" コンサートホール 品定 めの着耳点" 《 演奏家に贈る ホール選びNavi 》
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前書き(要約) 聴衆に心地よく「音を楽しんで」いただくために重要な着眼点?は...
「音楽はあくまでも耳で聞く」もので、目では聞こえませんが、
『音楽性がどうのこうの』と言う前に、ホールの音響が最悪では、「貴方の魂が感動となって伝わりません!」
ホール音響はホールの"身なり(アピアランス)"である程度の結果(客席での音響)は判断できます!
舞台上で"音を楽しむことに没入出来る"心地よいホールでも、客席では"不快"以外の何物でもないホールが往々にしてあります。
演奏会場を予約する前に、ご自分の"目"と耳"で「ホールの品定め」をなさって見てはいかがでしょうか?
アーティスト&オーディエンス双方にとって、満足のいく銘ホールを「見極める」」ポイントを、
永年アマチュア楽師、音響工学専門家として活動した経験をもとに設備仕様(容積・内装)の関係を判りやすく紐解いてみました。
欧風シューボックスホールに見掛け倒しが多い理由!とは... 《 演奏家に贈る ホール選びのコツ 》第3回 の目次
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演劇では「間」、音楽では「休符」つまり「静寂」があって初めて「声や音色」が活きてきます。
音がいつまでも鳴り止まないのでは「お間抜け」としか言いようがありません!
参※10)当サイト関連記事 序章 都市伝説「音の良いホール の条件 残響時間2秒以上 」 は本当か?はこちら。
過大な 初期反響 は諸悪の根源!です
過大な 初期反響 は諸悪の根源です、初期反響(※00)の緩和・回避策がしっかりなされているか、品定めしてください。
残響(余韻)はホールにとっては「ほんのお化粧程度」の要素でさほど重要ではなく、化粧品(音響拡散体)をたっぷり用いた厚化粧(残凶?過多)のホール(※10)ではかえって不快感!が伴います。
※00、ホールでの過大な初期反射による音響障害 はこちら。
心地よい響き・余韻を醸し出すホールとは...
楽音のトランジェント(忠実度)、別の言い回しでは"粒立ち"が一番大事です!
目お瞑っていても各楽器の「音色が混濁」しないで明瞭に、かつ明確な定位でオーケストラ空間に広がっていることです。
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第0項 standing wave(定在波)は音波とは異なる空間(物理)現象!
定在波は特定のポイントで生じる音波のように勘違いなさっている方が多いようですが...
standing wave(定在波)は平行した壁面間で挟まれた空間全域で起こる「音圧変調停留帯」であり、別の見方をすればBad modification(改悪変調)!を行う音響特性改悪ゾーン!です!つまり通り過ぎていく音波ではありません!
壁面以外では、常に0クロスポイントつまり音響消失エリアが彷徨い、音色(周波数特性)が"常時変動"して、"船酔い"のような不快な健康障害を生じさせます。
参※)詳しくは当サイト内関連記事 定在波 ( standing wave )と音響障害( disturbance)『建築音響工学総覧 』第4巻 をご参照願います。
※クリックすると階大画像が見られます。
なので壁面間では両端にゼロクロスポイント(節目)がある定在波(※01)が生まれます。
定在波が発生していなくても壁面では常に音圧が"0"となる点つまり音が全くしない「ミステリーピット・心霊スポット、?」(※02)が生じています!
片耳を壁面に耳近ず僅かに(数mm)離してみれば音が極端に小さくなっていることを実感できます。
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更に護岸工事された公園の池の畔やプールなどで水打ち際では「さざ波」が消える事でも確認できます。
第1項 左右の壁が平行していて「ツンツルテンで垂直壁」のホールは避けましょう!
平行壁は重大な健康障害を生じる「定在波」の引き金となります。
側壁どうしが並行していなければ定在波は発生しません!
音も光と同じようにマジックミラーの部屋で「鏡に映った自分」を見ているのと同じように、平行した壁の間では、何度も反射を繰り返しいつまでも無くなりません!
第1目 床面から人の背丈位(1.8m以下)の壁面が並行していなければ問題はありません!
壁面が僅かにスラント(傾き)処理されているか?
壁面が「外反」か「内傾」スラント処理されていれば、左右の両壁間の平行はキャンセルされ、定在波は生まれません!
大きなアンギュレーション(屈曲)が施されているか?
