大阪カテドラル聖マリア大聖堂《聖堂音響Navi 》
,
音楽巡礼
細川大名家の屋敷跡に建設されている事でも有名な施設。大聖堂内内陣左側には堂本印象の作とされる細川ガラシャを描いた「最後の日のガラシア夫人」が掲げられている。本来はカトリック典礼に用いる大聖堂であるが、ミサのない時には、一般の音楽団体にも貸し出されている。
大阪カテドラル聖マリア大聖堂
Official Website http://www.tamatsukuri-catholic.com/index.html
カトリック玉造教会に在る大聖堂。
現在の聖マリア大聖堂は近代建築家・長谷部鋭吉の遺作ともいえる作品。
大阪カテドラル聖マリア大聖堂のロケーション
ところ 大阪市中央区玉造2-24-22
中央区の千日前通りから中欧大通り大阪城にかけての、この一帯は教育機関、や文化施設などが集中している「文教地区」。
特に大阪カテドラル聖マリア大聖堂がある中央央大通り、玉造通り、玉造筋、上町筋で囲まれた一帯は、大阪女学院短期大学・高等学校・中学校、城星学園小・中・高等学校、大阪府立中央視覚支援学校、大阪市立玉造小学校などの教育機関や森ノ宮ピロティーホール、数多くの公園もあり、大阪カテドラル聖マリア大聖堂
のすぐ近くの西側には広大な難波宮跡公園がある文教エリアとなっている。
大阪カテドラル聖マリア大聖堂へのアクセス
鉄道・バスなどの公共交通;最寄りの駅
・JR環状線 森ノ宮駅から中央大通りを西へ徒歩15分 。
・地下鉄中央線 森ノ宮駅 2番出口を出て西へ徒歩10分。
・地下鉄長堀鶴見緑地線 森ノ宮駅 7番出口を出て西へ徒歩15分 。
【玉造方面から】
・JR環状線 玉造駅から長堀通りを西へ徒歩15分 。
・地下鉄長堀鶴見緑地線 玉造駅 1番出口より徒歩10分 。
大阪カテドラル聖マリア大聖堂のこれまでの歩み
1894年 創立「聖アグネス聖堂」が建造される。
1945年 大阪大空襲により滅失。
1963年 戦後18年にして大聖堂再建。
1995年1月17日 阪神淡路大震災被災、鐘楼倒壊。聖堂内装等に被害。一時閉鎖。同年大聖堂修復完了。
デジタヌの独り言、礼拝堂の思い出
今を遡る30年ほど前1986年の頃、最初のホルンを購入して2年目ぐらいの時、近くの大阪芸大の卒業生と知り合いになった、和歌山県から上阪していた彼は卒業後もそのまま研究生として大阪に残り、所謂就職浪人のフリーターとして近所の賃貸マンションに住んでいた。
近所の河川敷で練習していた彼と知り合いになり、弟子入り?した。
小生が始めて付いたプロ(の卵)のホルン吹きであった。
彼から教わったことは、『間違っても良いから、音を探るような事はせずに、思い切ってアタックをかけろ!』であった。
当時は、演奏会の曲のお復習い以外は、R・シュトラウスのHrコンチェルト等で遊んでいただけで、真剣にメソッドをさらって無かったのでそうとしか言いようがなかったのであろう。
それはさておき、我が師匠の友人にトランペッターがいたが彼もまた同じようなフリーターで、時たまくるトラ仕事で凌ぐ身の上であった。
ある時、その彼が加わっていた金管アンサンブルが演奏会をするので、チケットを買って欲しいと師匠から頼まれた。
そして訪れたのが大阪カテドラル聖マリア大聖堂であった
大聖堂に入った途端にそのスケールに圧倒された!
