トッパンホール/文京区水道《ホール音響Navi》
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音響面から眺めたトッパンホールのデザイン
408席と小ぶりなホールではあるが、最新の音響工学を駆使し、ホール全体を浮かすなど、遮音、響きには定評があり、国内外のソリスト、アンサンブル団体の人気ホールの1つとなっている。
なんとなく1920年台のアーリーアメリカンのショーホール・映画館を思わせるデザインで、ロマネスク様式のシューボックスだけがコンサートホールでは無い!事を主張してくれている?
商業ホールの宿命?
高い天井、側壁際の通路、中央部千鳥配列シートを持つ平土間部分、そしてロールバック?と思わせる様な両袖に十二分な無駄スペース?(通路)を取った後半スロープなど素晴らしい箇所も多いのだが、客席最後列「大向こう席」の押し入れの中?の2列は...。
トッパンホールのデザインについての詳述
1フロアーの変形ホール
後半部が緩やかなストレート段床のスロープになった1フロアーの作り。
最前列からG列目まの7列が完全な平土間で、8・9列が「ハノ字段床」の前半部と、通路を挟んでJ列からがストレート段床になっている。
木をふんだんに使用した「全周木壁」の作り
2層に分かれた客席両側壁
ホール両側壁面は要所に「音響拡散体」(※1)を兼ねた照明フードを配した「装飾梁」で下層部と上層部に分かれており、下層部はプレーンパネルと「グルービングパネル」を直線状に交互に配置して表装してある。
客席両測にある装飾梁上の上層部
上層部は「僅かに張り出した装飾梁」上にランダムな凸形円弧状のパネルを並べたパネルは揺動し、壁面にセットされたマジックボックス(※2)のシャッターになっている。
大向こう
客席大向こう背後は通路ではなく客席で埋まっており、上層部の「張り出した」コントロールルームの壁面は大向こう客席同様に縦桟を用いたグルービングパネルで表装され、最上部は縦格子で表装した吸音壁になっている。
オープンステージ周辺
オープンステージ背後の壁面は客席周囲とほぼ同様な設えであるが、上層部は「内傾」させ大きく「コーナー部分を面取り」した台形ステージと成っている。
大型一体構造の天井
天井はプラスターボードを用いた大型のセグメント反響板で構成され、周辺壁面から「折れ上がった」形状で、「大型変形トレー」をホールにかぶせたようなデザインとし、要所に音響拡散体として「胴がくびれた異形装飾梁」があしらわれている。
全体としては「アーリー・アメリカン・スタイルの映画館」を連想させる内装デザインである。
総評
首を傾げたくなる定在波対策処理?
N田音響らしく?壁面は垂直で、アンギュレーション、やスラント設置処理等の定在波(※3)に対する対策は全く見られず、間口17.4mに相当する波長の約20Hzの重低音・ホール横断定在波の嵐(※4)がうずまいている!
さらにどういうわけか、前半が平土間が「ハノ字客席」で、後半スロープがストレート段床では救われようがない。(※5)
毎度のことながら、永田さんは「メークアップアーティスト」としての本領発揮?で「音響拡散体の厚化粧」(※6)でこれでもか、とばかりに「エコーの香りをプンプン」させるのがお得意のようである。
今後の改修に期待
来年で20年経つことだし(2019年現在)、そろそろお化粧直しということで、低層部客席周辺の側壁は、当初のようにアンギュレーションを設け、なおかつ外反スラントさせたほうが良さそうである。
更に、後部3列Q列からS列までの3列はあっさり撤去し当初の計画通り「親子席もしくは貴賓席」に改修してはいかがであろうか?
