約21.3m;
- 定在波周波数成分;約8.2Hz/0.5λ、約16.4Hz/1λ、約24.5Hz/1.5λ、約32.7Hz/2λ、約40.9Hz/2.5λ、約79Hz/3λ、
- ※両側壁の表装(アンギュレーション処理)で高次定在波抑制?
奥行き方向想定定在波
1F(ステージホリゾント反響板→1F大向こう壁面)
- 最大奥行き約37m;
- 定在波周波数成分;約4.7Hz/0.5λ、約9.4Hz/1λ、
- 客席スロープで抑止。
- ※高次定在波はステージ反響板のアンギュレーションと、大向こう背後壁面処理(波状表面)で抑制。
2F(プロセニアム前縁→2階大向こう壁面)
- 最大奥行き
- 客席スロープで抑止。
- ※高次定在波はステージ(上部)反響板のアンギュレーションと、大向こう背後壁面処理(アンギュレーション・縦格子・吸音壁)で抑制。
平土間床→天井最高部高さ方向(BからD列)
- 客席平土間部約17.5m;
- 定在波周波数成分;約10/0.5λ、約19.9Hz/1λ、
- ※定在波は波状天井・のアンギュレーションで抑止・抑制
赤字は健康被害にも通じる可聴帯域外の低周波成分。
参※)当サイト関連記事 第3節 ミステリーゾーンで起こる低周波振動健康被害! はこちら。
ホール音響評価点:78点(概算暫定値)
※1,300人収容のコンサートホールとしての評価
§1,「定在波対」策評価点:50点/50点満点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、天井形状、天井高さ、等の要素をそれぞれ減点法で算出。
- ※客席側壁がプレーンな垂直壁で「完全平行・平面」の場合は、満点x0.5=20点をベースに算出。
§2、残響その1 「初期反射」対策評価点:10点/25点満点
- ※壁面の素材・形状、客席配置、その要素で減点算出。
- ※(コンクリート、人造大理石、タイル・陶器製などの)硬質材の客先周辺壁材仕様は、満点x0.5=10点をベースにして減点算出。
§3,客席配置への評価点:13点/20点満点
- ※壁際席、大向こう席、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で減算。
- ※客席周辺壁材が硬質壁の場合は、満点x0.8=16点をベースに減点算出。
§4,残響その2「後期残響」への配慮評価点:5点/5点満点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で減点算出。
大ホールの施設データ
- ホール様式 、『シューボックスタイプ』多目的ホール。
- 客席 2フロアー(2階バルコニー&テラス) 1,300席(1階 848席、2階 386席、親子席 4席、立見席 62席)
- 舞台設備 プロセニアム形式、間口:16m 奥行: 高さ:6or8m、脇花道、、小迫り、ブドウ棚(すのこ)、可動プロセニアム、自走式反響版、オーケストラピット(可動床)、バトン類、オーケストラひな壇(可動分割迫り)
- その他の設備 、楽屋x6、
- 各種図面,備品リスト&料金表。
- 公式客席配置図・座席表はこちら
- 施設別舞台備品・図面;舞台平面図はこちら、舞台断面図はこちら、反響板設置図はこちら
- 付属施設配置図はこちら。
- 施設別ホール使用料金表 はこちら。
- 施設別ホール専用・備品利用料金表 はこちら。
大ホールがお得意のジャンル
プロオーケストラ、以外にも数多くのアマチュア団体が利用している。
クラシックのアーティスト以外にも「エンタテイナーによるステージショウ」も行われている。
大ホールは、オーケストラ公演、各種コンサートやバレエ、演劇などを中心に使用されている。
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団準フランチャイズ
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の準本拠地であり、テレビ朝日「題名のない音楽会」の収録も行われている。
レジデントジュニアオーケストラも主宰
ティアラこうとうジュニアオーケストラを擁し後援している。
大ホールで催されるコンサート情報
音響工学から眺めた『小ホール』音響デザイン
(公式施設ガイドはこちら)
オープンステージではあるが、バトン類は装備しており、演芸、小演劇にも対応した緩やかなスロープを持つ多目的ホール。
1スロープ1フロアーオープンステージ多目的ホール
扇形ホール(半円形ホール)と言うふれこみだが、正確には扇形段床客席配列の6変型角堂オープンステージ小ホール。
東京文化会館小ホール(ホール音響Naviはこちら)の小ぶりといったところ、平面図をご覧いただけばお分かりだと思うが、ほぼ正方形16mx15.5mの敷地(ホール内寸約12.5mx約12m)のホールの対抗する2つの角部分をステージと調整室に使用した変型多角形のホール。
所見
丁寧な設え?の壁面
大ホールとは異なり木質プレートをアンギュレーションを持たせて客席全周に巡らせてある。
扇形段床で定在波層を回避
扇形スロープなので、谷間効果で対抗面との間に生じている定在波層を上手く回避している!