1間(約1.8m)幅以上のパネルがアンギュレーション(屈曲)設置されていれば100Hz以上の可聴音域(20~20kHz)内の殆どの低音域では定在波は生じませんが...
100Hz以下の、ピアノの最低音域やダブルベース、バスドラム等の低音楽器の音(重低音)には効果がありません。
だから、アンギュレーション壁面でも「スラント処理は必須条件」となります。
※特に、背後が狭まった「台形ステージ」ではない、平行壁に囲まれた「長形ステージ」では必須です!
第2目 壁面処理は適切か?
壁面の素材・形状などの壁面処理は重要な要素です。
強い壁面反射(初期反響)は、「耳障り」なだけでなく、エコーとなって方向感覚を狂わせ「ホール酔い 現象 (※03)」を引き起こし更には「何時までも無くならないエコー」は"定在波傷害?"の引き金ともなってしまいます。
参※03)当サイト関連記事 『第2章 過剰なエコーが引き起こす音響障害「恐怖感」と「ホール酔い」 はこちら。
過剰な壁面反響を防止するには
以下の手法が初期反射軽減(※04)に効果的です。
参※04)当サイト関連記事 『第2節 側壁からの反響の影響と対策 はこちら。
a)木壁かどうか?
木質パネルの使用は可聴音全帯域 20~20KHzに有効に働き、壁からの反射音を和らげてくれます。
b)アクースティック・グルービング(音響・溝加工)材
ひらたく言えば、深さの異なった、「沢山の溝」を切ってあるパネルで通常3KHz以上程度の高い音(波長の短い)高域音に特に効果的に働きます。
つまりキンキラ金の甲高い響きを和らげてくれます。
c)縦桟で表装された木質プレート
最近流行りの手法で、平らな木質パネル(合板)に細かい数㎝の縦桟(さん)を間隔を変化させて張り付けて、(b)と同じような効果を狙った表装材です。
d)縦格子を用いた2重壁
ホール内壁から少し浮かせて縦格子の内壁をあしらった2重壁。
※4. 直接音、初期反射音、残響音についての(株)エー・アール・アイさんの解説はこちら。
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第2項 平土間の偶数多角形は避けましょう
平土間の正方形・偶数多角堂・長方形ホールは、スロープを利用した「対抗平行面のキャンセル」(※20)が出来ず最悪の状況となります。
真四角や、6角型、8角型、10角型、12角型などの平土間の偶数多角堂は「並行する壁面が多いので初期反射(エコー)がいつまでも鳴り止まず、「銭湯の洗い場」の様なワンワン鳴り響くエコールーム(※21)状態になりやすく、しかもそれがきっかけで定在波も発生し易く、「ミステリーホール(穴)続出」の最悪の形状です。(※22)
参※20)当サイト関連記事 第2節 基本則 ホール内壁から「対抗する並行面」は完全に無す! はこちら。
※21、エコールームに関する「音工房Z」さんの解説記事はこちら。※本物のエコールームでは定在波対策(平行壁面対策)はしっかり施されています。
参※22)当サイト関連記事 『建築音響工学総覧 』第8巻 奇妙奇天烈 奇怪 面妖 摩訶不思議 な "迷ホール!"はこちら。
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2.5m以下の天井では、天井の反響音(ディレー音;リバーブ音)が強く、「直接音」の「音像」がボヤケ「定位」が悪い「声の通り」の悪いホールとなってしまい!
ホール酔いを引き起こす結果に繋がります!
参※)詳しくは当サイト内関連記事 過剰なエコーが引き起こす音響障害と健康被害 をご参照願います。
階下に対する「オーバーラップ」の小さい軒先の浅いバルコニーとテラス席
階下のフロアーに覆い被さった「テラスの軒先(軒下)」は屋外なら雨宿りに利用出来ますが?ホールの中では階下の客席に「無用な反響!」を降らせるだけです。
軒(奥行き)の短い、軒の高~いテラス
せいぜい2列程度で奥行きが浅くて、天井まで十二分な高さがある1層テラスか高床桟敷が理想です。
2重3重のテラスは要注意
2重3重のテラスは余程天井が高い、各層の軒高さに余裕のあるホールでないとテラス席が悲惨なエリアとなります。
1階フロアー周囲に「高床桟敷」を巡らせたホール
優れたホールでは、高床にしテラスの軒下は壁で囲って階下に影響しないような作りになっています。
大向こうは通路でしかも高い軒下を持つホールが良いホール
大向こう(最後列・客席背後の壁際)と客席周辺の壁際は通路でなければなりません!
