狸穴ジャーナル・別冊『音動楽人(みゅーたんと)』

連載『 ハイレゾオーディオ High resolution とは...』ー第17回ー

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★第4節 LP盤時代のメジャーレーベルのマスタリング(イコライジング)傾向

アナログ盤全盛時代のメジャーレーベルのマスタリング(イコライジング)傾向をまとめますと...

第1項 米国系

後述するようにヨーロッパ戦線終了後にドイツからテープレコーダーの技術が持ち帰られて 1944年にアンペックス(Ampex)社が設立されてアセテートテープを用いたテープレコーダーの改良と・実用化のための開発研究が始まりました。

同時期に米国CBS研究所で戦時中から「プラスティック素材」を用いたLP盤の実用化開発研究も始まており、終戦後の1948年3月1日に  米CBSでLP盤が発売開始されました。

この時にドイツから持ち帰った「テープレコーダー」が役立ったと考えられます。

このいきさつからもわかる通り、CBSレーベルではステレオ初期の1950年代は「ハイファイ指向」で、当時の市販ピックアップカートリッジでは再生困難な50Hz以下の重低音域は、LP盤製造時にカット(マスタリング)されるものの、Treble域では「盛り」を行わない「RIAA]曲線遵守でLP盤マスタリングを行っていました。

当初はごく一部の富裕層の「おもちゃ」だったステレオ再生装置向けの需要だけではコマーシャリズムに乗れないので、1961年以降 「360°SOUND」と称して安価な「ステレオ電蓄」やラジオ放送でも「聴き栄え」のするドンシャリ型マスタリングに転向して大衆化を図りだしました。

第1目 若者はロックンロールに酔いしれ、アダルト世代はスタンダードを聞いていた時代

当時稼ぎ頭のロックンロール歌手を多く抱えていてエレキサウンドが中心で「比較的素直なtreble(高域)特性」をしていたステレオ開発元のRCAでさえ「ビートを利かすために?低域は「100Hzピーキング」を行い...。

ベニー・グッドマン。デューク・エリントン、フランク・シナトラなどのスタンダードプレーヤーに始まって、ハービー・ハンコック、ウィントン・マルサリスなどのジャズプレーヤー、パーシー・フェイス、アンディ・ウィリアムズなどのムード歌謡?、ボブ・ディラン、サイモン&ガーファンクルなどのフォーク、ブラッド・スウェット&ティアーズ、シカゴ、ジャニス・ジョプリン、サンタナなどのR&Bグループなど「ハイファイ指向」のアーティストが多かった「CBS」が100Hzの低音だけではなく「高域までテンコ盛り」の徹底したドンシャリマスタリング!

まあ、当時の時代背景では仕方なかったのかも...。

※参 以下()内は後述する狸穴音響研究所の調査結果に基づいた再生側基準(最低)補正値で、後述する録音年代(録音機材)、リリース時期によってはかなり違いがあり、代表的名盤については別項に詳述してあります。

RCA盤

100Hz+2dB程度の小盛り?50Hz以下-6dB/octでカット!

※、但しステレオ最初期の極端な"on Mic"設定の録音では逆に「20Hz」程度の重低音成分も衆力されていて、25(30)Hz程度を+6dB程度持ち上げてやれば、「オリジナル音源の音」は再現できる!

(25Hz+6dB↑、50Hz±0dB、100hz-2dB↓)

CBS盤

それにしてもステレオ盤最初期の、「ブルーノワルター」の一連の録音が当時の英DECCAを凌ぐ高い録音技術レべルで収録されていたことを考えると1961年 以降の 「360°SOUND」マスタリングはオーディオマニアにとっては「惜しい!」の一言!

(25Hz+6dB↑、50Hz±0dB、100hz-2dB↓ Treble域 1.6kHz-2dB/oct↓)

第2項 ヨーロッパ系

ヨーロッパでは、当時のグラモフォンやDECCAはRCA寄りのRIAAイコライジング遵守派の「比較的素直な高域周波数特性で」、

後にポリグラムとしてグラモフォンと統合された(電蓄も作っていた総合電機メーカーが母体だった)フィリップスは電蓄サウンド?のCBS「360sound」風にドンシャリ型?

更に現ワーナーグループとなったEMIも、LPステレオ時代の録音では100Hzダウン、50Hz±0、25Hzアップの重低音補償は必要で、さらにアンドレクリュイタンス作品のように初期のステレオ録音では4kHzあたりも-2dB補償が必要です。(初期のEMI録音のS/Nの悪さは、高域強調にあった?)

Philips盤

CBS盤と同じようなマスタリング

(25Hz+6dB↑、50Hz±0dB、100hz-2dB↓ Treble域 4kHz-2dB/oct↓)

Deutsche Grammophon 盤

全般に、一点吊りのステレオマイク主体の収録なので一番素直で極端な補償はいらない。

※但し、全般にオフマイクなので「一部の例外を除き」50Hz以下(特に25Hz以下)の重低音は初めから記録されていない!ので25Hz周辺をアップしても「重低音」の「影も形」も現れない場合が多い!

英DECCA盤

さすが「元祖ハイファイ録音」を標榜するにふさわしく!基本DG盤同様に「ユーザー補正」は必要なし!

※、但し50Hz以下の重低音域については、LP盤マスタリングでは25Hz/6dB/oct程度でカットされており、録音によっては25Hz +6dB↑で、マスターの重低音が復活するようになる場合もある。

G・ショルティーの一連の録音はユーザー補正必要無し、取り扱い要注意!

更に、1980年 代以降の「デジタル録音」そして1983年CD発売時代以降に「CDマスタリング」されたものは、重低音がたっぷり入っており、逆にスピーカーを壊す恐れもあるので余計な「イコライジング」は避ける必要がある。

EMI盤

(25Hz+6dB↑、50Hz±0dB、100hz-2dB↓ Treble域 4kHz-2dBt↓)

第3項 この傾向はデジタルコンテンツ全盛の現在も

1980年代にCDが登場して、音楽コンテンツはデジタルコンテンツの時代となり、カセットウォークマン→ポータブルCD→MD→ipodと進化するにつれ「イヤホン・ヘッドフォン」もドンドン高性能になり、

21世紀になってからは「WEB」音楽配信をiphoneなどの「スマホとBuruTouthヘッドフォン」で聴取するのが主流となって、どんどんハイファイ化して、一部のメディアは「ハイレゾ(※2)」に進化して気軽に「ハイファイオーディオ」が楽しめる時代になっても、...。

音楽コンテンツ制作各社は従来通り伝統的ステレオ電蓄用の「マスタリング」を堅持?...。

参※2)当サイト関連記事 ハイレゾオーディオはWEB配信音楽コンテンツに席巻された!レコード業界の生き残りをかけた敗者復活戦?はこちら。


 

公開:2020年2月 9日
更新:2024年3月 6日

投稿者:デジタヌ


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