狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

川口総合文化センター・リリア 《ホール音響Navi》

,

プロレス だけでなく クラシックコンサート も"興行"する遊興施設?

一言で言い表せば落差ホール兄弟!?

メインホールが戦後すぐの「闇市的香り」を残す「庶民の町・川口」を代表する"エンタメ施設"だとすれば、「音楽ホール」はキューポラのある町・川口の「純真」を代表する文化施設でありリリアの看板施設として、首都圏有数の音響を誇る「クラシック音楽の無宗派聖堂」!

「下町の太陽」として川口に暮らす人たちの「安らぎの場」となっている。

リリアのあらまし

オートレースの町「川口市」が川口駅西口第一種市街地再開発事業の一環として川口駅西口に建設した、ホール棟と14階建て棟塔屋付きの「タワー塔」からなるひときわ目立つ「インタラクティブ・総合エンタメ施設」。

川口駅西口駅前一帯の再開発事業の「目玉施設」として 1990年5月に誕生した。

ホール棟とタワー棟2つの施設をメインとするインタラクティブ文化施設。

ホール棟にはメインホール(2002席のプロレス小屋)、音楽ホール(600席)、展示ホール(イベントホール)がある。

タワー棟にはリハーサル室にも成るスタジオ、会議室、録音室などがあるほか、テナントが入居し、

ホール棟とタワー棟の間には催し広場(小ホール)、ラウンジ「リリア」、ギャラリーなどが置かれている。

リリアのロケーション

ところ  川口市川口3丁目1番1号

最寄りの駅  JR川口駅前 東日本旅客鉄道の川口駅とペデストリアンデッキでつながっている

リリア の施設データ

Official Website https://www.lilia.or.jp/

  1. 所属施設/所有者 川口総合文化センター/川口市。
  2. 指定管理者/運営団体 (公財)川口総合文化センター/川口市。
  3. 開館    1990年5月
  4. 設計  鈴木 一三/(株)創造社/東京都 新宿区愛住町8-8
  5. 施工  JV(飛鳥・埼玉建工・川口土建)

付属施設・その他

  1. 付属施設 展示ホール、ギャラリー、会議室x4、音楽スタジヲx4、和室x3、茶室、ブッフェラウンジ
  2. 施設利用(利用料金等)案内 詳しくはこちら。

(公式施設ガイドはこちら)

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

建築音響工学から眺めた『音楽ホール』

(公式施設ガイドはこちら

首都圏有数の音響を誇る「クラシック音楽の無宗派聖堂?」リリアの看板施設。

このホールは音響効果を最も重要視して設計されています。
基本デザインは、ヨーロッパの伝統的なコンサートホールに範をとったシューボックススタイルを採用。
ホール全体にブナ(舞台)、ナラ(客席床)、チーク(壁)をふんだんに使用し、独特のカーブを描く天井や壁面の内装...この音楽ホールのもうひとつの特色は、130年以上の歴史を誇るスイス名門クーン社で製作されたパイプオルガンです...聴衆はもとより、数多くのオルガニストからも高い評価を得ています。<公式サイトより引用>

1スロープ1フロアーのシューボックスコンサートホール

最前列A列からG列まで.は平土間に近い緩やかなスロープで、通路を挟んでH列から緩やかなストレート段床となっている4層吹き抜け相当の高い天井を持つホール。

客室側壁

ラウンドした木質凸面パネルを縦方向に並べてアンギュレーションを与え、さらに僅かに内傾スラントさせて表装されている。

上層部はホール内に反らせた手のひらのように凹面状に回り込み、さらに最上層部には凸面状の同数の音響拡散体(※1)が側壁上部に配置されている。

特徴的なステージ背後オルガンテラス

ステージ周辺も、側壁同様に円弧状の木質反響板を並べ、l後半はステージ背後に向かってハノ字にすぼまった部分にご自慢のパイプオルガンを設置してある。

パイプオルガンコンソールはステージ面より約3.6mの背後テラスに設置されている。

オルガンテラス前縁は、床面とホーンのような形状をなすように成型されているが、もちろんこれはダミーホーンで、最深部はただの壁面となっている。

さらに通常ホール後方大向こう部分に設置されることの多い調整室(照明・音響用)がステージ下手側壁中2階に配置されている。

大向う背後壁面

大向こうを含むホール客席周辺はすべて通路になっており、大向こう背後壁は大向こう通路背後、および1段張り出した上層部共に音響ネットで表装された防音(吸音)壁となっている。

