飛行船シアター /旧石橋メモリアルホール《ホール音響Navi》
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Official Website https://hikosen-theater.com/
飛行船シアターのあらまし
1904年創設の上野女学校を母体とする国内屈指の歴史を誇る音楽大学 上野学園大学の中にあるホール。
後に続く数々の名ホールの先駆けともなった初代ホールは上野学園創立70周年を記念し、二代目学園長石橋益恵の「良い音楽が生まれ、聴かれますように。人の心が和み、洗われますように」という理念のもとに1974年に建立された。
「透明感のある豊かな響き」に定評があった銘ホールだったが惜しまれながら2007年に閉館した。
現ホールは本館新築に伴って2010年5月にリニューアルオープンした。
2021年11月に音楽教育(大学運営)から撤退した上野学園に代わり、劇団飛行船の手に移り、2022年3月24日飛行船シアターと改称して、同劇団の東京公演のフランチャイズとなりました。
更にこれに合わせて、2021年より、残響過多(※00)で肉声の通りが悪く(不明瞭)ミュージカルや演劇公演に不向きだった、同ホールの大改修を行い、508席の飛行船シアターとしてリニューアルオープンしました。
参※00)当サイト内関連記事 多目的ホールでの諸悪の根源 過大な エコー 『建築音響工学総覧 』第3巻 はこちら。
飛行船シアターのロケーション
ところ 東京都台東区東上野4丁目
飛行船シアターへのアクセス
最寄りの駅 上野駅
飛行船シアターがお得意のジャンル
主にセミナー、講演会、等の学校行事や、ソリストのリサイタル、アンサンブルの演奏会等、小編成の室内楽コンサートなどが行われている。
飛行船シアター公演チケット情報
東京・春・音楽祭のサブ会場の1つとして使用されている
飛行船シアターで催されるコンサート情報
施設面から見たホールの特色
※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。
現2代目ホールは2列の2階テラス席を設けたシューボックス型と言うより変形ホール。
永田音響設計としては、セオリーを守った堅実な設計で、「エレキテク(音響支援システム)」(※01)など用いずに防振対策と言った基本的な部分に予算を重点配分した音響デザインだったが...
更に壁面も部分的にしか木質パネルは使用せず!今流行の音響散乱用のグルービングパネル(※02)も用いず、比較的"単純な面構成"でデザインされていて、全ての対抗する面が"極力並行"にならないように目検討?でデザインされていた。
為に演奏者には"心地よいエコー(残響)?"がフィードバックされる、永田音響設計ご自慢の(※03)一作で、"巨大カラオケホール!"の典型だったが(※04)...
参※01)当サイト内関連記事 残響可変装置? はこちら。
参※02)当サイト内関連記事 「グルービング(溝)加工」をほどこした壁面用パネル はこちら。
参※03)当サイト内関連記事 自画自賛『 ラーメン店と コンサートホール 』の共通点!?《 コラム 令和元年 》 はこちら。
参※04)当サイト内関連記事 残響 残凶?大便覧!『建築音響工学総覧 』第5巻 はこちら。
打ち放しコンクリート壁をうまく使いこなした"つもり"だったが...
緩やかな1階フロアーを含むホール周辺壁はアンギュレーションを持たせただけの!プレーンな面構成の打ち放しコンクリート壁で、2階バルコニーの前縁とホール後部壁面のみ木質パネルで表装。
平面形状としては6角型を押しつぶしたようなデザインの変形ホール。
対抗する壁面はステージ背後とホール最後部だけ完全並行!で他は並行にならないようにデザインされ「定在波(※4)」に対して多少の配慮はしてあったが...
つまり奇才!新居千秋氏の「3連作」(※5)と同じコンセプトで"音凶"設計されたようだが...
所詮物まね!緻密なデザインの新居千秋氏作品とは違い、適当にやっつけた?だけなので、後述するようにホール中央部4番扉の前後G&H列の14・15番辺りに破綻が生じてオルガンコンサートの場合は「神の席」と称して発券されていなかった!
参※5)当サイト内関連記事 カダーレ 《ホール 音響 ナビ》奇才!新居千秋氏の「3連作の処女作!」 はこちら。
今回の大改修で天井はデザイン変更
建設当初は、ステージ上から断端にスラントさせて連続する、プラスターボード製の一体型反響板を持つ特徴としていて、高い天井を持ち「教会の礼拝堂を思わせる」デザインとなっていたが...
天井エレキテクでは過剰残凶は解決しない!
しかし今回、過剰"残凶"問題の切り札として「エレキテク(マジックボックス)」の採用に踏み切ったわけだが...
別項で述べたように、"心地よい余韻"ていどの残響は天(天井反響板)から授かるのだが...
過剰な反響(初期反射)は壁面反射が問題となっており、天井にマジックボックスを設置しても、"消音効果"は無い!
床面から2m高さまでの壁面は吸音構造に
壁面を大改修しないと、根本的改善とはならないであろう!
"最低"でも、フロアー面から2m高さまでは前途した様に、木質のグルーブ構造パネル表層に換装するか、ロックウールなどの吸音材で表装して、木質格子で表装する必要がある!
