福岡サンパレス・ホール/福岡市《ホール音響Navi》
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福岡市きっての収容人員2,316席を誇るコンサートホールとして、ポップス関係アーティストに人気が高いホール。
1981年施行の新耐震基準適用前の駆け込み?建造物なので、築後40年(2021年)を迎えようとしており、鉄筋コンクリート建造物の一般耐用年数30年を経過しており、永続使用が危ぶまれている施設であるが...。宿泊施設は別として、耐震補強と全面改修でまだまだ延命化が可能なホールである。
福岡サンパレスのあらまし
全国にある勤労者福祉施設の一つとして旧・雇用促進事業団が1981年に建設しその後福岡市に売却された施設でホテル・会議場などを備えた複合商業施設。
福岡市きっての収容人員2,316席を誇るコンサートホールとして、ポップス関係アーティストに人気が高いホール。
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但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。
大ホールの音響
フロアー構成
3スロープ3層の変形多角形のプロセニアム形式多目的ホール。
メインフロアー
最前列から4列までの平土間座席部分(オーケストラピット部)から続くハノ字段床座席配列
バルコニー
両翼から前方にはりだしたサイドテラス席をもつハノ字段床の2・3階バルコニー席をもつ。
各フロアー共、階下へのオーバーラップが少なくなるように、後部が階下のホワイエ頭上に張り出している。
変形6角形の平面形状を生かして全フロアー「ハノ字段床」になっているが。3階バルコニー15列以降の最深部の側壁は垂直・平行壁面になっておりこの部分では幅約26mに相当する約13Hzの可聴帯域外の定在波(低周波振動)(※1)が発生しているミステリーゾーン(※2)となっている。
壁面
メインフロアー壁面
サイドプロセニアムからつずくホール側壁は全面塗装仕上げのプレーンな木質パネルで表装されている。
大向う背後壁面
大向こう背後壁は全フロアー共に、プレーンな有効音響ボードで表装した垂直直線状の吸音(遮音)壁になっている。
最上層部壁面
ステージ回り
プロセニアムとステージ反響板
1981年の開館なので可動プロセニアムや密着型反響板などの仕掛け?はないが、上部プロセニアムの前面にはラウンドした凸型の大型コーナー反響板を備えて、ステージ反響板と急激な断面積変化が生じないように配慮されている。
表面をクリア塗装した合板で表装したありきたりの軽量タイプの吊り下げ反響板であるが、天板を大きくスラントさせて、1階大向こう背後壁面との平行をキャンセルしている。
サイドプロセニアムは客席壁面同様の塗装仕上げの合板製で表層され、常設脇花道の背後迄続いている。
天井
天井は同時期に建設された倉敷市民会館 (※ほーる音響Naviはこちら)同様にホール側壁5面から中央部に向かって迫る変型ドーム型であるが、全体はステージに向かって低くなって行き、断面は。反響板から大向こうに向かって続く片流れ天井になっている。
後部バルコニー席を覆う部分は変形6角形の波状反響板で一段低く作られており前面開口部が照明ガラリになっている。
ステージ構成
エプロンステージにもなる変型フロアー形状を生かした定在波のない理想的なオーケストラピットを備える。
総評
定在波障害の無い優れた基本フロアーデザインのホール
福岡シンフォニーホール(※ホール音響Naviはこちら)が意外と見掛け倒しの音響に終わっている?ので、収容人員から言っても優位な当施設を「ポップス・ライブ」だけに使用しているのは勿体ないような気がする。
今後の改修に期待!