長辺13.4m想定定在波周波数 26Hz/1λ
短辺12.6m想定定在波周波数 27.6Hz/1λ
を上手に回避している!
しかも壁面には屏風のようにアンギュレーション処理がされているので、高次提示波は上手く抑制されている!
ステージ上空には剥き出しの照明ブリッジが設えられ、音響拡散体として働いている。
天井
プラスターボード製(※3)の大型1体成形反響板が設えられている。
総評
客席での定在波は上手く回避しているが、45㎝程度のステージを設えられており、段床3段分ぐらい上がっており、ステージ上では谷間効果はあまり得られていない!但し背後の作りこみホリゾント反響板のサイドが僅かにハノ字に広がっており、定在波の発生を抑制してはいる。
出来れば、ステージ(演台)は無くても、というよりむしろ無かった方が効果的であったであろう。
天井は低いが、ステージ上、も僅かに残された平土間部分も扇形スラントの天井反響板(コーナー反響板)が設えられ、上下高さ方向定在波にも留意している。
細かな部分にまで神経の行き届いた真に丁寧なデザインである。
多少癖の強い音響ではあるが、バイオリンリサイタル、ギターリサイタル、木管楽器などのラッパ鳴り物のともなわない独奏には好適のホールである。
ホール音響評価点:92点(概算暫定値)
※140人収容のホールとしての評価
§1,「定在波対」策評価点:50 点/50点満点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、天井形状、天井高さ、等の要素をそれぞれ減点法で算出。
- ※客席側壁がプレーンな垂直壁で「完全平行・平面」の場合は、満点x0.5=20点をベースに算出。
§2、残響その1 「初期反射」対策評価点:22点/25点満点
- ※壁面の素材・形状、客席配置、その要素で減点算出。
- ※(コンクリート、人造大理石、タイル・陶器製などの)硬質材の客先周辺壁材仕様は、満点x0.5=10点をベースにして減点算出。
§3,残響その2「後期残響」への配慮評価点:15点/20点満点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で減点算出。
§4,客席配置への評価点:5点/5点満点
- ※壁際席、大向こう席、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で減算。
- ※客席周辺壁材が硬質壁の場合は、満点x0.8=16点をベースに減点算出。
小ホールの施設データ
- ホール様式 変形6角堂 多目的ホール。
- 客席 1フロアー扇形配置 収容人員 140名、
- 舞台設備 間口約7mx奥行き約4.4m、高さ約5.4mステージ高さFL+約50cm オープンステージ形式、バトン類。
- その他の設備 、、楽屋x2、
- 各種図面,備品リスト&料金表。
-
- 公式客席配置図・座席表はこちら
- 施設別ホール専用・備品利用料金表 はこちら。
- 施設利用(利用料金等)案内 詳しくはこちら。
小ホールがお得意のジャンル
プロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体が利用している。
小ホールで催されるコンサート情報
その他の付属施設
リハーサル室
天井は低いが防音・防振で音響にも配慮した「まあまあ使えるリハーサル室」。
デジタヌの豆知識
ティアラこうとうこれまでの歩み
1965年2月、日本の音響設計の草分け故佐藤武夫先生の設計による名建築であり現在の多目的ホールのモデルとなったの旧公会堂が開館。
1992年 老朽化と新耐震基準に合致していないために閉館取り壊し!
1994年12月、建て替え施設「ティアラこうとう」竣工
※参照覧
※1、「ヴォールト」デザインについてのWikipediaの解説はこちら。
※2 第3章 ホールデザインの基本"定在波の根絶・阻止・駆逐" 法
※3、アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての建材メーカーの解説記事はこちら。
公開:2017年9月10日
更新:2022年9月30日
投稿者:デジタヌ
オーチャードホール /Bunkamura 《ホール音響Navi》ってよく聞くけど...どんなホール?< TOP >タケミツ メモリアル/東京オペラシティー《ホール音響Navi》 ってどう言うところ?