狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

千葉県文化会館 《ホール音響Navi》

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千葉県の誇る「ゆとりで稼ぐ音響ホール」千葉県民会館

1967年4月1日開館ということで築後半世紀を迎え「建て替えビジネス」の標的となっているが?、半世紀を経て今なほ薄れないその斬新性と音響で、首都圏屈指のプレミアム性を発揮しており、京葉銀行文化プラザ・音楽ホール亡き後、アマチュアオーケストラ運動発祥の地クラシック音楽の聖地「千葉県」を代表するホールの一つとなっている。

千葉県文化会館のあらまし

Official Website http://www.cbs.or.jp/chiba/index.html

木をふんだんに使った収容人員1787名の大ホールとこぢんまりとした小ホールの2つのホールを持つ施設

音響建築デザイン面から眺めた千葉県文化会館

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

公式ガイドページはこちら

1967年の竣工なので1981年施行の新耐震基準には適合していない施設ではあるが、「長寿命化」を打ちだしている千葉県としては抜本的な改装も検討しているようではある。

大ホール

(公式施設ガイドはこちら)

三層2バルコニー(2・3階テラス席付き)の不等辺6角型の天井の高いホール。

不等辺6角形を用いて定在波を駆逐!

不等辺とすることで、基本的には対抗する並行面はステージと客席背後壁だけであり、客席背後の壁面もアンギュレーション壁面を用い館内から対抗する平行面を一掃し定在波(※1)とその障害(※2)を駆逐している!

1967年にしては巧みな音響設計

1967年竣工の基本設計なので可動プロセニアムはないが、プロセニアム前縁に天井にまで至る巨大なコーナー反響板が設えて有り、ステージ反響板との急激な断面形状変化を軽減し"洞窟音"を一掃している。

斬新な壁面

外傾・内傾のコンビネーションでホール壁面を構成し、前半部分はホイッスルのような形状の木質凸面パネルを並べ、後半壁面はアルミ形材を大胆に用いたピッチの異なる「立て格子」を用い客席周辺には細かいピッチ、上層部は大きなピッチの縦格子で表装した2重壁面とし、初期反響軽減と後期残響創出の両効果を狙ている。

天井

天井は凸面の円弧状の木質パネルを横方向に並べた反響板で表装されている。

更に2・3階バルコニー席も列数を制限し階下へのオーバーラップを少なくするように配慮されている。

客席周辺の人手に触れる部分は木材を加工して用いている。

総評

音痴揃いの評議員先生を揃えた(一社)日本音響家協会の当てにならない「優良ホール100選」ではあるが...このホールはまあまあの出来。

一部壁際の席があったりして難点も無くも無いが、おとしが御歳だしまあ良いか...。

1967年当時近代的な音響設計の手法(コンピューターシュミレーションや1/30モデル音響実験)も行わずに「勘と経験と模倣」だけでこれだけのホールをデザインしたデザイナーには賞賛を贈りたい。

という訳で、狸穴総研・音響研究室・建築音響研究調査班・厳選『後世に伝えたい・真の銘ホール50選』に選ばせていただく。

ホール音響評価点:得点90点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点50点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※客席側壁が ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは 基礎点25点に減ずる。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点21点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点15点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点4点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

算出に用いた値;

※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら

定在波評価

※障害発生エリア席が皆無なので基礎点50点とした。

基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数0=50点

定在波障害顕著席数;

定在波「節」部席;0席

定在波「腹」部席;0席

定在波障害顕著席総計;0席

初期反射対策評価も

※障害発生エリア壁面材質がアンギュレーションのある木質グルービングパネルなので素材基礎点25点とした。

基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数2=23点

初期反射障害1 壁面障害席 ;7/2階11列37番~43番、

初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;125席(32席/1階36列全席、93席/2階14~16列全席、)

重複カウント ;ー7席

音響障害席総計;125席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数3=17点

眺望不良席数;84席/1階平土間中央部座席2~8列20番~31番

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;7席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;125席

