狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

小牧市市民会館ホール 《ホール音響Navi》

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新生 中部フィルハーモニー交響楽団 のフランチャイズホール

ピーチライナー建設という「大失態」をしでかした同じ自治体とは思えない堅実な文化施設「小牧市市民会館・公民館」。

無闇に建て替えなくても、上手に改装すれば見違えるように生まれ変われる好例であろう。

約8ヶ月の長きにわたった大改装の見事な成果である。

1970年代のデザインにしては天井が高くホール容積に余裕がある基本設計がしっかりしていたのも効を奏したのであろう...

小牧市市民会館のあらまし

小牧市にある市民会館(ホール)と公民館(文化施設)の複合文化施設。

1971年の開館だが2008年10月20日より耐震補強を含めた大規模改修工事を実施し21世紀に相応しい施設にリニューアルした、小牧市がほこる文化施設。

1972年4月開館の小牧市公民館と一つの建て屋(鉄筋コンクリート造 地上4階 地下1階)に仲良く収まっている。

小牧市市民会館のロケーション

ところ  小牧市小牧二丁目107番地

名鉄小牧駅の北西、小牧山(小牧城)を真西に望む位地の市道に面している。

背後に「共同墓地」という静かな環境の中にある。

辺りはすぐ近くの、県立小牧高等学校、市立小牧小学校、少し離れてブリジストン化成品小牧工場がある以外は静かな住宅街といった風情。

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

公式施設ガイドはこちら。

小牧市市民会館の施設データ

Official Website http://www.ma.ccnw.ne.jp/km-siminkaikan/

  1. 所属施設/所有者 小牧市市民会館・公民館/小牧市。
  2. 指定管理者/運営団体 (一財)こまき市民文化財団/小牧市。
  3. 開館   1971年7月

付属施設・その他 

館内付属施設 
  • 館内施設;リハーサル室x2、展示場、学習室x9室、視聴覚室、創作室、料理教室、音楽スタジオ、和室、茶室、喫茶、コインロッカー等。
  • 館内施設配置図・見取り図・フロアマップはこちら

施設利用ガイド

小牧市市民会館『ホール』の音響

(公式施設ガイドはこちら。

2スロープ2フロアーの変形ホール

平土間部の「い列~え列」の3列(※あ列は補助席扱い)から「ち列」まで続く緩やかな「ハノ字段床」スロープの前半部分と、「つ列」以降の比較的急なストレート配列の後半部を持つメインフロアー。

後半部同様のストレート配列の比較的急峻な2階バルコニーを持つ2スロープ2フロアーの天井の高い変形ホール。

改修されたステージ反響板

2008年の大規模改修工事でステージサイド反響板が隙間無くプロセニアムと連続するホール内装と同意匠デザインの物に一新された。

上部反響板も、一新された天井反響板同様にプラスターボード製(※11)の凸型波状タイプのものに一新された。

※11、アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての建材メーカーの解説記事はこちら

プロセニアムと客席両側壁

脇花道背後まで続く大型プロセニアムとメインフロアー前半部は低層部が縦棧を用いた木質のグルービングパネル(※12)で表装され、中・上層部はプラスターボード製の反響板となっており、中層部に山形の異形の音響拡散体(※13)がランダムに配置されている。

さらに、プロセニアム上縁前面には大型コーナー反響板が設えられ、断面積がスムーズに変化するように配慮されており、「洞窟音」に対処している。

※12、グルービングパネルについては『ホールデザインのセオリー その2 初期反響軽減策』をご覧ください。

※13、音響拡散体については、『ホールデザインのセオリー その4 ホール形式とディテール・デザイン』をご覧ください。

「さ列」以降の客席周辺並行壁部分

続く客席メインフロアー後半部と、中層部に当たる2階バルコニー客席の両側壁も同様に木質グルービング構造材で表装されており、並行面をキャンセルするためにアンギュレーション(屈曲)設置とし定在波の発生と定在波による音響障害(※14)の発生を抑止している。