1981年施行の新耐震基準適用前の駆け込み?建造物なので、築後40年(2021年)を迎えようとしており、鉄筋コンクリート建造物の一般耐用年数30年を経過しており、永続使用が危ぶまれている施設であるが...。
宿泊施設は別として、耐震補強と全面改修でまだまだ延命化が可能な施設である。
天井改修
天井高さがあまり重要視されていなかった時代の施設なので仕方ないといえば仕方無いが...。
折角の天井高さが生かされていない天井反響板デザインではある。
3層目の軒下にあたる2階バルコニーはともかく、最上層の上部に態々低くて、前下がりの天井反共板を設置しなくてもよかったように思う。
天井反共板はプラスターボード製の大型1体成型フラットシーリングに全面的に改修し、下面を反響板で覆った最新流行のむき出し照明ブリッジ(※3)を中央部に設置すれば3階バルコニー大向こう4列の低い天井高さも解消できるであろう。
同様に、「カルッツかわさき 」(※ホール音響Naviはこちら)等のように上部プロセニアム前面も多段反響板に改修すれば平土間部分床面との定在波駆逐も維持したうえで、後期残響創出も期待できる。
壁面改修
壁面もプラスターボード製のアンギュレーションを持たせた成形反響板とし、最上層部にコーナーガセット風の山形突起を多数配置すれば、前途した天井反共板と呼応して、上空から降り注ぐ豊かな後期残響が創出できるであろう。
前半側壁の構造が定かではないので、何とも言えないが、客席両サイド照明コラムのフードも撤去できれば、この部分も流行の剥き出しコラムにすれば、更に良質な音響効果が得られるであろう。
大向こう背後壁面
2・3階バルコニー部分の大向こう背後壁については、1列削除してでもアンギュレーションと、縦格子併用の2重壁面に改修し、プロセニアム本体壁との平行をキャンセルすれば、プロセニアム前面の大型コーナー反響板は撤去できる。
ステージ反響板改修
ステージ奥行きは20mあり、建屋外観から推測すれば、ステージ最大幅が約44m、ステージ高が5層分20m程度ありバックヤードの容積は十分確保されているようなので、現状の大きくスラントした天板に拘らず、各反響板間に隙間のある3分割程度の門型可変反響板とし、東京国際フォーラムホールC(※ホール音響Naviはこちら)を見習い音響チャンバーバランス法(※4)を用いたデザインに変更しても良さそうで、この場合は、エプロンステージに頼らなくても、ステージ面積が確保でき、総数2310+席の収容人員を確保したうえで、良好な音響空間が得られ、海外招聘オケの国内ツアーなどに重宝できるであろう。
平土間中央部分座席アレンジ改修
平土間中央部分の奇数列1・3列から各々1席を撤去して千鳥配列に改修すれば、眺望だけではなく音響面でも有利に働く!
但し、オーケストラコンサート等ではエプロンステージ使用のセミオープンステージ構成が使用されるであろうから、音響面での改善効果はあまり見込めないが...前途のステージ反響板改修とセットで改修すれば、2000人超の収容人員を確保したうえで、良好な音響空間が得られるであろう。
ホール音響評価点:得点85点/100点満点中
以下ステージ反響板設置、エプロンステージ使用2,192席のセミオープンコンサートホールとして評価。
§1 定在波」対策評価;得点48点/配点50点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
- ※客席側壁が ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは、 基礎点25点に減ずる。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点20点/配点25点
- ※木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
- ※障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点15点/配点20点
- ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価;得点2点/配点上限5点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
- ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。
算出に用いた値;
※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら。
定在波評価
※定在波障害席が収容人員の1/3以下なので基礎点50点とした。
基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数1=49点
定在波障害顕著席数;
定在波「節」部席;8席/3階後部15~18列28・29番席、
定在波「腹」部席;8席/1階平土間両袖座席15~18列16番&40番、
定在波障害顕著席総計;16席
初期反射対策評価
※障害発生エリア壁面材質が有効音響ボードなので素材基礎点25点とした。
基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数3=22点
初期反射障害1 壁面障害席 ;62席(18席/2階18列全席、44席/3階18列全席、)
初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;234席(28席/1階32列全席(車椅子6台ふくむ)、18席/2階18列全席、188席/3階15~18列全席、)
重複カウント ;ー62席
音響障害席総計;234席
客席配置評価
基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数3=17点
(眺望不良席数;36席/1階平土間中央部座席2~4列23番~34番/※エプロンステージ未使用時)
