ロームシアター京都/京都会館《ホール音響Navi》
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2015年に開館した新京都会館「ロームシアター京都」。
旧京都会館の"がんもどき形状"の8角堂からイメージチェンジしたモダン芝居小屋スタイルのメインホール、上質のコンサート小ホールのサウスホール、そしてちょっとしたホールにも成るノースホールの3つのイベントホールを持つ総合文化施設。
ロームシアター京都のあらまし
1960年誕生の旧会館は京都コンサートホール(※ホールNaviはこちら)が開館するまでは、京都のクラシック音楽の殿堂であった。
現在オーケストラコンサートはほとんど京都コンサートホールに移ったが、オペラ、バレエ,演劇などの舞台芸術、ミュージカル、Jポップコンサート、歌謡ショーなど幅広く利用され、京都の舞台芸術の中心となっている。
ロームシアター京都は国内外の大規模公演が可能な約2000席のメインホール、舞台と客席の距離が近く一体感が得られる約700席のサウスホール、小劇場やリハーサル室としての利用に適した200人規模のノースホールを備えた多目的ホールです。また、ブック&カフェ、レストランを備えるパークプラザ、野外スペースとして活用できるローム・スクエアなど、多彩な文化活動を幅広く支え、すべての人に憩いの場を提供するための多様なニーズに対応できるこれまでにない公立文化施設です。<公式サイトより引用>
初代京都会館の特徴の1つでもあった音響的に難題の多い「6角堂」デザインは京都コンサートホール小ホールに引き継がせ、新しい京都会館は「モダン芝居小屋」風の多目的ホールに変身した。
特に「不出来の京都コンサートホール小ホール」に変わりロームシアター京都「サウスホール」にクラシック関係者の期待が集まっている。
ロームシアター京都のロケーション
ところ 京都府京都市左京区岡崎最勝寺町13番地
京都のシンボル大文字山を背景に平安神宮の正面に岡崎公園と並んで建つホール。二条通を挟んで南側にはみやこめっせ京都市勧業館、京都府立図書館、京都国立近代博物館、京都市美術館、京都市動物園などの文化施設が並ぶ、京都市民の憩いのエリア。
近くには京都大学医学部も有りこのエリア一帯が文教地区と成っている。
※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。
ロームシアター京都の施設データ
Official Website http://rohmtheatrekyoto.jp/
- 所属施設/所有者 京都会館/京都市。
- 指定管理者/運営団体 財団法人 京都市音楽芸術文化振興財団/京都市。
- 竣工 2015年8月
- 基本設計:香山壽夫建築研究所
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実施設計:東畑建築事務所、大林組
- ゼネコン JV(大林組他)
- 内装(音響マジック)
付属施設・その他
- 付属施設 会議室x2、レッスン室x3、ロームスクエア、パークプラザ。
- 施設利用(利用料金等)案内 詳しくはこちら。
『メインホール』の音響
(公式施設ガイドはこちら)
4層フロアー、4層テラスのモダン芝居小屋スタイルのホール。
両翼のテラス席はホール後方「ハノ字」に絞り込まれ視界に配慮すると同時に方形ホール特有の対抗並行面による定在波(※1)をなくすようデザインされている。
1階桟敷(テラス席)は1階フロアー後方6列の内が前方3列が両翼に回り込んだ形で、テラス下は床囲いのある持ち上がった床の完全な桟敷構造となっている。
1階フロアー平土間相当部分の両側壁は陶板で表装されているが、前途したとおり、舞台から見てハの字に絞り込まれているので、音響的には影響していない。
天井は一般的な、分割反響版、ホール両側方にもテラスと同意匠の反響板が設けてある。
ホール天井構造体そのものも、直角コーナーが生じ無い様に、丁寧に縁取りされている、全体的に段付き折上げ天井と同じ効果を狙っており、さらには低域・長波長の定在波対策としている。
総合的に、当時の建築規制の為に天井の低かった旧ホールよりは格段に「癖の無い」自然な音響(※3)に仕上がっている。
さらに、舞台も両袖は狭いが、奥行きがある実質2面構成なので、オペラ、ミュージカルなどにも対応可能である。
但し、脇花道、回り盆、スライディングステージ、仮設本花道等の設備は無く、歌舞伎などの伝統芸能には完全には対応していない。
※1-1、定在波の悪影響に関する一般人向けnatuch音響さんの解説記事はこちら
※1-2、定在波に関するWikipediaの(技術者向け)解説はこちら。
※2、音響拡散体・グルービングパネルについては関連記事「芸術ホール設計のセオリーとは?」をご覧ください。
総評
収容人員を欲張りすぎたようで、4階大向う両翼は音響駅に厳しい。
さらにどうして、メインフロアー両側壁だけを石質壁面にしたのか?
