狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

小金井 宮地楽器ホール 《ホール音響Navi》ピアノの違いが聞き分けられるホール 

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武蔵野エリア切っての音響を誇る「小規模藝術ホール」宮地楽器ホール。ちなみなフロアー形状で「完璧とも言える「定在波(並行壁面)」対策で不愉快な色づけのないクリアーな音響を誇っている。このホールでならどこに座っても、ヤマハとスタインウェイの違いや、アーティストの繊細なタッチの違い、ペダリングの妙味が、聞き分けられる!

小金井 宮地楽器ホールのあらまし

  • 豊かな自然環境に恵まれたまち、小金井市に2012年3月に正式開館した文化施設です。
  • 豊かな響きを持つ578席の大ホール、平土間式の小ホールは、
    いずれも幅広いジャンルの催し物にご利用いただけます。
    市民ギャラリー、練習室、和室と合わせ、文化芸術活動の拠点として、また、様々な交流や憩いの場としてご活用ください。<公式ガイドより引用>

宮地楽器ホールのロケーション

ところ 東京都小金井市本町6丁目14

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

(公式施設ガイドはこちら)

小金井 宮地楽器ホールの施設データ

Official Website http://koganei-civic-center.jp/

  1. 所属施設/所有者 小金井 宮地楽器ホール/小金井市。
  2. 指定管理者/運営団体 小金井 宮地楽器ホール/小金井市。
  3. 開館   2010年
  4. 設計  ヘルム・アクト環境計画設計共同体
  5. 音響設計 YAMAHA
  6. ゼネコン 鹿島建設

付属施設・その他 

  • 付属施設 、練習室x4、市民ギャラリー、マルチスペースx4、和室、ブッフェラウンジ

建築音響工学から眺めた『大ホール』

(公式施設ガイドはこちら)

ホール内壁全面クリアー塗装仕上げの木質パネルで表装された丁寧な設えのホール。

フロアーデザイン

1階メインフロアー周辺に2階バルコニー両翼から続く高床桟敷テラスを設けた2層1バルコニーの多目的ホール。

オーバル形状に近い馬蹄形を基本とした、ちなみなフロアー形状で「完璧とも言える「定在波(並行壁面)(※1)」の対策(※2)となっており不愉快な色づけのないクリアーな音響を誇っている。

メインフロアー

最前列から5列が平土間部分で6列目から緩やかなストレート段床上に座席が設けられている。

バルコニー

2階バルコニーが階下のホワイエ上部に大きく張り出し、客先両側の2段テラス共々1階メインフロアーへのオーバーラップが全くない2デザインとなっている

壁面

立て棧を大ピッチで配したグルービングパネル(※3)とプレーンパネルを交互に並べて、初期反射軽減と後期残響(※4)に効果的に対処している。

メインフロアー側壁

凸面にラウンドした木質パネルを、ホール形状とは逆絞りで内側に絞り込んだフロアデザインで内傾スラントさせて設置し、対抗壁面との平行を完全にキャンセルしている いやお見事!

上層部側壁

2階サイドテラス席背後壁を含む上層部側壁は、僅かに外反スラントさせて、オーバル特有のホール内焦点が発生しないように配慮してある。

サイドテラス席背後上層部には露出タイプの照明コラムが設置され音響拡散体(※5)として機能している。

大向こう壁面

2階バルコニー背後の平面部には細かいピッチのグルービングパネルを用い、初期反響の軽減を図っている。

天井

天井には下面を凸面反響板で覆ったブリッジが3か所設置されている。

ステージ反響板

ホール内装と同意匠のステージサイド反響板とホール部の波状反響板と同意匠のステージ反響板でオープンステージコンサートホールと成る流行のデザイン。

所見と総評

やはりYAMAHAさんのコンサルティングは素晴らしい!、やたら音響拡散体で厚化粧した見掛け倒しの「エコー美人」ホールとは異なり、「YAMAHAグランド」をはじめとする世界の名器の音色の違いが鮮明に浮き彫りになるホールである。

座席配置と壁面改修に期待

オーバルであるにも関わらず定在波の全くない素晴らしいホールではあるが、定在波駆逐の為に設けた、テラス床囲い面の表装が、プレーンパネルでは、壁際席はちと辛いと思われる。

やはり大向こう壁面同様に細かいピッチのグルービングパネル設置が好ましいのでは...。

さらに平土間部分はたった2席減で改修できるので、是非偶数列2・4列から1席を減じ千鳥配列を実現させていただきたい!