前途のように大向こうには調整室がないが大向こう通路上部は、若干ホール内部に張り出し全体として「ハノ字」に後方がしぼめられ、ステージ背後上層部に設置された、パイプオルガンの前面形状と合わせホール軸方向の対抗する平行面をキャンセルし定在波の発生を抑止している。

壁面の丁寧な波状成型と緩やかなスロープのおかげで、X,Y、Z全軸方向にわたって定在波(※2)の発生は皆無である!

天井

ステージ上部から続く天井は側壁同様のラウンドしたサイズの異なるホール軸方向の木質パネルを中央部が最も高くなるように5列並べ、両端のパネルは、コーナー反響板の役割も果たしている。

最高部中央反響板下面で約14mの高さがある3層吹き抜け相当(実質4層建て)の教会のような高い天井となっている。

総評

メインホールが戦後すぐの「闇市的香り」を残す「庶民の町・川口」を代表する"エンタメ施設"だとすれば、こちらは「キューポラの町・川口の"純真"」を代表する施設。

自賛コピーの中に

独特のカーブを描く天井や壁面の内装角は、コンピューター・シミュレーションにより計算しつくされています。

とあるが、デザイン(設計)された 1989年当時はコンピューターが今ほど進化しておらず、「CAD・CAM」による製図は行われていたが音響解析アルゴリズム(ソフト)も確立されていない時期だったので「コンピューター・シミュレーション」は大げさで、あくまでも旧来から受け継がれたホールデザインのセオリー(※3)と「経験と勘」により「CAD・CAM」のお世話になりながら具現化したのであろう。

このホールは「音楽への深い理解と愛」を備えたデザイナーが「学識・経験・勘」等持てる力すべてを傾けた傑作で、最近のコンピューター・シミュレーションに頼り切り屁理屈で逃げまくった「落ち度だらけの紛い物」ではない「正真正銘の銘ホール」である。

惜しまれる点も

ステージ被り付き最前部3列が、千鳥配列でないのが惜しまれる。いくらやや傾斜が付いていてもこの部分は千鳥配列にしてほしかった次回改修時にはB列中央部分から1席を撤去してこの部分を千鳥配列としていただきたい。

というわけで狸穴総研・音響研究室・建築音響研究調査班・厳選『後世に伝えたい・真の銘ホール50選』に選ばせていただく。

ホール音響評価点:得点98点/100点満点中

※収容人員 600席のコンサートホールとしての評価。

※評価ポイント詳細は「"ホール音響ナビ"に用いた用いた評価法とは」をご参照ください。

§1 定在波」対策評価;得点50点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※スラント設置されていない「垂直平行側壁部分」と「平土間部分」の処理において、
    音響障害回避策」が3つ以上講じられていない場合は基礎配点50点満点x0.5=25点に減じます。

  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点25点/配点25点
  • ※木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点18点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価;得点5点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

算出に用いた値;

定在波評価

※障害発生エリアがないので基礎点50点とした。

基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数0=50点

定在波障害顕著席数;

定在波「節」部席;0席

定在波「腹」部席;0席

重複カウント ;ー0席

定在波障害顕著席総計;0席

初期反射対策評価

※壁面全面が木質壁なので素材基礎点25点とした。

基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数0=25点

初期反射障害1 壁面障害席 ;0席

初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;0席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;0席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数1=19点

眺望不良席数;12席(ステージ高さ70cmと低く緩やかなスロープのため)

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;0席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;0席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;12席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

音楽ホールの施設データ

  1. ホール様式 『シューボックスタイプ』音楽専用ホール。。
  2. 客席   収容人員 600席、1スロープ
  3. 舞台設備 オープンステージ 間口14.3m、奥行き5.1m、高さ約13m、ステージ高さFl+約70Cm
  4. その他の設備 パイプオルガン、楽屋、
各種・図面・備品リスト&料金表

