狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

世田谷区民会館 《ホール音響Navi》 

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1959年竣工日本のホール建築に1時代を築いた故前川國男先生の作品「世田谷区民会館」。

昭和初期まで練馬同様に"のどかな寒村"であった世田谷区の誇る文化施設。

昔しから有名人数多く住んできた静かな住宅街「世田谷区」の中心地に世田谷区庁舎と共に佇む、文化の町「世田谷」を代表する施設。

1959年竣工の「レトロでモダン」なホールは市民団体の活動の中心地でもある。

世田谷区民会館(1959年竣工)に隣接する第一庁舎、第二庁舎も前川國男氏による設計。

参※)当サイト関連記事 世田谷区民は「オーケス虎」がお嫌い!? はこちら。

世田谷区民会館のあらまし

Official Website https://www.setagaya.co.jp/kuminkaikan/setagaya/

神奈川県音楽堂の大成功であまり興味のない?ホール設計依頼が殺到していた時期の作品。旧京都会館に始まる多角堂シリーズになる前のオーソドックスな?長型ホール作品。この作品を最後に1966年の埼玉会館迄続いた"多角堂熱(※01)に侵される前"の初期の作品。

参※01)当サイト関連記事 第10章 多角堂の持つ魔性!の魅力 はこちら。

世田谷区民会館のロケーション

参※)当サイト関連記事 世田谷区《 タウン ヒストリア 》はこちら。

所在地  世田谷区世田谷4丁目21番27号

東急世田谷線世田谷駅と松陰神社前駅の北側。

第一・第二・第三・庁舎と並んで佇んでいる。北側には国士舘大学のキャンパスが拡がっており、若林公園が豊かな樹木を茂らせて、このあたりは区民の憩いの場と成っている。

世田谷区民会館へのアクセス

東急世田谷線 松陰神社前駅下車 徒歩5分
乗換駅 京王線 下高井戸駅
小田急線 豪徳寺駅
東急田園都市線 三軒茶屋駅

世田谷区民会館が得意のジャンル

プロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体が利用している。

"フィルム上映会"なども催されている。

世田谷区民会館の公演チケット情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら。

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

音響工学から眺めた 世田谷区民会館 のデザイン

公式施設ガイドはこちら

平土間から続く緩やかなメインフロアーと、大向うから両サイドに前方に伸びたサイドテラス席を持つプロセニアム型の多目的ホール。

所見

モダニズムの大家故前川國男先生の初期の作品

日本のコンサートホールに新しい1ページを開いた1954年の作品「神奈川県音楽堂」から5年後、神奈川県音楽堂とは打って変わって「モダニズム」バリバリの内装でデザインされている。

内装はもちろん打ち放しコンクリ―壁主体のアンギュレーションを持たせた壁でホール客席を囲み、「定在波」(※1)への配慮はあるが、初期反射波(※2)の抑制には配慮していない「巨大エコールーム」(※3)風のデザインに仕上がっている。

この時代は「戦後モダニズム建築」の興隆期でもあり、「音楽ホール設計概念」が確立していない時期なので、"モダニズム"周の漂う内装となったのだろう。

但しメインフロアー側壁はプレーンな木質プレートで構成されている。

所感

先生は、はっきり言って「音楽には興味のない音楽音痴」の方でおなじころの建築音響工学の草分け早稲田大学の大隈講堂を設計された佐藤武夫先生のようなセンスはお持ちではなかったようで、「デザイン的な面白さ」を追求なさった方のようだ。

はっきりいって「神奈川県音楽堂」や「東京文化会館」のように、東大音響研究室や、NHK放送研究所の横やり?がない限りは、「余韻」やぬくもりを感じさせる「木材」には「合理性を見出せない方」でもあられた。

歴史的価値もなくはないので

メインフロアー側壁を木質グルーブ材のアンギュレーション配置に、ホール後方まで含め2階客席周辺部(中層部)を、そしてサイドプロセニアムも同じく木質グルーブ材に換装して、大向う背後の吸音壁は縦格子+吸音材の遮音・吸音構造に大改装すれば、令和の御代にも通じるホールとなるだろう。

1981年新耐震基準施行前の建物

先生の代表作の1つとされる翌年1960年竣工の旧京都会館が閉館解体され、この時期の作品としては、1961年の東京文化会館大・小ホール、1962年の神奈川県立青少年センターホール位しか残っていないが...

ホールは「活き物!」

ホールは「活き物」であり"モニュメント・美術品では無い"ので、思い切って閉館・解体するか、東京文化会館のように「内装を含めて」全面的にリニューアルする必要があるだろう。

後年先生も「木壁」の重要性について実感された様で、この時期の作品には、「痛恨」はあっても「惜別」の思いは無かったであろう。

「懐古趣味」の「音痴」の大先生方が「保存運動」を起こす前に区の「大英断」が必要な時期にさしかかっているような気がするのだが...。

メインフロアー周辺に設えられた2階テラス席など今様のシューボックスホールに先んじた部分も有り、

東京文化会館の様にホール壁面を改修するだけでも、素晴らしい音楽ホールと成るだろう。

(※関連記事、京都会館「新築・更新に関する記事」はこちら

ホール音響評価:46点(暫定値)

§1、残響その1 「初期反射」対策評価点:17点/25点満点

§2,「定在波対策」評価点:15点/50点満点

  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、天井形状、天井高さ、等の要素をそれぞれ減点法で算出。

§3,客席配置への評価点:11点/20点満点

§4,残響その2「後期残響」への配慮評価点:3点/5点満点

  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で減点算出。

施設データ

  1. 施設名称/所有者 世田谷区民会館/世田谷区。

  2. 指定管理者/運営団体 (株)世田谷サービス公社/世田谷区。
  3. 開館   1959年竣工。
  4. ホール様式 『シューボックスタイプ』プロセニアム型式多目的ホール。
  5. 客席    1フロアー、収容人員 1,202名、2階テラス(桟敷席)、仮設本花道、
  6. 舞台設備  プロセニアムアーチ:ブドウ棚(すのこ)、脇花道、可動反響版、
  7. その他の設備 
  8. 付属施設  楽屋x3、ホワイエ、エントランスロビー、会議室、
  9. 施設利用(利用料金等)案内 詳しくはこちら。
  10. 設計  故前川國男先生。
  11. ゼネコン 大成建設
  12. 付属施設・その他 

各種図面
  1. 公式客席配置図・座席表はこちら
  1. 舞台備品・図面;舞台平面図はこちら
ホール付属(専用)施設 
  1. 個別ホール専用・備品利用料金表 はこちら

付属施設・その他 

付属(共用)施設 

  • 公式共用設備ガイド(※全施設配置図・フロアマップ)はこちら
  • ※リハーサル室、音楽実習室、音楽スタジオ、練習室x等、集会室。

施設利用料金

デジタヌの豆知識

世田谷区民会館これまでの歩み

1959年 故前川國男氏による設計で第一庁舎、第二庁舎及び隣接する世田谷区民会館が完成。

 

公開:2017年12月15日
更新:2022年9月30日

投稿者:デジタヌ


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