大阪国際交流センター《ホール音響Navi》
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知られざる銘ホール を備えたコンベンションセンター
建築音響デザイン面から眺めた大阪国際交流センター
※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。
大ホール
(公式施設ガイドはこちら。)
所見
本来国際会議場をメイン用途と設定したホールなので致し方ないが、せっかくの平土間中央部の可動客席が「千鳥配列」になっていない点、と客席両側壁際までびっしり詰め込んだ客席の2点は早急に改善していただきたい点であり減点させていただいたが、素晴らしい中規模ホールであることには違いなく、クラシックコンサートが少ないのは惜しまれる。
PAガンガン、スタンディングオーベーション連続のライブハウスにだけ利用するのはもったいない「知られざるプレミアムホール」である!
という訳で狸穴総研・音響研究工房選出『後世に伝えたい真の銘ホール50選』に選ばせていただく。
ホールデザイン上の特徴
1スロープ1フロアーの変形多角形ホール
ホール前半部最前列A列からM列までが平土間になっておりN列以降の後半部が緩やかなハノ字段床上に配置されたスロープでできているプロセニアム形式多目的ホール。
逆転発想の真の残響調整壁!
面白いというか、グッドアイデアなのが壁面に設けられた「可変開閉フラップ」型音響拡散体。
通常、インチキ残響可変装置(マジックボックス)(※4)の多くは、過大な反響を和らげるために、開閉フラップの背後は「吸音構造」となっている場合が殆どだが、当ホールでは逆に「開閉フラップ背後」はホール内壁・コンクリート打ち放し面となっている。
つまりこの仕掛けでデッドな空間が要求される「国際会議場」が適度な心地よい残響(※5)を備えたコンサートホールに化ける?わけである。
多様な客席配置
前半平土間部分は可動ワゴン席となっており会議場として使用する場合はレイアウトを変更できる。
(※図参照)
更にオーケストラピット(&エプロンステージ)部に当たるA列からD列と直後のE列までの客席ワゴンは床下収納となっている。
客室側壁
側壁は下層部と中上層部でピッチの異なる溝を持つグルーブ材を使用したピッチの異なる縦桟で表装したプレーンな木質パネルをアンギュレーションを持たせて表装されたホール部分とで構成され下層部と中上層部のあいだには装飾梁が設えられている。
セオリー通りの見事な定在波対策
セオリー(※1)に忠実に、壁面のアンギュレーション処理、後半スロープ部の「ハノ字段床」配列など基本に忠実な手堅いデザインで、定在波(※2)の発生を抑止し定在波による障害(※3)を回避している。
大向う背後壁面
ホール大向う背後壁面は中央部が奥まった凹面になっており有孔音響パネルで表装された吸音構造になっている。
この手の1スロープのホールにしては珍しく上層部にある映写・調整室&同時通訳ブースはホール内に飛び出していない。
プロセニアム
プロセニアム前面上縁前部には大型のコーナー反響版が設置されて、ステージ反響版と滑らかに連続するように一応配慮はされている。
天井
天井も木質パネルの反響版となており、全体的に会議場らしく「デッド」な空間に仕上っていて好感が持てる。
最新流行のホールと隙間なく繋がる反響版だが...
