狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

タケミツ メモリアル/東京オペラシティー《ホール音響Navi》 ってどう言うところ?

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教会の礼拝堂を思わせる、高い3角天井のコンサート専用ホールは建設プロジェクト計画段階から参加していた作曲家故武満徹氏を記念してタケミツ メモリアルと名付けられた。

平戸間形式のリサイタルホール、アートギャラリーなどを付属している文化施設群と飲食店、貸しオフィスをテナントとする、高層商業施設。

序章 東京オペラシティー

お隣の「大・中2つのオペラハウス」を持った我が国きっての新国立劇場(※ホール音響Naviはこちら)にちなんで名付けられた高層オフィスビル「東京オペラシティビル」の中にある。

ビル内にはホールとオフィスのほか、「シティ」の名の通り、飲食・物販・サービスなど50を超える店舗がテナントとして入っている。

隣接する新国立劇場とは低層のガレリアと呼ぶ高さ20m・長さ200m、3層の半・解放空間で繋がっている。

東京オペラシティのロケーション

  • 所在地  東京都新宿区西新宿三丁目

新宿駅から国道20号甲州街道沿いに西に向かった渋谷区との堺に有る、隣接した渋谷区の新国立劇場とは3層の半外部空間ガレリアで接続されている、「シティ」の名の通り、飲食・物販・サービスなど50を超える店舗がテナントとして入っている商業高層ビルに所属している。

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

東京オペラシティーの施設データ

Official Website  http://www.tokyooperacity.co.jp/

  1. 所属施設/所有者 東京オペラシティビル。
  2. 指定管理者/運営団体 財団法人東京オペラシティ文化財団。
  3. 竣工   1996年(平成8年)8月8日
  4. 開館  1997年9月10日
  5. 設計  NTTファシリティーズ・都市計画設計研究所・柳澤孝彦TAK建築
  6. ゼネコン 竹中工務店・大林組・鹿島建設・清水建設・大成建設・フジタ・小田急建設・共立建設・京王建設・戸田建設・昭石エンジニアリングJV
  7. 内装(音響マジック) 

    竹中技術研究所
    音響コンサルタント レオ・ベラネク氏(コンサートホールのみ)

付属施設・その他

  1. 地下1階フロア配置図はこちら。
  2. 付属施設 リハーサル室x2、アートギャラリー、駐車場
  3. 施設利用(利用料金等)案内 詳しくはこちら。

第1節『タケミツ メモリアル』の音響デザイン

(公式施設ガイドはこちら)

商業ホールの常で後述するように、"妥協点"も見受けられるが他のホールも見習ってほしい美点も数多く備えている

礼拝堂を思わせる、明かり取り窓がある高い三角屋根(天井)

ステージ上に可動反響版を備えた天井は最高部が何と27.6m!もある高さ。

しかも空調ダクトを兼ねた、階段状のせり上げ形状で、「音響拡散体」(※10)としての効果も持ち豊かで自然な後期残響(※11)を醸し出している。

参※10)当サイト関連記事 第3節 音響拡散に用いられる壁面装飾オブジェ"音響拡散体" はこちら。

参※11)当サイト関連記事 第1章第2節 残響時間とは はこちら。

平土間中央部全列千鳥」配列!

メインフロアーは前半が完全な平土間、後半も平土間に近い緩やかなスロープ形状となっているが、3角屋根で「床面と天井との定在波」を駆逐している!

さらに中央部客席は全列「千鳥配置」で眺望が確保され、音響的にも前列の影響を受けないように配慮されている。

客席全周木質の表装

壁面は全フロアーを通じて木質グルービングパネル(※12)をほんの僅かにウェービングさせて表装されている。

参※12)当サイト関連記事 手法1 「グルービング(溝)加工」をほどこした壁面用パネル  はこちら。

充分な高さが確保されたテラス席

2層のバルコニー席の両翌から回り込んだ高さのある奥行きの浅いテラス席は、2階部分がそのまま舞台背面まで回り込んでコーラステラスとなり全周を取り囲むように配置されている。

またそれぞれのテラス前縁は段付き処理が施されて音響拡散体として豊かな響き創出にに寄与している。

また、低音がこもるホールコーナー部分には客席は配置されていない

更に各フロアー共に大向には通路が設置されている。

このあたりが 形だけ真似た、安普請の紛い物ホール(※関連記事はこちら)と違うところ!