音楽ホールがお得意のジャンル

オーケストラコンサート、オペラ・バレエ公演以外にもソリストのリサイタル、アンサンブルの演奏会等、小編成の室内楽コンサート、ジャズコンサートなど多くの「コンサート」が行われている。

又プロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体が利用している。

音楽ホールで催されるコンサート情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら

建築音響工学から眺めた『メインホール』

(公式施設ガイドはこちら)

さすが「川口のカラクリ小屋」だけ有って、大掛かりなアダプタブルステージ(※4)装置をそなえ川口名物「プロレス興行」をメインに掲げた「スタジアム」でありながら?、ミュージカルやバレエ・オーケストラコンサート等にも利用できる多目的ホールにも変身できる施設である。

3スロープ・3層プロセニアム形式"多目的競技場?"

最前列から10列目までが平土間に近い緩やかなスロープを持つ可動床・ワゴン収納可動席部分で、11列目から緩やかな「ハノ字段床」スロープが最後列30列まで続いている

壁面

客席周囲壁面は一部分を除いて大部分はアンギュレーション、もしくは波状壁面となっている。

定在波対策、基本的には、前途した周囲壁面のアンギュレーション処理と、ハノ字段床上座席配置で対処している。

ステージ周り

大型重量級反響板、とアダプタブルステージでホール一体型のオープンステージホールとなる最新流行のデザインを採用している。

想定される定在波と定在波障害回避策評価について

※以下、音速は室温28℃、海面標準気圧1013hPaの時の348.6m/sec で計算してあります。

側壁平行部分(間口方向)
メインフロアースロープ前半側壁平行部分(11~18列)
  • 側壁間約30.6m;約11.4Hz/1λ、
  • ※「壁面間隔20m超のセオリー」適用で1波長定在波を可聴帯域(20~20KHz)外にチューニング。
  • ※両側壁のアンギュレーション処理で高次定在波抑制。
  • ※両側壁際通路配置で定在波「節部」を回避。
  • ※扇形(ハノ字)段床配列座席で定在波層を回避。
メインフロアースロープ後半側壁平行部分(19~30列)
  • 側壁間約30.6m;約11.4Hz/1λ、
  • ※「壁面間隔20m超のセオリー」適用で1波長定在波を可聴帯域(20~20KHz)外にチューニング。
  • ※両側壁のアンギュレーション処理で高次定在波抑制。
  • ※両側壁際通路配置で定在波「節部」を回避。
  • ※扇形(ハノ字)段床配列座席で定在波層を回避。
2Fバルコニー・テラス平行部分
2Fバルコニー部側壁平行部分(8~14列)
  • バルコニー壁間約29.5m;約11.8Hz/1λ
  • ※「壁面間隔20m超のセオリー」適用で1波長定在波を可聴帯域(20~20KHz)外にチューニング。
  • ※両側壁のアンギュレーション処理で高次定在波抑制。
  • ※両側壁際通路配置で定在波「節部」を回避。
  • ※扇形(ハノ字)段床配列座席で定在波層を回避。
2Fバルコニー部側壁平行部分(15~16列)
  • バルコニー壁間約23m;約15.1Hz/1λ、
  • ※「壁面間隔20m超のセオリー」適用で1波長定在波を可聴帯域(20~20KHz)外にチューニング。
  • ※両側壁際通路配置で定在波「節部」を回避。
  • ※扇形(ハノ字)段床配列座席で定在波層を回避。
2Fサイドテラス部側壁平行部分(1~8列)
  • バルコニー壁間約29.5m;約11.8Hz/1λ
  • ※「壁面間隔20m超のセオリー」適用で1波長定在波を可聴帯域(20~20KHz)外にチューニング。
  • ※両側壁のアンギュレーション処理で高次定在波抑制。
  • ※両側壁際通路配置で定在波「節部」を回避。
  • ※扇形(ハノ字)段床配列座席で定在波層を回避。

3Fバルコニー・テラス平行部分
3Fバルコニー部側壁平行部分(9~15列)
  • バルコニー壁間約29.5m;約11.8Hz/1λ
  • ※「壁面間隔20m超のセオリー」適用で1波長定在波を可聴帯域(20~20KHz)外にチューニング。
  • ※両側壁のアンギュレーション処理で高次定在波抑制。
  • ※両側壁際通路配置で定在波「節部」を回避。
  • ※扇形(ハノ字)段床配列座席で定在波層を回避。