ホリゾント反響板は設えの固定式で、ステージ反響板サイド・及び上部反響板を設置しコンサートホール仕様とすると、全体で変形6角形となるように壁面構成されている。
但し、残念なのは、ホールと隙間なくつながるアンギュレーションを持たせた反響版が"奥まって"おり、平面的にはホール壁面と連続しているが縦断面が急変するタイプなので「多少癖のある洞窟音」となっている点である。
ホール音響評価点:得点89点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点50点/配点50点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
- ※客席側壁が ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは、 基礎点25点に減ずる。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点22点/配点25点
- ※木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
- ※障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点14点/配点20点
- ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価;得点3点/配点上限5点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
- ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。
算出に用いた値;
※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら。
定在波評価
※全壁面にアンギュレーション(屈曲)設置が施されているので基礎点50点とした。
基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数0=50点
定在波障害顕著席数;0?席
重複カウント ;ー0?席
定在波障害顕著席総計;0?席
初期反射対策評価
※全壁面材質が木質パネルのアンギュレーション設置なので素材基礎点25点とした。
基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数2=23点
初期反射障害1 壁面障害席 ;8席Q・R・W・Xの両端壁際席
初期反射障害2 天井高さ不足席;0席
重複カウント ;ー0席
音響障害席総計;8席
客席配置評価
基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数3=17点
眺望不良席数;156席/1階平土間中央部座席A~M列1番~6番
音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0?席
音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;8席
音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足席;0席
重複カウント ;ー0席
音響障害席総計;164席
算定式
評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数
小ホール
1スロープ1フロアーの変形ホール
平土間に近い緩やかなスロープを持つ1フロアーの2階吹き抜け相当の高い天井をもつ多目的会議室。
最前列か最後列まで「ハノ字」配列のスロープ席を配置している。
客室側壁
ホール内に構造材(柱)があるが表面は半円形プラスターボードで表装されている。
低層部客室周辺もアンギュレーションを付けた同じくプレスタ―ボード製の反響版で表装されている。
さらに側壁上層部もホール内部に突出した「スラント壁」付きのキャットウォーク(※)となっており最前部が照明ガラリになっている。
大向う背後壁面
大向う上層部は、定番デザインのホール内部に突出した。映写室兼同時通訳室になっている。
天井
天井はプレーンな一体型の大型反響板。
簡易プロセニアム&舞台設備
最前部が平土間になっており反響版兼用の木製シャッター付きの常設スクリーンが設えられているがポータブルステージなどは用意されていない。
天井部分はスラントされたコーナー反響版で、両サイドが「ハノ字」になっている簡易的なサイドプロセニアムが設置されている。
美術バトン類は用意されていない。
ルーム音響評価点:70点
※会議室、がメイン用途のためルーム音響評価を適用しました。
§1,「定在波対策」評価点:40点/50点満点
- ※ルーム低層部に1対以上の並行したプレーンな垂直壁がある場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
§2、「初期反射」対策評価点:30点/50点満点
- ※ルーム低層部3面以上がプレーンな垂直壁の場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
総評