パイプオルガンも音響拡散体として寄与

ご自慢のクーン社(スイス)(Orgelbau TH Kuhn)のパイプオルガンは音響拡散体としても寄与して後期残響生成にも寄与している。

サイドテラス背後に通路が設けられていない点など残念な個所も...

商業ホールの限界?なのか「妥協点?といえる箇所」も多い。

コンサートホール改修について

コンサートホールも「リピーター」を望むのなら改修が必要であろう。

聴衆は分かっている?

一見すこぶる付きの美人に見える同ホールではあるが、観客の人気ランキングで言うと、かなり低い?(年末恒例の第9チケットの同1団体他会場とのチケット売れ行き比較から推察)

平土間主体の礼拝堂?構成と相まって、ごく一部の席を除き、殆どすべての席で可聴帯域の低周波振動(高調波定在波)障害が生じており、ために周波数特性も乱れて、楽器の音色が変化してしまっている可能性?もある。

更には大型ホールにおける間口方向の定在波は「低周波振動が主体であり」深刻な健康被害(※22)を生じさせる危惧もある!

参※22)当サイト関連記事  第3節 ミステリーゾーンで起こる低周波振動健康被害!

メインフロアー両側壁改修

今更、扇形段床に改修するのも困難なので、両側壁際30席x2=60席を撤去してでも、壁面を現行の目異質パネルの外傾スラント設置か、外反スラントさせた石こうボードで裏打ちした合板と縦格子でグラスウールなどの吸音材を挟んだ京都コンサートホール(※23)のような吸音壁に換装すべし!

但し必ず音響ボード(吸音壁本体)は外反スラントさせること!

参※23)当サイト関連記事 京都コンサートホール 《 ホール 音響 ナビ 》はこちら。

2・3階両サイドテラス席背後壁面改修

この部分は後列背後に余裕がなく、改修が難しい部分ではあろうが、内装材背後の吸音層を削除してでも、内装材の外傾スラント設置or1.8m幅のアンギュレーション(屈曲)をより極端に設置すべきである!

以上の改装で、「世界屈指のコンサートホール」に生まれ変われるであろう!

蛇足 財団法人東京オペラシティ文化財団関係者ご一同様へ

かなり辛辣なホール評ではあったが、デザイナー(設計者)が意図した一見"無駄に見える"ゆとり空間"を削除してまでスペース「いっぱいいっぱい」を集客(シート)に振り当てるとこうなるという教訓!

マア、デザイナー自身も"経験だけに頼って"、明確に建設委員会を説得できなかった一面もあるが、これが実情!

『そんなはずはない...』とお思いなら、小生の提案した「新音響測定法の提案」を参考に、一度「正しい音響測定!」を実施されることをお勧めする。

定在波対策 についての考察

残念な事に、前途したように客席・ステージ周辺壁面は、すべて垂直の完全並行面で構成されているおり、それなのに回避策(※13)が全くとられていない!

せめて、扇形段床(※14)を採用してくれていれば、被害は全フロアーに及ばなかったのだが...

※画像をクリックすると拡大できます

standing_wave3.jpg

高さ方向定在波に対してはほぼ完ぺきなのに、どういうわけか間口方向定在波に対する備えがみられないのはどうしたことか?

後述する、リサイタルホールのようだが、このデザイナイーは、定在波に対する考え(知識)(※15)が欠如しているとしか思いようがない!

古来から演芸場で広く採用されている間口20m以上(※16)の伝承技法を採用しているが、定在波の回避策にはならない!

前途した壁面処理も含めて「目まい、吐き気、強い不安感」などの健康被害に通じる「重低音定在波」(※17)の抑止にはなっていない。

参※13)当サイト関連記事  第4章"定在波音響障害を回避"するフロアデザイン

参※14)当サイト関連記事  第1節 扇状段床座席を用いたホール横断定在波の障害回避策

参※15)当サイト関連記事  第1章 standing wave(定在波)は音波とは異なる物理現象!

