タヌキがゆく

《 公共ホール 計画 の手引き 》 藝術ホールデザインの 極意・セオリーとは その1 定在波対策

「失敗しない・ホール計画の手引き」講座2017-最終回舞台芸術ホール設計のセオリーとは?最終回、ホールデザインは形式ではない

プロローグ プロの技紹介

1 ,大林組の取り組み

特集「心に響く良い音」は素人にもわかりやすく「ホールデザイン(設計)のツボ」を解説紹介したレビュー記事。

2,鹿島建設の取り組み

特集:舞台への招待「音響の楽しみ」は軽井沢大賀ホール(※ホールナビはこちら)のデザイン(設計)を例に、同社の音響への「拘り」と「姿勢」を紹介したレビュー記事。

3, 日本音響エンジニアリングの取り組み

トップメッセージはちと頂けないが?、「研究・実験施設」はピカイチ!、特に「室内音響の測定

-インパルス応答の読み方-」は素人(奏者&聴衆)には難しいかもしれないが、「ホールデザイン・コンペ」を主催(公募)する立場の「施設計画者(行政・建築課)」の諸氏は1度目を通して頂きたい「レビュー」である。

特別寄稿の故北村 音一氏(元九州芸術工科大学名誉教授、1995年2月18日没)の「エッセイ(私の夢)」は、同感の連続の極みで、「理屈ありきの姿勢」はみじんも無く!真摯に「良い音」に向かう姿勢に感動した。

おそらく、学生に対してもある面厳しく、「単位」さえ取れれば...とか理論は良く学んでいるが、測定データと解析にこだわり、「聴感」を無視したようなレポートを提出する「優等生」には厳しかったのでは無いか?

ご存命中に、1度お目にかかってお話を聞いてみたかった。

第一章 定在波対策 とその手法

セオリーを尊重した基本デザインなら、音響設計屋は要らない!
どの様な様式のホールでも以下の原則を守れば「音の良いホール」(※1)は成立する。

1)最重要事項は定在波対策

定在波(※2)に対する配慮はホールデザインの基本中の基本であり、これを疎かにしては良いホールは生まれない。

ホール内壁から「対抗する並行面」は無くせ

平行な対抗面(壁どおし)、床と天井、ステージ背面反響板と客席後方壁、など対抗する面は平行にするな。

あらゆる対抗面には僅かな「スラント角」(5°から10°)「スロープ角」を与え並行面を無くす努力を惜しむな。

空気中を伝わる音は、「縦波=弾性波」のみで有り、鏡同様入射角と反射角は同じである。

従って並行した壁面同士では、2枚の鏡の間に立ったが如くいつまでも「初期反響」(※3)が続き「定在波障害」(※2)のトリガー(引き金)となる。

※実際のコンサートホールではたとえば「バスドラム」「大径和太鼓」「パイプオルガンのペダル音」各楽器が点音源に近く、前後壁や柱で反射した音が左右壁の間で反射を繰り返し「定在波」となる。

※これはあくまでも聴衆の聴取(頭・耳の高さ)位置での話で、頭上遥か上空の、客席の無い空間では天井と床との間で生ずる上下方向定在波しか問題にならない。

シューボックスホールの必須条件

基本的に直方体のシューボックスホールは平行する対抗壁面が多数存在し「定在波」対策が最重要課題になる。

基本天井に向かってわずかに広がるようにスラントさせ、対抗する壁面と平行にならない様に配慮する。

特にオルガンを設置したホールの場合、この処置を怠るとオルガンのペダル音(重低音)の波長約26,15m/13hzと間口が一致し定在波共振を起こし壁面、や天井が破壊する恐れも発生しかねない!

対策(1)内壁はスラントさせろ、垂直壁は禁物!

