狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

キッセイ文化ホール/長野県松本文化会館 《ホール音響Navi》

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セイジ・オザワ松本フェスティバルで一躍全国区に躍り出た巨大国際会議場?

脇花道まで及ぶプロセニアムは石造り(コンクリート)でそこから続くホール両側壁は木質パネルで表装され、壁面の要所要所に配した装飾柱の間の最上層部に可変フラップを配置した大掛かりな吸音装置があるいわゆる"からくり小屋?"だが...。

コンサートでは全閉状態でもトランジェントが良すぎる?きらいがある。

キッセイ文化ホールのあらまし

Official Website http://www.matsubun.jp/

大・中2つのホールとリハーサル室、練習室、国際会議室、展示室、会議室、研修室、和室、ブッフェラウンジ等を備えたコンベンションセンター。

キッセイ文化ホールのロケーション

ところ 松本市大字水汲69-2

松本市の面玄関JR松本駅からはかなり離れている、いわば町外れ信州大学のある文教地区の女鳥羽川と県道282号線に挟まれた一角に「松本市総合体育館」と並んで建っている「県立の施設」。

1983年の長野県県民文化会館開館に遅れること9年の1992年7月18日に開館した、2004年開館の「まつもと市民芸術館」(※ホールナビはこちら)などからはかなり離れた町外れに当たる。

キッセイ文化ホールへのアクセス

最寄り駅 

東日本旅客鉄道、アルピコ交通松本駅よりアルピコ交通バスで20分。
長野自動車道松本ICより車で30分。

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

(公式ガイドページはこちら)

国際会議を前提とした施設群で通常の「藝術ホール」とはかなり異なった施設群である。

キッセイ文化ホールの施設データ

  1. 所属施設/所有者 長野県松本文化会館/長野県。
  2. 指定管理者/運営団体 (財)長野県文化振興事業団/長野県。
  3. 開館    1992年7月18日

付属施設・その他 

館内付属施設 

  • 館内施設;リハーサル室、国際会議室、会議室(中)x2、会議室(小)x2、喫茶・食堂

付属施設配置・見取り図

全館共用各種装備

施設利用手引き

建築音響工学面から眺めた大ホール

(公式施設ガイドはこちら

全フロアー扇形配置座席を持つ2スロープ2層のプロセニアム形式多目的ホール。

メインフロアー

最前列1列~6列までのオーケストラピット・可動席部分が平土間になっており7列目から18列目までが緩やかな扇形段床上に配置された前半部と、中央通路を挟んでやや急な後半部分で構成され、フロアー平面形状は8列目までが台形に広がった扇形で、以降最後列30列迄が方形となっている。

2階バルコニー

扇形段床を基本とし、両翼の14席3列が前方にせり出した形状の変形バルコニーとなっている。

プロセニアム

プロセニアム上部前縁には大きくラウンドした凸型の木製のコーナー反響板が設えられており後述するステージ天井

反響板と滑らかに連なるように配慮されている。

脇花道まで及ぶプロセニアムは壁紙で表装された石膏ボードで表装され、3か所の大きな開口部にはPA用のスピーカーがセットされている。

ステージ反響板

ステージ反響板はプロセニアムと密着する流行のタイプで、側面、背後ホリゾンと反響板にはアンギュレーション、上部反響板は、波状成型されており、対抗する、1階大向こう背後壁と平行にならないように配慮されている。

ホール側壁

中央通路脇のホール中央扉付近から中央通路Fl+2、2m程度のたかさ、脇花道に沿って後半上部を覆うように壁面が伸びており、8列目から11列目辺りで平行するようにカットされ、開口部は照明コラムに利用されている。

この脇花道上部から続くホール両側壁は木質パネルで表装され、ホール後半部分の平行部分では、1・2階ともにアンギュレーションが施され、定在波(※1)の発生を抑止している。

さらに2階側壁低層部分上部には装飾梁がめぐらされ、針状部の上層部には8本の「装飾柱」を配しその間に可変フラップ扉を持つ大掛かりな残響可変装置(※2、マジックボックス;吸音壁)を 配してある。

通常この手のマジックボックスは「観客の入り」具合に応じて「バタバタ」させる物であるが、このホールではコンサートホールとして使用する場合は「全閉」と成る!

これは本来の使用目的が国際会議場であり、「音の通り」と「反響のすくなさ」すなわち客席聴講者の「質問」の明晰さを求めた結果であろう。

最上層部は、空調用のガラリーとなっている。

大向こう背後壁面

1F大向こう背後壁面は側壁と同様の設えで、2階バルコニー大向こう背後壁面の上層部は有孔音響ボードで表装された吸音壁と成っている。

天井反響板

プラスターボード製(※3)の大型反響板で2階大向こう上部から、ホール中央最後部に向かって4段階に上がり、同様にプロセニアム上部前縁に設けられたから3段階に高くなるデザインである。

総評

多目的ホールとして申し分ない音響であり、狸穴総研・音響研究室・建築音響研究調査班・厳選『後世に伝えたい・真の銘ホール50選』に選ばせていただく。

ホール音響評価点:得点96点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点49点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※客席側壁が ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは 基礎点25点に減ずる。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点25点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点17点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点5点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

算出に用いた値;