参※16)当サイト関連記事  第1項 「壁面間隔20m超」の伝承技法の誤り!について

参※17)当サイト関連記事  第3章 ホールデザインの基本"定在波の根絶・阻止・駆逐" 法

側壁平行部分(間口方向)

※画像をクリックすると拡大できます

standing_wave.jpg

残念ながら定在波は通り過ぎていく音波では無くて「音圧変調停留域」であり、別の見方をすればBad modification(改悪)!を行う「音響改悪ゾーン!」なので低周波振動健康障害も含めて「甚大な音響障害を」誘発するわけです。

さらに上図に示すように基本となるのは半波長であり、当ホールでは,間口が20mなので8.7Hz/0.5λが基本となるので、バスドラムのように重低音周波数成分が含まれている楽器の強打(ffff)一発が引き金となって思わぬ災害"低周波振動障害"で「目眩・吐き気や強い不安感」が伴う健康障害を起こす可能性は否めない?

※以下、音速は室温28℃、海面標準気圧1013hPaの時の348.6m/sec で計算してあります。

メインフロアー側壁平行部分(全列)
  • 側壁間約20m;
  • 定在波周波数成分; 約8.7Hz/0.5λ、約17.4Hz/1λ約26Hz/1.5λ、
  • ※両側壁の表装(グルービングパネル、アンギュレーション処理)で高次定在波抑制。
2・3Fバルコニー平行壁部分
2Fバルコニー部側壁平行部分(C1~C5列)
  • 側壁間約20m;
  • 定在波周波数成分; 約8.7Hz/0.5λ、約17.4Hz/1λ約26Hz/1.5λ
  • ※両側壁の表装(グルービングパネル、アンギュレーション処理)で高次定在波抑制。

3Fバルコニー部側壁平行部分(C1~C3列)
  • 側壁間約21.2m;
  • 定在波周波数成分; 約8.2Hz/0.5λ、約16.4Hz/1λ約25Hz/1.5λ
  • ※両側壁の表装(グルービングパネル、アンギュレーション処理)で高次定在波抑制。

2・3Fサイドテラス並行壁部分
2Fサイドテラス部側壁平行部分(RL共1・2列)
  • 側壁間約21.2m;
  • 定在波周波数成分; 約8.2Hz/0.5λ、約16.4Hz/1λ、約25Hz/1.5λ、
  • ※両側壁の表装(グルービングパネル、アンギュレーション処理)で高次定在波抑制。

3Fサイドテラス部側壁平行部分(RL共1・2列)
  • 側壁間約21.2m;
  • 定在波周波数成分; 約8.2Hz/0.5λ、約16.4Hz/1λ、約25Hz/1.5λ、
  • ※両側壁の表装(グルービングパネル、アンギュレーション処理)で高次定在波抑制。

奥行き方向想定定在波
1F(1F大向こう壁面→ステージホリゾント反響板)
  • 最大奥行き約 32.4m;
  • 定在波周波数成分; 約5.4Hz/0.5λ、約11Hz/1λ、約16Hz/1.5λ、
  • 段床スロープで回避
  • ※高次定在波はステージ反響板のアンギュレーションと、大向こう背後壁面処理(波状)で抑制。
2F(2階大向こう壁面→プロセニアム前縁)
  • 最大奥行き約 32.4m;約5.4Hz/1λ、約16Hz/1.5λ、
  • ※高次定在波はオルガンのアンギュレーションと、大向こう背後壁面処理(波状)で抑制。
  • 段床スロープで回避

3F(3階大向こう壁面→プロセニアム前縁)
  • 最大奥行き約 32.4m;約5.4Hz/1λ、約16Hz/1.5λ、
  • ※高次定在波はオルガンのアンギュレーションと、大向こう背後壁面処理(波状)で抑制。
  • 段床スロープで回避
平土間床→天井最高部高さ方向
  • 客席平土間部約27.6m;約12.6Hz/1λ、
  • ※高次定在波は3角天井で完全抑止!

参、ステージ床面→天井最高部高さ方向
  • 客席平土間部約27.6m;約12.6Hz/1λ、
  • ※高次定在波は3角天井と可動傾斜反響板で完全抑止!

赤字健康被害を与える原因となる超低周波成分。

音響評価 version.2 revision.6 /2020.12.16

ホール音響評価点:得点30点/100点満点中

※1632席(車椅子スペース含む)のコンサートホールとしての評価。

※評価ポイント詳細は「"ホール音響ナビ"に用いた用いた評価法とは」をご参照ください。

※前提条件 音響障害エリアについて

「以下の座席ブロック」を個々の音響障害ブロックと見做します。

  • ●メインフロアーは「平土間部」「スロープ部」を夫々別ブロックと見做します。
  • ●上層階バルコニー、左右サイドテラスを夫々1エリアとして見做すこととします。
  • ●サイドテラス(桟敷席)は各階の左右を夫々別ブロックと見做します。
  • ワインヤード(アリーナ)形式については"各棚"を夫々別ブロックと見做します。