重複カウント ;;ー7席

音響障害席総計;209席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

小ホール

客席全面木質壁の天井の高い(高さ:4m)、「こぢんまり」とした1スロープ1フロアーの方形ホール

フロアデザイン

最前列から7列が平土間で通路を挟んで後部座席が8列目から平土間に近い緩やかなスロープになっている。

変則的な通路配置

中央・及び後部のホール出入口が下手にあるために、下手側壁際は全面通路になっているが、上手側は中央通路より後方8列~14列は側壁際までビッシリ座席が詰まっている。

大向こう通路背後壁

大向こうは通路になっており、背後は調整室になっている。側壁と同じパネルを用いた壁面は僅かに「内傾スラント」させて表装されている。

ホール後部上部は何故か大きくホール内に突出しており一部照明用のキャットウォークとなっている。

スラント側壁面

壁面はすべてプレーンな木質パネルで表装され、両側壁中低層部は内傾スラント設置されている。

プロセニアム

プロセニアムは何故か正面から眺めて何故か台形をしており下面に対して上縁がやや狭くなっている。

サイドプロセニアムは前面は僅かながら「ハノ字」でかつ 大向こう壁面同様に内傾スラント設置されている。

ステージ設備

セミナーなどの講演会が主な用途らしく、"演台"に近い60cm程度の低いステージで、7分割の移動可能な垂直反響板が用意されているが天板は無い。

天井

壁面パネルと同質材でヴォールト風に中央部が一段高くなっている反響板となっている。

もちろん床面と平行にならないように、中央通路部が最高部となるように前・後半共に最後部に向かってスラント設置されている。

総評

ここ迄完璧な'定在波対策(※3)を施しながら、収容人員を稼ぐために、上手後部座席を壁際までビッシリ詰め込んだのはいただけない!

次回改修に期待
定員削減

平土間中央部偶数列2・4・6列から各1席と8か~14列の19番席7席計10席を撤去し定員242席とすれば音響障害席はなくなる。

天井改修

客席断面図が公開されていないのでホール後半上部空間を"何"に使用しているのか判明しないので、後部座席の天井高さ改修の可能性は未知であるが、フロアー配置から推察して上部はまさしく"空間"になっている模様である?

天井裏の不明空間は成田空港空路との兼ね合い?

成田国際空港に近いので、空路との兼ね合いで、ジェット騒音対策として、巨大な防音空間を設けたのかもしれないが...?

公式サイト施設概要を見る限りは建物は「鉄筋コンクリート」となっているので。屋根はコンクリートにタールの防水処理をほどこした通常の仕上げと推察される。

この際内面の「結露対策」を兼ねて「外断熱材」として、道路建設などで用いられている極厚(2~300mm厚程度)の発泡スチロール板を屋根上に設置しカラー鉄板で覆えば、航空機騒音対策(遮音)にもなる。

ホール後半天井反響板の撤去

"未使用空間"が広がっているのなら、一部天井まで回り込んだ大向こう通路上部天井のみを残し後半部分の天井は全面撤去したほうがよい。

しかる後に、天井反響板を撤去し、改めて、周囲にキャットウォークを設置しなおし、ホール中央に下面のみ反響板で覆った照明用のキャットウォークコラム、その他の部分は下面をグリッド(格子)とネットを組み合わせた釣り天井とすればよい。

客席後半部分天井反響板を撤去して、構造体・空調ダクト・設備配管剥き出し(※4)の天井に表装し直せば、前途客席撤去と合わせて、素晴らしい「プレミアムコンサートホール」が誕生し首都圏から客を呼べる施設となるであろう。

ホール音響評価点:得点78点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点50点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※客席側壁が ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは 基礎点25点に減ずる。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点17点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点8点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点3点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

算出に用いた値;

※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら

定在波評価

※障害発生エリアが皆無なので基礎点50点とした。

基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数0=50点

定在波障害顕著席数;

定在波「節」部席;0席

定在波「腹」部席;0席

定在波障害顕著席総計;0席

初期反射対策評価

※障害発生エリア壁面材質がすらんと設置の木質パネルなので素材基礎点25点とした。

基礎点B2=素材基礎点2点ー障害発生エリア数2=23点

初期反射障害1 壁面障害席 ;7席/8~14列19番全席、

初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;57席/12~14列全席、

重複カウント ;ー3席

音響障害席総計;61席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数3=17点

眺望不良席数;66席/平土間中央部座席2~7列4番~14番

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;7席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(3m以下)席;57席

