弘前市民会館 《 ホール 音響 ナビ 》
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弘前市民会館のあらまし
同館のある弘前城址公園で開かれる春の「さくらまつり」と「弘前ねぷたまつり」で有名な弘前市の誇る津軽切っての「コンサートホール」。
市民が優れた舞台芸術を鑑賞する文化施設、文化祭をはじめとする市民自らが参加する文化活動の場として、更には弘前公園内の静かな環境で研修・会議などを行う場として、昭和三十九年に竣工しました。<公式サイトより引用>
建築音響デザイン面から眺めた弘前市民会館
Official Website http://www.city.hirosaki.aomori.jp/shiminkaikan/
※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。
多角堂フェチ?の故前川国男先生がオーソドックスな長方形デザインに回帰した最初の作品。
大ホール
故前川国男先生の作品。
「音響設計専門家」にヘルプされた神奈川県立音楽堂や東京文化会館の時とは違い先生の「勘と経験」による「デザイン」で「打ち放しコンクリート」のプロセニアムを備えた、前半平土間部分と後半スロープ部で構成されている。1スロープの「シューボックス型?」多目的ホール。
1954年の「神奈川県立音楽堂」以来久々の長形のホールである。
壁面埋め込みの凹型!の『音響拡散体』を壁面にランダム配置してサイド照明ガラリや空調吹き出し口にも利用されている。
当時の世相を反映して間口約26mに対して天井の低い(約9.4m)コンニャクタイプの多少癖のある音響のシューボックスデザイン?のホールに仕上がっている。
全周青森県特産の「木質パネル(西目屋村のブナ材)」を用いた改修
天井はプラスターボードの大型一体成形反響板という「モダニズム」を損なわない内装?に改修された。
『"壁面間隔20m超"のセオリー』による定在波対策
反響板使用コンサート仕様時の想定定在波
間口約26mx最大奥行き約39m(大向こう壁面→反響板)x最後部高さ約9.4m
- 間口約26m;13.4Hz/1λ、20Hz/1.5λ、26.8Hz/2λ、33.5Hz/2.5λ、40Hz/3λ、
- 奥行き約39m;8.9Hz/1λ(ステージ背面反響板がアンギュレーションを持たせてあるので1.5波長以上は抑止されている?)
- 天井高さ約9.4m;37Hz/1λ、55.6Hz/1.5λ、74.2Hz/2λ、92.7Hz/2.5λ、111.2Hz/3λ、
赤字は可聴域(20~20kHz)内重低音!
基本・プレーンな垂直壁に窪みタイプの音響拡散体をあしらった定在波(※1)の影響を受けやすい「シューボックスタイプ」のデザインで、『"壁面間隔20m超"のセオリー』(※2)を適用し1波長の基本定在波を可聴帯域(20~20KHz)外においだしている。
ホール横断定在波対策
前後端部のみ4隅のコーナーをラウンドさせて面取りし、ステージ被り付きと大向こう部の定在波を阻止し、前半の緩やかなスロープ部分のみハノ字配列段床座席の谷間効果で回避(※3)している。
ホール前後奥行き方向定在波
奥行き方向は基本周波数を可聴帯域外にシフトし、12列以降のスロープでステージ反響板との平行をキャンセルし最後部大向こうについては、ステージ背後反響板のアンギュレーションで、高次の定在波の抑制を行ている。
ホール前半平土間部分の高さ方向定在波
改修時に、プラスターボード製(※4)の大型一体型天井反響板に換装された際に中央部分を膨らませ緩やかな凸面形状に改修され、平土間部分との完全平行はキャンセルされたが...。
総評
このホールの音響課題としての定在波問題
11列中央部でステージ前縁から約9.8mにも及ぶ広大な平土間部分の高さ方向定在波。
天井高さ9.4mの1/10に当たる0.94mはちょうど着座時の耳の高さに当たり約92Hzの2.5波長定在波の腹の部分サプライズポイントに嵌り重低音が強調された周波数特性となっている。
定在波評価に当たって
木質パネルに換装されたとはいえ、(フロアー面から1.8m以内の)ホール客席周辺壁は殆どプレーンで垂直な壁面で覆われており、前半の12列~21列迄はハノ字段床上にあり幅方向定在波を回避しているが、後半部はストレート段床の為に22列から29列は完全に平行壁面に挟まれている!つまり客席の約半数は定在波の実障害エリア「ミステリーゾーン(※5)」に嵌っている!
