第一生命ホール /中央区晴海《ホール音響Navi》
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積極的な自主興行で社会還元に努めるホール
旧第一生命館の6階に設けられていた初代第一生命ホールが1989年に閉館し、晴海アイランド トリトンスクエア 内に場所を移し新たに新「第一生命ホール」が2001年に誕生した。
建築音響工学面から眺めたホールの特色
※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。
立地条件の良いホール
朝潮運河沿いにあるトリトンスクエアの内側にあり3方を高層ビルでガードされ晴海通りの「騒音・振動」は「シャットアウト」されている。
2フロアー(1テラス)の3階吹き抜け相当の高い天井(舞台上12.1m)を持つ馬蹄形の音楽専用ホール。
オーバル型ホールは、シューボックス型とワインヤード型それぞれのメリットが活かされ...。客席からは舞台が近く感じられ、臨場感あふれる演奏がお楽しみいただけます。<公式サイトより引用>
と成っているが、残念ながら、シューボックスとオーバルの双方の欠点をあわせもったようである?
変形オーバル(楕円形)と言うより、むしろ「馬蹄形」そのものと言ったホール形状。
平土間に近い緩やかな前半と後半スロープを持つメインフロアーの周囲にステージサイドまで回り込む2階テラス席が設けられている。
オーバル形状を用いて対抗面(定在波)対策を狙ったフロア平面形状?
オーバル特有の凹面鏡(パラボラ)効果対策
ホール1階メインスロープ側壁はアンギュレーションを付けた、木質グルービングパネルで表装され、オーバル形状の「音響パラボラ効果」による「音の集中」と中央部付近での「定在波」(※1)の発生を抑制するプランであったようだが...。
当ホールにおいては
オーディトリウム全体に渡りZ軸(床面・天井間の上下軸)のみ、天井反響板を後方に向かって片流れスラントさせることで定在波対策(平行面対策)(※2)を行っている。
オーバルなのに完全平行する対抗壁面!
変形オーバル(楕円)を基本としているので、基本並行する対面はステージ背後壁と客席背後の壁(親子席全面ガラス)と横軸方向のみ...のはずであった?
並行面を少なくして対抗平行面による定在波の発生を抑制しようとする試みではあったが...困ったことに、態々?完全平行する対抗面をホール前半部に設え、いろんな対辺(波長)からの定在波の発生を招いてしまったようである。
客席前半部の壁面のもの凄さ?
客席前半平土間に近い無段床スロープ部分では、エプロンステージにも転換できる最前列2列はステージ同様に定在波障害が起こらないようなハノ字側壁に囲まれているが、3列目以降はホール横断定在波対策ほぼ"0"!、それどころか本来の「オーバル形状フロアデザイン」をワザワザぶち壊し!ホール中央通路部分の両サイドまで3段階の「垂直平行壁に改悪?」し、3列目から順に幅約23m(約15Hz)、幅約23.8m(約14Hz)、幅約26m(約13Hz)/ドア部分、幅約24.5m(約14Hz)を発生させている!
ホール幅20ⅿ超のセオリー(※2)には当てはまる部分でもあり、定在波と言っても可聴帯域外重低音(低周波振動障害)なので問題なしというか「迫力ある低音を楽しんでいただこう?」と目論んだのかも知れない?
通常「良心的な常識のあるデザイナーさんなら「ホール出入口ドア」でさえ「ハノ字壁面部分」に設け対抗する平行面駆逐には神経をとがらせている(※小金井 宮地楽器ホール のホール音響ナビはこちら)。
対して普通に丁寧?な客席後半部処理
対して、後半部分は、ハノ字段床配列座席と、オーバル面を変形6角形のように面取り(倣い)し「パラボラ効果対策」としている。
吸音構造のメインフロアー後方壁面
さらにメインフロアー後部両側壁、背後壁は共に縦格子で表装した吸音壁(遮音壁)になっている。
但し調光室と音響調整室が設えられている上層部壁面は2階客席周辺と同様のプレーンな木質パネルが用いられている。
大型一体型天井反響板
ステージ上空が最高部でホール後部にかけて低くなる「片流れ天井」となっており、中央部分は隔壁(リブ)を持つ、台形ヴォールトにデザインされており、リブと吊り下げられた剥き出しの照明ユニット(バトン)が音響拡散体(※3)として機能している。
側壁最上層部
側壁最上層部は天井同様のプラスターボード製(※4)反響板で表装してある。
ステージ&反響板
ステージはオーバル前端(ステージ背後壁面)を切り落とした「台形ステージ」に成型されており、ステージ周辺は2階席周辺同様のプレーン木質パネルをアンギュレーションを付けて表装してあり、一部が両開きになっており楽屋などにつながる舞台裏スペースと区切られている。
「マジックBOX」
2階テラス席背後壁面上層部のホール全周に渡り要所に「揺動フラップ式前面開閉機構」を備えた「マジックボックス」(残響調節吸音箱)(※5)が設えられている。
総評
いやはや、いつも通りというか、全くというか...。
「プレーヤー重視」&「聴衆無視」の設計思想?
長田音響設計さんもプレーヤーの評価は気になるらしく、流石に一部の例(※6)を除いて、ステージ回りでは全方位に渡り定在波は発生しないように平行面対策を行っておられるようではあるが...。
定在波対策無視どころかあきれた定在波利用の目論見?
長田音響設計さんは「定在波」駆逐どころか「積極利用による味付け?」を好まれる「特殊メーク!アップアーティスト!」のようで、『ホール横断定在波等起こり得ず、むしろ低音域の豊かな表情付け?につながる』とお考えのようである?
しかしながら、事実は無常無慈悲!で完全平行側壁間ではホール横断定在波は必ず発生し「悪魔の調べ」を奏でる!
