狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

J:COMホール八王子/八王子市民会館《ホール音響Navi》  

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地方都市「八王子市」の「宝」オリンパスホール八王子。

狸穴総研音響研究工房がお勧めする「厳選・真の銘ホール50選」の一つ。

欲張らずに「大ホール」のみに絞った英断が「素晴らしい芸術ホール」を創出した。

三層2バルコニー3テラスの扇形プロセニアムホール。

1階フロアー周辺に高床式桟敷(テラス)と同じく2・3階の二層のテラス席を持つ5階吹き抜けの『高~い天井』を持つホール。

オリンパスホール八王子のあらまし

八王子市民の「宝」。

JR八王子駅南口駅前再開発事業の一つ地下2階、地上41階のサザンスカイタワー八王子の4階〜8階にある。

プロセニアム形式演劇ホール仕様時最大2021名収容人の多摩地域最大のホール

音響面から眺めたホールの特色

(公式施設ガイドはこちら)

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

3フロアープロセニアム型式多目的ホール

3スロープ層プロセニアムホ型式多目的ホール。

1階フロアー周辺に高床式桟敷(テラス)と同じく2・3階の二層のテラス席を持つ5階吹き抜けの『高~い天井』を持つ。

最前列1列~8列目までの平土間部分(うち5列目迄がオーケストラピット部)から緩やかなスロープの後半に続く1階フロアーと、それぞれ下層階ホワイエに大きく張り出し、軒先の『オーバーラップを最小』に押さえた比較的急峻な2・3階バルコニーから成る三層フロアー構成。

2・3階バルコニー両翼から『十分な軒高さ』でホール側壁にテラス席が伸びている。

『グルービング材』で表装されたテラス軒先

テラス軒先は『スラント(内傾)』させ、下層部に対するオーバーラップが最小に成るように配慮されており更にグルービング材で表装されている。

両翼を内側にハの字型に前方に張り出させ、プロセニアム上縁反響板との並行部分が最小になるように配慮されている。

客席フロアー周辺は木質パネル壁

1階周辺は前半が『グルーブ加工』した木質パネル、後半は『アンギュレーション』を持たせたフラットパネル、2階テラス背後(ホール側壁)は『段付き』フラットパネルを横格子で表装。ホール背後壁面は1階周辺同様のグルービング材で表装されている。

側壁設置の照明カラムを露出させ『音響拡散体』として利用

ホール側壁上層部の3Fサイドテラス席の先には黒色に塗装された露出型の照明カラム(軽量鉄骨)をで『音響拡散体』として配置した巧みなデザイン。

伝統芸能にも対応したステージ周り

仮設本花道、仮設鳥屋囲、鳥の子屏風等の設備もあり、「伝統芸能」にも対応している。

ホール内壁と同意匠の『大型重量級反響板』

エプロンステージ(オーケストラピット部分可動床)と奥行きの短い重量級大型ステージ反響板を使用しホール1体型オープンステージホールになる流行のデザイン。

大型のコーナー反響板をそなえた可動プロセニアム

木製の大型可変プロセニアムは上部の前縁からホール天井に向かって大型の木製コーナー反響板が設えて有り『急激な断面変化を押さえ』ている。

剥き出しの照明キャットウォークブリッジを備えた天井

天井中央部中ほどには下面のみラウンドした半透明の凸型反響板で覆われた天井照明ブリッジが配置されており、前後に同様の半透明の凸型反響板が3列配置され都合4列の横長の「行灯(あんどん)」を形成した段付き天井になている。

『"壁面間隔20m超"のセオリー』と「ハノ字段床」で定在波回避

長田音響設計らしく、垂直壁で『"壁面間隔20m超"のセオリー』と「ハノ字段床」だけで平面方向定在波障害を回避している。

  • 間口約27.1m;12.8Hz/1λ、19Hz/1.5λ、25.7Hz/2λ、32Hz/2.5λ、38.6Hz/3λ、
  • 1階最狭部約25.1m;13.9Hz/1λ、21Hz/1.5λ、27.8Hz/2λ、34.7Hz/2.5λ、41.6Hz/3λ、
1階メインフロアー・2・3階サイドテラス部の1m幅パネルアンギュレーション部の定在波抑止周波数