よって、基礎点は25点に減じ、平土間部分の高さ方向定在波については、凸面天井で、更に幅方向定在波についても木質プレートと左右の異形窪みの乱反射で初期反響(※6)が緩和され定在波持続時間が抑制されており実被害は軽微?として音響障害席は"0"査定とし、音響障害エリア点のみ2点を減じた。
再度の改修?に期待
広大な平土間中央部分座席は千鳥配列に
1~11列中央17番~27番席は奇数列1・3・5・7・9・11列から各1席都合6席を撤去し千鳥配列に改修すべきである!
ホール内壁面の改修
壁面の表装をご当地名産の「ブナ材」パネルに換装したのは正解だが、オリジナリティーを尊重し「垂直」設置としたのは...。
全体を17度程度内傾スラント(※3)させれば定在波は完全に駆逐できた!
壁面間隔約26mで基本定在波13.4Hz/1λが可聴帯域(20~20KHz)外の低周波振動に追いだされているので、壁際から座席を撤去し壁面に縦格子を追加架装する改修をおこなえば壁面の初期反響が軽減され「高次定在波」の持続時間短縮につながり定在波の抑制にもつながる。
外断熱とホール内天井撤去で天井からの初期反響改善
更に、あおいホール(※ホール音響Naviはこちら)同様に建設当時の常で、間口に比して天井が低い「コンニャクタイプ」なので天井からの初期反響(※6)も大きい。
屋根本体は「外断熱+カラー鋼板」表装に転換しなければならないであろうが、内装はあおいホール同様に天井反響板を撤去し「グリッド+ネット」で表装し直し、鉄骨作りの「ホールシェルター本体天井構造体剥き出し」(※7)とした方が「初期反響の軽減」と「音響拡散効果」による天井から降り注ぐ心地よい「後期残響」嬢出に効果が期待できる!
ホール音響評価点:得点61点/100点満点中
§1 定在波対策評価;得点23点/配点50点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
- ※ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲が「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは、 基礎点25点に減ずる。
- ※但し、壁間距離が20m以上あり定在波周波数が可聴帯域外(20Hz以下)の場合は基礎点50点にすえおく。
- ※また扇形段床などの座席アレンジで、実被害を回避し、被害席が生じていない場合も基礎点50点にすえおく。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点21点/配点25点
- ※木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
- ※障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点14点/配点20点
- ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価;得点3点/配点上限5点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
- ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。
算出に用いた値;
※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら。
※1343席のフル仕様で評価
定在波評価
基礎点B1=基礎点25点ー障害発生エリア数2=23点
定在波「節」部席;0?席
定在波「腹」部席;0?席
定在波障害実被害席総計;0?席
初期反射対策評価
※障害発生エリア壁面材質が木質一パネルの1部アンギュレーションなので素材基礎点25点とした。
基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数3=22点
初期反射障害1 壁面障害席 ;48席/1階8~34列両端壁際席、
初期反射障害2 天井高さ不足(2.5m以下)席;9席/1階35列全席、
重複カウント ;ー0席
音響障害席総計;57席
客席配置評価
基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数4=16点
眺望不良席数;110席/1階平土間中央部座席2~11列17番~27番
音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0?席
音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;48席
音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(2.5m以下)席;9席
重複カウント ;ー0席
音響障害席総計;167席
算定式
評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数
詳細データ
- 所属施設/所有者 弘前市民会館 /弘前市。
- 指定管理者/運営団体 弘前市。
- 開館 1964年(2014年リニューアル!)