(Sawada Lighting Design & Analysis Inc.の紹介記事・写真はこちら.。)
確かに絶対容積ではフェスティバルホールなどよりはかなり小さい、そこいらにある「並みの中ホール」程度では有るが、
平土間でしかも圧倒的な天井高さのシューボックス?空間は、実際の容積以上のパーステクティブ(※weblio)を感じさせ、一瞬たじろぐ程の威圧感さえ感じるほどの空間であった。
演奏は、中央の祭壇部分を避けるような形で、正面左隅の一角で行われたように記憶している。
丁度ミサを行う際にオルガンのリモート・キーボードを設置する当たりである。
全面、石とガラスで作られたホール
全面、石とガラスで作られたホールであるから「相当に響く」構造ではあったが(※1)天井が高いのでそれほど耳障りではなく、金管アンサンブルが奏でる古楽曲にはピッタリであった。
小生の好きなガブリエリの曲では最高の音響効果が得られていたように記憶している。
最も当時若かったので「エコー・マジック」に心引かれていた時期でもあった。
今度はこのホール?で大オルガンの響きを聞いてみたいと思っている次第である。
大阪カテドラル聖マリア大聖堂の音響
※以下令和元年5月7日の実地検分(見聞?)によるレポート
注1.実測値からは多少の差異があることをご承知おきください。
教会側の意向により計器による実測許可が得られませんでしたので、記事中の各部の寸法については視覚障害者の為に床面に設置された「320mm□jis点字ブロック」をもとに、推測した「推定値」を(マピオン電子地図による)基に建屋外形寸法により校正した数値を用いています。
※印のある数値は現在一般に公表されている数値です。
注2.寸法は尺貫法による。
数値は建築物の通例に従い「尺貫法でデザイン」されているようで各部寸法は尺貫法を基にメートル法に換算した値です。
大聖堂建屋
建物は鉄骨鉄筋コンクリート、柱間(径間)寸法;聖堂正面間口;約17間/約31m、(最大幅約19間/約35m)x全長約38間/約69m、※建坪750坪(約2479㎡)建坪750坪、※軒高11間/20m、大聖堂。
この聖堂は1部(屋根)は鉄骨青銅板葺きシーリングなので、内部空間は実質4階吹き抜け相当だが最高部で実質16.7mの高さを持っている。
イタリア産の大理石で覆われた床に木製の定員6名の長いす(幅10尺≒3m)が幅方向に6列、奥行き方向に16列、都合95脚(最前列下手角はオルガンコンソール)並べられており、570名が着席でき、更に後部には車椅子などが入れるように6列分ほどの余裕が有る平戸間になっておりが消防法(市条例)の都合(届け出)で常設は570名着座になっているようである。
フロアーデザイン
聖堂正面扉の前はホワイエになっており、聖堂との間は扉の構造になっている。
間口17間(102尺=約31m)x奥行き38間(約69m)共にほゞ外形と同じサイズで天井までの高さは両袖通路部分と中央反響板最下部で約3層相当50尺(約15,2m)で、中央最高部は55尺16.7m)ある。
※1、阪神淡路大震災被災後、現在は石膏ボード+木質パネル+樹脂系塗料に改装されており、初期反響はかなり抑制されている。
カソリック典礼に従う聖堂内配置
聖堂内部は典型的なカソリック聖堂配置で正面中央に間口10間(約18.2m)x奥行き56尺()の祭壇(ステージ)が設えられ右脇が幅4間(約7.2ⅿ)の列席者壇で、下手にはホール側壁にはみだした6間幅(約11m)x17間(約31m)の小礼拝堂(集会室)が設けられている。
床面
奥行き間口102尺(12間;約31m) 奥行き;149尺の礼拝席フロアはご自慢の本場イタリア?産の大理石の床で、前後に6径間に分かれており前後の1径間(3間3尺)オルガンテラス下部の後方通路、と前部にある張り出し祭壇部分)はフラットで中間部分の4径間が僅かなカントが付いており緩やかなスロープになっている。
但し車椅子などをご利用の場合は、「車止め」は事前に準備しておかれることをお勧めする。
壁面
当初は床面同様に大理石で表装されていたらしいが、1995年1月17日の阪神淡路大震災を被災し、壁面の一部が剥落したため、現在は、ホテルの宴会場や貸し会議室同様の、石膏ボードと合板のの合材の表面を塗装仕上げした、プレーンな垂直壁で表装されている。
尚、中上層部壁面左右合わせて16か所のご自慢のステンドグラス窓は健在である。
天井
中央祭壇部分から続く中央部分10間(約18.2m)幅の部分の天井は、公共ホールのような木質パネルを横桟状に渡した波状天井で、両袖の21尺約6.4m)の部分は壁面と同じ表装のプレーンな水平天井となっている。
但し前途したように礼拝者の参列席部分に当たるフロアーが斜面の為に高さ方向の「定在波」(※2)による音響障害(※3)の心配は無い!
