連載『 ハイレゾオーディオ High resolution とは...』ー第16回ー
,
★第3節 LP盤用ドンシャリマスタリング(イコライジング)を暴く!
第1項 「モヤモヤ」して歯切れの悪い、迫力のない低音!は「100Hz」ピーキングと...
モヤモヤした歯切れの悪い低音(低弦)の最大の原因は「100Hz」ピーキングにあります!
一見(一聴)ふっくらした低音域も、150Hz付近から「100Hz」にかけて「大盛!」イコライジングすると歯切れの悪い、締まりのない「ブヨブヨ」した低音域になってしまいます!
50Hz以下の重低音域カットが迫力不足の原因
しかも前途したLP盤(再生)対策で50Hz以下の重低音を6dB/oct程度でカット!してしまうと「弦バス」はもちろん「銅鑼(ドラ)」「バスドラム」「ティンパニー」などの鳴り物が、まったく「腰抜けのお間抜けな迫力のない再生音」となってしまいます!
第2項 キンキラ、シャリ・シャリ音の原因は4kHzピーキング!
高音域のうち4kHz帯は「煌びやかさ・華やかさ」を強調するには都合の良い帯域で、またこの帯域は「可聴帯域(20~20kHz)」内でも比較的聴覚が鋭いところで、「見せかける」にはちょうど良い音域となります。
そこでこのあたりを強調して「ハイファイ録音に見せかける」わけです。
但し、逆に言うと「テープヒス&ホワイト・ノイズ」などの「シャー」ノイズ(デバイスノイズ)も一番感じやすくなる帯域なので、やけに「シャー」ノイズが気になる場合は「4kHz」を中心に-2dBほど下げてやると非常に聞きやすい音になります!
第3項 マイク設定による差
距離感(音色)の違い、オンマイク設定と、オフマイク設定
距離感とは音の拡散減衰・に由来するマイクの周波数特性の変化で、音源(楽器)に近い距離(オンマイク設定)では重低音域をとらえることができ、距離が離れる(オフマイク設定)では低域がおとなしい各楽器固有の倍音列の「音色」が強調された音になります。
オンマイク設定
距離感とは音の拡散減衰・に由来する周波数特性の変化で、音源(楽器)に近い距離では、可聴帯域(20~20kHz)全域に渡りクリアーな響きが得やすくなりますが(※23)、反面あまりオンマイクにするとブレッシング(息継ぎ)や「衣類のこすれる音?」?などの楽音以外の雑音?も拾いやすくなります。
参※23-1)当サイト関連記事 ギタリストは知っている「重低音」の重要性!オンマイク録音の秘訣 はこちら。.
参※23-2) 一般的なマイクロフォンの特性測定法であるカプラ校正法 では距離による減衰は無視?されているので、無響室測定のように「音源からXm」離れた位置というような規定はありませんが...。
わかりやすい例では「密閉型ヘッドフォン」の特性がこのカプラ(音響結合器)で測定されているので、試しに机の上に置いた場合は「音量が小さくなる」以上に「低域」が消えてしまい「甲高い音」になるのが実感できるはずです!
さらに「耳殻(集音パラボラ部分?)」に乗せるタイプの「簡易密閉」タイプのヘッドフォンでは、「耳をすっぽり覆う」モニターヘッドフォンと比べ、公称特性より重低音域が不足して聞こえるのはこのためです。
試しに「両手で抑えて」密閉度をより高めてやると「アーラ不思議!重低音が!」となるわけで、こちらが「メーカー公称値どおりの音」という事になります!、つまり下手な簡易密閉タイプよりも"しっかり耳穴に突っ込む"耳栓タイプの「インナー型のイヤホン」のほうが重低音はしっかり聞こえます!
参23-3 当サイト関連記事 耳栓はやはり耳に突っ込まないと? はこちら。
オフマイク設定
距離が離れるとBass(低域)は急激に拡散減衰し、Treble(高域)が強調された「甲高い」響きになり、しかも周辺の「環境ノイズ(エコー感のある騒音)」も拾いやすくなります。
それで「アメリカ系やDECCA」などでは「衝立(遮音パーティション)」を立てまくり、が聞き取れるほどの「オンマイク」設定のマルチマイクで各楽器の音をシャープに捕捉して、ミキシングコンソールで「ミキシング」して、4~16Chにミックスダウンしてマルチチャネル(トラック)録音をするわけです。
マルチマイク設定
前途の通り「各パート(楽器)」のセパレーション(分離度・明瞭性)は高まりますが、あまりオンマイクだと「過大(音響)入力」となり音が割れてしまう!ので、オフマイク設定の「一点吊りのメインステレオマイク」との併用(ミキシング)という事になります。
という事は「前途したように」曲の途中で音色(距離感)が変化してしまう難点があり、それを目立たなく「ソロ楽器」を際立たせるのが「ミキサー(録音エンジニア)」の腕前(フェーダーさばき)となります。
オフマイク・One Point Stereo収録
戦前・戦中・戦後に渡りベルリンフィルが録音セッションに用いた「イエスキリスト教会」での録音はこの方式が主でした。
騒音の聞こえない環境の良いこの教会は「ナチスドイツ」がラジオ放送収録のために作った「自然で適度な残響(※24)」を備えた非常に素晴らしい響きを持つ「録音スタジオ」でモノーラル録音に最適な各楽器の「明瞭度」と「響き」を備えていてもちろんステレオ時代になってもその特性をいかんなく発揮してエコルームによる後付け「人口エコー」や「極端なイコライジング」などのマスタリングがほとんど必要のない「ナチュラル」な音場感(広がり)を持つ名録音が数多く生まれています!
更に、1980年代までの自由ベルリン放送、南西北ドイツ放送、BBC、ORTF(フランス国営放送)、ORF(オーストリア放送協会)などのヨーロッパ系の放送局はこの方式でライブ録音(放送)を行っていました。
嘗てのNHK-FM海外の音楽(現ベストオブクラシック)で流れていたヨーロッパ各国の音楽祭での名演の数々はいずれもこの方式で収録されたものです。
但し前途したように、楽音以外の「場内騒音・外来騒音」に左右される欠点もあります。
参※24)当サイト関連記事 「エコー」と「後期残響」は別物はこちら。
公開:2020年2月 9日
更新:2024年3月 6日
投稿者:デジタヌ
連載『 ハイレゾオーディオ High resolution とは...』ー第15回ー< TOP >連載『 ハイレゾオーディオ High resolution とは...』ー第17回ー
▲ハイレゾオーディオNaviへ戻る