- 設計 前川国男
- ゼネコン 大林組
- 内装(音響マジック) (株)内外テクノス
大ホール
ホール様式
、プロセニアム型式多目的ホール。間口約26mx最大奥行き約39m(反響板使用時・大向こう→反響板)
客席
1ロアー 収容人員 1343席、間口約26mx奥行き約30mx最後部高さ約9.4m
オーケストラピット全面使用時:1234席
・オーケストラピット半面使用時:1305席
・能舞台使用時(客席迫出) :1283席
・親子室 7席
舞台
- バックステージ;最大幅約27mx最大奥行き17m
- 有効幅約21.2mx有効奥行き12.3m(緞帳→ホリ幕)有効面積 260㎡(約157畳)
- プロセニアムアーチ:間口:14.4m 奥行:14.5m 高さ:7.7m、
- ブドウ棚(すのこ)高さFl+16.7m、大迫り、反響板、
- 反響板設置時 間口14.4mx有効奥行き約9m 有効面積約83.7㎡(約50畳)
- オーケストラピット&エプロンステージ(可動床迫り)、幅約12.6mx最大奥行き約4.6m約46.5㎡(約28畳)高さ設定StLー0m,ー0.97m,2.17m
- 奈落&ピアノ迫り(中迫り)幅約5.8mx奥行き約2.6m
各種・図面・備品リスト&料金表
- 座席表(客席配置図)はこちら
- 楽屋、などのフロアー配置図 はこちら;
- 施設別図面;(反響板設置舞台平面図、、反響板設置舞台断面図、
- 舞台設備・機材・備品;(仮設花道、仮設能舞台等の)設備リストはこちら、
- 照明設備・機材;設備リストはこちら、。
- 音響設備・機材;設備リストはこちら、
- 設備詳細パンフレットはこちら。
付属施設・その他
館内付属施設
- 楽屋x6、専用ロビー、ホワイエ、託児所
- 弘前市民会館(管理棟);第会議室、中会議室、小会議室x2、
付属施設配置・見取り図
施設利用手引き
- 全館施設使用案内(料金案内)はこちら。
- (利用料金等)案内 詳しくはこちら。
付属施設・その他
- 付属施設 、ギャラリー、会議室x4、喫茶コーナー
弘前市民会館のロケーション
ところ 弘前市下白銀町1-6
弘前駅の西方約2kmにある弘前城址の中の弘前公園に弘前市立博物館と並んで佇んでいる。
県道3号線とはお堀と立木で遮られ、西隣りの県立弘前工業高校や民家とは立木で遮られ、周囲は城址公園の木立で囲まれており、静かな環境にある。
弘前市民会館へのアクセス
JR奥羽線・弘前駅下車
弘前駅前またはイトーヨーカドーバスターミナルから15分
「市役所前公園入口」下車。
弘前市民会館これまでの歩み
1947年旧大日本帝国陸軍第八師団・弾薬庫(明治末期建設)と市営相撲場建設。
1962年9月 市営相撲場跡地に起工。
1964年5月1日 完成。
2013年(平成25年)1月 改修の為休館。
2014年(平成26年)1月 - 新装開館。
弘前市民会館がお得意のジャンル
オーケストラコンサート、バレエ、Jポップ関係のコンサートやミュージカル、往年のアイドル・エンタテイナーのワンマンショウ、歌謡ショー、有名タレントの座長ショー、現代演劇、伝統芸能、落語・演芸寄席までジャンルに拘らない幅広い演目でこのエリアの多くの人達に受けいれられている。
またプロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体が利用している。
弘前市民会館 の公演チケット情報
デジタヌの独り言
参照覧
※1-1、定在波に関する解説記事 音響工学の基礎知識"平行した対抗面間で生じる『定在波』"はこちら
※2、関連記事『"壁面間隔20m超"のセオリー』「音の良いホールの条件とは」はこちら。
※3、定在波対策については『第4章 セオリーその1 "定在波の駆逐" と "定在波障害の回避策"』をご覧ください
※4、アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての建材メーカーの解説記事はこちら。
※5、定在波ので起こる音響障害については『ホールに潜む ミステリー ゾーン (スポット)とは?』をご参照ください。
※6、直接音、初期反射音、後期残響音についての(株)エー・アール・アイさんの解説はこちら。
※7、剥き出し天井についての詳述は『第10章第3節ホール構造体剥き出し天井』 をご参照ください。
公開:2017年11月15日
更新:2019年5月 3日
投稿者:デジタヌ
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