最上層部側壁は垂直に谷を刻み込んで幾分内傾させた音響拡散効果を狙った異形の反響板になっている。

※14、関連記事『ホールに潜む ミステリー ゾーン (スポット)とは?』はこちら。

大向う背後壁面

1・2階フロアー共に大向う背後壁面は、縦格子で表装された吸音壁(防音壁)となっている。

換装された天井

側壁上層部とともにプラスターボード製の一体型の大型反響板に換装されている。

所見

全国の自治体のお手本

むやみに建て替えなくても、上手に改装すれば見違えるように生まれ変われる好例であろう。

1970年代のデザインにしては天井が高くホール容積に余裕がある基本設計がしっかりしていたのも効を奏したのであろう。

約8ヶ月の長きにわたった大改装の見事な成果である。

ただその際に壁際の座席配置と平土間中央部分の見直しが無かった点が惜しまれる。

ホール音響評価点:得点94点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点50点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※客席側壁が ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは 基礎点25点に減ずる。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点23点/配点25点
  • ※木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点17点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価;得点4点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

算出に用いた値;

※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら

定在波評価

※並行壁部分は1/3以上あるがアンギュレーション処置で対策してあるので基礎点50点とした。

基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数0=50点

定在波障害顕著席数;0?席

重複カウント ;ー0?席

定在波障害顕著席総計;0?席

初期反射対策評価

※客席周囲がアンギュレーションを持たせた木質プレートなので素材基礎点25点とした。

基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数1=24点

初期反射障害1 壁面障害席 ;40席(12席/2階め列15番~26番、28席/2階ゆ列1番~14番&27番~40番)

初期反射障害2 天井高さ不足席;28席(28席/2階ゆ列1番~14番&27番~40番)

重複カウント ;ー28席

音響障害席総計;40席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数2=18点

眺望不良席数;36席/1階平土間中央部座席い~え列16番~27番

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0?席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;40席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足席;28席

重複カウント ;ー28席

音響障害席総計;76席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

ホールの施設データ 

プロセニアム型式多目的ホール

客席  

2スロープ2フロアー 収容人員1334席、

  • 内訳;固定席X972席(972席/1階。362席/2階)車椅子用スペースX5、親子室
  • フローリング、Pタイル張り、通路部のみタイルカーペット

舞台設備 

  • ステージ奥行約14.4?、有効面積約377.4㎡(約228畳)
  • プロセニアムアーチ:間口約19m、高さ約8m、実効面積;約266.4㎡(約161畳)ステージ高さ;FL+100cm、ブドウ棚(すのこ)高さStL+19m、バトン類高
  • 脇花道、、大・中・迫り、所作台、演台、指揮台/指揮者用譜面台
  • 金・銀屏風、、地絣、紗幕・浅ぎ幕・定式幕・ホリゾント幕、中ホリゾント幕・暗転幕・紅白幕・緞帳、大黒幕、オペラカーテン、雪かご、映写スクリーン
  • 反響板、オーケストラ平台、ひな段用けこみ、、オーケストラピットバレエ用シート
各種・図面・備品リスト&料金表
付属施設 
  • 洋室楽屋X6、リハーサル室x2、

小牧市市民会館ホールがお得意のジャンル

中部フィルハーモニー交響楽団のフランチャイズに成っている。

オーケストラコンサート、バレエ公演、ソリストのリサイタル、アンサンブルの演奏会、小編成の室内楽コンサートなども行われ、ミュージカル、Jポップ関係のコンサートや、往年のアイドル・エンタテイナーのワンマンショウ、ジャズコンサート、演劇・伝統芸能、歌謡歌手の歌謡ショー、懐メロ歌手の歌謡ショー、大衆演劇、落語・演芸寄席、ステージサーカス、大道芸などの色物などジャンルに拘らないバラエティーに富んだイベントが行われている。

またプロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体も利用している。

小牧市市民会館のチケット情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら

『公民館講堂』の音響

(公式施設ガイドはこちら。

2階吹き抜けの天井の高いプロセニアム形式ステージ付きの平戸土間多目的イベントルーム。

床はPタイル張りと簡素であり、建設年度が古いので、目につく仕掛けは無いが、天井が高いのが最大の美点。

客席周辺低層部内壁は一般建築用の石膏ボード、中上層部が天井同様にプラスターボード製のランダムに配置されたな凹を持つ反響板を内傾スラントさせて表装してある。

さらに天井もアンギュレーションを持たせた本格的な反響板を設えてある。

大型プロセニアムは上縁・両サイドが面取りされステージから滑らかに広がる様にデザインしてある。

ステージ反響板は準備されていないが、小編成の器楽合奏には十分対応できるステージ面積を有している。

爺婆のカラオケなんぞにはもったいないスペースである!