参※2)当サイト関連記事 定在波とははこちら。
参※3)当サイト関連記事 定在波で起こる音響障害『ミステリーゾーン』はこちら。
祭壇
間口10間(約18.2m)の祭壇は3段に分かれており、最上段は奥行き56尺(約17m)フロアレベル+約2m位あり、前縁はからは10段の階段になっている。
最後部の両コーナーは背後壁から奥行き方向23尺(約9.97m)両側壁から11.5尺(約3.5m)ずつ丁寧に面取りされたハノ字形状側壁(反響板?)になっており上部の波状天井と共に定在波が生じないように工夫されている。
前途したように下手側は小礼拝堂になっているが間仕切りはガラス窓で開放できるようになっており、上手の来賓席とは区切るものがないので、壁面間隔が実質82尺(約24.8m)以上確保されており、可聴帯域内の定在波は生じていない。
更に中央部前部に約12尺(約3.6m)程度の部分が高さ1.2mほどのエプロン祭壇になっており、その前部に更に60cm程度の高さを持つ奥行き2m幅間口16尺(約4.85m)ほどの祭壇が設えてある。
ステンドグラス
大小およそ100個の窓は、通風窓をのぞき、ベニス工房・羽淵紅州の作によるステンドグラスで、イエス・キリストの生誕と洗礼、聖母マリアの生涯、そして小聖堂には日本人に福音を伝える聖フランシスコ・ザビエルが描かれている。
パイプオルガン
大聖堂入り口から入ってすぐ真上2階部分に関西でも有数のパイプ数2400のパイプオルガンが設置されている。
『"壁面間隔20m超"のセオリー』で定在波による音響障害を回避
日建設計におられた故・長谷川鋭吉という方は、建築音響工学にも長けておられたようで、礼拝堂という言葉のイメージからは想像できないような、定在波による音響障害を回避した「肉声の良く通る」「余計な色付け」の少ない「トランジェント(忠実度)」の良い「ホール」に仕上げられておられる、
想定定在波
- 間口約31m;約11.2Hz/1λ、約16.9Hz/1.5λ、約22.5Hz/2λ、約28.1Hz/2.5λ、約33.7Hz/3λ、
- 奥行き約68m;約5.1Hz/1λ、祭壇前部が急峻な階段なので、礼拝席では前後方向の定在波は生じていない。
- 天井高さ約15m;約23.4Hz/1λ、
赤字は可聴音域内重低音。
高さ方向については、間口方向中央部分10間幅の部分については、前途のごとく礼拝堂全長に渡って波状天井となっているので、抑止され駆逐されている。
更に両袖、部分についても、礼拝席フロアーについては床面にカントが付いたスロープになっているので平行面がキャンセルされ定在波は阻止されている。
聖堂側壁にラウドスピーカーが設置されていたが、初期反響も程よく抑制されており、過度な残響もなく(清掃作業が行われていた当日の「作業騒音、来館者の足音等」を聞いた実感)
定例の礼拝では、参拝者全員に肉声だけでも十分にいきわたる、「声の通りの良さ」を備えた礼拝堂であると確認できた。
低層部左右壁面については、ガラス窓、とプレーンな合板・石膏ボード合材壁なので、礼拝者が参列していれば、高次の定在波は生じずらいと想われる。
小さな礼拝堂
正面祭壇左部分の2階相当部分には小さな礼拝堂も作られている。
クラシックコンサート開催時等の注意
ご自慢のパイプオルガン演奏、パイプオルガン演奏で生じる可聴帯域(20~20KHz)外の重低音や低周波振動定在波のうちホール高さ方向定在波についてはパイプオルガン上部迄前途した波状天井で抑止され、ホール戦後軸についてもパイプオルガンそのものの前面凹凸形状で初期反響音が緩和され、高次の定在波の発生を抑制していると思われる、幅方向についても同様。
ピアノ・チェンバロの類は(礼拝には必要なく)準備されていないので、持ち込む必要があるが、もちろん教会側と事前に協議する必要があり、宗教施設であり宗教曲以外は許可されない場合もありうる。
前途したように都心部でありながら、閑静な文教地域にあり、夜間は殆ど環境騒音もないが、外壁は、コンクリー壁とガラス窓(&ステンドグラス)だけの施設なので、ラッパ・鳴り物の演奏は基本お断りであるが、宗教曲の場合は、周辺住人?のご理解をへて、開催されるばあいもあるようである。
通常の小規模演奏団体のコンサートでは、下手、オルガンコンソールを移動して、この辺りで演奏されるようだが、大規模な宗教曲の演奏などでは、本祭壇部分をステージに使用する場合もあるようで、この場合には、ステージ・客席周辺に録音セッションなどで用いる「音響衝立」を仮設したほうが良いであろう。
オルガン奏者の方へ
オルガンテラスについては、高さ方向定在波には配慮してあるが、ホール前後方向についてはプレーンで両面共に祭壇背後もオルガン背後壁も垂直な壁面なので、オルガン演奏台では定在波が生じている。
よって、ミサ以外のオルガン演奏でもリモートコンソールを使用したほうが良い、最悪でも音色のプリセットだけでもリモートコンソールで行った方がよいであろう。
音響評価採点について
今回は宗教施設であり、座席配置が固定されていない施設でもあり具体的な音響採点は、差し控えました。
大阪カテドラル聖マリア大聖堂の施設データ
- 所属施設/所有者 カトリック玉造教会/カトリック玉造教会。
- 指定管理者/運営団体 カトリック玉造教会
- 竣工・開館 1963年落成/大聖堂
- 設計 長谷川 鋭吉
- ゼネコン 聖和建設(株)
- 建物型式 大聖堂/教会
- 柱間寸法;聖堂正面間口;約17間/約31m、(最大幅約19間/約35m)x全長約38間/約69m、建坪750坪(約2479㎡)
- 収容人員(礼拝者) 約570名(6人掛け木製礼拝椅子x6基(最前列5基)x16列) 司祭・その他主催者・スタッフ除く消防届出人員。
- 付帯設備 小さな礼拝堂(集会室)、ホワイエ。
- 付属施設その他の設備 パイプオルガン他
- 外来者駐車設備、乗用車41台分(内身障者用3台分含む)※大型車両要事前問い合わせ。
※注、表中"約"の記載のある数値は「推定値」その他は公表値
公開:2017年9月30日
更新:2022年9月30日
投稿者:デジタヌ
Zepp Namba/大阪市浪速区内《 ライブハウス音響Navi 》 < TOP >エブノ泉の森ホール/泉佐野市《ホール音響Navi》