3Fバルコニー部側壁平行部分(9~15列)
  • バルコニー壁間約22.7m;約15.3Hz/1λ
  • ※「壁面間隔20m超のセオリー」適用で1波長定在波を可聴帯域(20~20KHz)外にチューニング。
  • ※扇形(ハノ字)段床配列座席で定在波層を回避。
3Fサイドテラス部側壁平行部分(1~8列)
  • バルコニー壁間約29.5m;約11.8Hz/1λ
  • ※「壁面間隔20m超のセオリー」適用で1波長定在波を可聴帯域(20~20KHz)外にチューニング。
  • ※両側壁のアンギュレーション処理で高次定在波抑制。
  • ※両側壁際通路配置で定在波「節部」を回避。
  • ※扇形(ハノ字)段床配列座席で定在波層を回避。
奥行き方向想定定在波
1F(ステージホリゾント反響板→1F大向こう壁面)
  • 最大奥行き約38.6m;
  • ※「壁面間隔20m超のセオリー」適用で1波長定在波を可聴帯域(20~20KHz)外にチューニング。
  • 客席スロープで抑止。
  • ※高次定在波はステージ反響板のアンギュレーションと、大向こう背後壁面処理(縦格子・吸音構造)で抑制?
2F(プロセニアム前縁→2階大向こう壁面)
  • 最大奥行き約38.6m;
  • ※「壁面間隔20m超のセオリー」適用で1波長定在波を可聴帯域(20~20KHz)外にチューニング。
  • 客席スロープで抑止。
  • ※高次定在波はステージ反響板のアンギュレーションと、大向こう背後壁面処理(縦格子・吸音構造)で抑制?

3F(プロセニアム前縁→2階大向こう壁面)
  • 最大奥行き約37.7m;
  • ※「壁面間隔20m超のセオリー」適用で1波長定在波を可聴帯域(20~20KHz)外にチューニング。
  • 客席スロープで抑止。
  • ※高次定在波は大向こう背後壁面処理(縦格子・吸音構造)で抑制?
※参考ステージ床面→天井最高部高さ方向
  • 客席平土間部約18m;約19.4Hz/1λ、
  • ※高次定在波は天井反響板の緩やかな凸面形状で抑制?
  • 9波長定在波の節・4.5波長定在波の腹に当たる18m!の天井高さ。

赤字は可聴音域内重低音。

ということで、客席における可聴帯域(20~20KHz)内一波長定在波による音響障害は皆無なので一応50点満点?

総評

川口リリアは鈴木 一三氏が代表者である(株)創造社が設計したことになっているが?

おそらくは、(株)創造社はトンネル?で、メインホールと音楽ホールは全くの別人、若しくは「異なるデザインチーム」がデザイン(設計)した施設であろう?

セオリーに忠実な隅々にまで神経の行き届いた丁寧な設えの音楽ホールに対し、「カラクリに頼った」大雑把なデザインコンセプトのメインホールはとても同一人物(or同一デザインチーム)がデザインした施設とは思えない!

オーケストラピットは最悪の長方形!

ご自慢のアダプタステージ(&エプロンステージ・オーケストラ迫り)であるが、

このホールのチーフデザイナーはとても音楽ホールのデザイナーと同一人物とは思えない2重人格?でアーティスト;オーケストラ奏者に全く配慮されていないのには驚かされる。

オーケストラピットは「非常識極まりない長型」しかも壁面(囲い)は「ツンツルテンのノッペラボウの垂直壁!」となっており、この中は定在波の嵐!間口約19.6m、奥行き約5.6mそれぞれ約20Hzと約60Hzの可聴帯域の定在波が生じている!