何故ならば
何故ならば、「人工発音機(スピーカー)」とは異なり殆ど指向性(※7)をもっていない!
それどころか、低音楽器(バスドラ、ティンパニー、コントラバス、ピアノ左手低音域等)は楽器は「点音源」に近く「無指向性」と言っても過言ではない!
つまり、上下左右に「重低音を発散」しており、しかも反射の法則「入射角=反射角」は成立しても、元方「無指向性」なるがゆえに、対抗面に向かう音波の成分はかなり大きく、これが「低音域定在波」の要因となる!
総括
音楽ホールは見世物小屋ではない!
ホールサイドは
客席からは舞台が近く感じられ、臨場感あふれる演奏がお楽しみいただけます。また、舞台上の演奏者にとっても、観客に囲まれた一体感を得られます。<公式サイトより引用>
と「1階平土間中央部千鳥配列」と合わせ「視認性の良さ」を協調しているが...
当ホールは「音楽ホール」であり「見世物小屋」では無いはず!
オーバル(楕円)形状の音響的利点とは...?
オーバル(楕円)形状を用いて、シューボックスの最大の欠点「対抗並行面」を封じいようとしたのはGood ideaではあるが、良策ではなかった様に思われる、更に数々の「小手先の処理」を施しては入るが...。
特に低層部では、壁面にアンギュレーションを付け、オーバルというよりは変形6角形に近い平面配置になっているが、平土間に近い緩やかなスロープが災いし、ホール中央客席部分には定在波の影響で特定周波数の音が消える『ミステリースポット』(※8)が生じているようである。
いわゆる釣鐘の中央部では音がしないのと近い理屈である。
下層部は「外傾スラント」上層部は「内傾スラント」を設け「オーバル形状」に沿った変形多角形として「音響パラボラ」効果封じに完璧を期した方が寄り一層効果的では無かったのか?
マジックボックスに頼らざるを得なかった音響特性とは...?
最上層部に「バタバタ・フラップ」付きの「マジック・ボックス」を設えたと言う事は...、あらかじめ(コンピューターシュミレーションで)このホール形状では「癖の強い音響」である事が判明していたことを物語っているように思えるのだが?
さらに付け加えるなら、マジックBOXは後期残響抑制には効果があっても"定在波対策には何ら寄与しない!"
ホール音響評価点:得点88点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点50点/配点50点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
- ※客席側壁が ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは、 基礎点25点に減ずる。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点19点/配点25点
- ※木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
- ※障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点14点/配点20点
- ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価;得点5点/配点上限5点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
- ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。
算出に用いた値;
※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら。
定在波評価
※定在波が可聴帯域外の低周波振動で実被害が生じないハズ?なので基礎点50点とした。
基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数0=50点
定在波障害顕著席数;
定在波「節」部席;0?席
定在波「腹」部席;0?席
定在波障害実被害席総計;0席
初期反射対策評価
※障害発生エリア壁面材質がアンギュレーション設置のプレーン木質パネルなので素材基礎点25点とした。
基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数4=21点
初期反射障害1 壁面障害席 ;48席(18席/2階R・L1列1~9番・37~39番、12席/2階R・L2列25~27番・37~39番、2席/2階R・L3列43番、16席/2階C3列全席、)
初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;11席/1階20列全席、
重複カウント ;ー0席
音響障害席総計;59席
客席配置評価
基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数4=16点
眺望不良席数;0席/1階中央部座席千鳥配列済
音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0席
音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;48席
音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;11席
重複カウント ;ー0席
音響障害席総計;59席
算定式
評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数
第一生命ホールのあらまし
Official Website http://www.dai-ichi-seimei-hall.jp/
第一生命ホールのロケーション
ところ 中央区晴海1-8-9(晴海アイランド トリトンスクエア)
有楽町駅南側をクロスする晴海通りを海に向かって進み「勝鬨橋」を渡りさらに朝潮運河を渡った「晴海」に誕生した「トリトンスクエ ア」内にある。
第一生命ホールへのアクセス
大江戸線 勝どき駅下車 徒歩8分
有楽町線 月島駅下車 徒歩12分
第一生命ホールが得意のジャンル
主にセミナー、講演会、ソリストのリサイタル、アンサンブルの演奏会、小編成の室内楽コンサート、ジャズコンサート等などが行われている。
またプロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体が利用している。
第一生命ホールの公演チケット情報
第一生命ホールの施設データ
- 所属施設/所有者 晴海アイランド トリトンスクエア/第一生命保険株式会社。
- 指定管理者/運営団体 NPO法人 トリトン・アーツ・ネットワーク/。
- 開館 2001年11月15日
- ホール様式 『馬蹄形』音楽ホール。
- 客席 2フロアー、収容人員 767席 、(車椅子スペース8含む)親子室2室 2階テラス(桟敷席)、1階平土間中央部千鳥配列、
- 舞台設備 オープンステージ形式幅16.4m(17.8m)、奥行7.3m(9.3m)、高さ12.1m、
- その他の設備
- 付属施設 リハーサル室、楽屋x4、主催者控室、アーティストラウンジ
- 施設利用(利用料金等)案内 詳しくはこちら。
- 設計 株式会社竹中工務店
- ゼネコン 竹中工務店
第一生命ホールこれまでの歩み
1952年(昭和27年)9月15日、第一生命創業50周年を記念して第一生命館の6階に設けられた。
1989年(平成元年)、第一生命館の保存とDNタワー21(農林中央金庫との複合ビル)への改築により閉館した。
2001年(平成13年)11月、晴海アイランドトリトンスクエアに2代目の第一生命ホールがオープンした。
※参照覧
公開:2018年1月23日
更新:2022年9月30日
投稿者:デジタヌ
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