さらに大向こうでは十分な天井高さが必要です、天井が迫っていると音も「息苦しく」なります。
屋根(天蓋)の付いたワインヤードなどもっての他!
2階以上のバルコニーフロアーも、階下の「ホワイエ」の上部にはみ出す様にして出来るだけホール内の階下のフロアーに覆い被さらない様に配慮してあるホールが良いホールです。
ましてや、「日当たりの良い段々畑」であるハズの「ワインヤードタイプ」のホールで頭上に大きく覆い被さる「シェルター型のテラス」など「冗談(上段)」にも成りません!
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飾り立てたロマネスク調やビクトリア調度の「装飾を施した内装」のホールはまず安心です。
大阪・いずみホール(※ホールNaviはこちら)、三井住友海上しらかわホール(※ホールNaviはこちら)、紀尾井ホール(※ホールNaviはこちら)、リリア音楽ホール(※ホールNaviはこちら)等。
ホールの上部空間デザインが寛容
心地よい適度な後期残響はホール上層部空間(最上層部壁面&天井)での「音の散乱」によて生じます。
所謂、上空から降り注ぐシャワーのような「心地よい余韻」です。
壁面の表装
ビクトリア調度の壁面の縁取りやホール内に凸出した装飾柱・装飾梁、格子で覆った2重壁、異形のオブジェなどの「音響拡散体(※11)」がある「丁寧な設え」が心地よい余韻を生みます。
※人間の耳は、頭の左右についているので、水平方向は敏感に識別できますが、垂直方向は(視力の助けが無いと)方向感覚がありません
つまり、壁面からの反響には敏感に"刺激"を受けて、脳内での音場イメージ修正に負担(疲労)をかけるわけです。
参※11)当サイト関連記事 第3節 音響拡散に用いられる壁面装飾オブジェ"音響拡散体" はこちら。
壁面に「飾り梁」がある「折上がった天井」を持つホールは響きが心地よい
多層階のテラス、そして最上部の空調ダクトなどを利用した「飾り梁」があり、そこから折れ上がって天井に繋がったデザインが良い響きを生みます。
暖かい感触の木で内装されたホールを選びましょう
打ち放しコンクリート壁や煉瓦積み、タイル壁、大理石のような「石材で内装」された壁面のホールは避けましょう!
参※12)当サイト関連記事 『第1節 基本則(禁則)天井や壁面は木材等の軟質・軽量素材で、内壁面に硬質重量材は禁物! はこちら。
流行の剥き出しの照明コラム
最近は、60年代70年代のオールドファッションの「xx市民会館・公民館」の様に、「壁やフード」で覆われていない「剥き出しの照明コラム」設備が流行っていますが、これも立派な音響拡散体として機能しています。
天井から吊るされた、豪華なシャンデリアも単なる調度ではなく「音響拡散体」として有効に働いています。
お寺の様な『組格子天井』に成っているか?
格天井(※13)と言って「格子状の桝目」のある天井が良い響きを生みます。
日本の仏教寺院の本堂・金堂などが意外と心地よい響なのはこのためです。
但し、最近は流行りの隙間を空けたセグメント(分割)天井は「エッジ部分が少なく」あまり効果が期待できません。
参※13)当サイト関連記事 第4節 伝統的手法『格天井』 はこちら。
曲面ないしはスラントした「木で縁取られたバルコニー軒先」を持つホール
テラス・バルコニーは重要な「音響拡散体」でもあり、その先端から豊かな響きに通じる、散乱波が生まれます、だから「真っ平らで垂直で」な軒先は意味がなく、軒先はスラントさせるか「ラウンド加工」し上部に転落防止?を兼ねて「立て格子」のテラスガード(柵)がついているデザインが効果的です
付録 ステージに上がる日曜楽師?の方へ
見栄を張らずに、「上質の小規模ホール」を利用しましょう!
800人前後の小規模音楽専用ホールが狙い目
最近全国に増えた、800人程度の小規模音楽専用ホールが狙い目です。
東京などの大都市にある「有名大ホール」に憧れるより、地元の良質な小規模ホールで「日曜楽師」と、「聴衆」双方が、「心地良い響きで、充実した一時を共有できるホール」を選ぶ事が大切なのでは無いでしょうか?
参※)当サイト関連記事 後世に残したい真の"銘コンサートホール"74選はこちら。
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公開:2017年10月15日
更新:2022年9月28日
投稿者:デジタヌ
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