タヌキがゆく

《 公共ホール 計画 の手引き 》 藝術ホールデザインの 極意・セオリーとは その5 ホール設計における禁じ手・御法度集

禁則1,ドーム天井は禁物!

構造的(強度的)に有利なドーム型天井は使いたくても使うな!

パラボラ効果でドーム中央に音が集中し悲惨な結果を招きやすい。

大失敗の悲惨な例

草津音楽の森国際コンサートホール/(※ホールナビはこちら)

「舟底型」ないしは「半割玉子」形状で

構造面(予算面)で使わざるを得ない場合は、「舟底型」ないしは「半割玉子」形状で頂点をホール後方にoffsetすべし。

成功例

舟形天井 みやまコンセール/ 霧島国際音楽ホール(※ホールナビはこちら)

軽井沢大賀ホール/(※ホールナビはこちら)

逆ドーム天井反響板は気休め程度の効果しかない

例え、逆ドーム(凸面)天井反響版を用いてもドーム付け根に峡角コーナーが生じ、重低音の籠もり音の原因となりやすい。
水戸芸術館・コンサートホールATMのように大掛かりな仕掛け(ドーム昇降装置)を用いても問題は残る。
但し、思い切って天井を「高~く」し、カブトガニ?風の「分割セグメント天井構造」にする事で効をそうしている場合もある。

好例;

ミューザ川崎シンフォニーホール

禁則2, 壁際に席を作るな!ー ホール内壁沿いは通路に ー

壁際は神(お客様)の通る道、「音の通り道」では無い。

最低でも2席分は壁から離して配置せよ

どんなによくできた木質壁でも壁の間際「壁際族?」は「窓際族」以下!反響で反響乱!になる?

※但しテラス席などで背後にある壁はせいぜい通路分(1席=1列程度)ほど離せば、側方壁ほどの不快感は生じない。

通路を広く取った最初の例

 1982年竣工当時の ザ・シンフォニーホール(※ホールナビはこちら)の1階平土間部分。

禁則4、長形ホールの4隅には客席を配置するな!

(4隅)は面取りでコーナーを落としても基本「直角」なのでホーン効果が起きやすく、定在波を集めてしまう!

特に、100Hz前後の低音で顕著に現れ、低音がこもりやすい。!

こんな場所に客席を設けるのは、「非常識極まり無い」としか言いようが無い!

安普請の見かけ倒しホールの「非常識極まり無い」悪例?

1992年竣工 愛知県芸術劇場(※ホールナビはこちら)

禁則5、内壁面に硬質材は禁物?

内壁面に、打放しコンクリート(及び表面加工コンクリート)、石材、陶器(タイル)、は禁物?で幾ら形状を工夫しても、「音圧反射率の壁」は覆い隠せない!

反響だらけのワンワンホールになってしまう!(※第4回音響工学基礎。参照)

但し、ごくまれに成功例もある。

現代の奇才!新居千秋氏の「3連作」

2011年10月竣工の由利本荘市「カダーレ」ホールNaviはこちら。

2013年3月竣工八丈町多目的ホール「おじゃれ」のホールNaviはこちら。

2013年5月竣工新潟市「秋葉区文化会館」ホールNaviはこちら。

内壁のタイル張りは危険でもある

特にタイル張りは危険でもあり、2018年の北大阪震災では、実際に高槻芸術劇場で「内壁タイル剥落」が発生し、休館に追い込まれている。

代表的愚例!

1968年竣工 オリックス劇場(、2011年改修竣工)

1987年竣工 パルテノン多摩大ホール(※ホールナビはこちら

1988年開館 レグザムホール・大ホール(※ホールナビはこちら)

これはほんの一例で、この当時1960年代からの第1次市民会館建設ブームで作られたホールでは、施主の間違った認識(ワンワンカラオケ指向)で石材使用が流行し、馬鹿げた内壁を用いたホールが多い。

禁則6、狭角コーナーは作るな

両隣の内壁どおし、「大向う壁面」と天井等全ての箇所に直角以下の狭角コーナーは作るな!

逆ホーン効果で音(特に重低音の定在波)が集中しやすく成る。

※但し、客席の遥か上空!客席が無い所は関係ない!東京文化会館小ホールの例。(※ホールナビはこちら

※一般のお宅(家屋)でも定在波は発生しているので、壁面近傍効果(増幅効果)はオーディオ装置で音楽を流しながら部屋中をうろうろすれば、部屋の隅で低音が強調されていることが確認できる。

禁則7、正多角堂は奇才以外の「凡人は手を出すな!」

法隆寺夢殿に代表される、正多角型(偶数角形)は憧れても、計画するな!