1m 幅パネルの反射限界周波数 約174Hzなので、この程度の皺(シワ)では初期反射軽減による定在波の定在時間?は短縮できても定在波抑止には効果がなく、高調波の定在波も生じている可能性が高い。

オーディトリアム分部の内壁27.1m幅の内壁(音響ロック)は1階メインフロアー同様に約1m幅の木質パネルを横方向に帷子風に折り返してアンギュレーションを持たせて「垂直」設置されている。

2・3階バルコニー・テラス席背後に設えられた「シースルー横格子パーティション」

2階サイドテラス席の後列背後は通路(一部立見席)となっており、後列の背後は音響フィルターとして初期反響(※1)を緩和する目的で上部テラスの下面に至る背の高い「横格子のシースルーパーティション」で仕切られている。

2階サイドテラス席のシースルー・パーティションは壁面からの初期反響を緩和し「定在波の抑制」を狙った仕掛けであろう。

こんなに凝った凝った内装より、いわきアリオス(※ホールNaviはこちら。)の様に壁面自体を大きく内傾(外反)スラント設置させないと1.5波長以上の高調波定在波(※2)には余り効果が期待できない。

施工会社にやさしい?長田音響設計さんは頑(かたく)なに「スラント設置壁面」がお嫌いのようである!

総評

いわきアリオス(※ガイド記事はこちら)のあの「鎧張りの鉄壁の備え」は福島県に置き忘れて来てしまったのか?

定在波対策(※3)評価について

垂直壁のシューボックスホールであり客席が平行壁に取り囲まれているが...、実に手の込んだ見事な実被害回避策を施してある。

最前列から7列目迄の平土間部分の4列目までのオーケストラピット&エプロンステージ部分の両サイドプロセニアムから続く側壁は「ハノ字」に広がっており「ホール横断定在波は駆逐」、5・6列は両サイド出入り口から続く階段ので躱してセーフ、そして7列目は8列目から連なる緩やかな「ハノ字段」に守られて「定在波を回避」し後に続くメインフロアーと2.3階バルコニーテラス席も「ハノ字段」の谷間で「定在波を回避」。

各スロープの最後列は大向こう席背後の壁両袖をハノ字に面取りして、大向こう部分での定在波を阻止してあり、更に全フロアーの殆どが「ハノ字配列」段床席周囲には通路(or立見席)が配置されており、壁際のミステリースポットなどの実被害席が回避しており、定在波実被害席は実質'0'なので基礎点は50点に据え置いた。

ホール音響評価点:得点93点/100点満点中

※立見席・親子席を除く固定席1680席のセミオープンステージ・コンサートホールとしての評価。

§1 定在波対策評価;得点50点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲が「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは 基礎点25点に減ずる。
  • ※但し、壁間距離が20m以上あり定在波周波数が可聴帯域外(20Hz以下)の場合は基礎点50点にすえおく。
  • ※また扇形段床などの座席アレンジで、実被害を回避し、被害席が生じていない場合も基礎点50点にすえおく。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点21点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点17点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点5点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

算出に用いた値;

※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら

定在波評価

基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数0=50点

定在波「節」部席;0?席

定在波「腹」部席;0?席

定在波障害実被害席総計;0?席

初期反射対策評価

※障害発生エリア壁面材質が木質の波状壁面なので素材基礎点25点とした。

基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数2=23点

初期反射障害1 壁面障害席 ;0?席

初期反射障害2 天井高さ不足(2.5m以下)席;89席(47席/2階8列全席、42席/3階6列全席、)

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;89席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数2=18点

眺望不良席数;0席/全フロアー中央部座席千鳥配列済み!

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0?席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;0?席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(2.5m以下)席;89席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;89席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

リハーサル室

14,4m×6.9m天井高さ 約3.2m 床面積約99㎡ (約60畳)と小ぶりなリハーサル室がある。

デジタヌの独り言

ウーン、嫉妬するほど羨ましい!

