狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

コンサートホール 向け" 天井反響板 "に関する" 新 公開技術 "提案 ー Parabola Soundboard 「パラボラ収束・音場クロス拡散法」ー

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前書き(要約)「パラボラ収束音場クロス拡散法」(音響シャワー法)とは?

"音響シャーワー法?"聞きなれない手法でしょうが...

単なる気休めほどの効果しかない"UFO型凸面反響板"に代わり、多目的ホールの"音響改善"に劇的な効果を発揮する手法で、今後小・中規模多目的ホールの音響改修法として普及するでしょう!

多目的ホールの天井と床面間で生ずるZ軸(H:高さ方向)定在波を防ぎ、定在波障害を解消して同時に心地よい散乱波(後期残響)生成が期待できる手法(パラボラ収束音場クロス拡散法)について技術概要を解説しました。

単なる気休めほどの効果しかない、UFO型凸面反響板に代わり、多目的ホールの"音響改善に有効な手法"の一つとしての提案です。

プロローグ 何故バチカン大聖堂は煩(うるさ)く無いか!「音響シャワー」効果とは?

(※以下 数値については『建築音響工学総覧 』第2巻 音響工学の基礎知識(音の反射と指向角 )を参照してください!)

バチカン大聖堂のドーム屋根に代表される「ドーム」構造やベルサイユ宮殿に用いられている、「ヴォールト(アーチ)」構造は強度的な面だけではなく使い方次第では音の集中スポットを解消する「音響シャワー」(※813)効果を持ち合わせています。

バチカン大聖堂のドームは約30m曲率約15mの完全お椀型のドームで、天井高さは約75mです。

この場合全ての音はドーム部が始まるところ、つまり聖堂全体の天井の約2倍のポイントで収束した後は、「砂時計の側面」のように球面波で拡散しています。

つまりドームの真下でも煩(うるさ)くないわけです!

カソリックに限らず、ロシア正教、ギリシャ正教、イスラムのモスクも全て、地上面(GL+)よりかなり高いところで音波が収束するデザインとなっています!

第1節 円形天井反響板の効果

第1項 直径6m程度の平円盤の効果

最近欧米では、直径6m程度の平円盤を水平若しくは角度を付けて吊す方法が良く用いられていますが...

直径6mの円形平面Acoustic panelを用いた場合、反射最低周波数28Hz で収束効果はありませんが、音響反射板(Acoustic panel)に角度を付ける事によって、定在波対策には成ります。

6mの円盤だと 

※ 画像をクリックすると拡大できます。

directivety_angle.jpg

348.6/2x6約29Hzから反射する事に成りほぼ可聴帯域(20Hz~20Khz)を満足出来ますが...

また音声帯域(※14)で一番聴覚の鋭い周波数10KHzで逆にXoを求めると

Xo=D2/4λなので≒258.2m 

近距離音場限界距離1.3Xo≒335.6m!

と「とんでもない数値」に成りとても20mくらいの天井高さでは、安定して拡散しないことになってしまいます!

参※14)音声周波数帯域とも言われ楽器や肉声の基音となる300~3400Hzの低・中音域を指します。ちなみに電波法のAM放送の公称伝送帯域は100 Hz~7,500 Hzです(実際には50Hz程度から12kHz程度は伝送できています。)関連記事「音の良いフルレンジスピーカー列伝」はこちら。

第2項 逆ドーム天井反響板は"気休め程度"の効果しかない!

直径6mの円形Soundboardを用いた場合。

表面を逆ドーム(凸面)形状にしておけば、波長λ≒3.19m(110Hz以上)以下の音声帯域の音(※83)は反響板表面で(初期反響は)完全反射・拡散し、さらにそこから壁面や梁を経て散乱波(後期残響)創出に効果があるとされていますが?...

実際には、後述する円盤同様に音響拡散効果はあっても、逆パラボラ効果はありません!

