狸穴ジャーナル・別冊『音動楽人(みゅーたんと)』

連載『ホームシアター構築講座』ー第13回ー

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第2章 定在波に対する対策

第1節「壁面反射音」の位相は進行方向に向かって変化しない!

「壁面反射音」の位相は進行方向に向かって変化しない!(※1)という物理原則が「定在波の要因」になるわけですが、...という事は、SP前面から発せられた音波と壁面から反射した音は位相が180°ずれているわけで「互いに打ち消しあい」壁面では音圧が0となり両壁面の中央当たりでも音圧が0となる1波長の定在波が生じてしまうわけです。

参※1)当サイト関連記事 音響インピーダンスと反射波の位相 はこちら。

スピーカーは長辺側の壁面に

そこで「小さなシューボックスホール」のように短辺にSPを配置するとSPからの直接音よりも両側壁からの初期反射音の影響を強く受けることとなり、定位が悪くなり「音像がぼやけて」しまいやすくなります。

おまけに左右の壁面反射の影響で「手の付けられない音響」となってしまう可能性もあります?

第2章第2節 意外と対処しやすい10畳以下のリビングルーム

後述するように、20畳クラスの本格的miniホール?はいろいろと厄介なことが多く発生しますが10畳(5坪)クラス4.5mx3.6mであれば定在波は77.5Hz/4.5m(長辺側)と96.8Hz/3.6m(短辺側)の2つで、

短辺側の3.6m幅の壁面全体を内傾スラントさせるか部屋を斜めカットして台形形状のフロアになるようにすれば、あとはスピーカーを長辺側の壁面にセットしてスピーカー背後壁面部分に3・6板を4枚(1.8mX3.6m)程度を立てかけて反響版とするだけでリスニングポイントでのスピーカー軸上定在波96.8Hzはほぼクリアできます!

また長辺にスピーカーをオフセット設置して、リスニングポイントが中央にならないようにすれば、多少場所により音響特性(周波数特性)に乱れは生じますが長辺方向の定在波77.5Hzのミステリースポットを回避することもできます!

但し1辺が2間(約3.6m)以下ならば対策は立てやすい

短辺が3.6m以下ならば、1波長の基本定在波は96.8Hzとなりそれ以下では発生しないので、その半波長に当たる1.8mx0.9mの合板いわゆる3・6板X2枚以上をスラント設置すれば定在波(※3)は抑止できます!

参※3)当サイト関連記事 第1項 スラント設置のセオリー(垂直壁は禁物!)はこちら。

3坪以下(2.7x3.6m以下)の部屋では

3坪以下(2.7x3.6m以下)の部屋では129Hz/2.7mと96.8Hz/3.6mの定在波が発生しますが、

長辺側にスピーカーをセットしてリスニングチェアー背後の壁面に3x6尺の12mm厚さ以上の合板を、3枚(2.7m)以上並べてスラント設置すればOK。

上半身というより頭部(すなわちスピーカー)の背後がスラント反響版でおおわれていればほぼOKです。

スピーカー設置対抗壁面距離が1.5間(2.73m)以下の場合

※音波を反射させるには1/2波長以上1.35mの幅があれば十分でリスニングチェアー背後に3x6板2枚が並んでいいればスピーカー軸上の129Hz定在波は回避できます!

1面だけであれば反響版を30度程度は傾けないと定在波対策としてはほとんど効果が期待できませんが、スピーカー背後への反響版設置も可能であれば各々15度程度でも効果は期待できます!

長辺方向の定在波は、壁面全体をスラントさせるか部屋を斜めカットして台形フロアにでもしない限りは駆逐できませんが、「部屋の中央部分を避けてオフセットして着座すれば」ミステリースポットは回避できます!

一般的なマンション(建売)の6畳以下の応接間では

1畳が2尺8寸×5尺6寸(850mm×1700mm、1.445 m2)が基本サイズとなるので、内法で2.55mx3,4mとなり、

短辺にSPを置くと102Hz程度の定在波が生じやすくなりますが...、

長辺側にSPを設置すると、幅方向で136.7Hzの定在波は生じやすくなりますが、前後(部屋の幅方向)に着座位置を調整すれば、定在波の影響(ミステリースポット)を受けにくいリスニングポイントが見つけやすくなります。

しかも、左右に着座位置をずらせば奥行き方向(長辺)のミステリースポットをかわせる位置も見つけやすくなります!

(左右の耳は13㎝前後離れているので定在波の節(ミステリースポット)にハマる度合いは耳穴のよる前後方向の定在波より避けやすくなる!

逆に言うと、6畳間程度の一般家庭では「スーパーウーファーが受け持つことになる、100Hz以下の重低音定在波の発生は心配しなくてよい!ことになります。

つまり後述するように耳の高さ(リスニングポジション背後に)に3x6尺合板x3枚ていどを反響版としてスラント設置すればスピーカー軸方向の定在波は高次定在波も含めてほとんど回避できます!

第2章第3節 手強い12畳以上のリビング(リスニング)ルーム

長方形の部屋でSPと向き合っても...

前途の通り壁面で反射した音は進行方向に向かって同じ位相(※4)となるので「壁面では」互いに干渉して音圧は"0"となるわけですが、部屋の「中心部」と「両壁面」以外では音圧は確保されます!

むしろ定在波の影響を回避するには「聴取位置(耳の高さ)」で定在波の影響を緩和すればよいわけで、

小生は前途したようにリスニングチェアーの背後壁面に「900X1800」いわゆる三六屏風を15度ぐらい傾斜させた反響版を設置しています。

前途の通りリスニングルームは幅(スピーカー設置壁面間)3.01m、高さ3.54mあるので、室温20℃1013hPaの時の音速は348.6m/sec。

スピーカー対抗壁面間3.1mに相当する115.8Hz、の幅方向の定在波が生じますが、反射面幅が半波長つまり1.5m以上あれば反射しますから、1.8m□の反響版でも定在波の影響はかなり減少します!

という事で、写真のように設置して、CutOff周波数はMin50Hz、Volume"4"の位置で使用して「聴感上」MDR-Z1000 モニターヘッドフォンに迫る音質(分解能)となってきました。

尚、小生の低域聴覚は別項MDR-Z1000長期レポートにも記した通り30Hz以上でほぼ±3㏈程度?、年のせいで30Hz以下では聴覚は落ちますが、-12dB程度で20Hzまでは聞き取れます!

小生宅では

小生宅は実際は本間24畳(実測内法最大幅7.51mX5.806m)の平土間空間の一部分(6畳)をパーティション(格子戸と板戸)で区切っているだけなので、100Hz以上は前途したスピーカー背後の「反響版」で抑止していますが、46.8Hz/7.51m、60Hz/5.8m の定在波は壁面全体をスラントさせないと「抑止できないので」対策に苦慮しているのが実情です?

とりあえず、それぞれの壁面から離れて「ミステリースポット」から遠ざかるようにしています。

参※7-1)当サイト関連記事 反射面の幅 と反射波の周波数限界はこちら。


 

公開:2014年11月14日
更新:2024年3月 6日

投稿者:デジタヌ


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