音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;16席
音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;62席
音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;234席
重複カウント ;ー78席
音響障害席総計;234席
算定式
評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数
大練習室の音響
天井は低いが定在波に配慮した変型させたフロアーデザインの立派な大練習室を備えている。
壁面は、部分的に有孔音響ボードで表装された遮音(吸音)構造を持ち平行面(定在波)が生じないようにアンギュレーションが施された木質パネルで表装され、同じくアンギュレーションを持たせた部分的に有孔音響ボードで表装された波状天井を持つ。
- 大練習室、リハーサル室、音楽スタジオ;最大幅約12.8mx最大奥行約18.3m、床面積約200㎡(約120.5畳)天井高さ;約3.4m 、Pタイル床、YAMAHAC7セミグランドを常備(有料)している。
ルーム音響評価点:95点
※会議室、宴会場、展示会場などがメイン用途のためルーム音響評価を適用しました。
§1「定在波対策」評価点:50点/50点満点
- ※ルーム低層部がプレーンな垂直壁で囲まれ、天井・床面を含む「並行した対抗面」が1対以上ある場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
§2「初期反射」対策評価点:45点/50点満点
- ※ルーム低層部壁面3面以上がアンギュレーションやカーテン設備などが無い「プレーンな壁面」の場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
福岡サンパレス・ホールの施設データ
- 所属施設/所有者 福岡サンパレス/福岡市
- 指定管理者/運営団体 株式会社福岡サンパレス/福岡市。
- 開館/竣工 1981年5月1日開館
大ホール
ホール様式
プロセニアム型式多目的ホール。客席最大幅;約27m 最大奥行き;約35m
客席仕様
3スロープ3層
収容人員2316席、(車椅子用スペースX6台分、含む、)Pタイル張り
内訳
- 1階席X1468席、(オーケストラピット部可動床可動席X124席、車椅子用スペースX6台分含む)
- 2階席X360席、
- 3階席X488席、
- 座席表はこちら。
舞台設備
- 舞台仕様 プロセニアム形式(常設脇花道付き)
- 有効幅約30m(ステージ最大幅約44m)x有効奥行き約20.5m有効面積約917㎡(約553畳)
- プロセニアムアーチ:間口約20m、高さ約12m、本舞台実用幅約m、本舞台実用面積;約410㎡(約247.5畳)
- 反響板設置時;プロセニアムアーチ:間口約20m、高さ約12m、最大奥行き約10.5m、実効面積;約168㎡(約101.5畳)
- 拡張舞台(エプロンステージ);可動床・可動客席(客席ユニット・ワゴン床下収納システム)オーケストラピット&エプロンステージ迫り;最大幅約100m
- 舞台機構1 ;奈落、大(道具)、小迫り、
大ホール付属専用施設
- 主催者控室、特別応接室、楽屋(洋室)X5室シャワー室(男女各々x2室)
- 利用料金表はこちら
福岡サンパレスのある福岡市とは
福岡市
推計人口、1,570,095人/2018年4月1日
福岡(博多駅)ー(福岡空港)ー(羽田空港)ー品川 2時間55分/42,060円/地下鉄-ANA-京急
福岡県の西部に位置し、福岡県の県庁所在地であり西日本では2番目、全国では5番目の人口(157万人、2018年4月現在)を擁する政令指定都市。
福岡サンパレスのロケーション
ところ 福岡市博多区築港本町2-1
国際港福岡港に面しており、福岡都市高速環状線の走る県道に面して西隣に福岡国際センター、東隣に福岡国際会議場と3軒並んで佇んでいる。
また県道を挟んで北側にはマリンメッセ福岡が、北西側にはベイサイドプレイス博多の定期便発着岸壁などの施設がある博多港発祥の地である港湾施設地帯でもある。
福岡サンパレス・ホールへのアクセス
鉄道・バスなどの公共交通
もよりの駅
福岡市地下鉄箱崎線 呉服町駅より徒歩約11分
福岡市地下鉄空港線 中洲川端駅より徒歩約13分
マイカー利用の場合
収容台数約173台の有料駐車場が準備されているので、マイカー利用も可能。
都市高速築港料金所前すぐ前。
呉服町ランプより約6分/1.2km
福岡サンパレス・ホールがお得意のジャンル、
九州最大規模の収容人員で、Jポップ関係の出演者に人気が高く往年のアイドルやエンタテイナーのワンマンショウ、ジャズコンサート、歌謡歌手の歌謡ショー、懐メロ歌手の歌謡ショー、有名タレントの座長ショー、トークショー、などジャンルに拘らないバラエティーに富んだ大衆イベントが行われ、ミュージカル、バレエなどのクラシックイベントも偶に開催される。
福岡サンパレス・ホールで催されるコンサート・イベントチケット情報
Official Website http://www.f-sunpalace.com/hall/
※参照覧
※1-1、定在波の悪影響に関する一般人向けnatuch音響さんの解説記事はこちら
※1-2、定在波に関するWikipediaの(技術者向け)解説はこちら。
※2、『ホールに潜む ミステリー ゾーン (スポット)とは?』はこちら。
※3、剥き出し天井についての詳述は『第10章第3節ホール構造体剥き出し天井』 をご参照ください。
※4、音響工学の基礎応用編ー「音響チャンバーバランス法とは?」はこちら
公開:2019年3月30日
更新:2022年9月30日
投稿者:デジタヌ
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