対抗する完全並行面を防ぐもっとも簡単で確実な方法は「内壁のスラント(傾斜)設置」であり、内傾でも外傾(上反)スラント設置どちらでも効果は同じ。

内壁は基本天井に向かって広げろ

嘗て、1958年に初代フェスティバルホールが誕生して以来、1960年代の第1次公共ホール建設ブームの頃は初期反射;エコー(※3)が重視されていた時期でもあり埃対策のうえからも「ホール上部に向かってすぼめる構造」が良しとされた時期でもあった。
1980年代に入り、1982年に「ザ・シンフォニーホール」誕生に際し、諸外国の有名ホールの調査・データ収集が行われ、1/30模型によるスケールモデル音響実験が採用され、乱反射による後期反響(※3)の存在が唱えられるようになった。
以後初期反射軽減と乱反射創出のため、天井に向かって拡がるスラント壁が良しとされるようになっている。

対策(2)内壁表装パネルのアンギュ―レーション設置

屏風のように折れ曲がったパネルを壁面として用いる手法。

但し段付きのプレーンなパネルは、位相差を用いて定在波解消を狙っているようだが、並行面が存在する限り、定在波は発生してしまい、障害が発生する。

対策(3)客席スロープの活用

客席のスロープは、定在波(並行面)対策として有効に働く!

天井と床面との「並行面解消」はもちろん、ステージ背後面と、ホール後方の対抗面との完全並行解消にも役立つ。

特に完全並行する対抗面を多く持つ「多角堂」では「壁面スラント設置」とともに必須の手法である。

好例

対策(4)扇状段床配列座席の利用

「シューボックスホール」でも、ギリシャの野外円形劇場のように「扇型のすり鉢状」に客席配置をすれば、客席聴取位置(頭・耳の高さ)での定在波発生は解消できる。

※但し、大向う(最後列)は、同一平面上(同一高度)となるために中央部&両側壁際と壁際から1/4の部分はそれぞれ「節」「腹」に当たり実被害(※9)が生じるため、それぞれの部分を通路にして実被害を避けるか、前途(1)(2)の手法で定在波が発生しないように抜本的な対策が必要であり、多くの場合は「コーナー面取り(角を落とす)」か、この部分の側壁を「ハの字型」に絞り込む」手法を併用している。

※逆説的に言えば、「シューボックス型・コンサートホール」ではこの手法は必須条件であり、この座席配列を採用していないホールは...

藝術ホールデザインの セオリーとはをまとめるに当たって

シリーズ最終回に当たって、再度申し上げておくが、これらの手法はお化粧(残響付加)を除き「あくまでも聴取位置=着席時の耳の位置」周囲の現象とその対応策であって、各フロアー面から概ね1.8?以下の低層部への適用例である。

ホール上空には、神様(お客様)はいない!

最近「でっち上げらえた都市伝説・残響2秒異常?」(※10)に拘るあまり、何を血迷った(勘違いした)のか、客席周辺壁面を"お座なり"にし「ホール上層部に定在波対策」を施した馬鹿げた事例を多く見かけるようになっている!

ホール上空には、神様(お客様)はいない!本末転倒のワンワン鳴り響くカラオケホールはもう結構である。

残響などのお化粧に頼らなくても、「優れた演奏家」ならば、良い演奏を披露できるし、彼らにとっては「残響の 厚化粧」など演奏の邪魔物以外の何物でもない!

狸穴総研・音響研究工房 酒燗 微酔狸

ご注意;※印は当サイト内の紹介記事リンクです。
但し、その他のリンクは当事者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

※参照覧

※1、関連記事「音の良いホールの条件」はこちら。

※2-1、定在波の悪影響に関する一般人向けnatuch音響さんの解説記事はこちら

※2-2、定在波に関するWikipediaの(技術者向け)解説はこちら。

※3、直接音、初期反射音、残響音についての(株)エー・アール・アイさんの解説はこちら。

※4、関連記事『ホール酔い 現象 とは?』はこちら

※5、鎧張り(下見板張り)についてのWikipediaの解説はこちら。

※6、アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての建材メーカーの解説記事はこちら

※7、格天井 についてのコトバンクの解説記事はこちら

※8、現代の3大迷発明!「珍妙からくり(残響調整装置、可変段床設備、可変吊り天井)」に関する記事はこちら。

※9、関連記事『ホールに潜む ミステリー ゾーン (スポット)とは?』はこちら。

※10、関連記事『都市伝説・良いホールの条件"残響2秒以上"は本当か?』はこちら

公開:2017年10月26日
更新:2018年10月24日

投稿者:デジタヌ

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