この中で、バスドラムなどが盛大に鳴り響く「ベルディー」のオペラなどはオーケストラメンバーにとっては「地獄絵図」さながらの悲惨な状況となっているでであろう。

更にオケピ上空が"水平反響板"でエプロンステージ使用のセミオープンステージ仕様にした場合約19.4Hz/1λ、の高さ方向定在波が生じてしまう、雛壇が無い「現セク」の奏者は耳の高さ(ステージ面+約1m)が9波長定在波の節・4.5波長定在波の腹に当たり其々174Hz、87.5Hzのミステリーゾーン・ミステリースポット(※5)に嵌り周波数特性はガタガタ!でつまり、ティンパニ・バスドラが鳴り響くたびに重低音の渦中に巻き込まれ、更に場合によっては、聞き取れないパート(楽器)が生じとてもウェルバランスのハーモニーどころではないであろう。(※6)

川口の伝統エンタメプロレス興行に特化したスタジアム?

川口市が、オートレースからの「寺銭の上がり」による有り余る潤沢な財源で作った、スタジアム?イヤ失礼メインホールにしては、内装がやや貧相。

ショッピングモールの壁面のような「塗装仕上げの合板+石膏ボード」の張り合わせハイブリッド材?では...

フロアー構成は、プロレス興行を念頭に?広大は1階平土間可動床・収納椅子システムを設え、コリに凝っているが、...

2・3階席の軒先(床)が深く、全フロアーに渡り大向こう(最奥)の部分に天井が迫っており、プロレスを始めとするエンタメ興業(ショー)には向くかもしれないが、折角の大仕掛けをつかい、わざわざホール部分までせり出した舞台を作ってまで行うオーケストラ公演では...。

定在波とその障害に対する配慮が不足

各フロアー共に大向こう背後壁面は波状処理してあり、2・3階は壁面全体を座席アレンジに合わせハノ字型に絞ってある。

但し2・3階バルコニー後部の側壁がプレーンな垂直壁で完全平行面となっている。

大向こう部分の天井高さが完全に不足

さらに2・3階バルコニー大向こう部分が2階で約2.2m、3階で約1.8mと極端に不足している。

伝統芸能全く無視の設計!

これだけの平土間スペースが有りながら、仮設本花道の設備が無い!

同じく回り舞台も無い!

歌舞伎座(※照会記事はこちら)の収容人員1964人、国立劇場1610席(※照会記事はこちら)新橋演舞場1428席。

どの施設と比べても遜色無い規模だけに、地元プロモーターに媚びて「プロレス専業スタジアム」としてだけ使用しているのは?もったいなすぎる。

中途半端な多目的スタジアム?

音楽ホールが素晴らしいだけに惜しまれる。

今後の改修に期待

クライアント(市当局)の地元有力者?に媚びた無理難題を受け入れつつも、オーディエンス保護のために辛うじて踏みとどまったオーディトリウムデザインについてデザイナーの良識は認めるが、「ステージ上の定在波公害」は何とかしてほしい!

天井反響板の大改修

立派(強固)なシェルター(ホール本体)構造体を持っているようなので、天井反響板を大改修し平土間(アダプタブルステージ)上空に一体型の高さ・迎え角可変タイプの大型コーナー反響板(※7)を設置していただきたい!

アダプタブルステージ(オケピ&エプロンステージ)に「内壁」を設け、台形に改修していただきたい。

ホール音響評価点:得点86点/100点満点中

※1642席のオープンステージコンサートホール仕様で評価。

§1 定在波」対策評価;得点50点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※スラント設置されていない「垂直平行側壁部分」と「平土間部分」の処理において、
    音響障害回避策」が3つ以上講じられていない場合は基礎配点50点満点x0.5=25点に減じます。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点16点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点16点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点4点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

算出に用いた値;

※障害発生エリア席数が収容人員の1/3以上 以下なので基礎点50点とした。

基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数0=50点

定在波障害顕著席数;

定在波「節」部席;0?席

定在波「腹」部席;0?席

定在波障害顕著席総計;0?席

初期反射対策評価

※障害発生エリア壁面材質がプラスターボード製なので素材基礎点20点とした。

基礎点B2=素材基礎点20点ー障害発生エリア数2=18点

初期反射障害1 壁面障害席 ;4席//3階16・17列7・46番席

初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;152席(72席/2階15・16列全席、80席/3階16・17列全席、)

重複カウント ;ー4席

音響障害席総計;152席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数2=18点

眺望不良席数;0席

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;4席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;152席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;156席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