モダニズム建築の大家、「正多角形・フェチ」の権化?奇才・故前川國男教祖が...。

  • 1960年3月31日に旧京都会館第1ホール
  • 翌年1961年に東京文化会館・大ホール&小ホール、
  • 翌々年1962年に神奈川県立青少年センター

を竣工させていらい、1964年には同じルコルビッジェ門下の先輩である晩年の故山田守氏が夢殿をモチーフに「日本武道館」を完成させるにいたり全国に「多角形ホール病」が蔓延してしまい現在に至っているが。

正多角形は基本的に芸術ホールとしては適さない形状で有る!

「偶数・正多角形ホール」は対抗する並行面が多く、基本的にホールとしては適さない形状で有る!

故前川國男・教祖も1964年開館の 弘前市民会館からは音響的に面倒で手間暇かかる「正多角堂」デザインを捨て、オーソドックスな「変形扇形ホール」に回帰している。

特に1982年開館の「ザ・シンフォニーホール」(※ホール音響ナビはこちら)以来、残響の概念が広まり、スケールモデル実験やコンピュータによるシュミレーション技術が発達・定着してからは、1983年竣工 熊本県立劇場(※ホール音響ナビはこちら)、最晩年の1985年 石垣市民会館(※ホール音響ナビはこちら)に至るまで「正多角堂」には手を染めていない。

※、事実、前川國男教祖の代表作の1つとされる旧京都会館第1ホール(ロームシアター京都)は、京都市が

「建物の形状自体がホールとしての機能を低下させており、改修ではデザイン性・機能性とも要求を満たせないため、委員会の意見を取り入れた上で改築を行う」<当時の広報より引用>

以上の理由で2012年3月限りで閉鎖されその後解体され、 2016年1月10日に香山壽夫建築研究所の設計によるオーソドックスで手堅いデザインの4フロアー4層バルコニーの「モダン芝居小屋」に近い意匠の「ロームシアター」が新装開場した。

彼(前川國男)の愛弟子故丹下健三氏も師匠の教訓(正多角堂には手を染めるな!)を守りオーソドックスな「変形・扇形ホール」しかデザインしていない。

さらにはもう一人の巨匠故菊竹 清訓氏(※注1もアバンギャルドな作品群をデザインした奇才・偉人では有るが、同胞の故黒川紀章氏共々"正多角形には手を染めていない!"

菊竹 清訓氏の代表作の1つ1969年竣工旧久留米市民会館(2017年現在解体中)にしても,後述するCydic と Convexを組み合わせた平面形状を用い、対抗する壁面を極力少なくした形状であり、更には客席スロープ形状や天井反響板にも留意しホール内部から並行面を極力排除したデザインになっている。

以下詳述は

多角堂フェチのデザイナーに警鐘を発する!「夢殿」は夢見ても設計するな!に続く

音響支援システム や 残響調整装置 などの「カラクリ」に頼らず、「丁寧な設えのオーソドックス」なホールを目指せ!

1)カラクリに頼らず、正攻法で勝負せよ!

カラクリの代表格マジックボックス(残響調整装置)

カラクリ(※8)の代表格マジックボックス;残響調整装置が流行っている様だが、ホール常駐の「電気・設備技師」が機能を熟知していない場合が多く、まさしく「宝の持ち腐れ」設備の代表格!でもある。

しかも、(当たり前だが)ホール壁面上層部に設置されている場合が多く、1・2階席を含め、観客席の音響改善(壁面反射の悪影響改善)には繋がっていない場合が殆ど。

但し演奏者へのフィードバック(エコー?)には成って要るようではある。(ナルシスト御用達ホールの例

規模を抑えてでもハイテクに頼らず「セオリーに忠実な丁寧な設え」のホールが、観劇・コンサート共に良い結果を出している場合が多い。

アダプタブルステージとカラクリ天井

マルチ分割アダプタブルステージ

共に、不要不急設備の代表格で特に「マルチ分割アダプタブルステージ」は組み換え費用(組み換え時間料金)が出演者の負担になっている場合がほとんどで、ロングラン公演ができる有名劇団は別として、「1日公演」の小劇団やコンサートでは利用される機会が無く「東京芸術劇場・中ホール」のように28分割のアダプタブルステージの利用が皆無に近く改修時に「4分割」に集約された施設もある。

カラクリ天井

これも不要不急施設の代表格で、「大掛かりな仕掛け」なのでマルチ分割アダプタブルステージ同様に「組み換えに時間」がかかり、めったに利用されていないケースが殆ど。

部分貸し(空席があっても)でも音響の良いホール

このようなカラクリに頼らなくても、単に「フロアー出入口」や「階段」を締め切って、部分貸し出ししているホールの方が、利用者からは好評を得ている。

好例

札幌コンサートホール Kitara (公式ガイドの料金表はこちら

2)音響支援システムの盲点は「周波数特性」にある!