防音・防振が十分ではないらしく「ラッパ・鳴り物」は事前協議となっている。

リハーサル室が狭いので、こちらをリハーサルに使用したいところではあるが...。

但し、デザイナーが勘違いしたらしく?

肝心の客席フロアー周辺の壁面が直立不動?の並行壁!

さすがに「定在波のてんこ盛り」らしく、スタッキングチェアーを並べて小ホールとして使用する際には、「定在波の節目・ミステリースポット」(※21)に当たる中央と側壁間際は通路として使用されている。

参※21)当サイト関連記事 定在波で起こる音響障害『ミステリーゾーン』とははこちら。

想定定在波

「ラッパ・鳴り物」事前協議は、この辺りにも原因があるのではないか?

※特に、バスドラム、和太鼓(大太鼓)には可聴周波数帯域外の重低音(低周波振動)が含まれており、定在波の引き金になりやすい!

ホール前後方向 想定定在波基本周波数

背後壁→ステージホリゾント(常設映写スクリーン)間距離23.4m。

基本周波数に換算して約14Hz 可聴帯域外低周波振動

ホール横断方向 想定定在波基本周波数

両側壁間 13.5m 基本周波数に換算して約25.8Hz 可聴帯域重低音!こりゃ大変だー!

フロアー面→フラット天井高さ方向定在波

平土間ー水平天井なの高さ7.6mに相当する1波長定在波約45.9Hzが生じるが、ミステリーゾーン層を着座位置での耳元高さ約1mで上手くかわしているので、不問とした。

次回改修に期待する

次回改修ではぜひ客席周辺両側壁下層部も、上層部同様にスラント(傾斜)設置にするかアンギュレーション(屈曲)処理をしたパネルで表装する改修を実施していただきたい。

取り合えずの対応策

研修などでは必要がないが、「音楽会」目的で使用する場合の当面の対応策として以下の「音響衝立(ついたて)」を仮設することをご提案申し上げる。

その1.合板+石膏ボードの張り合わせ「複合パネル」?の使用

左右いずれか片面でよいので、塗装仕上げの「石膏ボードで裏打ちした合板」いわゆるホテルなどの宴会場の壁面材をホール側壁低層部に「もたせ掛けて」スラント配置する。

その2.側面に屏風を並べる

前項同様に左右いずれか片面でよいので、ホール用仮設資材の金屏風・銀屏風・鳥の子屏風、などの「屏風」類を並べる。

その3.仮設時の注意

注1、初期反響軽減が目的ではないので、側壁については片側設置で十分。

注2、同じく、音響カーテン設置は初期反響対策になっても定在波にはあまり効果はないので、お手軽だが無駄な投資となり、設備しない事。

注3、ホール後方両出入口間の壁面への設置もお忘れなく!

注4、屏風は吸音効果もあり、初期反射(※21)の軽減にも役立ち「講演会、落語会」などの「話芸イベント」開催時には効果(明瞭な活舌)が期待できる!

参※21)当サイト関連記事 ホールでの過大な初期反射による音響障害はこちら。

ホール音響評価点:59点(暫定値)

§1,「定在波対」策評価点:24点/50点満点

  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、天井形状、天井高さ、等の要素をそれぞれ減点法で算出。
  • ※約25.8Hzホール横断 可聴帯域重低音定在波、が生じているので、基礎点を25点に減じ、音響障害エリア点も-1点、としスタッキングチャーの配置の仕方で音響障害席が変化するので、席数は不問?とした。