メインホールの施設データ

ホール様式

 『扇形タイプ』プロセニアム型式3フロアー多目的ホール。

客席 

  収容人員 1428、1642、2002席可変 可動床、仮花道、

舞台設備 

プロセニアムアーチ 間口18.5m、奥行き17m、高さ9m、エプロンステージ;間口17,3m、奥行き9.3m、大迫り、ブドウ棚(すのこ)、可動プロセニアム、可動反響版、可動床オーケストラピット迫り(客席ワゴン収納システム)

各種・図面・備品リスト&料金表

メインホールがお得意のジャンル

プロレスリング以外にも、オーケストラコンサート、オペラ・バレエ公演以外にもミュージカル、Jポップ関係のコンサートや、往年のアイドル・エンタテイナーのワンマンショウ、ジャズコンサート、歌謡ショー、懐メロ歌手の歌謡ショー、現代演劇、伝統芸能、落語・演芸寄席、大道芸、パフォーマンス・ショー、ジャンルに拘らない幅広い演目でこのエリアの多くの人達に受けいれられている。またプロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体が利用している。

メインホールで催されるコンサート情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら。

催し広場

(公式サイト施設ガイドはこちら)

間口奥行き共に13mの正方形の平土間型イベントルーム。

136席のロールバックシステムを備えておりスタッキングチェアー14席併用で150名収容の1スロープのミニシアターになる。

剥き出しの天井構造体を上手く利用した手法

天井構造体、設備配管類むき出しの天井(最後部高さ約6.8m)にFl+約4.7mのの高さにガラリ(格子&ネット)で天井が表装?された流行のデザインで、ロールバック席最後列でも実質4.5mの天井高さが確保されており、天井からの煩わしい初期反響音は見事に抑え込まれており、客席フロアー上に配置された3列のシーリングライトバトン、2列のサイドライトバトン、オープンステージ上の豊富なバトン類(サスペンションライト、美術バトン)と共に音響拡散体として有効に働き、この手のホールとしては豊かな残響を創出している。
壁面処理
客席周辺両サイド低層部壁面は壁紙で表装した一般建築用の石膏ボードいわゆる宴会場仕様の壁面。
大向こう背後は調整室(映写室)になっておりガラス窓以外の部分は有孔音響ボードで表装されたプレーンな吸音壁になっている。

オープンステージ背後にはプラスターボード?製のアンギュレーション設置された反響板が固定されている。

ホール横断定在波は発生するが...


幅・奥行き共に13mの正方形空間なので周波数に換算して約26Hzの定在波が生じているが、ステージ背後のアンギュレーション壁面とロールバックスロープのおかげで、最悪のホール軸方向の定在波は免れている、同じくステージエリアでは天井高さ6.75m周波数約50Hzの高さ方向の定在波が生じているが、客席上ではスロープのおかげで障害は発生しない。

さらにホール横断方向の定在波については左右2分タイプのロールバック座席でホール側壁の通路配置とともに「定在波の節目」で生じるミステリースポットをうまく逃げる予定であったが...。

中途半端なシートアレンジ

下手8席、上手9席×8列=136席のロースバックシステムは音響的には非常に惜しい配置である。

現状の配置では中央9番席全列8席は「ミステリースポットライン」上に、両袖4番&16番席全列16席が「サプライズスポットライン」に"はまって"しまっている!

防災(消防法)上非常口をホール出入口扉を含め5か所設ける必要からこうなったのであろうが...。

総評

通常の、講演会、セミナーなどでの使用では、肉声の通りが良く、不要な色付け(反響・残響)のない明瞭な活舌が得られる良好なカンファレンスルームとなっている。

ルーム音響評価点:50点

※セミナー、講演会、などがメイン用途のためルーム音響評価を適用しました。

§1「定在波対策」評価点:25点/50点満点
  • ※ルーム低層部がプレーンな垂直壁で囲まれ、天井・床面を含む「並行した対抗面」が1対以上ある場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
§2「初期反射」対策評価点:25点/50点満点
  • ※ルーム低層部壁面3面以上がアンギュレーションやカーテン設備などが無い「プレーンな壁面」の場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。

