音楽便利帳

演奏家に贈る ホール選びのコツ その3《シリーズコラム》欧風シューボックスホールに見掛け倒しが多い理由!とは...

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序章 ケバイ「シューボックスホール」にはご用心!

1982年のザ・シンフォニーホールの成功以来、全国にシューボックスホール"紛い"の多目的公共ホールが建設されるようになりましたが、豪華な内装で飾り立てた「見掛け倒しの」欧風トラディッショナルデザイン」のシューボックスホールも数多く見受けられるのも事実です!

第1章 エコーたっぷりのカラオケ音響に惑わされてはいけません!

1960年代の年季の入ったホールはご用心!

更に1960年代初頭の第1次公共ホールブームで全国各地に建設されたホールは、西欧から「後期残響の概念」が伝えられる以前であり、エコー(初期反響)と余韻(後期残響)(※1)の混同(勘違い)が数多くみうけられます。

エコー(初期反響)と余韻(後期残響)は別物!

ステージから到達する「直接音」とほぼ同じ音色(周波数成分)のエコー(初期反響)は直接音のトランジェント(忠実度)や「肉声の通り」を悪くし、ステージから届く楽音の輪郭がぼやけて「定位」を悪くしててしまい!さらには四方八方から襲い掛かる?「エコー;ディレー音;リバーブ音」は、方向感覚を狂わせ「ホール酔い(※2)」にも通じ。むしろ不愉快な要因の一つです。

「銭湯の洗い場」風に強烈で執拗な初期反響で、畳みかけてくるホールは...

強烈で執拗な初期反響で、畳みかけてくるような下品なホールは良いホールとは言えません!

更になかなか無くならない初期反響(リバーブエコー)は「定在波(※3)の滞在時間」を長くし良い結果には結びつきません!

銭湯の洗い場が不愉快なのはこのせいです。

※オーディオの世界でもハイファイLPステレオ盤初期のころ(1960年代)には、「エコールーム(※4)」などで人為的なエコーを施すのが流行った時期もありましたが、デジタル録音・デジタルリリースの現在「ハイレゾリューション;高分解能」が主流となり、人為的なエコー(電子的ディレー音、リバーブ音)等の「余分な付加物」の無いトランジェントの良い「クリアーな音色」の録音が良しとされるようになってきました。

第2章 シューボックス・ホールを選ぶときに留意すべき点

シューボックスデザインの難儀な点は正多角形同様に対抗する完全平行壁面が多く、定在波による音響障害(※5)」が起こりやすい点にあります!

第1項 オーディトリアム全体から"定在波を駆逐"する努力はされているか?

オーディトリアム(オープンステージ・客席)から"定在波を駆逐し"音響障害を一掃することが重要です。

第1項 壁面のスラント設置が重要ポイント!

シューボックスデザインホールにおいて「諸悪の根源」である定在波を駆逐・抑止できる唯一有効な手段は「壁面を外反若しくは内傾」させて対抗壁面から平行部分を駆逐する壁面スラント設置しかありません!

扇形ホール、釣り鐘ホール、Ω型馬蹄形ホールと違い、ボックスデザインのシューボックスでは「壁面スラント設置」は必須条件です!

第3章 平土間部分の天井(側壁)に問題の多い欧風シューボックスホール

特にトラディッショナルな欧風建築風・公会堂デザインの"水平設置"の格天井(※6)などをホール全長に渡り採用すると床面とプレーンな面同士で完全平行することとなり、「高さ方向の定在波」(※7)に悩まされる結果となりやすい事です。

以下に実例(好例・失敗例!)を紹介しますと。

好例

大型ステージ上部スラント反響板 適用例

ザ・コンサートホール(ホール音響Naviはこちら

別建ての天井反響板設置例

石川県音楽堂(ホール音響Naviはこちら)の様に天井下部に別建ての天井反響板を設置するか、「新・奏楽堂」(ホール音響Naviはこちら)の様にこの部分の天井が高さ・角度可変できる大掛かりな「カラクリ天井」(※8)が必要です。

聖堂風のトンガリ天井の好例

さらには聖堂風の「とんがり屋根」などで平土間部分と天井との完全平行をキャンセルする方法もあります。

タケミツ メモリアル(ホール音響Naviはこちら)

異形天井での成功例

逆ヴォールト(凸面天井)も平行部分キャンセルには効果がりますが、壁面とのコーナー部分に鋭角部分が生じてしまい、別の音響障害を引き起こす場合もあります。

ザ・シンフォニーホール(ホール音響Naviはこちら)その後多くの模倣を生んだ迷天井?