§2、残響その1 「初期反射」対策評価点:12点/25点満点

  • ※壁面の素材・形状、客席配置、その要素で減点算出。
  • ※壁紙表装合板+石膏ボード(いわゆるホテルの宴会場仕様)なので基礎点は20点として算出。

§3,客席配置への評価点:20点/20点満点

  • ※壁際席、大向こう席、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で減算。
  • 客席配置で変化するので障害席不問とした。

§4,残響その2「後期残響」への配慮評価点:3点/5点満点

  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で減点算出。

公民館・講堂の施設データ

ホール様式 

講堂様式、平土間プロセニアム型式舞台付き多目的イベントスペース。

  • 床面積 13.5mx23.4m、床面積約316㎡(約191畳)最高部天井高さ約7.6m
客席  
  •  約18.6mx約13.5m、有効床面積約246㎡(約148.5畳)、天井高さ(最高部)約7.6m 1フロア 
  • 収容人員360席、
  • 内訳;スタッキングチェアーX360席、、Pタイル張り
舞台設備 
  •  幅約13.5mx奥行約4.8m ,プロセニアムアーチ:間口約9m、高さ約4.5m(実効面積;約43.2㎡;約26畳)、ステージ高さFL+90cm、バトン類、スクリーン(240x640)。
各種・図面・備品リスト

公民館・講堂がお得意のジャンル

主にセミナー、講演会、市民団体の集会、お稽古事の発表会などに用いられ、落語・演芸寄席、などジャンルに拘らないバラエティーに富んだイベントが行われている。

また展示会場、パーティー・レセプションなどの会場としてもつかわれている。(但し飲酒禁止!)

その他の付属施設の音響

リハーサル、音楽スタジオ

公式施設ガイドはこちら。

2室のリハーサル室、と、音楽スタジオを備えている。

第1リハーサル室、;床面積約44㎡(約26.5畳)タイルカーペット床

第2リハーサル室、;床面積約130㎡(約78.5畳) フローリング床、

バレエ・ダンスレッスンバーを装備した壁面ミラー(カーテン付き)を備えている。

アップライトピアノを装備している。

両室とも全面有孔音響ボードで表装された遮音(吸音)構造を持ち、第2リハーサル室はヴォールト(蒲鉾天井)天井を持つ。

音楽スタジオ;床面積約97㎡(約58.5畳) 木質パーケット床、

アップライトピアノを装備している。

全面有孔音響ボードで表装された遮音(吸音)構造を持っておりラッパ・鳴り物OKだが、音響的配慮はあまり見られない。

第2リハーサル室ルーム音響評価点:50点

§1,「定在波対策」評価点:25点/50点満点

  • ※ルーム低層部に1対以上の並行したプレーンな垂直壁がある場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。

§2、「初期反射」対策評価点:25点/50点満点

  • ※ルーム低層部3面以上がプレーンな垂直壁の場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。

デジタヌの豆知識

小牧市市民会館のある小牧市とこれ迄の歩み

推計人口、148,678人/2018年4月1日

小牧市-平安通(名古屋)17分/500円/名鉄・地下鉄直通/10.6km

小牧市ー(平安通)ー(久屋大通)ー(名古屋)ー品川 2時間22分/11,660円/名鉄-地下鉄-地下鉄-新幹線/377km

濃尾平野(尾張)のほぼ中央にあり、名古屋市の北側に位置しており、複数の高速道路が交わることから、陸上交通の要衝となっている。

小牧市市民会館へのアクセス

鉄道・バスなどの公共交通

名鉄小牧線
「小牧駅」西口下車、徒歩約10分800m

マイカー利用の場合

(※駐車設備 398台 があるのでマイカー利用もOK)

名古屋高速11号線花塚橋北ランプから約9分3.1km

小牧ICより約8分2.1km

小牧市市民会館のこれまでの歩み

1971年(昭和46年)7月 - 市民会館(ホール)開館
1972年(昭和47年)4月5日 - 公民館開館
1988年(昭和63年)10月 - 改修工事
2008年 (平成21年)10月20日 - 耐震補強大規模改修工事開始
2009年(平成22年)6月30日 - 大規模改修工事終了
2009年(平成22年)7月1日 - リニューアルオープン

 

公開:2017年9月10日
更新:2022年9月30日

投稿者:デジタヌ


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