重複カウント ;ー3席

音響障害席総計;127席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

練習室

(公式施設ガイドはこちら。

丁寧な設えの5室の練習室を備えている。

千葉県文化会館のロケーション

  • 所在地  千葉県千葉市中央区市場町11番2号

千葉都市モノレール1号線県庁前駅の東400メートルの丘陵地に建つ。

トリップアドバイザーの周辺口コミガイドはこちら。

千葉県文化会館へのアクセス

千葉都市モノレール県庁前駅より徒歩8分

千葉県文化会館がお得意のジャンル

大ホール

オーケストラコンサート、オペラ・バレエ公演以外にもミュージカル、Jポップ関係のコンサートや、往年のアイドル・エンタテイナーのワンマンショウ、ジャズコンサート、歌謡ショー、懐メロ歌手の歌謡ショー、有名タレントの座長ショー、現代演劇、伝統芸能、落語・演芸寄席、大道芸、パフォーマンス・ショー等ジャンルに拘らない幅広い演目でこのエリアの多くの人達に受けいれられている。

またプロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体が利用している。

レジデントオーケストラ

可愛いレジデントオーケストラ「千葉県少年少女オーケストラ」を擁する

小ホール

主にセミナー、講演会、市民団体の集会、お稽古事の発表会などに用いられ、ジャズコンサート、小編成バンド、のコンサートや落語・演芸寄席、大道芸、パフォーマンスショーなどジャンルに拘らないバラエティーに富んだ催しが行われている。

千葉県文化会館の公演チケット情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら。

施設データ

  1. 所属施設/所有者 千葉県文化会館/千葉県。
  2. 指定管理者/運営団体 (公財)千葉県文化振興財団[2]/千葉県。
  3. 開館    1967年4月1日
  4. 設計  大高正人
  5. ゼネコン 戸田建設
  6. 内装(音響マジック) 

大ホール

  1. ホール様式 、プロセニアム型式多目的ホール。
  2. 客席 (座席表はこちら)  3フロアー 収容人員 1787名、2・3階テラス席(桟敷席)、可動床、
  3. 舞台設備 (舞台平面図はこちら)、プロセニアムアーチ:間口:18m 奥行:15m 高さ:11m、ブドウ棚(すのこ)、脇花道、可動反響版、オーケストラピット(可動床)、
  4. その他の設備 、楽屋x7、

小ホール

  1. ホール様式 プロセニアム型式平土間多目的ホール。
  2. 客席 (座席表はこちら)  1フロアー 収容人員 252席、幅約11.7m
  3. 舞台設備 (舞台平面図はこちら)、有効幅/最大幅;約10.8m/約14.5m、緞帳・バック幕間有効奥行き/最大奥行き;5.7m/約7.5m、有効面積;約61.5㎡(約37畳)、プロセニアムアーチ:間口:8.5m  高さ:4m、tライトバトン;5本、美術バトンx5本、ステージ高さFl=約60cm
  4. 反響板設置時;7分割移動式反響板(側面x4、背面x3、天板無し)最大有効奥行き(フットライト→背面反響板)約4.5m、有効面積;約31.5㎡(約19畳)
  5. その他の設備 、楽屋x3、

付属施設・その他 

館内付属施設 
  • 付属施設 リハーサル室x、練習室x4、展示室、会議室x4、研修室x、和室、ブッフェラウンジ
付属施設配置・見取り図

施設利用手引き

千葉県文化会館これまでの歩み

1962年 千葉大学教育学部(旧千葉師範学校)が西千葉キャンパスに移転し

1967年2月 跡地に竣工.、同年4月1日に営業を開始。

2013年3月に、に認定される。

千葉県少年少女オーケストラがこのホールを本拠地として活動を行っている。また、毎年千葉県吹奏楽コンクールA・B部門の予選及び本選の会場にもなっている。

2012年度より、隔年で日本学校合奏コンクール・グランドコンテスト(全国大会)の会場となっており、その予選にあたる千葉県大会が毎年この会場で開催されている。

※参照覧

※1-1、定在波の悪影響に関する一般人向けnatuch音響さんの解説記事はこちら

※1-2、定在波に関するWikipediaの(技術者向け)解説はこちら。

※2、関連記事『ホールに潜む ミステリー ゾーン (スポット)とは?』はこちら。

※3、定在波対策については『第4章 セオリーその1 "定在波の駆逐" と "定在波障害の回避策"』をご覧ください

※4、剥き出し天井についての詳述は『第10章第3節ホール構造体剥き出し天井』 をご参照ください。

 

公開:2017年9月10日
更新:2022年9月30日

投稿者:デジタヌ


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