凸面逆ヴォールト天井適用例

三井住友海上しらかわホール(ホール音響Naviはこちら)

平板天井の失敗例

水平フラット天井と平土間の組み合わせで高さ方向定在波対策が軽視されているホール達。

盛岡市民文化ホール、彩の国音楽ホール、福井音楽堂、アクトシティ浜松小ホール、豊田コンサートホール、サラマンカホール、大阪・いずみほーる、福岡シンフォニーホール、等多数!

最終章 シューボックスコンサートホール品定めの着眼点

第1節 優れたシューボックス・ホールの基本デザインコンセプトとは

"芸術ホール"の見極めにおいては、以下の2点が重要な項目となります。

オーディトリアム(ホール)を立体的に捉え、(低・中層部)に当たる客席周辺、と天井を含めた上層部では、壁面の処理は異なってきます。

(概ね床面から1.8m以内の)"低層部・客席層"では

一つ 客席周辺(低層部)は定在波対策を主眼に!対策(壁面処理)がなされているか?

一つ (天井を含む)最上層部の壁面処理を主体に"後期残響"創出がなされているか?

第2節 豪華な内装に誤魔化されない事!

(概ね床面から1.8m以内の)"客席層"では

壁面に「額縁」と「突板を張り付け」て凹凸を持たせた豪華なビクトリア調度は、インパクトが強い内装で「来場者の目を奪い」特別な空間の様に錯覚させられがちですが...

実際には初期反響軽減と、散乱波の創出が目的で、定在波の抑止にはつながっていません。

確かに定在波のトリガーとなる「初期反響=エコー」を低減すれば「定在波の定在(持続)時間」の短縮にはつながり定在波の「抑制(制動)」にはつながりますが、「抑止(駆逐)」にはつながりません!

シューボックス型ホールを選ぶときの留意点

並行する対抗面の多いシューボックス型ホールでは、定在波障害が起こりやすく、万が一の発生に対しての「お客様保護」対策が重要です。

第3節 定在波の音響障害を無くすための具体策(評価ポイント)

"壁面間隔20m超"のセオリーだけに頼り、1波長定在波の周波数を可聴帯域外の低周波振動に追いだして、プレーンな面を持つ垂直壁を多用して高次の定在波には配慮していないホールがかなり見受けられますが...。

必ず以下に示すディティールデザインのセットで使用しなければ定在波は駆逐できず"一部の客席にしわ寄せが生じます。"

  • 本則 壁面スラント設置
  • 副則 "壁面間隔20m超"(※9)のセオリー
  • 副則 扇形(ハノ字)段床座席アレンジ
  • 副則 客席周囲(壁際)の通路
  • 副則 背後壁面のコーナー面取り
  • 副則 大向壁のアンギュレーション設置
  • 副則 ステージ上空にスラントした「サブ反響板」を備えているか、変型ヴォールト天井(※10)である事。

第1項 本則「壁面のスラント設置」

壁面を、外反か内傾スラントさせて対抗する平行面を無くしてある事。

詳しくは、『第4章 セオリーその1 "定在波の駆逐" と "定在波障害の回避策"』をご覧ください

第2項 "垂直壁を持つホール"での「定在波による音響障害」の回避策

特に本則の壁面スラント設置を用いずにデザインされているホールでは、全ての副則が施されていないと、音響障害席は駆逐できません!

副側第1条 "壁面間隔20m超"のセオリー が適用されている事

壁面間隔を20m、1波長の定在波を17.4Hzの可聴帯域外の低周波振動に追いやす手法。

詳しくは"壁面間隔20m超"のセオリー《コラム2018》音の良いホールの必須条件"定在波実障害回避手法"をご参照ください。

副側第2条 壁際は神様(お客様)の通路となっている事

広~い、壁際通路

2階テラスの軒先の影響を受けないように、音の良いホールは平土間部分の両側通路は、無駄に思えるほど広く取ってあります。(開館当初のザ・シンフォニーホール)

サイドテラスを含む壁際・「大向こう」は神様・お客様の通路として、座席は詰め込まれていない事!