他の地方都市のように欲張らずに「大ホール」だけにしたのがよかったのであろう。

施設データ

Official Website https://olympus.hall-info.jp/

  1. 所属施設/所有者 八王子市民会館/八王子市。
  2. 指定管理者/運営団体 共立・NTTファシリティーズ共同事業体/八王子市。
  3. 開館 2011年4月3日 (完成 2010年12月1日)
  4. 設計   大林組
  5. 施工  八王子駅南口地区第一種市街地再開発事業施設建築物建設共同事業体(構成会社:大林組(代表)、東急建設、田中建設
  6. 内装(音響マジック) 永田音響設計。
  7. ホール様式 プロセニアム型式多目的ホール。
  8. 客席(客席配置図・座席表はこちら
  9.    3フロアー{2バルコニー)、

    最大2,021席(固定席1,869席、親子席8席、立見席144席)
    音響反射板設置時1,832席(固定席1,680席、親子席8席、立見席144席)

    、1・2・3階テラス(桟敷席)、1階平土間中央部千鳥配列、可動床、仮設本花道、
  10. 舞台設備  2面舞台相当、プロセニアムアーチ:間口:18m 奥行:21.6m 高さ:11m、ブドウ棚(すのこ高さ26m)、可動反響版、オーケストラピット(可動床)、
  11. その他の設備 
  12. 付属施設  リハーサル室、楽屋10室、シャワー室、ホワイエ、ドリンクコーナーなどがある。
  • 各種図面,備品リスト&料金表。
  1. 施設利用(利用料金等)案内 詳しくはこちら。

J:COMホール八王子のロケーション

所在地  東京都八王子市子安町四丁目7番1

JR八王子駅南口駅前にあり南口とはペデストリアンデッキで繋がっている。

もう一つの文化施設「八王子市芸術文化会館 いちょうホール」や駅前繁華街のある北口とは反対側にあり、駅南側は静かな住宅街に囲まれている。

J:COMホール八王子へのアクセス

JR各線八王子駅南口下車すぐ。

J:COMホール八王子が得意のジャンル

東京都交響楽団が「八王子定期演奏会」として年間演奏会シリーズを組んでいる。

オーケストラコンサート、オペラ・バレエ公演、ミュージカル、ソリストのリサイタル、Jポップ関係のコンサートや、往年のアイドル・エンタテイナーのワンマンショウ、ジャズコンサート、歌謡ショー、懐メロ歌手の歌謡ショー、有名タレントの座長ショー、現代演劇、伝統芸能、落語・演芸寄席、大道芸、パフォーマンス・ショー等ジャンルに拘らない幅広い演目でこのエリアの多くの人達に受けいれられている。

またプロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体が利用している。

J:COMホールの公演チケット情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら

J:COMホール八王子これまでの歩み


1962年10月1日 旧八王子市民開館 八王子市上野町32-1に 完成

1991年5月 八王子市主導で八王子駅南口の再開発事業(八王子駅南口地区市街地再開発事業)が策定。

2008年1月 八王子駅南口地区市街地再開発事業着工。

2010年11月 サザンスカイタワー八王子竣工、

2011年3月 旧八王子市民開館、老朽化により閉館。

2011年4月3日 開館。同時に2021年3月までの10年間、オリンパスとのネーミングライツ(施設命名権)の設定によりオリンパスホール八王子となった。

2021年4月1日からネーミングライツがジェイコム東京に移りJ:COMホール八王子と改称された。

※参照覧

※1、直接音、初期反射音、残響音についての(株)エー・アール・アイさんの解説はこちら。

※2-1、定在波に関する解説記事 音響工学の基礎知識"平行した対抗面間で生じる『定在波』"はこちら

※2-2、定在波に関するWikipediaの「動画付き」(技術者向け)解説はこちら。

※3、定在波対策については『第4章 セオリーその1 "定在波の駆逐" と "定在波障害の回避策"』をご覧ください

 

公開:2017年9月29日
更新:2022年9月30日

投稿者:デジタヌ


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