幸い?ステージ上ではホール軸方向も含め一切定在波は生じておらず、プレーヤーには人気の高いホールではあるのだが...、2000ねん当時ならいざ知らず都内にこれだけ「プレミアムホール」が増えてきた今となっては魅力が薄れたと言わざるを得ないだろう。
ホール音響評価点:得点58点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点19点/配点50点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
- ※客席側壁が ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは、 基礎点25点に減ずる。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点21点/配点25点
- ※木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
- ※障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点13点/配点20点
- ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価;得点5点/配点上限5点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
- ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。
算出に用いた値;
※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら。
定在波評価
※完全平行壁面が客席側面全面なので基礎点25点とした。
基礎点B1=基礎点25点ー障害発生エリア数2=23点
定在波障害顕著席数;
定在波「節」部席;38席(14席/1階中央部前半座席A~I列12・13番席、20席/1階後半段床座席J~S列12・13番席、4席/1階後部座席R・S列両壁際席)
定在波「腹」部席;32席(14席/1階前半両袖座席A~I列6番&19番、16席/1階後半両袖座席J~Q列6番&19番、2席/1階後部両袖座席R・S列7番&18番)
重複カウント ;ー0席
定在波障害顕著席総計;70席
初期反射対策評価
※障害発生エリア壁面材質が木質グルービングパネルなので素材基礎点25点とした。
基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数1=24点
初期反射障害1 壁面障害席 ;22席(18席/1階S列全席、4席/1階R・S列4番&21番全席、)
初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;36席/1階R・S列全席、
重複カウント ;ー22席
音響障害席総計;38席
客席配置評価
基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数2=18点
眺望不良席数;0席/1階平土間中央部座席千鳥配列
音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;70席
音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;22席
音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;36席
重複カウント ;ー30席
音響障害席総計;98席
算定式
評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数
トッパンホールのあらまし
Official Website http://www.toppanhall.com/
個性的なデザインの音の良いホールとして、内外のアーティストから定評のあるコンサートホール。
自主公演にも積極的に取り組んでおり、年間10公演程度を自主開催している。
トッパンホールのロケーション
所在地 東京都文京区水道1?3?3
トッパンホールへのアクセス
江戸川橋駅から徒歩8分、飯田橋駅から徒歩13分、後楽園駅から徒歩10分。
都営バス上69・飯64系統「東五軒町」、「大曲」バス停から徒歩3分。
文京区コミュニティバスBーぐる「トッパンホール・印刷博物館」バス停から徒歩4分。
トッパンホールがお得意のジャンル
ソリストのリサイタル、アンサンブルの演奏会等、小編成の室内楽コンサートなどが行われている。
トッパンホールで催されるコンサート情報
トッパンホールの詳細データ
- 所属施設 トッパンホール。
- 運営団体 株式会社トッパンホール -。
- 開館 2000年
- ホール様式 変形オープンステージコンサートホール。
- 収容人員 1フロアー 408席 平土間中央部千鳥配置客席
- 舞台設備 オープンステージ 間口17.4m、奥行8.0m、舞台高0.6m
- その他の設備 、可変残響装置、
- 付属施設 、楽屋x4、ホワイエ
- 設計 株式会社 岡田新一設計事務所
- 音響設計 株式会社 永田音響設計
- ゼネコン 安藤・鹿島・東急建設共同企業体
- ホール使用料金表はこちら
※参照覧
※1、音響拡散体については、『ホールデザインのセオリー 第9章第3節第1項 音響拡散処理と音響拡散体となる要素』をご参照ください。
※2、現代の3大迷発明!「珍妙からくり(残響調整装置、可変段床設備、高さ可変吊り天井)」に関する記事はこちら。
をご覧ください。
※3-1、定在波の悪影響に関する一般人向けnatuch音響さんの解説記事はこちら
※3-2、定在波に関するWikipediaの(技術者向け)解説はこちら。
※4、関連記事『ホールに潜む ミステリー ゾーン (スポット)とは?』はこちら。
※5、定在波対策については『第4章 セオリーその1 "定在波の駆逐" と "定在波障害の回避策"』をご覧ください
※6、音響拡散体については、『ホールデザインのセオリー 第9章第3節第1項 音響拡散処理と音響拡散体となる要素』をご参照ください。
をご覧ください。
公開:2017年9月 6日
更新:2022年9月30日
投稿者:デジタヌ
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