定在波の節目ミステリースポットを回避するために、壁面から最低1席分(約50㎝)は空け通路であること。

特に中大型ホールの上層部にある2段2列以上の「サイドテラス席」では、背後に通路が設けられておらず、壁面に沿って張り付いたような座席?が多く、しかも背後は垂直壁で定在波のミステリースポットに嵌っているホールをよく見かけます。

副側第3条 扇形(ハノ字)段床座席アレンジ であること

谷間を造る

着座した頭上の遥か上空には「ミューズの神」はいても?客席はありません!

だから、耳(頭)の位置が「定在波障害層」から外れていれば良い訳です。

どうやって定在波に「フェイント」を食らわすか?

意外と簡単で、「扇形」も若しくは「ハノ字」型の段床スロープの上に座席を配置すれば「谷間」ができ、谷間には定在波は襲ってきません。(ドーム球場が意外とうるさくないのと同じ)

扇形段床上に座席を配列し「谷間効果」で定在波障害を躱す方法。

詳しくは第1項 扇状(ハの字)段床配列座席による定在波障害回避をご覧ください。

副側第4条 「大向こう背後壁」のコーナー部分は面取りが施されている事

扇形段床上に座席を配置しても、最後列は両側壁に挟まれ、後席による援護?は受けられないので、両側壁はハノ字に絞り込むコーナー面取り処理が必要。

副側第5条  大向こう壁面は「波状壁」か「外反スラント壁」が施されている事

大向こう壁面は「外反スラント壁」か凸面パネルを組合せたアンギュレーション(屈曲)を持たせた「波状壁」とすべし。

※波状壁ではホール前後方向定在波の阻止には役立たないが、初期反響の軽減により、定在波の持続時間の短縮にはつながる。

副側第6条 ステージ周りは台形で平行する対抗面が一切ない事

ステージを含む平土間部分では以下の事項への配慮が必要です。

第1項 台形ステージが基本

シューボックスホールにおいてもステージ両側壁をハノ字に開いた台形ステージ※を基本とし、次節で述べる天井も 含めステージ周りではすべての対抗する壁面から平行面を駆逐してあること。

※平土間客席部分についても同様で、最低でもアンギュレーション(屈曲)壁か出来れば「平土間部分周辺」だけでも外反or内傾パネル設置してある事。

第2項 ステージ側壁面にはアンギュレーション処理を

ステージ側壁(反響板)はアンギュレーションを持たせた前開き(後ろ絞り)壁とし、背後壁もアンギュレーションを設け、対抗する平行面が生じないように配慮してあること。

ステージ背後中層部にはコーラス(オルガン)テラス段床席を設けるか、壁面全体にアンギュレーションが施してあること。

第3項 天井はスラントしている事

水平天井は禁物で次節で述べる天井形状にも配慮されている事が必要です

※日本における元祖シューボックスコンサートホール「ザ・シンフォニーホール」の例はこちら。

参照欄

※1、直接音、初期反射音、後期残響音についての(株)エー・アール・アイさんの解説はこちら。

※2、「過剰な残凶?」で起こる音響障害『ホール酔い 現象 とは?』はこちら

※3-1、定在波に関する解説記事 音響工学の基礎知識"平行した対抗面間で生じる『定在波』"はこちら

※4、エコールームに関する「音工房Z」さんの解説記事はこちら。※本物のエコールームでは定在波対策(平行壁面対策)はしっかり施されています。

※5、定在波で起こる音響障害については『ホールに潜む ミステリー ゾーン (スポット)とは?』をご参照ください。

※6、格天井 についての音響効果は「第12章天井第2節『格天井』」をご参照ください。

※7、高さ方向定在波障害を起こさない天井高さについては第4項 シューボックスホールで見落とされがちな高さ方向定在波

※8、現代の3大迷発明!「珍妙からくり(残響調整装置、可変段床設備、可変吊り天井)」に関する記事はこちら。

※9、関連記事『"壁面間隔20m超"のセオリー』「音の良いホールの条件とは」はこちら。

※10、 音響面から眺めたドームとヴォールトに関する解説はこちら。

公開:2019年5月 9日
更新:2019年6月29日

投稿者:デジタヌ

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