連載『 ハイレゾオーディオ High resolution とは...』ー第1回ー
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第1章第1節 デジタル音楽コンテンツの利点を再評価すべきでは!...
最近現行の「CD」を代表とするデジタルコンテンツ、デジタル媒体に対して「ネガティブな批判」が流行っているようですが...
巷で囁かれているレンタルスタジオの「コンテンツ制作現場機材の問題」を論(あげら)った"ネガティブな悲観論"ばかりを唱えるのではなく...
デジタルメディアの美点をもう一度見直して、前向きな解決策を見出す努力をすべき時期に差し掛かっているのではないでしょうか?
第1項 量子化bit数とダイナミックレンジの関係
ディジタル録音でのS/N比は量子化ビット(2進数の桁)数(※11)で決まります。
- 6bit;32step≒30㏈
- 7bit;64step≒36㏈
- 8bit;128step≒42㏈
- 10bit;512step≒54㏈
- 12bit:2048step≒66㏈(実ダイナミックレンジ6bit;約30dB)
- 13bit:4096step≒72㏈(実ダイナミックレンジ7bit;約36dB)
- 14bit:8192step≒78㏈
- 16bit:32,768step≒90㏈(実ダイナミックレンジ10bit;約54dB)
- 18bit:131,072step≒102㏈、(実ダイナミックレンジ12bit;約66dB)
- 20bit;524,288step≒114㏈(実ダイナミックレンジ14bit;約78dB)
- 21bit;1,048,576step≒120㏈
- 23bit:4,194,304step≒132㏈
- 24bit;8,388,608step≒138dB(実ダイナミックレンジ18bit;約102dB)
- 26bit;33,554,432step≒150dB
- 32bit;2,147,483,648step≒186dB(実ダイナミックレンジ26bit;約150dB)
※但し、後述する「量子化ノイズ」はこれとは異なりますので総合的なS/N比はこの値とは異なります。
つまりWikipediaの解説にもあるように、16bit量子化(32,768step:90 dB)のCDでは量子化ノイズはS/N比で96 dB ある訳ですが「ダイナミックレンジが96dBあるわけではありません!」
参※11)2進数の換算サイトはこちら。
第2項 実際のA/D変換では
実際のA/D変換ではDCレベルをデジタル変換するので、AC波形の振幅範囲としては、1bit差し引いた値となり16bitでは15bit:16,384step≒84㏈という事になり、さらに楽音の最低分解能6bit;32stepのうち片側5bit;16stepを15bitから差し引いた10bit;512step≒54㏈つまり量子化ビット数から6bitを引いた値が有効ダイナミックレンジという事になります。
なので通常のCDマスタリングでは、Peekレベル周辺は旧来通りのアナログ非直線処理(リミッター)でダイナミックレンジ非直線圧縮を行っています。
参※21)一般サイトのA/D変換の仕組みについての解説はこちら。
第3項 人間の聴覚(耐力)は機械よりもすごい
健常者の聴覚のダイナミックレンジは概ね120dBdB(デシベル)程度はあります、つまり聴覚限界の1,000,000倍の音まで、聞き分け(耐え)られます!
第1目 実際のオーケストラ・ライブでは
実際のオーケストラ・ライブで説明すると、オーケストラ(の指揮者もしくは団員の位置)では最弱奏pp(ピアニッシモ)部分が30dB程度。
鳴り物(ティンパニー、バスドラム、銅鑼などのパーカッション)がふんだんに入った全奏(tutti)強奏ff(フォルティシモ)部分が135dB程度つまり100dB(実数比100,000倍!)程度の強弱;ダイナミックレンジがあります!
但しこれはステージ上の話であり、コンサートホールは閉ざされた空間(※11)なので壁面反射などにより屋外のようには急激(距離のほぼ2乗に反比例)には減衰しませんが、拡散減衰で、音がよいとされる階上席の中央部では弱音部で25㏈程度最強部で125dB程度まで減衰します、まあいずれにしろマーラーなどの大編成オケ曲であれば100dB程度のダイナミックレンジがあるわけですが...。
参※11)当サイト関連記事 閉ざされた空間で起こる "定在波"と"音響障害"に迫る!はこちら。
第2目 オーケストラ録音では
CDでは16bit=65536stepの量子化閾(しきい)値(step)があるわけですが、オーケストラのダイナミックレンジは(ffとppの音量差)100㏈以上つまり100,000倍以上あるわけで32,768stepの16bitでリニアには原音の記録は不可能!という事になります。
当節の録音スタジオ用の24bit=;8,388,608step≒138dBのプロ用ハイレゾ録音機材(実際にはS/Nひとっても130dBが限界だそうです。)で記録できるかどうかの限界値です。
そこで録音する場合は24bitや;2,147,483,648step≒186dBの量子化を行いマスター音源を記録して,その後マスタリング段階でデータを16bitに圧縮して?CDに記録しているわけです!
第3目 楽音(波形)再現には最低6bitは必要
もともと小さい波形(弱音)は最低でも6bit(32step)程度ないと「波形の正確な再現」が難しいので、CD制作においてもLP時代同様にプリエンファシス(コンプレッション;圧縮)も行われ「小さい音は大きく、大きい音は小さく」することで16ビット(理論値約90㏈ )でも最低(32step)6ビット≒32dB程度のS/Nを確保しつつ残り10ビット(512step≒54㏈)程度の"ダイナミックレンジ"でマスタリングしているわけです。
現状のコンパクトディスク;CDでは16bitの量子化を用いているので音楽全体としてのダイナミックレンジは残り10ビット(512step54dB)程度に圧縮せざるを得ない訳です!
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★第4項 音声出力に現れるノイズ(擬音:幽霊音?)について
(※以下アンダーラインの専門用語はWikipedia にリンクしています)
ディザノイズ
低周波をデジタイズ伝送する場合に生じやすいのがこのノイズです「同じ量子化」となるためにDA変換すると2つの音が現れて特に16Hzなどでは周期的な高周波成分が現れてこれがフラッターノイズ(パタパタ、バタバタ、バサバサ、ガサゴソ?)となり勘違いするのでしょう、これもCDのような44.1kHz程度の低周波サンプリングでは起こりやすくハイレゾ源では現れにくい(聞き取りにくい領域)に追い出されるのでハイレゾが持てはやされる要因の一つになっています。
量子化歪み
これは、録音時に生じるもので、前途したように、ハイビット24ビットや32ビット、192kHzのハイレゾで録音することにより、「より原音に近い滑らかな」波形を記録するようにして、デジタル・アナログの誤差をなくすように努力されてはいます...が基本的に避けて通れない問題です。
現象としては、波形の崩れになり、前項同様に、周期的な原音以外の歪音(加算音)として再現されてしまうわけです。
これを避けるために、ランダム係数を使ったりして、周期的な「量子化誤差(常に端数、切り上げ、常に切り捨て)」による周期ノイズ(擬音)を避けるような、手法が用いられていますが...、20Hz以下の「可聴帯域外重低音(低周波振動)」ではどうしても「演算ミス?」による周期ノイズ(フラッター音)が生じてしまいます。
そこでサンプリング周波数44.1KHz、本来DC~20KHzまで記録できるはずのCDですが...、マイクでとらえた原音(アナログヘッドアンプ)の20Hz以下は急峻な(-20㏈/oct)サブソニックローパスフィルターでカットしているようです。
公開:2020年2月 9日
更新:2024年3月 4日
投稿者:デジタヌ
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