§1 「初期反射」軽減対策評価;得点20点/配点25点

※以下詳細は第1節 「初期反射」軽減対策評価:配点25点をご参照ください。

  • ※音響障害席の有無にかかわらず側壁面の表装(素材)に応じて「持ち点」とします!
  • ※表装の内硬質側壁部などの低得点表装の表装ランクを全体に当てはめます!
  • ※グルービング処理を施した木質パネル等の軟質壁材基礎点25点から硬質壁材基礎点13点の間6段階で素材基礎点を与えます。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて持ち点とします。
  • ※基礎点に音響障害客席数比率を乗じて算出します。

§2 定在波対策評価;得点4点/配点50点

※以下詳細は第2節「定在波」対策評価の項目をご参照ください。

※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価します。

※基礎点に音響障害エリア客席数比率を乗じて算出します。

間口方向定在波
  • 扇形ホール・スラント設置壁以外「垂直完全平行側壁」部分のフロアー・バルコニー部では間口定在波が生じているとみなします。
平土間部分
  • 後列段床で保護!されていない全席を定在波音響障害席と見做します。
扇形またはハノ字段床部
  • (後列でスッポリ囲まれている)「深い扇形段床スロープ」(ハノ字段床を含む)部分では、両端の席を定在波音響障害席としてカウントします。
ストレート段床部

全席定在波音響障害席と見做します。

上下方向定在波
  • 完全平土間部分上部がスラント天井がまたは波状天井でない場合は全席を定在波音響障害席とします。
  • 天井の、小さなヴォールト(窪み)、格天井は定在波対策とは認めません。

§3 「客席配置」に対する配慮評価;得点1点/配点20点

※以下詳細は第3節 「音響障害と客席配置」に対する総合評価:配点20点をご参照ください。

  • ※定在波対策・初期反響対策に「眺望対策(前列障害)」を加味した値で評価します。
  • ※配点から障害エリア数を引いた持ち点に障害エリア客席数比率を乗じて算出します。

§4 「後期残響」への配慮評価;得点5点/配点上限5

※以下詳細は「後期残響」への配慮評価点:配点上限5点をご参照ください。

  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価します。
  • 上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

算出に用いた値  version.2 revision.6 /2020.12.16

初期反射対策評価

※規定により素材持ち点 22点とした。(反響音の強度順素材持ち点)

基礎点B2=素材基礎点22点ー障害発生エリア数1=21点

1)ホール後端部の"釣鐘現象"音響障害席 ;32?席(32席/1階31列全席車いすエリア含む)

2)側壁初期反射音響障害席 ;0?席

3)天井高さ不足音響障害席;0?席

音響障害席総計;32?席

定在波対策評価

基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数9=41点

1)間口方向定在波音響障害席;???席
(a)メインフロアー、各階ベランダ部分;全席!

(b)サイドテラス(桟敷)部後列全席分;186席

(80席/2階サイドテラス後列全席、80席/3階左サイドテラス後列全席、26席/2階コーラステラス全席、)

2)奥行き方向定在波音響障害席;0?席

3)上下方向定在波音響障害席;0?席

重複カウント ;ー0席

定在波障害顕著席総計;1446?席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数9=11点

眺望不良席数;0席/1階平土間中央部座席千鳥配列済

初期反射音響障害席 ;32席

定在波障害顕著席 ;1446?席

重複カウント ;ー32席

音響障害席総計;1446席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

タケミツ メモリアルコンサートホールの施設データ

ホール様式 

  • 『変形シューボックスタイプ』音楽専用ホール・ 
  • 天井最高部高さ 27.6m

    1階席:20.0m×41.1m(客席奥行 32.4m)
    2階席:20.0m×47.15m
    3階席:21.2m×47.15m

  1. 客席   3フロアー 

    1632席(車椅子席4席を含む)
    1階席:974席
        1?12列フラット、13?31列レベル差1m、1段 約5.5cm
    2階席:バルコニー席数 330席、オルガン前席 26席(取り外し可能)
    3階席:バルコニー席数 302席

    収容人員 1632席、1568席/張り出し舞台(拡張舞台)使用時、
  2. 舞台設備 オープンステージ形式間口 17.1m~19.5m、奥行 9.0m、面積 162.6m2 ・素材 樺桜