お金のかかった?大ホールと比べれば、安普請でかなり見劣りの施設ではあるが、基本デザインがしっかりしており、アンサンブルのサロンコンサートやお稽古ごとの発表会などには使えそうである。
但し、C列以降の壁際1~3番&18~20番の全席と、I列以降の全席は、天井が迫っており、会議やセミナーには問題ないが、音楽鑑賞には適さないエリアとなっている!
大会議室 さくら(東・西)
1フロアーの平土間多目的イベントスペース
2室分離使用可能な、正真正銘の2階吹き抜けの高い天井を備えた平土間スペース。
中央部に大掛かりなサイド収納タイプのバルクヘッド(隔壁)設備があり、音響的にも完全に隔離した2つの"会議場"として使用できる。
客室側壁
客席側壁は「スリット加工」した木質音響プレートで表装した防音壁(吸音壁)となっている。
ホール前後壁は同じ側壁と同じプレート材をアンギュレーションを持たせて設置し、定在波対策としている。
天井
天井は部分的に音響有孔ボードを使用し、中央部分前後方向に室内照明器のフードが設えられている。
舞台設備
ポータブルステージ(演台)が準備され、4.6mX3.5mのスクリーンが常設、美術バトン、照明バトンが準備されている。
ルーム音響評価点:50点
※会議室、宴会場、などがメイン用途のためルーム音響評価を適用しました。
§1「定在波対策」評価点:25点/50点満点
- ※ルーム低層部に1対以上の並行したプレーンな垂直壁がある場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
§2「初期反射」対策評価点:25点/50点満点
- ※ルーム低層部3面以上がプレーンな垂直壁の場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
リハーサル室
床面積約93.9㎡(約56畳) フローリング床、
バレエ・ダンスレッスンバーを装備した壁面ミラー(カーテン付き)を備えている。
アップライトピアノを装備している。
但しバレエシートは用意されていないのでバレエ練習には確認をようする。
壁面は部分的に有孔音響ボードで表装された遮音(吸音)構造を持ち、天井は有孔音響石膏ボード
で表装されている。
ルーム音響評価点:40点
§1,「定在波対策」評価点:20点/50点満点
- ※ルーム低層部に1対以上の並行したプレーンな垂直壁がある場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
§2、「初期反射」対策評価点:20点/50点満点
- ※ルーム低層部3面以上がプレーンな垂直壁の場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
総評
この部屋は「つじつま合わせのおまけ?」的部屋で実際にはアンサンブルのリハぐらいにしか使用できないであろう。
大阪国際交流センターのあらまし
Official Website http://www.ih-osaka.or.jp/
同時通訳設備を備えた大・小ホール、会議室、ギャラリーなどを備えた大阪国際交流センターホテルを併設している大阪府下2番目のコンベンションセンター。
大阪国際交流センターのロケーション
ところ 大阪市天王寺区上本町8丁目2番6号
近鉄上本町駅から上町筋を南に500mほど辿った位置にある。西側は上汐公演で東側上町筋側は民間の商業ビルが立ち並び、しっかりガードされており、周辺には都市型高層住宅(マンション)が立ち並んでいる。
北側には市立生魂(いくたま)小学校が、通りを隔てて東側には市立夕陽ヶ丘中学校があり、当地にはもともと大阪外語大があった当地周辺は、商業地区というよりも、文教&住宅地区といった趣。
大阪国際交流センターへのアクセス
鉄道・バスなどの公共交通
近鉄 大阪上本町駅
大阪市営地下鉄谷町線・千日前線 谷町九丁目駅
大阪市営地下鉄谷町線 四天王寺前夕陽ヶ丘駅
大阪市営バス 上本町八丁目
マイカー利用の場合
※共用有料駐車設備が小さく周辺民間駐車施設も離れているので公共交通機関利用がおすすめ。
大阪国際交流センターのこれまでの歩み
箕面市に移転した大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)の跡地に、市民と在住外国人、留学生の国際交流やサポートのために設立された。
1987年9月21日 開館
2014年2月14日 - 「大阪国際交流センターの施設賃貸借による事業運営」事業者募集(ホテル棟も含む)に伴い、都ホテル運営による「大阪国際交流センターホテル」閉鎖。
2014年4月1日 - コンベンションリンケージにより、「大阪カンファレンスセンター」として運営開始
2014年5月30日 - レストラン部分が、「ビュッフェレストラン ラッフィナート」として、プレオープン。
2014年6月1日 - レストラン部分が、「ビュッフェレストラン ラッフィナート」として、グランドオープン。
2014年7月29日 - ホテル部分が「大阪国際交流センターホテル(大阪カンファレンスセンター&ホテル)」として、リニューアルオープン。
大阪国際交流センターがお得意のジャンル
大ホール
