テアトロ・ジーリオ・ショウワ /昭和音楽大学《ホール音響Navi》
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Official Website http://www.tosei-showa-music.ac.jp/guide/campus/giglio.html
テアトロ・ジーリオ・ショウワのあらまし
ー 日本 のオペラハウスガイドシリーズ 第7回 ー
昭和音楽大学南校舎にある多目的ホール。
レジデントオーケストラとして「卒業生と教官」によるプロオーケストラ「テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ」
を要しており、オペラ、バレエ、ミュージカルなどのエンターテイメント自主公演と積極的に取り組んでいる。
大阪音楽大学同様オペラハウスを標榜しているが、建物設備は一般のプロセニアム型式多目的ホール。
余り大がかりな「グランドオペラ」の開催は考えておらず、ヨーロッパの田舎町によくある小さなオペラハウスの趣で、小規模なサロンオペラを得意としている。
又同大学は「オペラ研究所」も併設しており、オペラハウスの「総支配人」の養成講座開設のための資料収集・研究の地道な活動も続けており、更に「バレエ研究所」を設置、学部にバレエ講座も設けており、日本に総合舞台芸術であるオペラを根付かせる為の地道な人材養成活動を行っている
テアトロ・ジーリオ・ショウワのロケーション
所在地 神奈川県川崎市麻生区上麻生1-11-1
川崎市と周辺にある観光スポットについてのトリップアドバイザーの 口コミ ナビはこちら。
テアトロ・ジーリオ・ショウワへのアクセス
最寄り駅 小田急新百合ヶ丘駅より徒歩4分
テアトロ・ジーリオ・ショウワがお得意のジャンル
学校行事、オペラは勿論、オーケストラコンサート、バレエ、等の自主公演に加え在京オペラ団などにも貸し出されている。
ユリホールがお得意のジャンル
学内外のコンクール、各種公開レッスンなどの開催場所として使われ一般アーティストへの貸し出しも行われておりリサイタルや室内楽のコンサート等が開催されている。
テアトロ・ジーリオ・ショウワの公演チケット情報
テアトロ・ジーリオ・ショウワで催されるコンサート情報
ユリホールで催されるコンサート情報
施設面から見たホールの特色
※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。
テアトロ・ジーリオ・ショウワ
1スロープフロアー、2バルコニーの3層構造の馬蹄形多目的ホール。
天井の高いデザインで各バルコニーの軒高さは十分確保されている。
ホール周辺壁面は建設年度にしては流行遅れのショットブラスト仕上げの石材パネルを貼り付けた表装。
オーケストラピット周辺のプロセニアムから繋がる壁面は大きく湾曲した打ち放しコンクリートの垂直壁。
オーケストラピット側壁に対応するように、プロセニアム前縁から続く大きな天井反響板を備えている。
天井はフツーのアクリルエマルションペイント仕上げプラスターボード(※1)のプレーンな反響板。
ホール音響評価点:63点
§1,「定在波対」策評価点:20ページ点/40点満点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、天井形状、天井高さ、等の要素をそれぞれ減点法で算出。
- ※客席側壁がプレーンな垂直壁で「完全平行・平面」の場合は、満点x0.5=20点をベースに算出。
§2、残響その1 「初期反射」対策評価点:10点/20点満点
- ※壁面の素材・形状、客席配置、その要素で減点算出。
- ※(コンクリート、人造大理石、タイル・陶器製などの)硬質材の客先周辺壁材仕様は、満点x0.5=10点をベースにして減点算出。
§3,残響その2「後期残響」への配慮評価点:20点/20点満点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で減点算出。
§4,客席配置への評価点:13点/20点満点
- ※壁際席、大向こう席、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で減算。
- ※客席周辺壁材が硬質壁の場合は、満点x0.8=16点をベースに減点算出。
※関連記事「後悔しないコンサート会場の見分け方」まとめ はこちら。
総評
全体としては、天井の高い「巨大エコールーム(※2)」仕様のデザインで公演・演劇には不向きな多目的ホールであると言えよう。
ユリホール
天井の高い緩やかなスロープを持つ1フロアーのシューボックススタイルのオープンステージ・ホール。
2階の両測壁には浅いキャットウォーク・テラスが巡らされており、丁寧な造りの最上層部の異形装飾梁とともに音響拡散体として機能させるデザイン。
音楽に最も適した空間。
それがユリホールの設計思想です。...小規模のリサイタルや室内楽に最適な、素直で優しい音響空間をつくります。<公式サイトより引用>
フロアー両測壁面はピッチの異なる波状面を持った木質パネルを。段差を付けて凸凹状に配置している。
凹部にはエコー(※3)制御の目的で音響カーテン設備が設けられている。
いわば兼松講堂(※ガイド記事はこちら)に代表される、古典的劇場の出入り口の「カーテン」を模したデザイン。
大向う背後壁は上・下層部共に目の細かい縦格子で表装された吸音壁となっている。
装飾梁で折上げた天井には、オープンステージ上から続くアンギュレーションを設け「大きく折れ曲がった」プラスターボード天井反響板を設えてある。
ホール後部の側壁と大向こう背後の接続部も凸面状のコーナー反響板で丁寧に面取りされている。
ホール音響評価点:79点
§1,「定在波対」策評価点:24点/40点満点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、天井形状、天井高さ、等の要素をそれぞれ減点法で算出。
- ※客席側壁がプレーンな垂直壁で「完全平行・平面」の場合は、満点x0.5=20点をベースに算出。
§2、残響その1 「初期反射」対策評価点:19点/20点満点
- ※壁面の素材・形状、客席配置、その要素で減点算出。
- ※(コンクリート、人造大理石、タイル・陶器製などの)硬質材の客先周辺壁材仕様は、満点x0.5=10点をベースにして減点算出。
§3,残響その2「後期残響」への配慮評価点:20点/20点満点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で減点算出。
§4,客席配置への評価点:16点/20点満点
- ※壁際席、大向こう席、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で減算。
- ※客席周辺壁材が硬質壁の場合は、満点x0.8=16点をベースに減点算出。
※関連記事「後悔しないコンサート会場の見分け方」まとめ はこちら。
総評
全体的には天井の高い、ゆとり有るデザインの丁寧な設えのホールで有るが、定在波対策が甘い。
ここまで丁寧な設えなのに、壁面の(外反or内傾)スラント処理を失念したようである!