    1.9m張出(9m+1.9m=10.9m 奥行)
    客席前列2列、63席減(1632-63=1569席)

  3. その他の設備 ホワイエ、楽屋x10室、アーティストロビー、パイプオルガン。
各種・図面・備品リスト&料金表

タケミツ メモリアルがお得意のジャンル

現在東京フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団が順フランチャイズとして定期コンサートに使用している。

コンサート専用ホールとして年間を通じ数多くのクラシックコンサートが開催されている。

東京オペラシティの公演チケット情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら

★第2節『リサイタルホール』の音響

公式施設ガイドはこちら

2階吹き抜け(天井高さ8メートル)の高い天井を持つ、平土間形式シューボックス形式のサロン空間。

265席の折りたたみ椅子を適当?に配する。(但し消防法の関係で定員は増やせない!)

壁面は大ホール同様の壁材で、側面上部に山型???に整形されたブロック(音響拡散体)を並べたデザインで。

また客席ほぼ全周にわたって、有孔音響ボードで表装した吸音壁を設備し、残響1.2秒という優れたダンピング特性で、箱形特有のワンワン唸りを押さえ込んでいる...?破天荒な設え!(※99)

参※99)当サイトシリーズ記事 藝術ホールデザインのセオリーはこちら。

所見と総評

デザイナーは自画自賛で意気揚々でいらっしゃるようであるが...

直方体(別名シューボックス)という、どうしようもない代物を、何の定在波対策も施さずにに有孔音響ボードだけで制御しようだなんて、イグノーベル賞 でも狙ったのか?

客席上層部遥か上空!の壁面をアンギュレーション処理しても、後期残響創出ぐらいにしか効果はない!

おまけに、中途半端なサイズなので、健康被害をもたらす「可聴帯域外の低周波振動」まで誘発してしまっている!

このホールでは、ショパン、リスト等「重低音域」のffを好むコンポーザーのピアノ作品は差し控えたほうが賢明である!

下手をすると、アーティスト自身が、めまい、吐き気情緒不安定などの「健康障害に見舞われる」かもしれない...

※以下、音速は室温28℃、海面標準気圧1013hPaの時の348.6m/sec で計算してあります。

定在波対策に対する考察

側壁平行部分(間口方向)
メインフロアー平土間部側壁(長辺)平行部分
  • 側壁間約19.6m;
  • 定在波周波数成分;約8.9Hz/0.5λ、約17.8Hz/1λ約26.7Hz/1.5λ、約35.6Hz/2λ、約53.4Hz/3λ、
  • (20~20KHz)外にチューニング。
メインフロアー平土間部側壁(短辺)平行部分
  • 側壁間約13.8m;
  • 定在波周波数成分;約12.6Hz/0.5λ,約25.3Hz/1λ、約38.9Hz/1.5λ、約50.5Hz/2λ、約44.5Hz/2.5λ、約75.8Hz/3λ、

平土間床→天井最高部高さ方向
  • 客席平土間部約8m;
  • 定在波周波数成分;約21.8Hz/0.5λ,約43.6Hz/1λ、約87.2Hz/2λ、

赤字は可聴音域外の健康被害に通じる低周波振動成分。

最悪のホール前後方向の定在波はホール奥行が19.6m基本定在波周波数換算で約17.8Hz/28℃ 辛うじて可聴帯域外の低周波振動だが...

この表装では"高次高調波"も減衰しないのでアウト!

ホール巾13.8m定在波周波数換算で約25Hz、天井高さ8m定在波周波数換算で約43.6Hz、でこれら2面は完全に可聴帯域内の重低音。

客席・ステージ、至る所が定在波の嵐!

定在波は一波長の基音だけではないので、このような平土間ホールではどこにいても周波数特性がかなり乱れている。

為にピアノなどのfffでは、ピアノが壊れたのかと思われるほどの、「轟音・騒音」で思わず立ち上がる人が出るであろう!

このホールのデザイナーは

このホールのデザイナーは関東在住なら一度サルビアホール ・音楽ホール(小ホール)(※ホール音響ナビはこちら)に足を運びじっくりと見学すべし!

小生の言った意味がお判りいただけるかも?

リサイタルホールは早急に改修を!

金の工面がつき次第、リサイタルホールを早急に改修すべし!