さらに、逆ドーム(凸面)天井反響版を用いてもドーム付け根に峡角コーナーが生じて、重低音の籠もり音の原因となりやすい弊害も生じたり、大掛かりな仕掛け(ドーム昇降装置)を用いても問題は残ります。(※例2)

※83 音声帯域に関する関連解説記事はこちら BTS(放送技術規格

※例2、 京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ(小ホール)(※ホール音響Naviはこちら)

第2節 直径6m曲率半径6mの「パラボラ収束音場クロス拡散法」(音響シャワー法)

「小径ドーム天井」「凹面音響反射板(Acoustic panel)」を用いた手法です。

第1項 直径6m曲率半径6m程度の凹面鏡すなわちパラボラ反響板の場合

※ 画像をクリックすると拡大できます。

parabora_soundboard.jpg

直径6m曲率半径6mRのドーム天井(ヴォールト)を間口・高さ20mのシューボックスホールの天井から1mに吊るした場合、焦点は天井最後部から7m(床面上約13m)となります。

この場合、直径6mの Reflector(反響板)の有効反射波は1/2λ=6m つまり約29Hzとなり可聴帯域(20~20kHz)をほぼカバーできます!

更に6mが近距離音場限界距離Xo(※231)に相当する周波数は、約232Hzとなります。

つまり、「約232Hz以上の音波は地上約13mで集束してからシャワーのように拡散する」わけです!

参※231)当サイト関連記事 第1節 近距離音場と遠距離音場で生じる"指向角(性)はこちら。

ラウドネス特性も加わり

laudness_curve.jpg

更に、この帯域はラウドネス特性上聴覚が最も鋭い周波数帯域でもあり、不愉快なエコー(初期反響)を抑制できれば、音像の定位が明確になり客席(耳の高さでの楽音(スペクトル:音色)の「トランジェント」が改善できます!

日本では制作容易!

日本の場合はアルミ材のヘラ絞り加工で正確な凹面音響反射板(パラボラ反射板)を作る技術を有しています!

このへら絞り技術で直径6m曲率半径6mのアルミパラボラを製作して、FRPの裏打ちを組み合わせて音響反射板(Acoustic panel)を制作して、地上12m以上の高い空間にセットすればドーム下での音響集中を回避する有効な手段として応用できます!

この、「凹面音響反射板(Acoustic panel)」を用いた音響設計手法を「パラボラ収束音場クロス拡散法」と称することにしました。

参※21)音声周波数帯域とも言われ楽器や肉声の基音となる300~3400Hzの低・中音域を指します。ちなみに電波法のAM放送の公称伝送帯域は100 Hz~7,500 Hzです(実際には50Hz程度から12kHz程度は伝送できています。)関連記事「音の良いフルレンジスピーカー列伝」はこちら。

第2項 シューボックスホールにヴォールト天井を使用した場合

acoustic_parabola.jpg

前項同様に巾15m曲率半径8.5mRのヴォールト天井を間口・高さ17mのシューボックスホールに適用した場合、焦点は床面上8.5mとなります。

この場合、幅15mの Reflector(反響板)の有効反射波は1/2λ=15m つまり11.6Hzとなり、可聴帯域(20~20kHz)をカバーできます。
更に8.5mが近距離音場限界距離Xoに相当する周波数は、約52.7Hzとなります。

つまり、52.7Hz以上の音波は地上8.5mで集束してからシャワーのように拡散します!

更にこのような"かまぼこ型"ヴォールト天井では、客席側下面にマスクメロンのように"クロス格子リブ"を配置すれば、補強と、音響拡散効果の両面を兼ね備えることができます。

この手法は、「平土間をベースとしたシューボックスホール」では有効な手段となるでしょう。

ホール後半の急峻な扇形スロープ(※221)、2階サイドテラス、壁面スラントと組み合わせて使用すれば、Z軸(高さH方向)定在波も防げて、素晴らしい音響の中型プレミアムホール(※222)が実現できるでしょう!

※クリックすると拡大画像になります

standing_wave3.jpg

※"箱物"のデザインを得意とする?N田音響設計(※999)さん、一度試してみられませんか?

参※221)当サイト関連記事  第1節 扇状段床座席を用いた間口(W軸)定在波の障害回避策 はこちら。

参※222)当サイト関連記事  第1目 間口17m以下のホールの"心地よさ?"の秘密とは...はこちら。

参※999)当サイト関連記事 永田音響設計は神ではない!もしかしたら...はこちら。

第3項 知的所有権について

実用新案、特許の類は申請しませんのでどうぞご自由にお試し下さい。

!但しWEB 上での著作申請(Web出版)を行いますので、このアイデアは「公知の事実」公開情報と成なっています。

なので本件に関連する特許・実用新案などは申請できませんのでよろしく...

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公開:2017年9月 7日
更新:2022年6月10日

投稿者:デジタヌ


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