ピアノリサイタルでは、凹部のカーテンを使用し、初期反射(※3)減少と定在波対策(※4)?に当てているようだが...。
多少癖のあるブーミ-な響きのホールと成っている。
施設データ
- 所属施設 南校舎
- 運営団体 昭和音楽大学
- 開館 2007年
- 設計
- ゼネコン
- 内装(音響マジック)
テアトロ・ジーリオ・ショウワ
- ホール様式 馬蹄形『オペラハウスタイプ』プロセニアム型式多目的ホール。
- 収容人員 客席配置図・座席表はこちら
1階:810席(オーケストラピット使用時708席、車椅子用スペース7席)
2階:309席
3階:248席
計:1,367席(オーケストラピット使用時1,265席、車椅子用スペース7席) - 舞台設備
プロセニアム間口 16.2m
プロセニアム高さ 11m
ポータル間口 15m
ポータル高さ 10m(最大)
舞台奥行き 25m
スノコ高さ 24m可動床オーケストラピット
間口17.9m 奥行 中央 4.4m ・ 端 2.8m
掘り込み部 間口 16.1m 奥行 3.1m
演奏面の深さ 客席から最大-2.4m (掘り込み部 客席から最大-2.0m)
客席 102席減 - その他の設備 、楽屋x10,スタッフルームx3、ホワイエ バーカウンターでの飲料提供リストランテ イル カンピエッロ (1F) カフェ カンピエッロ (2F)等仮設反響板、
- 各種図面,備品リスト&料金表。
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- 舞台設備・資材・備品リストはこちら。
- 基本学内専用ホールなのでご利用希望の方は直接お問い合わせください。
ユリホール
- ホール様式 『シューボックスタイプ』コンサートホール。『
- 客席 (座席表はこちら) 1フロアー 収容人員 359名、
- 舞台設備 オープンステージ形式、プロセニアムアーチ:間口:13.5m 奥行:6.3m高さ:8m(舞台面より)、
- その他の設備 、楽屋x2、
微酔い狸の独り言
見栄えだけを追求した安普請
はっきり言って、少子高齢化の影響で入学者が減りだした2007年の先行き不安な時期に作られたホールでも有り両ホール共にかなりの安普請では有る。
付属のバレエスクールを持つなど総合舞台芸術「オペラ」の専門家育成アカデミーを目指す、遠大な計画の基に、1ッ発逆転、生き残り策を掛けて作られた施設ではあるが...。
中途半端な施設群
少々欲張りすぎたようで。両ホールが中途半端な施設となってしまったようである。
オペラハウスを標榜するには「狭すぎる1面舞台」。
老舗の競合する音楽大学が、次々と立派な施設を建設した現在となっては、「魅力に欠ける施設群」と言わざるを得ない!
今後の大改装に期待する
両ホールとも天井が高く素性は良いので、全面的に内装を改め、ビクトリア調の縁取りを巡らせた、アンギュレーションをつけた木質壁材と、装飾柱、装飾梁をホール各層に設け、天井も折り上げ組み格子風に改めれば、「素晴らしい響き」のホールになると思われる。
実際現実的なエコノミーサイズで建造した大阪音大の「ザ・カレッジ・オペラハウス」は「心地よい響き」と「広い(2面舞台相当の)ステージ」で出演者・聴衆の双方から熱い支持を得ている。
出来ればテアトロ・ジーリオ・ショウワはステージ部分の増改築を...
ステージが狭いのは、「舞台芸術ホール」としては、致命的な欠陥なので、舞台部分を大幅に増改築するなどして、「オペラハウス」に恥じないステージ広さを確保すべきではある。
1,367席はサイズ的には手頃ではあるが...
1,367席は首都圏のプロモーターや呼び屋には嫌われても、某老舗歌劇団のように「自主興業」を目指す団体には歌手にも負担が掛からず、手頃なサイズではある。
新興勢力にとっては少し重荷だったかも...
アクセスも極端に悪くないしネーミングライツ売却も含めた指定管理者による関節運営や、売却も視野に入れた「完全独立運営」等を模索検討する時期に来ているのでは無いか!
参照覧
※1アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての解説記事はこちら。
※2エコールームに関する「音工房Z」さんの解説記事はこちら。
※3、直接音、初期反射音、残響音についての(株)エー・アール・アイさんの解説はこちら。
※4、定在波の悪影響に関する解説記事はこちら。
※「都市伝説・良いホールの条件"残響2秒以上"は本当か?」はこちら。
公開:2017年8月10日
更新:2022年9月30日
投稿者:デジタヌ
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