壁面の入れ替え

ホール側壁の上層部と下層部を入れ替えて、客席周辺低層部をアンギュレーション壁面とするか、装飾梁を設けた木質グルービング材(※4参照)を外傾スラント設置すべし!

ステージ後方にスラント反響板の設置

現状では、ステージ上のアーティストまで被害が及んでいるので、ステージ後方にも、外傾スラントさせたアンギュレーション反響板(屏風風)を設置すべし!

天井の改修

これが(工法的に)一番厄介であろうが天井は、思い切って「片流れスラント」か、中央部が低くなった凸型V字逆ヴォールト天井とすべし!これで、天井と床面間で発生する定在波は解消できる。

勿論プラスターボード(※22)製大型一体型反響板で構わない。

※22、アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての建材メーカーの解説記事はこちら。暴れん坊が立派に更生?

安上がりに解決するは

高い天井を生かして、(ステージ用のような)100mm程度の厚さの弧状の"ひな壇"を(長辺を背にして)11段程度重ねれば、全席並ぶはずでコーナー部分の最後壇でも高さ1.1m程度で収まるので、転落の心配もないと思われる?

アーティスト後方(背後壁面)には、バス停のような簡易天蓋を天井からつるせば、上下定在波も解消できるはず?

以上の改修を施せば録音スタジオとしても引っ張りだこのホール?に生まれ変われるであろう...(ことを願いたい。)

ルーム音響評価点:24点

※コンサートホールとしては評価できないのでルーム音響評価を適用しました。

§1「定在波対策」評価点:12点/50点満点
  • ※ルーム低層部がプレーンな垂直壁で囲まれ、天井・床面を含む「並行した対抗面」が1対以上ある場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
§2「初期反射」対策評価点:12点/50点満点
  • ※ルーム低層部壁面3面以上がアンギュレーションやカーテン設備などが無い「プレーンな壁面」の場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。

リサイタルホールの施設データ

  1. ホール様式 平土間形式イベントホール。19.6m×13.8mx8.0m フローリング。
  2. 客席   1フロアー 収容人員 285席、
  3. 舞台設備 オープンステージ形式5.4m×10.8m(高さ 40cm)
  4. その他の設備 控え室x3、ホワイエ、ロビー

その他の付属施設

しみったれた作りのリハーサル室

大リハーサルルームは267㎡と広さは充分であるが、1996年の竣工にしては天井がやや低いしみったれた施設?ある。

東京フィルが練習場として使っているらしいが、ご愁傷様としか表現のしようがない。

同じ頃の地方自治体の公共施設では、2階吹き抜けで、リサイタルホールとしても使える、天井の高い立派なリハーサル室が半ば定着してきていた時期である。

この辺りが、地価の高い首都圏にある商業ホールの所以で有ろう。

公式施設ガイドはこちら

大リハーサルルーム:床面積267㎡(約161畳)天井高さ約3.2m、フローリング床

小リハーサルルーム;床面積90㎡(約54畳)天井高さ約3mフローリング床

二室のリハーサル室を有する。

ルーム音響評価点:40点

内訳

定在波対策評価点:20点/50点満点(ルーム低層部に1対以上のプレーンな並行壁がある場合は持ち点はx0.5=25点と成ります)

残響その1(初期反射)対策評価点:20点/50点満点(ルーム低層部3面以上がプレーンな垂直壁の場合は持ち点はx0.5=25点と成ります)

豆知識

東京オペラシティへのアクセス

京王新線初台駅と直結

東京オペラシティこれまでの歩み

1992年作曲家の故武満徹氏が芸術顧顧問となり東京オペラシティビルの計画を開始した。

1996年8月 - 隣接する新国立劇場完成に先立つ半年前に、旧電電公社の淀橋電話局、京王帝都バス新宿営業所、小田急百貨店配送センターなどの跡地に、タワー&コンサートホールが完成した。

1997年9月 - 京王新線初台駅と直結。
1999年3月 - アートギャラリー棟が完成し全体竣工。

デジタヌの独り言

このホールの成功?で、多層バルコニーだけを真似た、背の低い"紛い物"のちんちくりんホールが全国に繁茂したとも言える。

地方自治体の建築課の施設整備担当者は「字に書いた仕様」ではなく、もっとディテールまで細かく見る目を養って欲しい!(※関連解説シリーズ記事はこちら

 

公開:2017年9月10日
更新:2022年9月30日

投稿者:デジタヌ


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