ホール音響評価点:73点
§1,「定在波」対策評価点:48点/50点満点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
- ※メインフロア客席側壁がプレーンな垂直壁で 「完全平行・平面」の場合は、満点x0.5=25点をベースに算出。
- ※被害エリア客席数/収容人員 の比率で持ち点から算出する。
§2,「客席配置」評価点:16点/20点満点
- ※客席メインフロア周辺壁材が硬質壁の場合は、満点x0.8=16点をベースに減点算出。
- ※壁際通路、大向こうつうろの有無、天井高さ、バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で持ち点減算。
- ※前項同様に想定被害者数を引いた有効座席数の割合で評価する。
§3、残響その1 「初期反射」軽減対策評価点:5点/25点満点
- ※メインフロア壁面の素材毎に持ち点を評価し、客席配置で持ち点減点。
- 木質パネル等持ち点25点から硬質壁在持ち点12点の間5段階持ち点評価。
- ※被害(音響障害)想定席数と収容人員の比率で採点評価
§4,残響その2「後期残響」への配慮評価点:4点/上限5点
- 上限10点の範囲内で音響拡散体が付加されていれば1点/1アイテムで加算評価。
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら。
算出に用いた値;
●定在波対策持ち点;25点
想定・定在波被害席数;6席(6席/4F)
●客席配置持ち点 17点
眺望不良席数;0席/1F平土間中央部座席
大向う音響障害席あり:38席/2F、37席/3F
●初期反射持ち点 6点
想定・初期反射被害席数;(30席/1F、38席/2F、37席/3F、24席/4F)
メインホールの施設データ
- ホール様式 、プロセニアム型式多目的ホール。
- 客席 4フロアー 4重テラス、収容人員
2,005席(車椅子席10含む) ※1階席のみご利用の場合:1,110席+車椅子席8
1階桟敷席(テラス席)、2・3・4階テラス席、 1・2・3階中央部千鳥配列、可動床、
オーケストラピット利用時:1,833席(172席減) ※1階席のみ利用の場合:938席+車椅子席8 - 舞台設備 プロセニアムアーチ: 間口:20m、高さ:12m 、奥行 舞台前面から舞台最奥:22.7m、反響版、オーケストラピット(可動床&仮設張り出し舞台)、
- その他の設備 楽屋x12、リハーサルルーム、
ロームシアター京都メインホールがお得意のジャンル
主にポップス関係のコンサートが年間をつうじて数多く開催されている。
現在、京都四条南座が改修中のため、松竹歌舞伎吉例顔見世興業も行われた/2017年。
ロームシアター京都メインホールの公演チケット情報
『サウスホール』の音響
こちらは仮設脇花道、国立小迫りの設置が可能であり、伝統芸能にも対応している。勿論反響板も設備されており、716席の良質の室内楽ホールとして利用できる。京都コンサートホール、小ホール(※ホールNaviはこちら)の音響が失敗と言いきっても過言では無い「癖の強い音響」なので、京都における室内楽演奏の新たなる舞台として期待がかかっている。
壁面はの「縁取り棧付き」のグルービング加工材で初期反響にも配慮されている、さらに両側のスラントした軒を持つ2階テラスが、音響拡散にも寄与し、良好な響きを醸し出している。
側壁部の2階テラス天井に当たる部分にはキャットウォーク(犬走)テラスが設けられており、音響拡散体(※2)を兼ねて抜き出しの照明設備コラム前面に設けられている。
各テラスの要所には装飾柱も配してある。
最上層部にもホール客席周辺部にキャットウォーク(犬走)テラスが設けられ、キャットワークを渡る形で下面を反響板で覆っただけの照明ブリッジを配する流行の音響デザインを採用している。
天井反響板は、平土間部分にかかる程度だが、天井が十二分に高く1階フロアーとは並行していないので問題はない。
こちらも、ゆとりある座席配置で1・2階大向こう、客席両測とも通路になっており、全席良質な音響である。
ホール音響評価点:69点
§1,「定在波」対策評価点:22点/50点満点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
- ※客席側壁がプレーンな垂直壁で 「完全平行・平面」の場合は、満点x0.5=25点をベースに算出。
- ※被害エリア客席数/収容人員 の比率で持ち点から算出する。
§2,「客席配置」評価点:17点/20点満点
- ※客席メインフロア周辺壁材が硬質壁の場合は、満点x0.8=16点をベースに減点算出。
- ※壁際通路、大向こうつうろの有無、天井高さ、バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で持ち点減算。
- ※前項同様に想定被害者数を引いた有効座席数の割合で評価する。
§3、残響その1 「初期反射」軽減対策評価点:25点/25点満点
- ※壁面の素材毎に持ち点を評価し、客席配置で持ち点減点。
- 木質パネル等持ち点25点から硬質壁在持ち点12点の間5段階持ち点評価。
- ※被害(音響障害)想定席数と収容人員の比率で採点評価
§4,残響その2「後期残響」への配慮評価点:5点/上限5点