催し広場の施設データ

  1. ホール様式 間口13.2m、奥行き約20m、床面積約169㎡平土間形式多目的ホール(イベントホール)天井高さ4.7m/表装ガラリ迄(音響実行高さ約6.75m!)
  2. 客席   収容人員 150名、136席ロールバックシステム+スタッキングチェアーX14席
  3. 舞台設備 各種バトン、サスライトX2、ホリ&ボーダーライト各1、美術バトンX2本(幕類除く)
  4. その他の設備 主催者室
各種・図面・備品リスト&料金表

その他の付属施設

音楽スタジオ(リハーサル室)

別棟タワー棟にリハーサル室としても利用出来る、床面積98㎡(約59畳)のスタジオ1、と床面積118㎡(約71畳)のスタジオ2と、同じく87㎡(約52.5畳)のスタジオ3、48㎡( 約29畳)スタジオ4の4つのスタジオ(リハーサル室)を設置している

デジタヌの豆知識

川口市

推計人口、584,825人/2017年10月1日。

川口ー東京 23分/310円/15.8km

川口ー(赤羽乗り換え)ー新宿 25分/220円/12.9km 

川口-大宮 20分/220円/14.5km

旧令制国武蔵国・足立郡に属していた、埼玉県と東京都の県境にある川口市はお隣の戸田市共々、嘗ては吉永小百合主演の1962年公開「キューポラのある町」で知られる「鋳物の町」であり、東北からの集団就職組「集団就職の若者」や「季節労働者」でにぎわい、川口オートレースや戸田ボートレースなどの公営レースやプロレス興行などの"エンタテーメント"の町として西の川崎・東の川口・戸田と称される程活気のある下町で「怖いお兄さん達」が闊歩する街でもあった。

近年は長期に亘る経済停滞の影響で「川口駅周辺の鋳物産業」が廃業や郊外移転などが相次ぎ、その跡地に20階建の高層アパート群が建ち並び、交通の便の良さから「東京のベッドタウン」として見直されてきている。

デジタヌの思い出

小生は、嘗て1991年~1999年までお隣戸田市の戸田公園駅前・ボートレース場の隣?に住まいしていたことがある。

当時開館したての川口リリアがあったはずだが、企業戦士?であった小生は、戸田公園駅と本社のある渋谷駅を行き来する毎日で川口リリアの存在すら気が付いていなかった!

小生の住まいしていた戸田公園駅前は1985年3月14日に上野まで延伸開業した東北新幹線に遅れること半年の9月30日に開業した埼京線によって発展?したエリアで、埼京線開業間もない当時は「東北なまり」が飛び交う「東北の玄関先」と言った雰囲気をもつ田舎町?であった。

裏手が戸田公園の東の端に位置する賃貸マンション周辺は、ボートレース開催日でも静かで、年に一度の「名物花火大会の夜」以外は夜間は人通りが少なく閑静な住宅地そのものであった。

「怖いお兄さん方」の存在を知ったのは戸田市を離れて数年後東京都民(と言っても東京のチベット?青梅市)を経験して、当時の大宮市・日進(現さいたま市北区日進町)に転居し埼玉県民に出戻り?してからであった。

当時、日々の「凌ぎ稼業」として「ガードマン」を務めていたが、川口市内のショッピングセンターや工作所の依頼仕事が多く、特にショッピングセンターの駐車場整理(案内)では何度も3ナンバーの「1.5BOXやオフロード車」にひき逃げされそうな目に会ったことを思い出す。

故郷「河内」も決してお上品な土地柄とは言えないが!、戸田公園駅前、西川口駅前、川口駅前当たりを結ぶ「トライアングルゾーン」は近畿で言えば「阪神尼崎駅前」首都圏では「川崎駅前」と並ぶ「怖いところ」であったことを思い出す。

参照欄

※1、音響拡散体については「第2章第1節 音響拡散処理と音響拡散体となる要素」をご参照ください。

※2、定在波に関する解説記事 『定在波』とはこちら

※3、第3章 藝術ホールデザインのセオリー はこちら

※4、その2、アダプタブルステージ についてはこちら。

※5、定在波で起こる音響障害『ミステリーゾーン』はこちら。

※6、YAMAHA公式サイト「天井を取り払って生まれた新たな音と響き、音響設計者が語るホール大改修への道」はこちら

※7 釣り天井(可変天井反響板)設置例。

 

公開:2017年10月18日
更新:2022年9月30日

投稿者:デジタヌ


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