ホール音響評価点:得点90点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点50点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※客席側壁が ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは 基礎点25点に減ずる。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点21点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点15点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点4点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

算出に用いた値;

※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら

定在波評価

※障害発生エリア席が皆無なので基礎点50点とした。

基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数0=50点

定在波障害顕著席数;

定在波「節」部席;0席

定在波「腹」部席;0席

定在波障害顕著席総計;0席

初期反射対策評価

※障害発生エリア壁面がスラントさせた木質パネルなので素材基礎点25点とした。

基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数3=22点

初期反射障害1 壁面障害席 ;22席(6席/1階5~7列両側壁際席、16席/1階15列全席、)

初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;0席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;22席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数4=16点

眺望不良席数;16席/1階平土間中央部座席2~5列7番~22番

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;22席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;0席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;38席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

大ホールの施設データ

  1. ホール様式 プロセニアム型式多目的ホール。『馬蹄形』プロセニアム型式多目的ホール。
  2. 客席   578席(車椅子3席設置時は569席)ホール1F: 394席 / 2F: 184席
    ※車椅子席3席 : ホール1F1列および2列23〜28番(計12席)を取り外した場合
    ※ホール1F1列および2列目の座席は全撤去可
  3. 舞台設備 音響反射板設置時 間口 18m 奥行 11m 舞台高 9.2m
    プロセニアム 間口 14.4m 奥行 11m 舞台高 7.2m、仮設脇花道。
  4. その他の設備 楽屋x6、控室、
  5. 施設利用(利用料金等)案内 詳しくはこちら。

大ホールがお得意のジャンル

オーケストラコンサート、ソリストのリサイタル以外にもミュージカル、Jポップ関係のコンサートや、往年のアイドル・エンタテイナーのワンマンショウ、ジャズコンサート、歌謡ショー、懐メロ歌手の歌謡ショー、現代演劇、伝統芸能、落語・演芸寄席、大道芸、パフォーマンス・ショー等ジャンルに拘らない幅広い演目でこのエリアの多くの人達に受けいれられている。

またプロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体が利用している。

大ホールの公演チケット情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら。

建築音響工学から眺めた『小ホール』

(公式施設ガイドはこちら)

リハーサル室としても利用出来る、床面積131畳の2階吹き抜けの高い(約5m)の天井を持つ平土間多目的イベントルーム。

ホール音響評価点:50点

内訳

定在波対策評価点:25点/50点満点(ルーム低層部2面以上がプレーンな並行壁の場合は持ち点はx0.5と成ります)

残響その1(初期反射)対策評価点:25点/50点満点(ルーム低層部2面以上がプレーンな並行壁の場合は持ち点はx0.5と成ります)

小ホールの施設データ

  1. ホール様式 床面積約217m²(約1312畳)天井高 約5m平土間多目的イベントホール。
  2. 客席   1フロアー 収容人員 150名、
  3. 舞台設備 オープンステージ形式、ステージ仮設
  4. その他の設備 、楽屋x2、
  5. 施設利用(利用料金等)案内 詳しくはこちら公式ガイドへ

小ホールがお得意のジャンル

主にリハーサル、セミナー、講演会、市民団体の集会、お稽古事の発表会などに用いられている。

デジタヌの豆知識

宮地楽器ホールへのアクセス

最寄り駅

JR中央線「武蔵小金井駅」南口駅前
バス小田急バス、関東バス、西武バス、京王バス「武蔵小金井駅」下車 徒歩1分

小金井 宮地楽器ホールこれまでの歩み

1963年10月に市制5周年を記念し「旧小金井市公会堂」が完成。

2005年 3月21日老朽化の為に閉館解体 

2010年 小金井 宮地楽器ホール 開館。

宮地楽器ホールがある小金井市

推計人口、123,529人/2017年10月1日

武蔵小金井-新宿 24分/310円/18.8km

東京の「ベッドタウン」

1958年市制施行。

近年1980年以降人口は増え続け現在12万人3千人台の人口と成っている。

年齢別人口比率では、20歳~50歳までのいわゆる働き盛りが全国平均を大幅に上回り、逆に50代~の高齢者と20代までの青少年が大幅に下回っている、典型的な都市型であり、地場産業である、学校法人への転入者、都心部に近い事による新興住宅地への旺盛な住宅需要に基づいたヤングファミリーの転入等が多い事を物語っている。

※参照覧

※1、定在波に関する解説記事 『定在波』とはこちら

※2, 第3章 ホールデザインの基本"定在波の根絶・阻止・駆逐" 法

※3 手法1 1/4波長程度の「グルービング(溝)加工」をほどこした壁面用パネル の効果 はこちら。

※4、第1章 初期反響エコーと後期残響は別物 はこちら

※5、音響拡散体については「第2章第1節 音響拡散処理と音響拡散体となる要素」をご参照ください。

 

公開:2018年1月31日
更新:2022年9月27日

投稿者:デジタヌ


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