- 上限10点の範囲内で音響拡散体が付加されていれば1点/1アイテムで加算評価。
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
算出に用いた値;
●定在波対策持ち点;23点
想定・定在波被害席数;28席(20席/1F、8席/2F)
●客席配置持ち点 18点
眺望不良席数;0席
音響不良席;28席(20席/1F、8席/2F)
●初期反射持ち点 25点
想定・初期反射被害席数;0席
サウスホールの施設データ
- ホール様式 プロセニアム型式平土間・モダン芝居小屋』。
- 客席 2フロアー 収容人員 716名、、可動床、2階テラス、1・2階中央部千鳥配列
- 舞台設備 、プロセニアムアーチ:間口:17.9m、高さ:11.5m、奥行 舞台前面から舞台最奥:15.3m、仮設脇花道、仮設エプロンステージ、
客席前方中通路までは仮設による張出舞台の設置可能
束立て式舞台 移動小迫2カ所設置可能
仮設花道:舞台上手下手に仮設花道の設置可能
音響反射板 - その他の設備 楽屋x6、
サウスホールがお得意のジャンル
主にセミナー、講演会、市民団体の集会、リストのリサイタル、アンサンブルの演奏会、なども行われ、ミュージカル、Jポップ関係のコンサートや、往年のアイドル・エンタテイナーのワンマンショウ、ジャズコンサート、演劇・伝統芸能、歌謡歌手の歌謡ショー、懐メロ歌手の歌謡ショー、有名タレントの座長ショー、落語・演芸寄席、トークショー、着ぐるみヒーローショー、大道芸、パフォーマンス・ショーなどの色物までバラエティーに富んだイベントが開催されている。
サウスホールで催されるコンサート・イベントチケット情報
『ノースホール(リハーサル室)』の音響
5.5mと比較的高い天井を持つ平土間多目的スペース
長辺の下層部は1面ダンス・バレエ用の鏡張りと成っておりリハーサル室としても利用できる。
前面を覆う音響カーテンが装備されていてアンギュレーションを持たせた対抗壁面がアンギュレーションを持たせた反響板で表装されているのでホールとして使用する場合の音響的な問題を軽減している。
天井は一般住宅にも用いられる塗装仕上げの穴あき石膏ボード。下面前面に音響拡散体を兼ねた照明器具用のパイプ格子が組まれている。
また2階床部分に当たるホール周辺壁にキャットウォーク(犬走)が設けられており、後部は開放型調整室に成っている。
200席のオープンステージ小ホールとしても利用できる。
ルーム音響評価点:70点
※リハーサル、音楽練習などがメイン用途のためルーム音響評価を適用しました。
§1,「定在波対策」評価点:35点/50点満点
- ※ルーム低層部に1対以上の並行したプレーンな垂直壁がある場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
§2、「初期反射」対策評価点:35点/50点満点
- ※ルーム低層部3面以上がプレーンな垂直壁の場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
ノースホールの施設データ
- ホール様式 14m×21.5m 床面積:301㎡、(約181畳)平土間型式多目的ホール。
- 客席 1フロアー 収容人員 200名、
- 舞台設備 床面から天井まで5.5m(天井面はグリッドパイプ)
- その他の設備 、楽屋x2
ノースホールがお得意のジャンル
主にリハーサル室として用いられ、セミナー、講演会、市民団体の集会、お稽古事の発表会などにも用いられ、パーティー・レセプションなどの会場としてもつかわれている。
デジタヌの豆知識
今後、不評の京都コンサートホール・小ホール(※ガイド記事はこちら)に変わってサウスホールに音楽ファンの期待が集まっている!
ところで、向こう50年間契約の「ネーミングライツ」...と言う事は次の建て替えまでってこと?
ロームシアター京都へのアクセス
京都市営地下鉄東西線「東山」駅下車1番出口より徒歩約10分
京阪電鉄「神宮丸太町」駅下車2番出口より徒歩約13分
市バス32系統、46系統、京都岡崎ループ「岡崎公園 ロームシアター京都・みやこめっせ前」下車すぐ
市バス5系統、100系統、110系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車徒歩約5分
市バス31・201・202・203・206系統「東山二条・岡崎公園口」下車徒歩約5分
ロームシアター京都これまでの歩み
1960年に初代京都会館が故前川國男氏のデザインで6角堂の巨大ホールとして誕生。
2012年 閉鎖解体
2016年1月 リニューアルオープン。
この間、一部の職者から、モダニズム建築の巨匠故前川國男氏の「6角堂ホール」に対する未練がましい保存要望があったが、京都市が「建物の形状自体がホールとしての機能を低下させており、改修ではデザイン性・機能性とも要求を満たせないため、委員会の意見を取り入れた上で改築を行う」と回答し、旧施設取り壊し、新京都会館の新築に踏み切った判断は賞賛される。
単なる記念脾的建築物愛好者の懐古趣味の「音痴」な先生方は、「音楽ホールは活きた施設」で「単なるモニュメント」では無い事を認識すべきである!
公開:2017年10月20日
更新:2022年9月30日
投稿者:デジタヌ
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