大阪城ホールに代表されるようなアリーナ(巨大体育館)にある音響支援システムは、前前回記した様な不都合(※第4回指向性の項目)が有り、

クラシックの演奏会には不向きとしか言いようがない。

※参照覧

※1、関連記事「音の良いホールの条件」はこちら。

※2-1、定在波の悪影響に関する一般人向けnatuch音響さんの解説記事はこちら

※2-2、定在波に関するWikipediaの(技術者向け)解説はこちら。

※3、直接音、初期反射音、残響音についての(株)エー・アール・アイさんの解説はこちら。

※4、関連記事『ホール酔い 現象 とは?』はこちら

※5、鎧張り(下見板張り)についてのWikipediaの解説はこちら。

※6、アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての建材メーカーの解説記事はこちら

※7、格天井 についてのコトバンクの解説記事はこちら

※8、現代の3大迷発明!「珍妙からくり(残響調整装置、可変段床設備、可変吊り天井)」に関する記事はこちら。

※9、関連記事『都市伝説・良いホールの条件"残響2秒以上"は本当か?』はこちら

現代の巨匠菊竹 清訓(1928年4月1日 - 2011年12月26日)氏の作品について

福岡県久留米市し出身1928年生まれの故菊竹 清訓氏は6才年下の黒川 紀章と共に「建築と都市の新陳代謝、循環更新システムメタボリズム」を提唱し、1905年生まれのモダニズム建築の巨匠故前川国男氏とは違ったスタンスで創作し続けたデザイナーである。

一過性のはかない芸術作品?

彼の唱えたメタボリズムを象徴する作品群は、

  • 1970年;万国博覧会/エキスポタワー、2003年3月解体撤去
  • 1975年; 沖縄海洋博/、アクアポリス 閉会後解体
  • 1985年;筑波科学博のパビリオンデザイン、閉会後解体
  • 1988年 なら・シルクロード博覧会/奈良公園館(2004年シルクロード交流館としてリニューアルオープン2014年閉館)
  • 2005年 日本国際博覧会(愛地球博)マスタープラン

参加に象徴されるように、

謂わば「建築物はその時々の時代の要求に\即したコンテンポラリーな現代芸術作品である!」

と言うような「哲学的観念論」から生まれている様に思う。

『建築物も人と同じ生き物、時代と共に歩む「儚い命」で有って良い』

と言った所で、「死して何々を残す」と言った普通の建築家ではなく、舞台・演劇演出家に近い「時空芸術家」であった様に思う。

従って最初から必要最小限の強度で、長期の使用に耐えるような耐用年数はあまり考慮されておらず、21世紀まで生き延びている作品は少ない、特に1981年の新耐震基準適用以前に生まれた作品は、消えつつ有る。

一流の構造設計(構造計算)屋さんでもあった

彼の育った時代には、現在のような分業化(デザイン&構造設計(計算))がされておらず、彼は1流の構造屋サンでもあった。

事実1995年に早稲田大学より「軸力ドームの理論とデザイン」と言う論文で工学博士号を取得している。

だから、ソフィテル東京

  • 着工 1990年11月
  • 竣工 1994年6月
  • 開業 1994年6月16日
  • 解体 2008年5月

東京テアトルビル

  • 竣工1987年1月31日
  • 解体着手2014年8月25日

のようにたった18年間や27年の短い命でも、彼の存命中に解体されようが全く拘りが無かったのであろう、

むしろ2003年3月完全撤去されるまでエキスポタワー、を眺めるのはつらかったであろう!

だからこそ晩年の2005年愛地球博のマスタープランにも喜んで参加したのであろうと確信する。

晩年に至までメタボリズムを貫いた人であったように思う。

公開:2017年10月26日
更新:2018年10月12日

投稿者:デジタヌ

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