参※)当サイト内関連記事 縦格子を用いた2重壁構造 はこちら。
防振構造を採用したホール
クラシック音楽録音にも使用できる静かな音楽空間を実現する為、地下鉄騒音等を考慮して、ホール全体を防振構造で浮かして支持している。
かつて存在したパイプオルガン
初代ホールより受け継がれたクライス社のオルガンを装備。※今回の大改装で撤去転売されました。
今回所有者が変わったっことにより、撤去されて転売!された。
ホール音響評価点:69点
§1,「定在波対」策評価点:30点/40点満点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、天井形状、天井高さ、等の要素をそれぞれ減点法で算出。
- ※客席側壁がプレーンな垂直壁で「完全平行・平面」の場合は、満点x0.5=20点をベースに算出。
§2、残響その1 「初期反射」対策評価点:7点/20点満点
- ※壁面の素材・形状、客席配置、その要素で減点算出。
- ※(コンクリート、人造大理石、タイル・陶器製などの)硬質材の客先周辺壁材仕様は、満点x0.5=10点をベースにして減点算出。
§3,残響その2「後期残響」への配慮評価点:19点/20点満点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で減点算出。
§4,客席配置への評価点:13点/20点満点
- ※壁際席、大向こう席、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で減算。
- ※客席周辺壁材が硬質壁の場合は、満点x0.8=16点をベースに減点算出。
※関連記事「後悔しないコンサート会場の見分け方」まとめ はこちら。
総評
元々先代がチャペルだったのでこういうデザインになったのであろうが...。
コンピューターシュミレーションレーションの結果、ホール中央部4番扉の前後G&H列の14・15番辺りにホワイトアウトする部分(ミステリースポット※5)が生じるみたいで、通常その部分は「神の席」と称して発券されていなかった。
前途したようにオルガン曲では、この「神の席」と各フロアー大向う席でミステリースポットが発生していたが...
オルガンが撤去されたことによって、前途した「神の席」問題(定在波障害)は無くなったが...
更に、壁面の"過度な初期反共"については、壁際に通路を造ることで"逃げて"きたが、PAを用いた、"大音響"のミュージカル公演では、過大な壁面反射で演者の"活舌"が不明瞭となり、更には、長時間の観劇には"忍耐"だけではなく、健康被害(※06)も生じる恐れがある!
今後、前途した壁面を木質グルービングパネルに換装するなど、根本的な壁面改修が待たれる。
参※5)当サイト内関連記事 定在波音響障害『ミステリーゾーン』 はこちら。
参※06)当サイト内関連記事 ホールでの過大な初期反射による音響障害と健康被害 はこちら。
エオリアンホール(小ホール)
ホール2階に併設された、木質の内装、木質反響板、高い天井を持つ平土間シューボックスの小ホール。
小ぶりではあるが低い演壇を設備し、平土間に84席を並べることが出来、アンサンブルの演奏には最適の音響空間を創出している。
壁面はアンギュレーションを持たせ、更にホール平面形状を台形とし「定在波対策」を講じている。
ホール音響評価点:94点
§1,「定在波対」策評価点:39点/40点満点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、天井形状、天井高さ、等の要素をそれぞれ減点法で算出。
- ※客席側壁がプレーンな垂直壁で「完全平行・平面」の場合は、満点x0.5=20点をベースに算出。
§2、残響その1 「初期反射」対策評価点:20点/20点満点
- ※壁面の素材・形状、客席配置、その要素で減点算出。
- ※(コンクリート、人造大理石、タイル・陶器製などの)硬質材の客先周辺壁材仕様は、満点x0.5=10点をベースにして減点算出。
§3,残響その2「後期残響」への配慮評価点:16点/20点満点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で減点算出。
§4,客席配置への評価点:19点/20点満点
- ※壁際席、大向こう席、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で減算。
- ※客席周辺壁材が硬質壁の場合は、満点x0.8=16点をベースに減点算出。
※関連記事「後悔しないコンサート会場の見分け方」まとめ はこちら。
総評
平土間なので標準84席に拘らず、スタッキングチェアーを千鳥配列にしたほうがなお良いであろう。
詳細データ
- 所属施設 株式会社劇団飛行船。
- 運営団体 株式会社劇団飛行船。
- 開館 2010年5月(新館)
- ホール様式 『変形シューボックスタイプ』音楽専用ホール。
- 音響設計 By Nagata Acoめustics Design
- 収容人員 客席=508席(1階席=430席(車椅子スペース2を含む) 2階席=78席)
- 舞台設備 奥行き=11.5m、間口=10.3m~16.6m
- その他の設備 パイプオルガン
- 付属施設 エイリアンホール (シューボックス型座席数:84席)
- 設計
監修:株式会社プラットフォーム
設計管理:清水建設株式会社一級建築士事務所
ホール設計管理:株式会社現代建築研究所施工 清水建設株式会社
音響設計 (創建当初)株式会社永田音響設計、リニューアル施工については"不明"。
- ホール利用料金表はこちら。
公開:2017年9月11日
更新:2022年9月30日
投稿者:デジタヌ
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