通常は各種団体の会議、総会、市民団体の決起集会などに用いられオーケストラコンサートも団体申し込みがあれば開催され、ふだんはミュージカル、Jポップ関係のライブコンサートや、往年のアイドル・エンタテイナーのワンマンショウ、落語・演芸寄席、トークショー、パフォーマンス・ショーなどの色物などジャンルに拘らないバラエティーに富んだイベントが行われている。
小ホール
通常は各種団体の会議、総会、セミナー、講演会、市民団体・政治団体の決起集会、お稽古事の発表会などに用いられ、トークショー、などジャンルに拘らないバラエティーに富んだイベントが行われている。
大阪国際交流センターで催されるコンサート・イベントチケット情報
大阪国際交流センターの施設データ
- 所属施設/所有者 大阪国際交流センター/大阪市。
- 指定管理者/運営団体 (公財)大阪国際交流センター/大阪市。
- 開館/竣工 1987年9月21日
- 休館日:年末年始(12月29日~1月3日) ※設備点検・補修その他の事象で臨時休館あり。
大ホール
ホール様式
公民館様式・平土間(一部スロープ)プロセニアム型式舞台付き・平土間多目的会議場、
客席仕様
1スロープ1フロアー
収容人員1006席、タイルカーペット、残響可変装置。
内訳
- 前半平土間部分可動席434席(オーケストラピット部可動床可動席X130席、含む)、後半スロープ部固定席X572席
舞台設備
- 舞台仕様 プロセニアム形式
- 有効幅約16m(ステージ最大幅約34m)x有効奥行き約10.5m(最大奥行き約12.9m)有効面積約307㎡(約185畳)2面舞台相当、天井最高部高さ;高さStL+約22.8ⅿ
- プロセニアムアーチ:間口約16m、高さ約8.1m、実効面積;約168㎡(約101畳)ステージ高さ;FL+約95cm、ブドウ棚(すのこ)高さStL+約18.5m、バトン類高さStL+約16.5m、サスペンションライト(照明ブリッジ);3+2本、美術バトン;11本(幕装備除く),ライトタワーx4
- 反響板設置時;プロセニアムアーチ:間口約16m、高さ約8.1m、最大奥行き約10.5m、実効面積;約166.4㎡(約100畳)ステージ高さ;FL+約95cm、
- 拡張舞台(エプロンステージ);可動床・可動客席(客席ユニット・ワゴン床下収納システム)オーケストラピット&エプロンステージ迫り;最大幅約20.2m最大奥行約4.5m有効面積約76㎡;約45.5畳、演奏面レベル設定;Fl ー約1.2m~+0.95m(Stl)、
各種・図面・備品リスト&料金表
- 座席表(客席配置図)はこちら
- 楽屋、などのフロアー配置図 はこちら;
- 施設別図面はこちら;反響板設置舞台平面図、反響板設置舞台断面図、
大ホール付属専用施設
- 控室、特別応接室、、楽屋(洋室)X7(内ユニットバス付2室)、リハーサル室、 シャワー室(男女各々x1室),
- ●6カ国語対応同時通訳設備 ●同時通訳ブース (固定6)
小ホール
ホール様式
講堂様式、平土間(一部スロープ)プロセニアム型式舞台付き・平土間多目的会議場
客席仕様
1スロープ1フロアー
収容人員172(Max200)席、Pタイル張り、
各種・図面・備品リスト&料金表
舞台設備
吊物バトン (固定)
小ホール付属専用施設
- 3カ国語対応同時通訳設備 同時通訳ブース (調整室と共用),調整室 (音響・照明・映写) スポットライト、
さくら(大会議室)
収容人員440席/シアター形式一体使用時
2分割使用可多目的イベントルーム
- ホール平面図はこちら/スクール配列21列210席、
- ホール平面図はこちら/スクール配列21列306席、
- ホール平面図はこちら/パーティー配列、
- ホール平面図はこちら/宴会(結婚披露宴)、
- 基本仕様/一室使用 幅約13.54mX奥行き約33.8m延べ床面積約510㎡(約308畳)最高部天井高さ約7m
- 分割使用時 東室;幅約13.54ⅿX奥行き約16ⅿ、有効面積約245㎡(約148畳)
- 分割使用時 西室;幅約13.54ⅿX奥行き約116ⅿ、有効面積約245㎡(約148畳)
舞台設備
吊下げ式スクリーン ビデオプロジェクター
美術・照明バトン (各3台)
専用施設
3カ国語対応同時通訳設備 同時通訳ブース
調整室 (音響・照明・映写) スポットライト
付属施設・その他
館内付属施設
施設利用ガイド
- 全館利用料金案内 利用料金表 はこちらへ
- 全館・設備・備品(ピアノ等の貸し出し楽器含む)利用料金案内 利用料金表 はこちらへ。
※参照覧
※1、『藝術ホールデザインの セオリー その5 ホール設計における禁じ手・御法度集』はこちら
※2-1、定在波の悪影響に関する一般人向けnatuch音響さんの解説記事はこちら
※2-2、定在波に関するWikipediaの(技術者向け)解説はこちら。
※3、関連記事『ホールに潜む ミステリー ゾーン (スポット)とは?』はこちら。
※4、現代の3大迷発明!「珍妙からくり(残響調整装置、可変段床設備、高さ可変吊り天井)」に関する記事はこちら。
※5、直接音、初期反射音、残響音についての(株)エー・アール・アイさんの解説はこちら。
公開:2018年7月 9日
更新:2022年9月30日
投稿者:デジタヌ
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