※音響評価ポイント詳細は「"ホール音響ナビ"に用いた用いた評価法とは」をご参照ください。

定在波評価

※客席周囲に完全平行する部分が1/3以下なので基礎点50点とした。

基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数1=49点

定在波障害顕著席数

定在波「節」部席;2席席/1階平土間中央部座席16列29・30番席

定在波「腹」部席;0席

重複カウント ;ー0席

定在波障害顕著席総計;2席

初期反射対策評価

※壁面材質が木質アンギュレーションなので素材基礎点25点とした。

基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数0=25点

初期反射障害1 壁面障害席 ;0?席

初期反射障害2 天井高さ不足席;0?席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;0席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数2=18点

眺望不良席数;72席/1階平土間中央部座席1~6列24番~35番

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;2席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;0?席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足席;0?席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;74席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

大ホールの施設データ
  1. ホール様式 、プロセニアム型式多目的ホール。
  2. 客席   2フロアー 収容人員 

    固定席 2,000 席
    1階席 1,354 席(オケピット使用時1,168 席)
    2階席 646 席

舞台設備
  • 舞台仕様 プロセニアム形式
  • 有効幅約29.1m(ステージ最大幅約51.67m)x有効奥行き約21.8m(最大奥行き約24.1m)有効面積約約634㎡(約283畳)
  • プロセニアムアーチ:間口約18m、高さ約10m、サスペンションライト(照明ブリッジ);4本、電動バトン;39本(幕装備含む)、
  • 拡張舞台(エプロンステージ);可動床・可動客席(客席ユニット・ワゴン床下収納システム)オーケストラピット&エプロンステージ迫り;最大幅約21m最大奥行約7.55m有効面積約119㎡(約71.5畳)
  • 舞台機構1 ;奈落、小迫り、脇花道、音響反射板、
  • その他の設備、楽屋x9、同時通訳設備、残響可変装置(可変フラップ蓋付き吸音壁)
各種・図面・備品リスト&料金表

キッセイ文化ホールがお得意のジャンル

毎年8月に開催されるSeiji Ozawa Matsumoto Fesutivalのメイン会場と成っている。

オーケストラコンサート、オペラ・バレエ公演以外にも、ミュージカル、Jポップ関係のコンサートや、往年のアイドル・エンタテイナーのワンマンショウ、ジャズコンサート、歌謡ショー、懐メロ歌手の歌謡ショー、有名タレントの座長ショー、現代演劇、伝統芸能、落語・演芸寄席、大道芸、パフォーマンス・ショー等ジャンルに拘らない幅広い演目でこのエリアの多くの人達に受けいれられている。

またプロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体が利用している。

大ホールで催されるコンサート情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら。

建築音響工学面から眺めた中ホール

(公式施設ガイドはこちら)

3階抜き抜けの高い天井と間口23.4m 奥行き約40m(約933㎡:約563畳)の広大な平土間多目的イベントルーム。

ホールというよりは「展示場・講堂」に近い造りのマルチスペース。

308 席のロールバックシステムとパイプ椅子を並べ746 席の中ホールとして使用出来る。

平土間多目的スペース

奥行き約10mのホール全幅に渡るステージを持つ。

スゥイング式の可動プロセニアム(反響板)とバトン設備でプロセニアムホールとしても利用出来る平土間多目的ホール。

2階天井に当たる部分は3階照明設備用ガラリ下面と同一面の「簀の子天井」と成っている。

ホール周辺壁は家庭用と同じ新建材(石膏ボード)で表装されており「2階相当部分」の壁面には要所要所に「音響ネット」で表装された吸音壁部分がある。

中ホールの施設データ

  1. ホール様式 平土間型式多目的イベントホール。間口23.4m 奥行き約40m(約933㎡)
  2. 客席   1フロアー 移動席746 席(うち電動可動椅子308 席)
  3. 舞台設備 オープンステージ形式間口:23.4m 奥行:10.8m 高さ:、ブドウ棚(すのこ)、
  4. その他の設備 楽屋x2、リハーサルルーム、
中ホールのお得意のジャンル

主にセミナー、講演会、市民団体の集会、お稽古事の発表会などに用いられ、ジャズコンサート、小編成バンド、のコンサートや落語・演芸寄席、大道芸、パフォーマンスショーなどジャンルに拘らないバラエティーに富んだ催しが行われている。

中ホールで催されるコンサート情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら。

その他の施設

国際会議室

公式施設ガイドはこちら)

同時通訳施設を備えた平土間イベントスペース。最大248席の小ホールとしても使用出来る。

2階吹き抜けの三角天井の和風仕立ての立派な「多目的イベントルーム」

リハーサル室

200㎡(約121畳)の天井の高い本格的な大型のリハーサル室を備える。

豆知識

キッセイ文化ホールのある松本市とは

推計人口 242,065人/2017年10月1日現在。

JR松本駅-新宿駅 ¥6,896-/2時間55分/225.1km/特急あずさ。

JR松本駅-名古屋 ¥6,030-/2時間3分/188.1km/特急ワイドビューしなの

松本-長野 ¥1,140-/1時間10分/62.7kmkm/普通。

2つの山脈の間にある松本盆地の中央部、標高約600mの複合扇状地の上にある地方都市。

「文化香るアルプスの城下町」、「三ガク都(楽都、岳都、学都の三つのガク都。音楽、山岳、学問で有名なため)」などで売り出している観光都市。

※参照覧

※1-1、定在波の悪影響に関する一般人向けnatuch音響さんの解説記事はこちら

※1-2、定在波に関するWikipediaの(技術者向け)解説はこちら。

※2、現代の3大迷発明!「珍妙からくり(残響調整装置、可変段床設備、可変吊り天井)」に関する記事はこちら。

※3、アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての建材メーカーの解説記事はこちら

 

公開:2017年9月10日
更新:2022年9月30日

投稿者:デジタヌ


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